【長期更新停止】やはり俺の人間関係は中学時代からどこか可笑しい   作:Mr,嶺上開花

4 / 8
4話です。。


4話 それとなく比企谷小町はどこか抜けている

四話 それとなく比企谷小町はどこか抜けている

 

 

ふと外を見ると日は沈みかけ、夜の帳が下りようとしている現在。時計を見ると、大体六時半というところだろうか?

 

…つまりは最終下校時間なわけである。

 

 

同じくそのことを感じたのか、シャーペンを動かす音だけ響くこの空間で雪ノ下が最初にこう切り出した。

 

 

「…あの、そろそろ今日の部活は終わりで良いと思うのだけれど、どうかしら?」

 

 

「そうだな、もう最終下校時間も近い。俺はそれで良いと思う」

 

すかさず俺は肯定の意見を挟む。…決して早く帰りたいわけではない。決して。辞めたいとは思ってるが。

 

 

「何で比企谷入ったばっかなのに副部長みたいな振る舞いなの⁉︎」

 

「いや、このまま話が進まないと帰れないしな」

 

 

別に間違ったこと言ってないだろ。常識的には少しばかり微妙な発言だと思ったが…。

 

 

「まあどっちにしろもう帰っても良いんじゃないー?むしろそろそろ帰らないと先生に怒られちゃうよー?」

     

 

「……そうだね、帰ろっか」

 

 

途中から谷津のフォローもあり、どうやら意見は一つに纏まったようである。

 

 

「なら決まりね、早く荷物を纏めてドアを施錠しましょう」

 

 

 

そうした雪ノ下の発言を起点に、俺たちは勉強道具を片付け始める。と言ってもさして手間の掛かる作業ではない。机の上の問題集とノートと筆記用具を片付けて消しカスをゴミ箱に捨てれば良いだけだ。

 

全員がその作業を終わらすのに使った時間は約1分というところだった。教室から四人全員が出た後雪ノ下が手慣れた手つきで扉に鍵を掛ける。そうして強制的に入れられた初めての部活動初日は終わった。

 

 

 

…今思い出したんだが、あの担任結局来なかったな。やっぱしという感じはあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流石に女子3人と一緒に帰るなんてことをやるのはキツイと思ったので、ちょっと教室に忘れ物が…、と言って離脱する。俺の計算に間違いはない。……計算方法にはあるかもしれないが。

そうして何事もなく携帯を弄くりながら教室で10分程待った後に帰路に着く。…完璧だ、これで俺は安全無事、何の噂もされることもなく帰ることが出来る。

 

 

しかし俺は教室を出て2分、直ぐに間違いに気づく。

 

 

「まだいたのね、比企こもり君」

 

「待て、俺の名前をそんな社会的不適合者のように呼ぶんじゃない」

 

 

というかそもそも何故突然出会い頭に俺の名前使って遊んだの?俺じゃなかったらどうなると思ってんだよ?…全く、俺みたいな寛大な心の持ち主で良かったな。

 

 

「てか雪ノ下は何でまだここにいるんだ?あの二人は?」

 

「谷津さんと小坪さんには先に帰って貰ったわ。私は部長だから鍵を職員室に返しに行く役目があるの」

 

 

…そう言うことか、油断した。だがまあ女子複数人と帰るよりはましだ、ましましだ。というか何だよ女子複数人と帰るって、何処の量産型ラノベのハーレム系主人公だよオイ。ちょっとそこ代われ主人公。

 

 

そんな俺の馬鹿な考えを雪ノ下が読めるはずもなく、代わりに一つの質問が飛んできた。

 

 

「そう言う比企谷君もただ教室から物を取ってくるだけには時間かかり過ぎてないかしら?」

 

 

「…ああ、少し探すのに手間取ったんだよ。教科書と塾のテキスト間違えて置いてしまってな」

 

何となく嘘がばれないよう咄嗟に考えだした答えなのだが、雪ノ下は何の違和感もなく受け取ってくれた。…もしかしたら嘘ついてるのを分かりつつ了承したのかもしれないが。そうだったら超優しいんじゃん、今度からゆきのんって呼んであげよう。

…間違えなく殺されるな、俺。

 

 

 

「そう、じゃあ帰りましょうか」

 

「そだな、ゆき…ノ下……」

 

「?」

 

あっぶね、マジでゆきのん言いそうになった。幸い雪ノ下は首を傾げるだけであんまり疑問には思ってなさそうだから良かったものの……。

今日の教訓、本人がいる前でその人の変なあだ名を考えるのは止めましょう。殺されます。

 

 

「そういや貴方、どの門から出るの?聞いておきたいんだけど」

 

 

これはこの学校の門の事だ。この学校には西門東門南門の三つがある。ちなみに正門が無いのは仕様である。何でも正門を作ると他の門がオマケみたいに聞こえてしまうかららしい。…別にオマケでも良いんだけどな、本当に何で北門無いんだよ。俺北門があったらそこから抜けた方が絶対早いのに。もしあったら今のクラスで一番早く直帰出来る自信がある。家まで10分以上あるけど。

 

 

「あー、まあ今日は東門だな。コンビニにも寄りたいし」

 

 

ーーーそして部活に入れられた事を悔やむ為に安いパンでも買ってヤケ食いをする予定だ。…というのはまあ嘘で、ただMAXコーヒーが飲みたいだけだったりする。甘くてね、美味いのだよ、MAXコーヒー。字余り。

 

 

廊下を抜けて下駄箱に着く。バックを置いて上履きと靴を交換する。…毎回思うがこんなことしなくても普通に校舎汚いよな?そろそろ土足オッケーにして欲しいんだけど。…まあ無理か

 

そうして校舎を出ると、雪ノ下は俺とはほぼ反対側の方向に数歩歩いて振り向いた。

 

 

「私は南門帰るから、ここで別れましょう」

 

 

「おう。じゃあな」

 

 

そうして雪ノ下は俺に背を向けて歩き始めた。俺も雪の下に背を向け東門を進む。日は既に沈みきり、明かりは仄暗い街灯を残すのみになっている。

 

 

 

東門から夢のマイホームへ向かう所要時間はだいたい15分ちょっとだ。まあまあ近いと言ったところだろう。しかし、これが高校になると俺の志望している高校に入れれば、めでたく自転車通学になる。歩けばかなり遠い。高校と言えば色んな青春漫画やライトノベルの舞台になっているが、実際は多分それも無いのだろう。そう思うと少し鬱になる。長い距離の学校と家を行き来するだけの生活とかどんだけだよ、鬱になんぞ。現代社会の学生はマゾヒストなのか?

…って今も状況同じじゃん。

 

 

 

 

道中、雪ノ下に宣言した通りコンビニに入る。すぐさま飲み物棚に行き、MAXコーヒーを手に取りついでにその手でメロンパンも掴む。レジは全く混んでおらず、すぐに買うことが出来た。

 

目的達成した俺はすぐさまコンビニから出る。早く帰りたいというのもあるが、同級とのブッキングを避ける為という理由が一番大きい。間違えて会ってでもしまえば

【うわっ、アレうちらのクラスにボッチだよね?】

【だよねだよね、超気持ち悪いー。あ、こっち見てきてきやがったよあいつ】

【ガン飛ばせばー?】

【そするー】

………みたいな会話が副次的に発生してしまう可能性が150%くらいはある。すると不思議、俺の精神汚染度数MAXに!

…じゃあいつもクラスでそれをされている俺は精神汚染しているってことになるな。そろそろ初号機動かせる見込みあるんじゃん、ちょっとN○RV本部行って来る。

 

 

 

コンビニを出て道なりに家へと向かう。そうしてその途中で俺は異世界に飛ばされたり、美少女が空から降ってきたりは全くせずに安穏に家へと着いた。最近のネット小説万歳。

 

鍵を制服のズボンのポケットから取り出して扉を解錠する。

 

「ただいま小町〜」

 

「あ、お帰りお兄ちゃん。今日はなんだか遅かったね〜」

 

 

こうして今玄関で俺と会話しているのは我が家の可愛さ担当、妹の小町である。何時もは俺よりは遅く帰っているのだが、それでも五時半には帰ってくる。

…と言うかむしろまだ小学生の癖にそれまで何をしているのか気になる次第である。多分外で遊んでいるんだろうが、その時くらいは一回家に帰ってから行って欲しいもんだ。

 

 

「ちょっと部活にぶち込まれてな」

 

 

「ふ〜ん。まさかお兄ちゃんが部活に入るなんてね〜」

 

 

いや、ちゃんと聞けよ。ぶち込まれたって言ったろ?そこに俺の意思は全く存在していないの。あの担任のほぼ独断にうちの両親が乗っちゃっただけなの。

 

 

「てか突然入った事には驚かないのかよ…」

 

「だってお兄ちゃんだし」

 

 

おいそれどういう意味だよ。

 

「言っとくが俺の帰宅部を貫こうとした意思はかなり固かったぞ?今回の入部だって担任と親の無理強いだしな」

 

 

「それは分かってるよ〜。毎回お父さんとお母さんとどこか行く時も途中で買う飲み物はMAXコーヒーしか飲まないし…。小町的にはもうちょっと臨機攻変?になってほしいんだけどなぁ…」

 

 

何を言うかと思えば、MAXコーヒーは至高だろうが。炭酸なんて歯に悪い物を飲むならMAXコーヒーの方がよっぽど良いぞ。後、臨機攻変じゃなくて臨機応変な。何を攻めるんだよ何を。

 

 

「お前確か漢検…何級か受けるんじゃなかったのか?ならもうちょっと四字熟語やった方が良いぞ?」

 

 

「うん、五級ね。まあ別に過去問で合格点を余裕で超えたから大丈夫かなーって小町は思ってるから今日はやんない」

 

 

それ絶対受験とかで足元掬われるタイプの人間じゃねえか。お兄ちゃんはそんな妹の楽天的すぎる脳内が心配です。……本当まじで。

 

 

「あ!もうお肉焼けてると思うから行ってくるー!」

 

「おい」

 

肉焼いてる間に玄関まで来るなよ…、家がキャンプファイヤーみたいなったら本当にどうするんだよ。

 

「あ、小町。今日は出来るだけ焦がすなよ?」

 

 

慌てて俺はそう注意する。何しろ昨日の小町は我が家の豚肉を焦げすみに化学反応させてしまったのだ。それくらいしとかないと夕飯が怖い。怖すぎる。

というかそもそも毎回焦げたやつ食ってたら体に悪過ぎだろ。

 

 

「うん、頑張る〜……出来るだけ」

 

そんな些細に不安を残す発言を後にキッチンへ走っていく小町。

…小町に料理させてる俺が言うのもなんだが、もう少し普通の小学生みたいに外で遊んでくれると俺的には安心なんだがな。…まあそんなことは決して口には出せないが。

 

 

そんなことを考えつつも、疲れた体を少し休めるついでに制服から着替える為に自分の部屋へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

バッグを置いてちゃっちゃかと着替え終わったので下のリビングに降りる。小町の料理の行く末を見に行く為だ。…もしかしたらもう焦がし切っているかもしれない。その焦燥感が俺を急かす。階段を降りる速度が少し速まる。

 

そもそも小町が料理を任せてと言ったのはまだ1ヶ月、それまでは俺が作っていたのだ。なぜ小町がそんなに主張したのか俺には分からんが、ならば任せてみようと一任した次第である。決してめんどくさくて放り投げたわけじゃない。…ホントですからね?

 

 

まあとにかくそんな理由もあって、キッチンへ向かってみる。…何か妙な臭いがするんですけど……。肉と野菜を炒めすぎました的な異臭が……。

 

 

………うーーん、これは今日も失敗してたみたいだな。因みにこの家庭料理研究家の小町さん、未だ全戦全敗である。まあまだ一ヶ月だから仕方のないことかもしれない。

 

 

「お兄〜〜ちゃん」

 

 

そう思ってたりしていると、くだんの人物である小町さんがキッチンから走ってきた。見た感じ何か余裕無さそうな雰囲気が漂っている。

…嫌な予感がひしひしと俺のつむじセンサーに反応しているんだけど、そこんところはどうなんですか?大丈夫ですか?

 

 

「おう、何だ小町?」

 

「何かフライパンから火が出てるの!ガス止めても消えないの‼︎」

 

「っておい!」

 

 

…えっ?おい。マジでか….⁉︎しかも俺のさっきの予想以上の事件が発生してるし‼︎

 

その言葉を聞いた俺はキッチンに文字通り走って向かう。家が火事で全焼なんかしてみろ、俺はあの両親に殺される…!そしてもしかしなくとも小町も何かお仕置きされる!

 

 

うちは広い豪邸の類では無い一般住宅なので、キッチンにはすぐにたどり着いた。

見ると確かにフライパンから火が出ているが、幸い壁には飛び移ってないらしい。だからと言って何かの拍子で飛び散ったら目も当てられない。

 

ガスは確かに止まってるらしい。と言うことはフライパンの中身が原因だろう、それが分かった俺は取り敢えず洗い場から500mのカップで水を汲んでフライパンへと投げ入れる。しかし、あまり効果は無いようで止まる気配はない。

 

「……お兄ちゃん………」

 

「心配すんな、必ず止めるからな」

 

 

小町が心配そうな声を上げるのを励ましつつ、俺は手短かなゴミ袋を探す。…っと、あったあった。まあ100Lのだが別に大丈夫だろう。ゴミ袋の口を開き、日を上げるフライパンに被せる(というか覆い尽くした)。火は酸素がなきゃ燃える通りが無い。多分これで消えるはずだ。

 

俺のその予想は何とか当たり、暫くすると火はみるみる衰えて行った。

そうして残ったのはフライパンと気になるその中身。恐る恐る俺はフライパンを覗き込んで見る。

 

 

「っておまっ、油のプールが出来てんじゃねえか⁉︎」

 

中は普通に大惨事だった。言い訳のしようがなく小町が悪い。注ぎ過ぎってレベルじゃねえし、故意にやったって言われても信じられるよこりゃ。

 

「小町、お前半年シェフ免職な」

 

「ううぅぅぅ……」

 

 

可愛い、じゃなかった、可哀想だが仕方ない。火事まで後5秒くらいの事を仕出かしたのだ。そうこれは愛の鞭だ、必要悪なんだ。

………だから俺の口よ、小町に慰めの言葉と許しの言葉と愛の言葉を囁こうとするんじゃない!俺の封印されし口がぁぁぁぁっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………晩飯、買ってこようか。

 

 




宿題終わらない…真っ白だ……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。