魔法少女かずみ?ナノカ ~the Badend story~ 作:唐揚ちきん
俺は夜のあすなろ市に翼を広げ、空を舞う。俺の鱗は既にオレンジから黒に戻っていた。
屋根やビルを飛び交い逃げるニセちゃんとは最初距離が三十メートルは空いていたにも、関わらず数分経たずにその半分ほどに縮まっていた。
俺の飛行速度が速いというのが一番の理由だが、かずみちゃんを小脇に挟んでの逃避は明らかに彼女の速度を下げている。
『オラオラ。どうしたよォ、新人類さん。そんなにトロいと燃えちまうぜ?』
放射ではなく、球状にした火炎をニ、三発彼女たちの背中に吐き出す。
真っ赤な火球が背後から迫るが、それをニセちゃんは『コネクト』を使い、盾の魔法を生み出してどうにか防ぐ。
速さを落とさないようにしているため、通常よりも威力の低い攻撃だが、それでも今の彼女には受けるだけで精一杯といった様子だ。
声が聞こえるくらいまで近くに寄ると、ニセちゃんは悪態を吐いて脇に抱えたかずみちゃんに言う。
「クソッ……。見ろ、かずみ! これが……こんな奴らが人間なのに私たちがニセモノなんて間違ってるだろう? こんな世界間違っていると思うだろう?」
俺を「これ」呼ばわりしてかずみちゃんを必死に説得しようとしているようだが、かずみちゃんは首を横に振って否定した。
「酷い人間は居る。どうしようもない邪悪な人も……でも私は知ってる。この世界には優しくて、温かい人が居るのを! そんな人が居る世界を壊してまで私はホンモノになんかなりたくない!」
「タイカの事か……。だけど、あいつが共感してくれるか!? 自分が作り物だと気付いた絶望を! 理解してくれるのか!? 自分の記憶が偽りでしかないと知った失望を!」
両目を見開き、ニセちゃんは叫ぶ。
しかし、かずみちゃんはまたも首を横に振った。
「でも、思いやってはくれた。私の事も、カンナの事も」
「……っ、黙れ!」
その言葉に言い負かされ、ニセちゃんは誤魔化す様に声を荒げた。
こういう綺麗事が
だが、そのおかげで――距離は詰められたので許してやろう。
「! カンナ、後ろ!?」
「くっ……が!」
首を伸ばしてニセちゃんの右肩に齧り付く。白く綺麗な肩に牙を食い込ませて、肉を骨ごと嚙みちぎった。
本当は右腕ごと嚙み切るつもりだったが、かずみちゃんが途中で教えたせいで肩肉のみを喰らうに終わる。
バランスを崩したところで背中に乗っていたユウリちゃんが二丁拳銃で彼女の頭と腹を撃ち抜いた。穿たれた穴から鮮血を滴らせ、ニセちゃんはビルの谷間に落下していく。
「カンナ! ……わああああ」
すぐに彼女に手を伸ばそうとするかずみちゃんは魔法少女の衣装ではなく、普通の格好に戻っている。
魔力が尽きて、魔法を使える状態ではなかったことを失念していたようで、ニセちゃんと同じように重力に従い、真下へと落ちていった。
『こいつはおまけだ!』
最後に火球を落下していくニセちゃん目掛けて撃ち込む。
腹部に着弾したその火球は彼女の服を焦がしながら、さらなる落下へ勢いと与えた。
暗くてよく見えなかったが、苦悶の叫びも聞こえなかったことから察するに今の炎で死んだのかもしれない。
それの傍で落ちていくかずみちゃんにもついでに火球の追撃を加えようとしたその時、背中のユウリちゃんが俺に声を掛けた。
「おい、あきら。何か下が騒がしいぞ?」
『俺たちの姿が見られたんじゃね? いくら黒い鱗で夜闇に紛れてもここまでドンパチやってれば目撃者くらい出るさ』
たとえ、マスコミに写真を取られたとしても、海香ちゃんの記憶操作の魔法が使える俺には怖いものではない。
だが、言われて気付いたが、どうにも下の道路で蠢く人々の流れがおかしい。まるで、何かから逃げているようなその動きは俺たちを目撃したというよりも……。
「あきら、後ろから何か大きなものが来る!」
結界から魔女か使い魔でも這い出したのかと首を捻って後ろを見れば、遠くの方で黒光りする十メートルの動く物体が視界に映った。
その姿は巨大な蠍に鎧を着込んだ騎士の上半身を付け足したような、異様な見た目の化け物。
俺はそれによく似た存在の知識を持っている。
パピルサグ。メソポタミアのギルガメシュ叙事詩やエヌマ・エリシュに登場する、蠍の尾を持つ半人半馬の合成獣。ケンタウルスの元の原形なったとも言われる化け物だ。
『まさか、あれは……バルタン野郎か!?』
凄まじい速度で下半身の大蠍の節足でこちらに向かって前進してくる。障害となるガードレールや自動販売機、電信柱すらその鋏で打ち砕き、進むそれは俺を狙っているように思えた。
「イーブルナッツで強化したみたいだな。どうする、あきら?」
『慌てることじゃない。奴は強化したみたいだが、所詮は地を這う節足類。空を飛べる俺には……』
「尻尾から何か撃って来たぞ!」
余裕を見せた俺に何かが恐るべき速さで飛来物が飛んで来る。ユウリちゃんの声に俺が避けると、風圧だけでバランスを崩しかけた。
俺の前方にあった巨大なあすなろタワーと呼ばれる鉄塔にぶつかると大爆発を起こし、傾いだあすなろタワーはへし折れて傍の建物を潰す。
さあーっと顔から血の気が引いていった。もしも今の一撃が当たっていたら魔物状態の俺を貫通していた可能性すらある。
俺は思い出す。パピルサグの元となった『パビルサグ』というメソポタミア神話に伝わる都市神のことを。
『パビルサグ』……その名は「射手」の意味するのだ。
「逃げるぞ、あきら!」
『言われなくとも!』
俺はなるべく、大きなビルやマンション、大規模施設を挟みんであの漆黒のパピルサグから距離を取って飛行する。
あれはやばい。洒落にならないくらいにやばい。
ついさっきまで追う者だった俺たちは、追われる者となった。
漆黒のパピルサグは建物を砕き、駐車してある車を踏み潰して俺へと距離を縮めて行進してくる。その間も尾から放たれるミサイルの如き矢は俺を撃ち落とそうと放たれた。
矢を放ち、襲い来る奴に久しく感じていなかった恐怖が生まれる。
「嫌だ」「死にたくない」「化け物が来る」「警察はまだか、自衛隊はまだか」「おかーさーん、おかーさーん」
地上では多くの人間が嘆き、恐れ
交通法など当然守らないパピルサグの行進に巻き込まれ、歩道を歩いていた人間はもちろん車に乗っていた人間も圧死する。マンションやビルをその爆発する尾の矢で風穴を開けて叫ぶその姿はもはや恐怖の象徴になっていた。
『アギイイイイイイイイイイイイィィィィィィーー‼』
ギチギチと不気味な音を立てて、耳障りな声を上げる漆黒のパピルサグ。
俺はあのバルタン野郎にトドメを刺して置かなかった自分に心底後悔をした。時間を遡れるなら、あの瞬間に戻りたいくらいだ。
せめて姿を透過させる魔法があったならと、内心で無い物ねだりまでしている。
「大丈夫なのか!?」
『だいじょうばない!』
少しでも、少しでも奴から離れたい。
俺の中では人生で初めて感じる焦りという感情があった。
「あきら!」
『何!? 今、色々考えてる、ん……』
通り過ぎていた左手側のマンションの端から、ぬっと長い尻尾が見えた。
危険信号が脳内で発せられたその時には、尾から矢が射出された後だった。
とっさの判断で身体を捻って直撃を避けるが、矢は爆砕して俺の右翼を消し飛ばす。
『があァ……!?』
「あきらー!」
背に乗っていたユウリちゃんもまたその衝撃で吹き飛んでいく。片翼を失った俺は体重が重かったせいでその場に落下するに留まった。
火に耐性のある黒い鱗でこの威力。想像よりも驚異的と言わざるを得ない。
どうにか着地して、体勢を立て直すが、漆黒のパピルサグは俺の目の前まで迫っていた。
この野郎……調子に乗りやがって……。
逃げられないのなら、最大火力で消し飛ばしてやる。
俺は鱗の色を赤と白のマーブルに変化させた。俺が持つ最強の威力を誇る魔法の息吹で
口から湧き出る超高熱と超低温の合わせ技、氷炎の渦が喉から吹き荒れた。
『死に腐れ、蠍野郎ォォォー‼』
『アギイイイイイイイイイイイイィィィ!』
パピルサグも尾から爆砕する矢を放ち、俺の氷炎の渦にぶち当てる。
すべてを消し飛ばす最強の一撃と、パピルサグの最悪の矢が俺と奴の対角線上の中心で激突した。
その瞬間、音が消え、魔力の光が飽和して辺りを包み込む。
光が消えた時には俺は吹き飛ばされ、ビルにその身体を埋めていた。周囲の建物は先ほどの激突地点を中心に円状に消し飛び、瓦礫の破片の破片のみを申し訳程度に残している。
『がふっ……』
俺の口から墨汁のような血が漏れ出た。
今までの戦いでは受けたことのないレベルの大打撃を受けている。魔物状態で呼吸さえも辛くなるほどボロボロになるなんて想像もしていなかった。
前を見ると、尾が引きちぎれたパピルサグが居る。俺と同じようにその身体は傷付いていたが、それでも完全に消滅には至らなかった様子だ。
痛み分け、という言葉が今の惨状を表している。
『アギィ……』
いや、向こうの方がダメージは低かったようだ。
重たそうな巨体を節のある足で持ち上げると、俺へとゆっくりと迫って来る。
逃げなければと、身体をビルの壁から這い出て飛ぼうとするが、片翼を奪われたことを思い出し、魔人状態に身体を退化させ、走って逃走する。
ボロボロになった俺は死にもの狂いで恥も外聞もなく、逃げ出す。身体を人間台まで小さくし、小回りが利く魔人状態になった俺は、ダメージで動きが大幅に鈍重になったパピルサグから距離を離すことに成功した。
どこかで体力を整えなければ、確実にあの化け物に殺されてしまう。
俺は休める場所を探して、夜の街を駆け抜けた。
逃げて、逃げて、身体の限界が来るまで走り続けた俺はとうとう膝を突く。
前のめりに倒れるように手を突いて、荒くなった息を整えるが俺は、自分がいつの間にか魔人状態から人間の姿に戻っていることに気が付いた。
心臓の脈動音が煩い。息が切れて、苦しくて仕方がない。
やばかった……。あれは本当にやばかった。冗談抜きで死を覚悟したくらいだ。
「あきら! 大丈夫か!?」
顔を上げると、額から血を垂らしたユウリちゃんが傍に急いで走り寄るのが見える。パピルサグの矢の余波で吹き飛ばされた彼女も多少傷を負っているが無事だったみたいだ。
「ユウリちゃん……」
「どうした!? 立ち上がれないくらいの怪我でもしてるのか!?」
心配して俺を覗き込むユウリちゃんに俺は感極まって抱きしめた。
「お、おい!? あきら……」
「よかった。本当にユウリちゃんが生きていてくれてよかった」
「どうした急に。お前らしくもない」
俺の突然の抱擁に驚きながらも、それに応じて背中に手を回してくれる。ユウリちゃんの甘い香りが俺の鼻に届いた。
彼女が残っていてくれて安心した。これで傷付いた俺の身体を癒すことができる。
「ユウリちゃん。アンタは俺にとって最高の――非常食だぜ?」
「えっ……?」
俺の言葉の意味が分からなかったのだろう。そして、最期まで彼女はその言葉を理解することはなかった。
ユウリちゃんの臍の上辺りに付いているソウルジェムごと一口で魔物化した俺が喰いちぎったからだ。
肉や骨と一緒に竜の顎に含んだソウルジェムを噛み砕く。
枯れ果てていた魔力が一気に回復していく感覚が分かる。力が
『ん~……ごちそうさまでした』
ユウリちゃんを生かしておいたおかげで、どうにか魔力を完全に回復できた。価値のない子にも使い道というのはあるようで何よりだ。
~聖カンナ視点~
目を薄っすらと開くと、そこは電灯が並んだ見慣れない天井があった。
確か私はあの時、あきらに右肩を噛み切られて、その後炎の球を身体に受け、ビルの谷間に落下したはず……。
そうだ。そして、真下に落ちて行き、意識を飛ばしたのだ。
そこまで思い出して、私は上体を起こして周りを見回す。
「うぐっ……」
激痛が右肩と腹部に走る。呻き声を上げるとやはり記憶の通りに怪我をしていた。
なら、どうやって私は助かったのか。
その答えは私の目の前にあった。
「かずみ……お前が私を助けてくれたのか?」
身体中に蔦のような紋様が浮かぶ彼女は酷く疲れたように座り込み、私に弱弱しく笑いかけた。
「……うん。結構大変だった。何とか魔法少女に変身して、空中でカンナを捕まえて、窓からビルの中に突っ込んだの……」
よくよく見れば周りの床には割れたガラスが散乱している。
よっぽど切羽詰まった状況だったのが、それだけでも見て取れた。
「うぐ……」
「かずみ!」
彼女の身体を蝕む紋様は完全に彼女を覆い尽くし、白かった肌を黒く染め上げていた。
ただでさえでも限界が近かったのに、私を助けるために魔力を使ったのが、原因だ。
どうして、そんな事をしたのか分からない。私の理想を拒絶したかずみが、わざわざ身を削ってまで私を助ける必要なんてないはずだ。
「どうして……?」
「私もさ……自分がニセモノだって分かった時は悲しかった。あの時にタイカに出会わなかったら、魔女になるまで暴れていたかもしれない。だから、カンナの憤り、すごく分かるんだ……」
「……っ」
その言葉は、私が求めていた共感と理解が籠っていた。この言葉が聞きたくて私はこの戦いを始めたのかもしれないとさえ思った。
けれど、かずみはその言葉を零した後、ぐらりと後ろへ倒れる。
「かずみ……!」
「あは……もう、限界みたい……」
辛くて苦しいだろうに必死で笑みを浮かべる彼女はとても痛々しい。
グリーフシードさえ、あればかずみを助けられるが、手持ちにはソウルジェムしかない。このソウルジェムを孵化さえて、それから生まれた魔女を倒すにはあまりにも時間と体力が足りなかった。
「クソッ、クソッ、クソッ!」
泣きたくなるほど今の私は無力だった。たった一人の同類を助ける事さえできやしない。
かずみの頬に手を伸ばす。手のひらから感じる熱は極端に低くなっていた。
指先が彼女の左耳に付いていた鈴のイヤリングに触れる。りん、と小さく音を立てて、澄んだ音色を響かせた。
その時、そのイヤリングがぽろりと溶けるように落ちると、中から黒い球体を落とした。
「……これは、グリーフシード……!」
そうだ、確か。この鈴のイヤリングはサキがかずみに捧げるために『和沙ミチル』のグリーフシードを入れておいたものだった。
何という幸運だろう。プレイアデスの連中には憎悪しか感じていなかったが、今だけは心から感謝してやってもいい。
落ちたそれをひったくると、無我夢中でかずみのソウルジェムに押し当てて、穢れを吸い取る。
「うう……あれ?」
かずみの身体を蝕んでいた紋様は消え、元の彼女の白い肌が服の端から確認できた。
私は嬉しさと安堵のあまり、彼女を思い切り抱き寄せる。
「かずみ! よかった!」
「……カンナ、くすぐったいよ」
そこまでしておいて、ハッと我に返り、かずみから距離を取る。
何を慣れ合っているんだ、私は。こいつは私と新たな世界よりも、この世界を選んだのだ。
同類でありながら、私を拒んだ相手なのだ。心を許していい訳がない。
だが、当のかずみは私の考えなど分かった素振りを見せず、まるで友達に言うように私に言った。
「そうだ、カンナ。タイカを助けに戻らないと。早くしないとタイカが魔女に食べられちゃう」
脳裏にあの笑ってしまうくらい真っ直ぐな男の顔が浮かぶ。何か切なくなるような感情が胸を焼きそうになるが、それを振り払うようにその顔を消した。
あいつは人間だ。私たち、ニセモノとは違う。『ホンモノ』だ。あんな奴が死のうと知った事ではない。
『彼なら大丈夫さ』
いつの間にか近くの床にキュゥべえが居た。落としていた和沙ミチルのグリーフシードを尻尾を動かして器用に投げると、背中のハッチのような場所にそれを投げ込んだ。
『きゅっぷい……赤司大火ならイーブルナッツを三つ取り込み、巨大な魔女モドキとなって街に来ているよ』
「そんな……!?」
その窓からも見えるはずだ、とキュゥべえの言葉を聞くや否や、かずみは割れた窓ガラスを気にせずにそこから外を見る。
私も彼女に続き、割れた窓の外を見ると巨大な蠍の騎兵のような化け物が街並みを壊しているのが視界に映った。
あれがタイカなのか……。街を守りたいと愚直に語った男の末路だとでもいうのか……。
ビルを壊し、住宅を踏みにじる破壊の権化のような蠍の騎兵は赤司大火という人間が願ったものと真逆の行為を行っている。
心の奥で誰かが叫ぶ。違う、あんな姿はタイカではないと。
「酷い……。何でタイカが街を……」
顔を絶望に歪めたかずみはキュゥべえに尋ねると、当たり前の事のように奴は
『イーブルナッツの副作用により心を無くしてしまったようだね。残念だけど、ああなってしまったら倒す他にないだろう』
「そんなのって、あんまりだよ……」
泣き出しそうになるかずみに私は無言で掴みかかる。
驚いた顔した彼女に私は叫んだ。
「泣き言を言うくらいなら、タイカを助ける事を考えろ!」
何だ、これは。本当に私が言っている言葉なのか?
人間など滅ぼせばいいと心から思っていたのではなかったのか?
だが、止まらない。口から湧き出るこの想いを止める事などできるはずがない。
「力を貸せ、かずみ! 私たちでタイカを元に戻す!」
自分で言って、自分で聞いて、そして、自分で気付いた。
……ああ、そうか。これが私にとっての『ホンモノ』なのか。
思い出すのはあいつと交わした約束のこと。
『もし、俺が身も心も魔物になってしまったら、誰かを傷付ける前に殺してほしい』――そう愚直なあいつは言っていた。
あの約束は守れなかった。だから、最後まで守らない。
『無駄だよ。赤司大火の心は完全に消滅した。もう、元に戻す方法なんてないよ』
「うるさい、黙れっ! お前がタイカの何を知っている!?」
あいつは馬鹿で、真っ直ぐで、どうしようもなく、正義の味方のような奴なのだ。
裏切って、利用しようとした私に、それで幸せなのかと尋ねるくらいに……馬鹿で優しいのだ。
「絶対にあいつは戻って来る!」
『それなら、ボクは何も言わないよ』
キュゥべえはそう言って、窓の外へ飛び去って行く。
かずみを見ると、どこか勇気付けれたように私を見ていた。少し決まりが悪くなり、視線を逸らす。
「そう、だよね……タイカの心が消える訳ないよね」
「分かったなら、かずみも早く来い!」
それには答えず、私も下まで降りるために窓から飛び立つ。
確証がある訳ではない。でも、私の魔法、『コネクト』を使えば、タイカの心に繋がる事ができる。
あいつの心が少しでも残っているなら、可能性はきっとあるはずだ。
――タイカ、お前は絶対に私が戻してやる……。
微かな希望を胸に私はかずみと共に、蠍の騎兵となったタイカの元まで駆けて行く。
パワーアップした赤司、強いですね。初めて出てきた、あきら君の脅威となる存在です。
そして、本来のラスボスであるカンナが味方側についたという異常事態。
この結果が果たして次回はどう転がるのかは見物です。
あきら君「ユウリちゃんはヒロイン(非常食)!」