魔法少女かずみ?ナノカ ~the Badend story~ 作:唐揚ちきん
「いやー。ほんと大変な目に合ったぜ」
「それ半分くらい自業自得なんじゃないの?」
オレンジ色のボブカットの少女改め、カオルちゃんが俺に悪戯っぽい笑顔を見せてそう言ってきた。
「確かに俺がわざわざ来たせいでもあるけど、まさかあんなことになるとは神様でも分かんないって。俺は平和を愛する一般ピーポーなのにさ」
「スケーボーの裏に鉄板を仕込んでいるような人がよくそんな事言えるわね」
ポットと紅茶のティーカップをテーブルに運んで来た紺色のストレートロングヘアの少女改め、海香ちゃんも俺に冷めた目で突っ込む。
酷い。寄って集って俺をイジめるのね! 俺が可愛いからって、そんなことするなんて!
俺は味方を欲して俺の椅子の傍のソファに座っているかずみちゃんに助けを求める。
「助けてかずみちゃん。意地悪な継母と義姉が俺をイジめるの!」
「誰が姉だよ!」
「ちょっとカオル。それじゃ、私が継母なの!?」
その瞳には不信感と恐怖とがない交ぜになっているのが分かった。
「……何であきらがここに居るの? それに二人ともいつそんなに仲良くなったの……?」
かずみちゃんが「ここ」と言いい表した場所は、かずみちゃんとカオルちゃんと海香ちゃんが三人だけで暮らしているこの豪邸のことだ。
何でも三人は帰国子女で、両親はそれぞれ海外勤務をしているので女の子三人で暮らしているらしい。
だが、この今俺が居る豪邸は海香ちゃんがベストセラー作家として大成してお金を得て、維持しているとのこと。……どこの漫画の設定だ、そりゃ。
カオルちゃんの方もショッピングモールでのシュートを決めたことから、分かっていたが女子サッカーをしていてプロに目を付けられているほどの実力だと言う。……お前も漫画のキャラかよ。
あのショッピングモールの事件の後、俺はかずみちゃんは疲れていたのか、ぐっすりとその場で眠りこけてしまった。
ジェントルマンな俺は彼女を背負って、この家まで送っていくと二人からかずみちゃんが誘拐されかけていたことを聞かせてほしいと頼まれ、ここで二人と話をして親交を深め合っていたという訳だ。
かずみちゃんが俺のマンションから出て行った時に二人は探していたかずみちゃんと合流したのだそうだ。かずみちゃんは昨日行方不明になったばかりでまさか記憶喪失になっていたとは二人とも知らなかったようでめちゃくちゃ驚いたらしい。
かずみちゃんは二人の記憶を完全に忘れていたので、三人が仲良く写っている写真を見せて事なきを得たそうだ。
「俺ってほら、イケメンだし、天使のように優しいから誰とでもすぐ仲良くなっちまうんだよ」
俺はかずみちゃんに答えながら、入れてもらった紅茶を啜った。
「この
「全然違うわ。アッサムよ」
自信満々な表情で紅茶の種類を言ってみたが、海香ちゃんに即座に否定された。……すごいへこむわ。
カオルちゃんはそれがツボに入ったようで一人で爆笑していた。
「カオルも海香もおかしいよ……何でそんな簡単にあきらを受け入れちゃってるの?」
俺の環境順応能力の高さに恐怖を覚えたらしく、怯えの混じった顔を向けるかずみちゃん。自分が寝ている間に友達が人を殺したことのある奴とこんなに仲良くなっていたらそうもなるわな。
「安心しろって。かずみちゃんだって、俺の大事な友達だから。それにしても焼きもちなんてかーわいい!」
椅子から降りて、ソファに近付いてかずみちゃんの隣に座った。
俺はにやにやと笑みを浮かべて、その頬を触ろうと手を伸ばした。白魚のような指先が俺の手に触れようとする。
かずみちゃんはそれを拒絶の意思を持って振り払った。
「わたしはあなたの事が怖いよ。平然と人の傍に近付いて来るのに何を考えてるのか、少しも分からない。今だって笑ってるけど……何か違う」
「違う? 何がだよ? 俺はただ可愛い女の子を口説こうとしてるだけだぜ? 下心100%さ」
怖い目で俺を睨んでくるかずみちゃんにおどけて答える。
さっきの刑事の件といい、どうやらこの子は感覚が鋭いらしい。そういう子は嫌いじゃないな。
これはなかなか楽しい遊び相手になってくれそうだ。
知らず知らずの内に舌なめずりをしている自分がいた。
「こら、あきら。かずみにセクハラすんなよ」
言葉と一緒に後ろからカオルちゃんに頭を軽く小突かれる。
「いたっ! 何すんのさ?」
「今、かずみにセクハラして引かれてたでしょ? 嫌がられてるから止めなよ」
文句を言うとカオルは意地の悪い笑顔で俺にそう言ってきた。
この子には今のやり取りがそう見えたようだ。明るく元気な分、少し鈍いと見える。
そこら辺は俺にここまで心を許している時点でお察しだが。
「えー、健全な男としての対応しただけなのに……」
僅かに抗議をしつつ、俺はかずみちゃんから離れてソファから立ち上がった。
「ごめんな、かずみちゃん。ちょっと悪乗りしちまった。記憶喪失だってのに悪かった」
片手で拝むようにして、ウインクをしながら謝る。
かずみちゃんは俺に不信感を覗かせたまま、抱きしめたクッションに顔半分を埋めた。
完全に信用していない様子だったが、ここで俺への不信を喚き立てるほど愚かではないようで少しだけ安心した。
そんな短絡的な人間はつまらないからな。
「じゃあ、俺は可愛い女の子三人とも仲良くなれたし、そろそろ帰るよ。引越しして来たばっかだから荷物をダンボール箱から出さなきゃいけないし」
「あら、そうなの。残念ね、これからもっとディープな小説談義をしようと思っていたのに」
俺が帰ろうとすると海香ちゃんは少し残念そうな顔をした。
こう見えて俺は読書家でもあるため、小説家である彼女とは馬が合った。カオルちゃんや記憶を失う前のかずみちゃんとはなかなかそう言った話ができなかったようで趣味の話相手に飢えてたらしく、好きな小説や作家についての話題を出すと面白いくらい熱く語ってくれた。
「ベストセラー作家様とは知識の量じゃ比べ物にならないって。あ、そうだ。せっかくだからメアドと番号、交換しようぜ」
自分の携帯電話を取り出して見せると、二人は快く俺とメールアドレスと携帯番号を教えてくれた。
無用心極まりない。年頃の携帯電話の番号がどれくらい価値があるものか理解できてないらしい。
そんなことをしていると、俺らが今居るリビングにある固定電話が鳴り出した。固定電話に一番近かったカオルちゃんが電話に出る。
「ああ。あの時の女刑事さんですか」
どうやら電話相手はあの刑事だったらしい。この家に電話ということは誘拐犯についての話だろうか。
だが、奴と刑事はグルのためにその電話は無意味だ。
「え? かずみを攫った誘拐犯の事について何か分かった? はい。ええ、そうですね。あきらも今、家に居ますけど……あ、はい。分かりました」
俺の方をちらちら見ていたカオルちゃんは電話を切って、こちらに話しかけてくる。
「刑事さんがせっかくだからあきらにも来てほしいってさ」
「俺も?」
「うん。できたら三人で来てほしいって。あきらにはお詫びもしたそうだよ」
「三人? かずみちゃんは来なくていいのか?」
「記憶喪失の子を外に連れ出すのは良くないって言ってたよ。まあ、昨日の今日で行方不明だったからね。心配するのも分かるよ」
それは妙だな。普通ならかずみちゃんが当事者なんだから、俺はともかく彼女を呼ばないのはおかしい。
さらに俺がそこに居るかとわざわざ確認したのも引っ掛かる。
まるでかずみちゃんを一人にしたいような…………ああ。なるほど、そういうことか。
刑事の企みが読めた。あの刑事が短慮すぎるのか、それとも俺が天才すぎるのか。
多分、両方だろうな。
「いや、俺はこの家に二人が帰って来るまでここで待ってるよ。ていうか、記憶喪失の女の子、一人置いてとく訳にもいかないだろ? まだ誘拐犯も捕まってないんだし」
むしろ、客観的に見れば、今日出会ったばかりの男を記憶喪失の女の子と一緒にしておく方が問題なのだが、俺にすっかり心を開いてしまった二人はあっさりと許諾した。
「分かった。じゃあ、留守番お願いね。……かずみに手を出したら承知しないよ」
「戻って来てかずみが傷物になっていたら、去勢するからね」
「しないしない。俺だって分別は弁えてるって。だから、番犬役安心して任せたんだろ?」
二人の酷い言いようもさらりと受け流し、俺はにこにこ手を振って玄関先で見送った。
当のかずみちゃんは二人の異様な俺の信頼っぷりに怯えて固まっている。
玄関の扉が閉まって、数秒間。俺とかずみちゃんはお互い無言で扉の方に顔を向けたまま、玄関先に
先に沈黙を破ったのは俺の方からだった。
「かずみちゃん。一つ言っておくわ」
「な、何?」
俺に警戒してかずみちゃんは僅かに声を揺らした。微妙に距離を取り、いつでも逃げられるように構えている。
「刑事さんの狙いは多分、アンタだ」
「え?」
「かずみちゃんをわざと一人にして殺すつもりだ。それが終わったら今度は俺だろうけど」
「……爆弾魔の正体を知ってるから、だね」
「理解が早くて助かるねー。きっと、その内ここにやって来るぜ」
俺やあの二人を呼び出したのはこの家に来てかずみちゃんを口封じするためだ。その後は居なくなったかずみちゃんを探すためにとか言って俺を呼び出すつもりなのかもしれない。
どっちにしても杜撰アンド間抜けな計画だ。死体処理の方法によほど自信でもあるのか分からないが、あんなのが警察やっていると思うと世も末だと思う。
かずみちゃんは俺の話を聞いて真面目な顔を作っていたが、その途中で聞き覚えのある大きな腹の虫の鳴き声を響かせた。
「……お腹空いた」
「そうだな。もう夕飯の時間だからな。ピザでも取る?」
能天気な俺たちは目先の危険よりも空腹の方が重要だった。
記憶喪失って何だろう?
俺はテーブルに座った状態で本気でそう悩んでいた。
キッチンからはリズミカルな包丁の音と鍋がぐつぐつと茹る音が聞こえてくる。
次第に鼻腔に美味しそうな匂いが運ばれて来て、一層空腹感を煽ってきた。
俺は無心でレタスを引きちぎり、プチトマトをパックから取り出してサラダを作っている。
メインの料理を作っているのは――。
「お待たせ。美味しくできたよ」
全ての記憶を失っているはずのかずみちゃんだった。
……おかしなくないか、これ? 記憶がないのに料理って作れちゃうもんなの?
テーブルへやって来た皿にはビーフストロガノフとライスが乗っている。とても旨そうだった。
うん。記憶がどうとはどうでもいいよね。重要なのは目の前にある料理が旨そうかどうかだ。
「記憶喪失でも料理ができる子、万歳」
「……何言ってるの?」
俺は戸惑っているかずみちゃんを無視して、スプーンを掴み、ビーフストロガノフへと魔の手を伸ばした。
いざ、食事タイム! 食わせて頂くぜ。
その時、「ピーンポーン」とインターホンのチャイム音が鳴った。
俺とかずみちゃんはそれを聞いて顔を合わせる。
そして、聞こえなかった振りをして、スプーンでビーフストロガノフを掬う。
「こら!」
ぽかりと頭を殴られて、スプーンを取り上げられる。ああ、俺のビーフストロガノフ……。
仕方がないので諦めて席から立ち、壁に取り付けられているインターホンの画面を見る。 やはりというか、当然というか、そこにはあの刑事の姿が映し出されていた。
「やっぱ来たよ。どうする?」
「家に上げるよ」
「マジかよ……。無視しようぜ。そして、夜明けまで待ち惚けさせようぜ」
俺の素晴らしき提案を華麗に無視して、かずみちゃんは玄関の方へ向かい、刑事を家へと迎え入れた。
自分の命を狙う刺客を見す見す中へ引き入れるとはなかなか剛毅な女の子だ。気に入った。家に来て俺をファックする権利をやろう。
俺たちに目的を勘付かれているとも知らない刑事は「海香ちゃんたちとは入れ違いになっちゃったみたいね」と白々しく言っていたが、俺に気付いて僅かに表情を歪めた。
「あきら君……あなたも一緒に行ったんじゃなかったの……?」
「いやー、それが留守番頼まれちゃいまして。でも、良かったっすわ。こうやって残ってたおかげで
「……そうね。本当によかったわ」
爽やかな笑みを浮かべてやると、対照的に刑事は苦虫を潰したような顔になる。
これで俺に計画を邪魔されるのは二度目になるのでさぞや鬱憤が溜まっていることだろう。ざまあみろ。
「ささ、刑事さん。今、ちょうど俺ら飯時だったんすよ。刑事さんもご一緒にどうですか?」
刑事をテーブルの方へ案内する。かずみちゃんもそれに黙ったまま付いてきた。
三人が席に着くと、湯気の立つビーフストロガノフを口に入れる。濃厚なスープがご飯と絡んで食欲をそそる。
旨い。本当に絶品と言ってもいいくらいの味だ。腹が減っていることを差し引いても、今まで食べた料理の中でトップ10には食い込んでくる旨さだ。刑事ですら「おいしい」と小さく言葉を漏らしているほどだった。
そんな料理に
正面に座っている刑事に目を留め、俺とかずみちゃんは一時食事を中断する。
「あきら君、今日は本当にごめんなさいね。あの時は爆弾の事もあって焦っていたから、発砲してしまって」
「気にしないでくださいよ。それだけ範囲の広い爆弾を作ったんでしょ? だったら、慌てるのも無理ないっすよ」
ぴしりと今までの和やかな空気に皹が入る。
しかし、刑事はなおも取り繕うと笑みを浮かべようと無駄な努力をする。
「やだ……私が爆弾を作ったっていうの? かずみちゃんもそう言っていたけど、二人ともよほど私を悪者に仕立て上げたいみたいね」
「そう。だから試したの」
刑事の言葉に返したのは俺ではなく、かずみちゃんだった。
なので俺は彼女に後は任せて一人黙々と食事を再開した。ああ、ビーフストロガノフおいしいんじゃ~。
「私たちが食べてるこれ、『アクトウワカルガノフ』っていう食べた人の善悪が分かる料理なの」
「……何を馬鹿な事を」
二人が話している中、俺は料理を食べ終えて、キッチンへ行って鍋から勝手におかわりをした。
そして、何食わぬ顔でテーブルへ戻り、シリアスな雰囲気を無視して食べ始める。
「じゃあ、どうして刑事さんはあんな早く現場に来たの? どうしてあきらを撃ち殺そうとしたの? どうして海香とカオルをおびき出したの?」
「……」
刑事はスプーンを持ったまま、硬直したように俯く姿勢で固まった。
かずみちゃんは追撃の台詞をさらに与える。
「あれ、もう食べないの? 正体がばれちゃうから?」
意外に鬼畜な一面に俺はちょっと興奮しながらもスプーンを動かす。こういう女の子に責められるのもアリだな。刑事が羨ましい。
「黙りなさい……」
「本当は刑事さんが手柄を立てるために爆弾を作って、立花って人に押し付けた。でも、それをあきらが台無しにしちゃったから、今度はあきらに罪を擦り付けた」
「うるさい――」
刑事はかずみちゃんを黙らせようと叫ぶが、笑顔を浮かべて喋り続ける。
探偵のように淡々と話すかずみちゃんは決定的な結論を述べた。
「それをわたしたちに勘付かれたから会いにきたんでしょ? ――殺すために」
「黙れって言ってるでしょう!!」
思い切りテーブルに手を叩き付けた刑事は、ビーフストロガノフを床に落とした。皿が割れる嫌な音が聞こえ、ひっくり返ったビーフストロガノフは床を汚した。
もったいない事するな。もったいないお化けに襲われても知らんぞ。
そう思いながら、自分の皿からスプーンを静かに口に入れる。
「魔法の料理なんて、ふざけるのは止めなさい!」
誰も魔法とは言ってないだろう。この刑事、メンヘラか?
かずみちゃんは一瞬だけひっくり返った皿を見て、酷く冷たい目をした後、また柔らかな笑顔をする。
この落差がかずみちゃんの魅力だな。
「流石刑事さん。それはただのビーフストロガノフだよ。でも残念。証明されちゃった。――あなたが悪人だってこと」
刑事はかずみちゃんから滲み出す凄みに当てられてか、言い当てられたことによる精神的ダメージを受けててか、顔から汗を垂らしている。
笑顔を嘘のように消したかずみちゃんは怖い顔で刑事を糾弾する。
「物語の中ではね、御飯を粗末にあつかう奴は生きてエンドロールを迎えることはできない――本当の悪人なんだよ!」
その理屈でいくとおかわりまでした俺は善人の中の善人、
金髪になって髪が逆立った自分の姿を想像していると、刑事はテーブルに乗っていたナイフを掴み、身を乗り出してかずみちゃんを刺そうとする。
「食事中にはしゃがないで下さりませんか? お客様」
テーブルの下に隠してあったクレイジー・A・スペシャルを取り出して、刑事の側頭部を思い切り殴り付けた。
鉄板の仕込んである裏面でフルスイングしたので、気持ちいいほどの手応えを感じた。
「うがっ」
かずみちゃんばかりに意識が行っていたせいで、俺からの攻撃をもろに受けて吹き飛んだ。その際に近くにあった固定電話を巻き込み、床に勢いよく叩き付けられてしまった。……やばい。壊したかもしれない。
クレイジー・A・スペシャルを肩に担ぎ、空いた手でビーフストロガノフを口に運びながら、倒れた刑事を見る。
あれだけ頭にもろに食らったら普通の人間は立つことすら出来ないのだが……。
「かずみちゃんの言う通りよ。女が警察でのし上がるにはね、手柄が要るの。立花がBUY-LOTの経営者に騙されて店と土地を奪われて、復讐に駆られ、爆弾を求めている情報を教えてくれた優しい人が居たの。私はそれに乗っかった……そこのあきら君に台無しにされちゃったけどね」
まるでゾンビのようにぬるりと仰向けの体勢から不自然な動きで立ち上がる。どういう背筋してるんだ、この刑事。ぜひともその無駄な筋力を生かして筋肉番付にでも出ていてほしいところだ。
「ベラベラとよく喋るな。火曜サスペンス劇場か、アンタは」
とは言え、立花にそんな悲しい過去があったとは……やはり現世と関わりを絶ってあげたのは正解だったな。
それにしても情報提供者がいるのか……電話のあいつのことか?
俺がそれを聞く前に刑事はまた口を開く。
「情報だけじゃないわ。そいつは力をくれた。……決して証拠を残さず、人を殺す事のできる力をね」
一瞬、厨ニ病でも発症したのかと蔑みかけたが、次第に刑事の身体に起こる異変に気付き、目を見開いた。
シルエットが歪み、身体のパーツが人間から遠退いていく。まるでホラー系のクレイアニメのワンシーンのようだった。
「う……嘘~~~~~~!?」
俺の傍に居たかずみちゃんはその異様な光景に涙目で絶叫した。
俺たちの前に姿を見せたのは――三メートルを越す巨大なカマキリの化け物だった。
……近頃の女刑事はイジめすぎると、カマキリになるのか。知らなかった。
次には魔法少女が出る予定なので安心してください。
それにしても、思ったより原作沿いの構成になってしまいました。次第にあきら君のせいで原作から解離していくはずなのでしばらくお待ち下さい。