魔法少女かずみ?ナノカ ~the Badend story~ 作:唐揚ちきん
前回を読んでくれ!
グリーフシード。嘆きの種。魔女の卵。
そして、これは恐らく魔法少女の成れの果て。
俺は手に入れたグリーフシードを上着のポケットの中で弄びながら、待ち合わせの喫茶店で暇を潰していた。
待っているのはユウリちゃんだ。下手に家に来させると、プレイアデス聖団の皆さんに俺の正体がバレかねない。
ネタバラシは最後に最後でバラすのが楽しいのだ。こんなつまらないところで台無しにするつもりはない。
ユウリちゃんには変装してくるよう言い含めてあるので大丈夫だと思うが、ちょっと不安でもある。
あの子は意外とドジで間の抜けたところがあるから、下手くそな変装してなければいいが。
そわそわしてプリティに俺が待っていると、自動ドアを開き、俺の座席の脇に一人の少女が来た。
「お待たせ、あきら」
そこに居たのはクリーム色の短髪の女の子だった。頭頂部の髪が一房ほどピョコンと立っているのが特徴的だ。
「え? 誰? ナンパ? 嫌だな、俺はどこに言っても持ててしまう。イケメンは辛いぜ」
「馬鹿か、お前」
冷めた侮蔑が混じった視線と口調で俺を
「ユウリにゃん! ユウリにゃんなの!?」
「その呼び方やめろ。それとこっちの姿の時は、あいりって呼んで」
あいり。その名前は確かユウリちゃんの本当の名前だ。
だと、するとその顔も元の自分のものなのだろう。しかし、どうやって顔を変えたのかさっぱり分からない。
顔の骨格から既にいつものユウリちゃんとは別物だ。ルパン三世も真っ青なレベルでの変装に俺は舌を巻いていると、それを察したユウリちゃんはふふんと自慢げな顔をする。
「アタシは魔法で姿を変える事ができるんだ。この顔は昔の自分のものだけど、誰の顔にも変えられる」
途轍もなく、便利な魔法に俺は内心でユウリちゃんの評価を「ドジキチ魔法少女」から「使える魔法少女」へと格上げした。
というか、そんなものがあるならもっと早く教えろやボケって感じだ。
「へえ。だったら、こうプレイアデス聖団の内の誰かと入れ替わってじわじわと内部分裂とかさせられるじゃん」
「そんなまだるっこしい事できるか。それに短時間ならまだしも長い間あいつらと一緒に居るなんて耐えられる訳がない」
顔を変えたユウリちゃんは俺の前の席に座ると、そう吐き捨ててメニューを開いた。
俺からすれば宝の持ち腐れ以外の何物でもないのだが、ユウリちゃん的にはそういった小細工は嫌なようだ。
上がっていたユウリちゃん株が下落を始め、「微妙に使えなくもない魔法少女」の称号で落ち着いた。
そんなことは知らない彼女はウェイトレスにジャンボチョコパフェとフルーツシフォンケーキをちょっと楽しげに注文していた。
一昨日のあすなろドームでの一件から俺への信頼が強くなったようで遊園地でデートした時よりもフランクな反応を示している。
「それで、アタシをわざわざ呼び出したのはどういう了見?」
「まずはこれを見てくれ。……こいつをどう思う?」
ポケットからグリーフシードを取り出してテーブルの上に置く。
ノリの良い奴なら、ここで「すごく……大きいです……」と返すのがマナーなのだが……。
「グリーフシード!? あきら、お前これをどこで?」
ユウリちゃんはネットスラングには詳しくないようでさらりと流した。すごく……悲しいです。
仕方ないので俺は昨日あったことを掻い摘んで話した。サブと魔女のことについてはそれほど反応を示さなかったが、サキちゃんの記憶の一部を見たということにはかなり食い付いてくる。
「浅海サキの記憶!? それは……ユウリの事とかは!?」
ここで言うユウリはユウリちゃんの友達の飛鳥ユウリの方のことだ。
飛鳥ユウリが魔女になり、それをプレイアデス聖団が殺した時の記憶。それについては確実に聞かれるだろうと思っていたので、俺はあらかじめそこの記憶を重点的に探っておいた。
俺はサキちゃんの記憶から、ピンク色のナースキャップにマフラーを付けたフェミニンな格好の飛鳥ユウリが魔女になっていく光景を見た。
彼女の左肩に付いた緑色のソウルジェムが濁り、砕けていき、注射器をモチーフにした魔女の姿になったこと。
ジュゥべえたち妖精は魔法少女が魔女になる時に出るエネルギーを求めて『魔法少女システム』なる、回りくどい作業をしていること。
そして、それを知った海香ちゃんたちは魔法でジュゥべえの記憶を書き換え、自分たちのために働かせるようにしたこと。
それら全てをユウリちゃんに語って聞かせる。
話している最中にパフェとケーキが届いたが、ユウリちゃんはそれに手を付けず、黙々と俺の話に耳を傾けていた。
ジャンボパフェに乗ったチョコレートアイスが溶け出すまで、聞き終えた時、彼女の瞳は憎悪の炎で燃えていた。
唇を噛み締め、テーブルに拳を叩きつける。上のアイスが溶けかけていたため、パフェはバランスを崩し、テーブルから通路側の床へと倒れて中身をこぼした。
慌てて駆けつけてくれたウェイトレスがパフェを片付ける姿には目もくれず、ユウリちゃんは怒りに身体を震わせていた。
「やっぱり、あいつら全部知った上で、ユウリを……!」
「そうみたいだな。それでプレイアデスの皆さん、新しいことまで始めたんだ」
「新しい、事だと?」
気が触れそうなくらいに憎しみを押さえ、両目をかっと見開いた顔で俺に聞く。
俺は軽く頷いて、それに答えた。
「『魔法少女システム』の否定」
こいつは俺も見ていた驚きを禁じえなかった。
飛鳥ユウリのことから芋蔓式に発掘できたのは、プレイアデス聖団の涙ぐましい戦いだった。
あすなろ市の工業地帯にひっそりと佇む・テディベア博物館『アンジェリカベアーズ』。これはみらいちゃんが魔法少女の願いごとによって生まれたものなのだが、魔法少女の魔力を起動スイッチとして地下に行ける。
地下にあるのは、魔法少女の肉体とソウルジェムを切り離し、休眠状態にして保管するその名も『レイゾウコ』。
いやー、ぷかぷか円筒形の水槽の中に裸の女の子が浮いている映像を見た時は、もうヘブン状態だった。最高のおかずになりました。大変ごっつあんです。
「でねでね、下の毛まで見えで……」
「いいから話を続けろ。それと……そういうの、見るな」
なぜかむかっとしているユウリちゃん。さては焼き餅を焼いているな。可愛い奴め。
しかし、話を遮るも無駄なので普通に喋り続ける。
魔法少女の肉体が入った『ケース』が置いてある部屋の中央にソウルジェムを纏めて置いてある台座があって、そこでソウルジェムを休止させていた。
「そんで魔女を減らすために魔法少女狩りをして、その『レイゾウコ』ってとこに押し込んでるらしいね」
「偽善者気取りのプレイアデスらしい。汚らしい行為だな」
「まあ、飛鳥ユウリの件から必死で考えたことだからな」
それとユウリちゃんには言わなかったが、実は嘘を吐いた。
一つは飛鳥ユウリが魔女になる前から、サキちゃんは魔法少女が魔女になることを知っていた。最初にプレイアデス聖団が目撃した魔女なった魔法少女は――和沙ミチル。かずみとまったく同じ外見を持つ女の子。
飛鳥ユウリのことから掘り返せた記憶は芋づる式に和沙ミチルへと繋がっていた。ジュゥべえを逆に利用し始めたのはその時が最初だ。
だが、そこからの記憶の映像はまるで規制でもかかったように見ることができなかった。
きっとそれが和沙ミチルとかずみちゃんの関係の秘密だ。それほどまでにこの記憶はサキちゃんにとって思い出したくない記憶だったのだろう
この記憶を見るにはもっともっと、呼び起こすための刺激が必要だ。
もしくは他のプレイアデス聖団のソウルジェムを食べて、見られない記憶を補完するか。
そうだ。ソウルジェムで思い出した。
俺はユウリちゃんに一つお願いをする。
「ねえ、あいりちゃん。ソウルジェム見せてよ」
「? まあ、いいけど……ほら」
あっさりと自分の命とも言えるソウルジェムを俺に渡す。つくづくアホな子だ。どんだけ俺に対する信用厚いんだよ。
俺は彼女からピンク色のソウルジェムを受け取り、テーブルの上のグリーフシードと見比べた。
やはり似ている。ソウルジェムの表面が削れたら、グリーフシードそのものになる。
二つをくっ付けてみると、ソウルジェムの表層が膜のように割れた。
「え? ええー!?」
薄い膜の下は黒く濁ったソウルジェムが顔を出す。
目を丸くしている俺とユウリちゃんの前でその濁りがまるでグリーフシードに吸い込まれるようにして、ソウルジェムが輝きを取り戻していく。
グリーフシードが濁りを吸い取った後には綺麗にソウルジェムが光っていた。
「これ……」
「そうだな、つまりは――」
俺とユウリちゃんは揃って同じ台詞を吐いた。
「「ジュゥべえの浄化は完璧じゃない」」
いや、もっと根本的にジュゥべえはソウルジェムを濁らせることを目的としていた訳だから、本来浄化は奴の役割じゃなかったはずだ。
こちらのグリーフシードによって、ソウルジェムを浄化することが正攻法だったのだ。
「ねえ、このグリーフシードの浄化機能ってあいりちゃんは知ってた?」
「いや、こんな事アタシは知らなかった……」
ジュゥべえが教えなかったのか。それとも――。
考え込むユウリちゃんはにやりと笑う。
「アタシのソウルジェムと同じように、プレイアデスの屑共も表面上を綺麗にして魔女化の爆弾を抱えている訳か。傑作だな。偽善者顔をしたあいつらにはピッタリだ!」
確かにそれは正しい推察だ。
プレイアデス聖団の魔法少女はジュゥべえの浄化を完璧なものだと考えているようだったが、綺麗になっているのは見た目だけで濁りは――魔女化の危険性を孕み続けている。
ちょっと押せば、きっと簡単に地獄が作り出せるだろう。
*
まあ、それは後の楽しみにするとして、俺はユウリちゃんと一緒にテーブルに置かれたケーキを食べた。ちなみに会計は俺が全部払った。財布はさほど傷まなかったのはパパがたくさんお金を振り込んでくれるからだ。パパ、マジ感謝。
その後、喫茶店から出て、俺たちはある場所へと向かう。
「アンジェリカベアーズとかいう博物館に行くんだな?」
「残念。それはもう少し後。今向かうのは――精神病院だ」
「……もうあきらの精神はそんなところに行っても無駄だと思うぞ?」
「違うって! 何その哀れむような顔! 心外なんですけど!!」
哀れみに満ちた顔のユウリちゃんに俺はひむひむに忘れ形見の妹が居ることを歩きながら話した。どこの病院に居るのかまでは知らなかったが、取り合えずはこの街で一番大きな精神病院を訪ねることにしていたのだ。
理由は特にない。それどころか、行くことにはデメリットしかないのだが、あいつの妹がどうしているのか気になったのだ。友達の妹を気にするなんてやっぱり俺は天使だな。
あすなろ精神病院という大きな私立の精神病院まで俺たちは来た。
受付で氷室という名前の患者が入院しているのか尋ねると、『氷室美羽』という十四歳の女の子が入院していることが分かった。
そこで適当な偽名を使い、ひむひむの妹と面会を申し込んだのだが、話の分からない受付のナースは俺たちをひむひむの妹を会わせてくれようとしない。
「なぜ、俺たちを美羽ちゃんと会わせてくれないんですか!? 彼女の兄に頼まれて俺たちはここまで来たんですよ!!」
「いえ、当病院ではアポイントメントない方はご家族の方以外はご遠慮させてもらっているんです。それに何より氷室さんは心が不安定で面会ができる状況ではありません。今日のところはお引取りください」
「俺は彼女の
「!!?」
即行で思いついた嘘を吐くと、隣に居たユウリちゃんは凄まじく驚いていた。
それには一切構わずに、嘘に塗れた駄々を散々捏ねまくっていると、俺に後ろから声が掛かった。
「あの、もしかして氷室さんのお知り合いの方ですか?」
俺の後ろには電動の車椅子に乗った女の子が居た。
腰まで届く黄色のウェーブ髪とピンク色の瞳を持ったその少女は無機物特有の光沢を持った両手両足をしていた。
それは義肢だった。手足の付け根の辺りから四肢が全て金属でできているようだ。
俺は彼女を見て、一瞬言葉を失った。
「あ、ひょっとして驚かれましたか? わたくしの手足を見ると皆さんそういう反応示すんです」
「……おっぱい」
「はい?」
「おっぱいでっけぇ!?」
その義肢の少女の胸は俺が見た中でトップクラスの大きさを誇っていた。里美ちゃんの胸も大変大きかったが、こちらはそれ以上かもしれない。
あまりのおっぱいの大きさに戦慄を覚えていると、いきなり側頭部に痛みが走る。
「痛っ……」
「この、スケベ馬鹿が!」
ユウリちゃんに思い切り拳で殴られたようだ。
いきなり人に向かって暴力を振るうなんて、信じられない。他人に暴力を振るのは人間として最低の行いだ。
俺はユウリちゃんを睨み付けるが、彼女はフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
ユウリちゃん、あいりちゃんの姿になっても胸は小さいから地味に胸に対してコンプレックスを持っているみたいだ。
義肢の少女はそんなやり取りを見て、クスクスと口元を押さえ上品に笑った。
「面白い方たちですね。申し送れました、わたくし、二条院愛子と申します」
義肢の少女改め、愛子ちゃんはそう名乗った。
「俺は吉田かずき。こっちは杏里あいり。愛子ちゃんは美羽ちゃんのこと知ってるの?」
「ええ。よく存知上げております。わたくしは時々、患者さんたちと交流取っているので」
愛子ちゃんのその言い方に俺は違和感を感じた。「他の患者さん」なら分かるが、「患者さん」だけだとまるで自分は患者ではないように聞こえる。
ひょっとしてこの子は患者ではなく、病院側の人間なのか。
「愛子ちゃんて病院の関係者なのか?」
「そうですね。関係者というほどではありませんが、父がここの院長をやっているので患者さんと交流しているに過ぎません」
それを聞いて俺は日頃の行いの良さが人生を決めるのだと確信した。
権力とは即ち、無理を押し通す力。彼女に頼めば、ひむひむの妹に会うのも難しいことではない。
「そうなのか!? なら、愛子ちゃん。俺たちを美羽ちゃんに会わせてくれないか? 俺は美羽ちゃんの許婚で、こっちのあいりちゃんは美羽ちゃんの大親友なんだ。頼むよ」
俺はそう愛子ちゃんに両手を擦り合わせてお願いした。
彼女は少し考え込むような素振りを見せた後、快く頷いてくれる。
「分かりました。確かに今氷室さんは不安定な時期ですが、大切な知り合いとお会いすれば彼女にもプラスに働くでしょう」
こうして、俺たちは権力という後ろ盾を通して、ひむひむの妹に会わせてもらえることになった。あれだけ鉄壁のお断りオーラを放っていた受付もそれには逆らえず、病室の場所を教えてくれた。
精神病院とあったから、てっきり鉄格子なんかあるのかと思っていたが、中身はホテルのような清潔感のある空間になっている。
電動の車椅子が先導して動く様はとてもSFチックな印象を俺に与えた。
愛子ちゃん曰く義肢を動かせば、普通の人のようにも動けるらしいのだが、バッテリーを非常に食うため、運動をする時以外は車椅子に乗っているのだそうだ。
とある一つの部屋の前まで来た愛子は車椅子を止め、振り返って俺たちに言った。
「ここです。この部屋が氷室美羽さんの病室です」
ネームプレートのようなものないその扉を勝手に開けると、俺はその中へとずかずか入っていく。
「あ、ちょっとお待ちを」
愛子ちゃんの制止を無視し、病室の中に足を踏み入れた俺はリクライニングさせたベッドに寝そべる少女を見つける。
俺が入っていたことにもしばらく気付かず、嵌め殺しの窓の外を眺めていた彼女はふと何気なくこちらを向いた。
「誰……あなた?」
その顔立ちはひむひむに似ていたが、彼女が持つ雰囲気があまりにも違いすぎてとても双子の妹には見えなかった。
綺麗な金髪だっただろう髪はところどころ白髪が混じってマーブル模様のようだった。整えていないその斑の髪は長く毛先も寝癖でボサボサになっている。
瞳が大きい童顔にも関わらず、その表情はあまりにも疲れ果てていて実年齢よりも老けて見える。
「アンタのお兄ちゃんのお友達さ」
「あれの友達? じゃあ、あなたもまともじゃないのね」
「いや、俺はまともだよ? ていうかあんな変態血液フェチ野郎と一緒にすんな」
ひむひむに虐めれて心を病んだと聞いていたが、美羽ちゃんは兄のことに恐怖も怒りも感じていない様子だった。
白髪混じりの金髪を掻き上げる彼女はもはや、兄のことなど興味すらないように見える。
「それで? わざわざそのお友達がわたしを訪ねてきた理由は?」
「アンタのお兄ちゃんね、ちょっと不慮の事故で死んじまったんだよ。今日はそれを伝えに来た」
後ろで愛子ちゃんが俺の言葉に難色を示したが、ユウリちゃんがそれを押し留める。
美羽ちゃんはその生気のない碧眼で俺をじっと観察すると、「そう」と一言だけ言うと再び、窓の外を眺め始める。
「それだけ? 何か他にないのかよ? 身内が死んだだぜ? あ、それとも俺のことを疑ってる?」
「別にあなたを疑っている訳じゃないわ。あれが死んだのが嘘でも本当でももうわたしには何の関係もないだけよ。……どうでもいいわ。世界の全ての何もかもが」
「ほう。面白いな、美羽ちゃん」
退廃的な雰囲気を醸し出す美羽ちゃんは静かで儚く映った。
何より兄と違って知性的だ。気まぐれで訪ねたわりに面白い人間と出会えた。
「じゃあ、俺はどう? 俺もどうでもいい?」
「あったばかりの相手にどうもこうも……」
ベッドに近付いた俺は美羽ちゃんの白い病院服に手を突っ込んだ。
身体を硬く強張らせた彼女は瞳を大きくさせて驚いた。光の瞳には感情が宿る。
美羽ちゃんのブラの下を剥がし、その裏にあった膨らみかけの胸を揉む。
「い、いやっ……」
ドンと俺を突き飛ばし、胸元を隠すようにして睨む美羽ちゃんの瞳は涙ぐんでいた。
それを見て、下卑た視線共に嘲笑う。
「何だ。世界の全てと大きく出たくせにおっぱい揉まれりゃうろたえるのか?」
笑っていると背中に凄まじい衝撃を受けて、吹き飛ばされた。
「な、な、な、何やってるんだ、お前は!?」
どうやらユウリちゃんに蹴り飛ばされたらしい。床をごろごろと無様に転がって壁に激突して止まった。非常に痛かった。
顔を真っ赤にして怒るユウリちゃんの後ろで心配そうに車椅子で近寄る愛子ちゃんが見えた。
「だ、大丈夫ですか? 氷室さん!? ごめんなさい、あんな人だとは思わずに……」
「ううっ……」
涙目で悔しそうな表情をした美羽ちゃんは愛子ちゃんに抱きつき、横目で俺を睨んでいた。
さっきのクールに振る舞っていた人間とは思えないほどの取り乱しっぷりだ。
「ふっ……ずばりBカップと見た」
「うるさいっ、ばか!」
病室内に美羽ちゃんの俺に向けた罵声が轟いた。
皆さんがやたら渇望していたキャラ、氷室美羽を登場させました。
ちなみに今回登場した二条院愛子はゆぅKさんが考えてくれた読者応募キャラです。
初登場でしたが、美羽にインパクトを持っていかれてしまった感が否めません。