うちは一族のレッドアイズ・ブラック・ブレット   作:gurasan

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うちはの里アルバイト職員募集のお知らせ

 

 

 仕事内容

 昼間はうちはの里にある校舎で学習指導や体育指導。夜間は宿舎での学童保育や里の見 回りをしてもらいます。昼間か夜間のどちらかだけでも結構です。どちらもある程度の戦闘技能が必要となる場合があるのでご注意ください。

 

 募集形態

 アルバイト職員

 

 勤務先企業

 東京警務部隊

 

 勤務期間

 短期でも長期でも大歓迎。契約は一月毎の更新となります。

 

 休日・休暇

 交代制。週1~シフト自由で働けます。

 

 勤務時間

 一日二時間(2コマ)から。ガストレア出現など民警としての仕事が入った場合はそちらを優先して戴いて構いません。

 

 経験・資格

 民間警備会社で働くプロモーターの方。イニシエーターがご一緒でも構いません。序列問わず大歓迎です。

 

 待遇

 時給2000円。一月ごとに昇給を審査します。

 服装・髪型自由。ただし子供の教育に悪い恰好はNG。口布を巻き、背中に大剣を背負う程度までなら大丈夫です。

 朝食・昼食・夕食は支給されます。

 交通費の支給はありません。

 研修・サポートあり。最初は副担任のように補佐となるので指導経験のない方でも安心してご応募下さい。

 宿舎への寝泊まりは可能。ただし一月の勤務時間が120時間を超える方のみとなります。

 

 

「それはなんだ?」と将監はカガリが印刷した求人広告を見て言った。

「求人広告。最近、人手が足りなくなってきてね。人を雇おうってことになったんです」

 うちはの里創設から数年。創設時には100人強だった子供達は四百を超え、学校一つ分にまで膨れ上がった。現在、うちは一族総出で対応しているが、他の仕事もあり、影分身を使わなければとても手が回らない。

「プロモーター限定なのはなぜだ?」その中途半端な影分身と完璧な水分身をカガリに伝授した将監が問う。ほとんどのプロモーターは彼自身を含めてモラルの欠片もなかったりするので当然の疑問だろう。

「ある程度強くないと死んじゃうかもしれませんし」

 保護した呪われた子供達の中には自分の持つ力を上手くコントロールできないものもいる。さらにうちはの里の周囲では反ガストレア主義の人間によるデモ活動が毎日のように行われ、一部過激派によるテロ紛いの活動も行われていた。

 どちらの場合でも最低、生き残れるだけの実力は欲しい。そこでプロモーターの資格を持つ者に頼もうというわけだ。

「それに黒い噂が絶えないので、門出を開けておこうと」

「いっそのこと民警に依頼として出したらどうだ?」カガリの背後で将監はにやにやと笑みを浮かべながら言った。

「あー。たしかにそっちの方がいいかもしれません」

 

 こうして民警へと依頼がなされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 うちはの里は外周区ではないものの東京エリアの片隅にある。それがどういう事態を招くかといえば。

「朝ごはんを貰うためとはいえ、五時出はきつい」交通費節約のため、自転車を漕ぎながら蓮太郎は言う。目元の隈と半開きの眼のせいでいつもより悪人面に見える。その背中に延珠が寝息を立てながらしがみついていた。

 現地集合と言われ、木更はどうやって行くつもりなのだろうかと彼は思っていたが、そんな考えに反して木更はうちはの里に続く巨大な門の前で仁王立ちしていた。

 さらに彼女と門の間にはうちはの家紋が描かれた服を着た男が立っている。

「遅いわよ。里見くん」

「どうやってきたんですか?」

「連絡して頼み込んだら迎えに来てくれたわ」

「天童としての最後のプライドがどうとか言ってなかったか?」

「それはミワ女に通うってことだけよ。ご飯を貰うためなら泣き落としでも平気でやるわ」

「俺も他人のことはいえないけど、少しは自重してくれよ」

「私だって相手ぐらいは選ぶわよ」

「はいはい、そうですね。ほら、延珠。もうついたぞってあれ?」

 気づけば後部座席とは名ばかりの荷台で蓮太郎の背中にしがみついていた延珠がいなかった。

「里見くん。まさか今度は報酬じゃなくて延珠ちゃんを忘れてきたわけじゃないわよね」

「ははっ、そんなわけないじゃないですか」日和った蓮太郎は途中で落としてきましたとも言えず、渇いた笑みと冷や汗を浮かべた。

 しかし、嘘とは儚い物。

「蓮太郎! フィアンセの妾を捨てるとは何事だ!」

 物騒な言葉を叫びながら跳び蹴りかましてきた延珠によって嘘はブレイクされ、蓮太郎はくの字になって吹っ飛び、九の字になって蹲る。

「これで全員揃いましたか?」我関せずと目の前のコントをスルーしたうちはの男は木更へと問いかける。

「ええ。揃ったわ」

「では門を開けますので少々お待ちください」男はそう言うとうちはの家紋が描かれた門に両手を置き、渾身の力を込める。

 その時、蓮太郎たちはまるで得体の知れない何かがプレッシャーとなって男から放たれているように感じた。

 音を立ててゆっくりと扉が開き、その扉の異常な分厚さが明らかになる。見上げるような高さと相まって、一体何キロあるのか想像できない。

 そんな疑問が顔に出ていたのか「片方500㎏です」と男は言う。

「この羅生門を開けるのに必要なのは鍵ではなく単純な力のみ。これを考案した倅のカガリは片方2tにしようなんて言っていたのですが、それでは一族の者でも開けられないので軽くしました」

 2tとかどんだけ怪力なんだよと蓮太郎は思ったが、2tはカガリでも無理である。彼はただハンターハンターのゾルディック家を再現したかっただけなのだ。

 

 

 四人全員が門を潜り、男が手を放すと門は一人でに閉まった。

「塀を超えた方が早いんじゃねえか?」

「外部の人間がそれをやると番をしている者に食い殺されます」

「は?」蓮太郎はつい素の返事を返してしまい、すぐにすいませんと頭を下げる。

「驚くのも無理はありません。でも事実です。もうすぐ来るでしょう」

 男の言葉通り、すぐになにかがやってきた。

 それは狼のような姿をしたガストレアであり、その赤い瞳には写輪眼のような三つの勾玉模様が浮かんでいる。身体は墨を染み込ませたかのように黒く、その上から筆で描かれたような赤い文様が走っていた。そして、時折足元から火の粉が立ち昇っている。

字面だけみれば格好良さげな姿に思えるが毛並みはふさふさモフモフというよりは老いた猫のようにしんなりしていて、光沢もないためチョイ微妙。

 とはいえ明らかに特殊な能力に目覚めたガストレア。

 蓮太郎はすぐさま戦闘態勢をとろうとするが、男がそれを制す。

「彼が門から入ったあなた方を襲うことはありません。あくまで排除するのは不法侵入者だけです」

「そんなことが可能なの?」木更が問う。

「カガリだけでなく一族の者が複数で制御しているので一族が滅びない限り問題ないでしょう。こうやって近くにいる分には感染もしません」

「一体どうやって」

「それはお教え出来ません」

 その赤い目には明確な拒絶が現れていた。

 しばし、二人の間でにらみ合いが続く。

「一つ言えるのは彼も同じうちはということです」

 それはつまりガストレア化した同胞を番犬として飼っているということ。

「殺してやった方がそいつの為なんじゃないのか?」

 蓮太郎の言葉に男は一度眉を潜めたが、それだけだった。

「それは当人と遺族が決めること。それに私達はガストレアとしての本能を抑え、理性を保ち、行動の指針を与えているだけ。簡単な意思疎通も可能です」

 男が合図を送ると、そのガストレアは去っていく。どういう仕組か蓮太郎には分からないがガストレアを制御しているのは本当らしい。

 木更はなにか思案するように目を細めて、去りゆくガストレアの後ろ姿を眺めていた。

「他にも何人かのガストレア化した一族が里を守っています。ここにいれば出会うこともあるでしょう。一先ずは応接間に案内しますので付いて来てください」そう言って男は歩き出す。

 蓮太郎はその後を追いながらも木更に目を向けた。

 イニシエーターとプロモーターが行方不明になったのはこれが原因なのではないかと目で語る。しかし、木更はまだ断定は出来ないとばかりに首を振った。

 一方の延珠は男に話しかけていた。

「頼めば背中に乗せてもらえるだろうか?」

「目の前でお辞儀をして、お辞儀を返したら乗ってもいいという合図だ。機会があったら試してみなさい」

「うむ。分かった!」

 蓮太郎は無言で延珠の頭を小突いた。

「む、なにをする?」

「いや、なんとなくだ」

「蓮太郎。お主まさか、DVに目覚めたのか!」

「馬鹿なことを言うな!」蓮太郎は再び延珠の頭に拳骨を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪しい仮面男と対峙した日の夜深く、カガリは七夜の体術を教えるべきかどうか父に相談していた。

「確かに獣拳のような動きはあの子たちと相性がいいかもしれない。いや、おそらく既存の獣拳よりも獣染みたより強力なものになるだろう。だがそれは常に力の解放を強いる技だ」

「でも、あいつらを見ていると力を使わなさ過ぎるのも辛そうに見えるんだ」

 呪われた子供達は身体能力が高いとされているが、真に注目すべきはその成長速度だ。成長限界点に達するまでは飛躍的にその能力を向上させる。しかし、それはガストレアに近くなっているということでもあり、手放しで喜べるものではない。

 だが、自らの成長を目に見える形で体感できるのは途轍もなく楽しく、面白いのだ。カガリもアカデミーで忍術を教わったときは早く実践したくてたまらなかった。今でもフィクションの技などを再現する際はどうしてもテンションが上がってしまう。

 だからこそ、力を使いたくなる気持ちはよく分かる。それが知識的なものではなく肉体的なものならば尚更だ。

「たしかに力を抑えて生きるのは息苦しいだろう。子供ならば尚更だ。だがしかし、私達が暗殺術たる術を護身術として教えているのは第一に己の命を守るため。

 第二に無用な争いを避けられるよう隠密と逃走術を身に着けさせるため。

 第三に戦闘を強いられても力を使用する時間を短くし、傷を負わないようにするため。

 故に鍛錬も私達と違い、力の解放を必要としないもの、また瞬間的に力を発揮するものがメインとなっている。加えて肉体の治癒を促すような筋力トレニーングはやらせていない。

 お前もガス抜きに遊びとして全力の鬼ごっこなり、缶蹴りなりを行っているのだろう?」

「まあね」カガリは頷いた。

「だがまあ、私達が知る分には問題ないだろう」

「えっ、父さんも『極死・七夜!』とかやりたいの?」

「……」

「沈黙肯定と判断し、ってちょっと待って、もげる。首もげるから!」無言のアイアンクロウからの捻じ曲げによりカガリは悲鳴を上げた。

 

 

「というわけで七夜の代表的な技を教えようと思う。あくまで俺がアレンジしたものだから改善点や気になる点があったらどしどし言うように」アイアンクロウから一夜明け、うちは一族の従妹であるクヨウの前でカガリは言った。朝練として日の出ともに彼女を起こして、演習場に行くのがカガリの日課である。

「まず七夜とは?」

「今は亡き一族に伝わる暗殺術だそうだ。動きの肝はチャクラで身体を強化することにあるから基本的にうちは流と変わらない。ただうちはのように特異な力を持つ人間を殺す目的で編み出された技のためオーバーキル感があるかもしれんがな」

 最終形の極死・七夜死式なんて一度に背骨、首、頭、心臓を破壊する技であり、吸血鬼が相手でもない限り使い道はないだろう。というより、死式は某格闘ゲームにも登場していないため、見た目どういう技か分からず、カガリもマスターしていない。

 そう、七夜の技を再現する際、最もお世話になったのがその某格闘ゲームでの動き。それでもよく分からない技もある。

 例えば『閃走・六兎』は相手を蹴り上げつつ、空中で多段ヒットさせているように見えるが、概要だと瞬時に六発の蹴りを同じ箇所に叩き込む技となっており、試行錯誤の末に何故かトリコの釘パンチならぬ、釘キックになってしまった。

 その点、『八点衝』は分かり易く、ひらすら相手を斬りつければいいという、手数で勝負する乱の技。

 手数を増やすというのはシンプル故に極めればそのまま奥義となる。相手の攻撃を封殺し、殺しきる。いわばガード固めからの削り十割。居合のような一撃を極めるものとは対を成す技だろう。

 そんな技の数々を披露したカガリに待っていた言葉。

「見栄えはいいですけど、暗殺術っぽくないですね」

 格ゲーを参考にしたから仕方ないね。とは言えないカガリ。よくよく考えれば格ゲーは真正面からのタイマンが基本。もうすでに暗殺の前提が崩れている。

「でも格好良いだろ」

「はい。恰好良いです」

 相手が十歳の子供で良かったとカガリは思った。

「それじゃあ、次は螺旋丸を教える。写輪眼でチャクラの流れを良く見て動きを真似るといい」

 カガリが仕事をしながらとはいえ、修得に一年かかった技だ。さすがは形態変化の極致の一つ。ちなみに性質変化を加えるのは途中で断念している。

 カガリとしては千鳥や雷切の方も憶えたかったのだが、螺旋丸と違って印が必要となる。つまり、覚えていない。将監なら雷切を食らっているので知っているかと思ったが、露骨に嫌そうな顔をされたのでこちらも断念した。

「はい、兄さん」

 クヨウの瞳に映る文様が万華鏡のように変化し、カガリの持つ写輪眼とは異なる曼荼羅のような文様が浮かび上がった。瞳孔は黒目のまま、周囲を囲む虹彩に八つの円が描かれている。

 そう彼女は万華鏡に目覚めているのだ。

 曼荼羅は仏教において宇宙を含む世界を表すとされているが、彼女の万華鏡に宿った力も宇宙っぽく重力関係である。

 無理矢理ナルトで例えるならば輪廻眼の天道が使う神羅天征と地爆天星だが、他の漫画で例えるなら金色のガッシュベルのバベルガグラビトンとディオガグラビトンに近い。

 右目は眼に映る範囲内にある全てを重くして押し潰しているのか、神羅天征のようになんらかの力で押し潰しているのか分からないが、どちらにせよ広範囲を押し潰す力を持つ。

 一方の左目は目に映る範囲を小さく圧縮するという恐ろしい力を持っている。

 どちらにせよ、一度ずつしか使わせていないため、詳細は分からない。須佐能乎が使えるかも不明だ。カガリ達としては失明を避けてもらいたいので使用は禁じて他の技術を教えている。

 そして、彼女はうちは一族であると同時に呪われた子供達でもある。そうでなければカガリは見つけられなかっただろう。

 カガリが彼女を保護した時、彼女は一人で血の涙を流し、瓦礫の上で蹲っていた。

 一体どんな経緯で生まれ、万華鏡を得たのかはカガリも知らない。ただ、愛を知りながら、愛を失ったのだろうとカガリは漠然と思った。

 そうして保護したばかりのクヨウは半ば人間不信となっており、カガリや一族の者、他の子供達が根気強く接し続けたことで近年ようやく心を開くようになった。

 なかでも万華鏡のことを唯一知っていたカガリは彼女の教育や指導を任されており、そんな彼にはよく懐いていた。

「いくぞ、螺旋丸」

 カガリの手の平に高速で乱回転する小さな台風のような塊が現れる。

 その様子をクヨウは言われた通り食い入るように眺めていた。

「これが完成形だ。まずはチャクラで数字の1作れるか?」

「はい」と返事をしてクヨウは指先に数字の1を創る。そして2、3と数字を変えていく。

 ハンターハンターであった変化系の修業方法だが、これを行うことでチャクラの形態変化で重要な形を変えたまま留めるという操作を身に着けることが出来るのだ。これが出来ればチャクラを刃物のように形態変化させて斬るなんてことも出来るようになる。

 しかし、それは基礎のようなもので螺旋丸といえばあの修業しかない。

「じゃあ、今度はこれを使う」そう言ってカガリが取り出したのは水風船だ。

「これをチャクラの回転で割る」

 カガリの持つ水風船がボコボコと動き出し、破裂する。

「第一段階だからまだチャクラを留めることは考えなくていい。クヨウならすぐ出来るようになるんじゃないか?」カガリは水風船をもう一つ取り出し、クヨウに放り投げて寄越した。

 受け取ったクヨウは一度深呼吸をし、写輪眼で見たチャクラの流れを再現するように手に持った水風船へとチャクラを放出する。

 結果、一回目にして水風船は呆気なく割れた。

「兄さん、出来ました!」クヨウは先ほどまでとは違い、年相応のはしゃぎようを見せる。

「おお、さすがクヨウ。やはり天才か」

 ハイブリットなだけあって、最初こそ力の使い分けや力加減に苦労したものの、ハンターハンターの心を鍛える方の燃を基にした点の修業や水面歩行の修業によりガストレアの力を使わずにチャクラだけをコントロール出来るようになった。

 特に『点』とは心を一つの集中し、己を見つめ目的を定める精神統一のような行。これはどの流派の武術にも似たようなものが存在し、ガストレアの力をコントロールするため呪われた子供達にも行わせている。

 また、その気になればガストレアの力も使えるため、潜在能力では先祖返りと呼ばれてきたカガリを大きく上回るだろう。今でさえカガリが勝っているのは知識と経験、技術の三つだけ。技術に至っては写輪眼で模倣が可能なため年内にも並ばれてしまうかもしれない。

「そんな、天才なんて。私は真似しているだけで兄さんみたいに技とか考えられませんよ?」

「うん、まあ、そう、かもしれなくも……ないな」

 カガリの言葉にクヨウは首を傾げる。

 自分が考案したものではないのに自分の功績とされるのはなんとなく罪悪感を抱いてしまうカガリ。さっさと次の段階に進んでうやむやにすることに決めた。

「次はさっきと同じ要領でゴムボールを割る」そう言ってカガリは今度はゴムボールを一つクヨウに渡す。

 クヨウは先ほどと同じ要領でチャクラを込めるが、今度は割れなかった。水風船に比べるとゴムボールの強度は段違いに高いのだ。

 第一段階の目的がチャクラの流れを操作することなら第二段階の目的は放出するチャクラの出力を上げること。

「むっ」クヨウから不満げな声が上がる。

「まあ、日が暮れるまでには出来るようになるさ。ちゃんと朝ごはんと昼ごはんは食べるんだぞ」カガリはそう言い残してその場から去ろうと歩き出す。

「えっ、どこ行くんですか?」クヨウは慌てて手に持ったボールをカガリ目掛けて投げつける。

「ちょっと新しいバイトの面接をしないといけないからな」カガリはそれを難なく掴み、クヨウへと返した。

「見ていてくれないんですか?」クヨウは恨みがましそうな目でカガリを見つめる。

「しょうがないな」

 溜息を吐いて近づいてくるカガリにクヨウは顔を綻ばせるが、カガリはそんな彼女の額を人差し指と中指で小突く。

「許せクヨウ。また今度だ」カガリは内心のドヤ顔を表に出さないようにクールを装ってその場から去る。幾度も繰り返してきたことだが、カガリは未だに飽きていなかった。

「むぅ」と後ろからクヨウの不満そうな声が聞こえ、カガリは微笑ましい気分でその場を後にした。

 




 あんまり当てにならなかった次回予告

 天童民間警備会社一行はとうとうカガリ(仕事モード)と出会う。

「お待たせしました。私がうちはカガリです。まずは……」
「ご飯にしましょう」
「依頼の説明を……」
「ごはんにしましょう」
「……今から用意させますので少々お待ちください」
「やった」
「木更さん、あんたすげえよ」蓮太郎は呆れ顔で言った。




 ノリでラスボス風な雰囲気を醸し出すカガリとそれに立ち向かう蓮太郎。
 
「この眼をもってすればガストレアの掌握など造作もない。いづれはゾディアックすらも掌握してみせよう」
「お前は一体なにが目的なんだ!」
「知れたこと。これからは私が天に立つ」
「天、だと? まさか聖天子様の座を奪おうってのか!」
 

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