機動戦士ガンダム00AGE 【劇場版ガンダム00×ガンダムAGE(四世代目)】   作:山葵豆腐

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AGE小説版発売されましたね
即日買いました。プロットの大幅変更あるかもです
というか、ありました(笑)
それではどうぞ


その5

 四方をダークグレーに囲まれたカタパルトデッキへ、アリサの乗ったガンダムは移動する。途中、上下左右と後ろから黄色い光が照射された。

『ガンダムAGE‐V、ゲイジング完了しました』

 

 

 オペレーターの声とともに、カタパルトデッキへ降りていく機体。これはゲイジングシステムと言って、発進前に機体の各所をチェックして致命的な整備不良が無いか確認するシステムのことだ。これにより、MSが整備不良によって戦場で爆散する確率が下がり、機体の詳細なデータを戦術データに組み込むこともできる。百年前に、ディーヴァにて試験運用された時から使われている、革新的な技術の一つだ。

 カタパルトに移動したガンダムは、両足を固定される。アリサはコックピット内で機体の起動確認を行う。いくらゲイジングシステムによって安全が確認されても、やはり最後はパイロット自身の手で確認しなければならない。

 

 

「酸素濃度正常値を維持、オートバランサー正常稼働、反応炉異常なし、各部関節稼働率百%、エネルギー出力異常なし、パワーゲイン誤差範囲内で変動中、戦術データ送信機能異常なし、AGEシステム正常稼働、システムオールグリーン……いけます」

 

 

 ヘルメット越しに浮かぶアリサの表情は、いつもより硬かった。戦場に出るのだ、当たり前と言えば当たり前だが、それでも……。

『正面切ってのMS戦は初めてか?』

 

 

 艦長の温かな声が聞こえてくる。

「いえ……二年前に経験しました」

『そうか……すまないな。俺の判断ミスのせいで……』

「あの状況なら仕方がありません」

『そう言ってくれると助かる。旧式MSとはいえ相手はXラウンダー専用機だ、油断するなよ』

「了解!」

 

 

 ジェイナスとのやり取りの最中、もう一つの回線では言い争いが続いていた。その回線を開いていないはずのアリサにも聞こえてくる(艦橋全体に響いているため)ほど、怒鳴り声が交差しているようだ。

 

 

『うるさいです! もう乗り込みましたし、カタパルトに降りています! セツナ・M・ヒジリナガ、カラ―シ……―――』

『だッかッらッ! なんで一般人が艦長の許可なしに、MSなんかに乗っているんですか! 犯罪ですよ、わかっているんですか!?』

『私は天才です!』

『ンなこと知りません! 今すぐ、カラーシュから降りてください!』

『あーーーもうッ! カタパルト展開しないと、ドッズライフルでカタパルトハッチ焼いて、無理やり発進しますよ!?』

『軍法会議ものです!』

『アリサを守るためなら、軍法会議上等です!』

 

 

 ガンダムのコックピット内で呆れかえるアリサ。

「はぁ……あの子、時々暴走しちゃうんですよね……とほほ」

『まぁ、そーだな。ここまできたら、無理やり降ろすわけにもいかないか。セツナ・M・ヒジリナガに出撃許可を出す!』

『艦長!?』

『……分かってやれ。大切な友達が戦っているのに、何も出来ない悔しさを。全責任は俺が取る。だから、お前ら―――』

 

 

 お前、と言ったのは初めてだった。それは二人を信頼している証拠なのだろう。ジェイナスは回線越しでも、二人の鼓膜に届くような声で言った。

『絶対に生き残れよ!』

「はい!」

『了解しました!』

 

 

 アレイナは皆の調子についていけずに嘆息しながらも、戦術を説明し始める。

『今現在、ゼダス二機をカラーシュ隊が相手をしているようですが、このままだと戦闘不能に陥るでしょう。それまでに、セツナさんのカラーシュが援護に回ってください。くれぐれも前に出すぎないように。ファルシアが本艦に接近しているとのことなので、ガンダムはそれの相手をお願いします』

 

 

 ファルシアのビット攻撃は、艦船に対して非常に有効な戦術とされている。単純にMS六機分の火力が、瞬時に艦船の懐に潜り込むからだ。そのため、なんとしてもガンダムが阻止しなければならない。

『シグナム隊の到着まで持ちこたえください。深追いは禁物です』

 

 

 回線は切れて、コックピットのディスプレイが戦闘モードに移行する。温かな光とともに、カタパルトハッチが開く。

「いこう、ガンダム……私たちなら、やれるはずだよ」

 

 

 相手が憎しみに囚われた残党兵ならば、それらを受け止めて浄化するだけだ。ガンダムは可能性、人の心を浄化するポテンシャルを秘めている。そう、アリサは確信していた。

「アリサ・アスノ、ガンダムAGE‐V、いきますッ!」

 

 

 双眼が鋭く輝き、純白の装甲が漆黒の空へと射出される。火花を散らせて仰々しくプリマドンナから飛び立った、人の魂を浄化するマシーン。

 この世界に何度も、希望の光を灯してきた救世主の化身が、再びその宇宙(そら)を飛翔する。




【次回予告】
 それは血の呪いか、断ち切るのは兵器か、それとも人か。
 混迷する戦場。
 その中で、セツナは蒼い流星を見た。
 次回、機動戦士ガンダム00AGE、第四話。

―――歪み、断ち斬る―――

 修羅場に降り立つのは、星の子か?

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