機動戦士ガンダム00AGE 【劇場版ガンダム00×ガンダムAGE(四世代目)】   作:山葵豆腐

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プロローグ
トレイルブレイザー00


 この世界は、いったいどこで間違ってしまったのか。

 

 

 いや違う。宇宙に存在する膨大な情報の書き換えが、様々な物質に影響を与え、生まれ、消えたのだ。

 先に行った希望は返ってこない。

 今、この時点からもう一つの世界が生まれ、禁断の果実とみなされた対話は、人類から引き剥がされた。

 世界が浸食されていく。

 希望など、そこにはない。

 否、二つ、あった。

 一人の英雄と、一人の可能性であった。

 純白の機体、かつてダブルオークアンタと呼ばれた存在は、数多の生命体との対話を通じて、兵器というよりかは、生物と表現すべきフォルムとなっていた。

 

 

 その名をELSクアンタ。

 背中から伸びる八本の流麗な触手、赤みがかった部分と、蒼い装甲部がある。事実、この機体は兵器をベースにしているものの、一種の複合生物体とも言えるだろう。ゆえに様々な生命体の特性や、彼らの持つ技術の全てを学習し、自らのものとしている。

 

 

 星一つ見当たらない〝宇宙の端〟にて、その英雄を乗せた生命体が疾駆する。眼前には、地球よりも巨大な漆黒の戦艦―――らしきもの。その楕円形の卵のようなフォルムから、とても戦艦のようには見えない。だが、ELSアンタの中にいる英雄にとっては、遠い過去の戦いの記憶から、これを戦艦と判断した。世界を歪ませる兵器の塊、それが彼にとっての戦艦であったのだ。

 

 

 空間エネルギーを粒子へと変換させて放たれた、無数の粒子ホーミングレーザーがELSクアンタに殺到する。八本の触手が翼のごとく展開し、動力炉から無尽蔵に吐き出されるエネルギーを糧に、空間ジャンプを行う。何度も、消えては現れ、消えては現れを繰り返し、レーザーを回避していく。常人の目で見れば、それはELSクアンタがレーザーの網目を抜けて、華麗に回避しているようにしか見えないだろう。しかし、この宙域に常人などいない。独りの人間性を持った生命体と、合理的な有機物の二種類だけだ。

「この世界を歪めさせてまで、貴様たちは―――として立ちはだかるか!」

 

 

 その問いに、戦艦は答えなかった。淡々と、目の前を翔ぶ機体を、排除しようとしているだけで。無尽蔵のエネルギー体が襲いかかる。虹色の光を全身から吐き出させ続けている機体が、無数に吐き出される。その光に触れてしまえば、ELSクアンタの心臓部にある〝人工的な部分〟が瞬時に、ナノマシンによって分解される恐れがあるのだ。

「……今なら、もう一度やり直せる。歪んだ世界を、俺はッ!」

 

 

 虹色の細い光が、敵の機体群から放出された。数えられないほどの光の雨が降り注ぐ。ELSクアンタは空間跳躍によって、可能な限り虹色の光を回避し、戦艦まで百メートルほどの距離まで詰め寄る。

 ここから先は、何が起こるか分からない。だが、試してみなければ、始まらない。始まらなければ、時は浸食され、彼の愛する人たちが死に絶える。だからこそ彼は微かな希望を胸に、その光を機体の全身から放出させた。

 

 

 その光は、様々な光が混ざり合った表現しようのない美しいものであった。虹色とは違い、完全に調和したそれは、まさに様々な生命体の願いを体現したものであると言えよう。

「―――――――――バーストッ!」

 

 

 刹那の光が、全宇宙を飲み込む。


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