ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

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改訂終わりついでに最新話を。といってもあくまで事後的な話ですが。
なんとか次エピソードでアインクラッド編はまとめられそうかな、と思います。
ではでは、どうぞ。


Episode6,part6

「ハチマン!」

 

 

「ササマル、大丈夫だったか?」

 

 

「ハチマンのおかげだよ。けど……ハチマン、俺のせいで……」

 

 

「気にするな。遅かれ早かれ一人くらいは間違いなく殺ってたろ。お前のせいじゃない。俺が勝手にやったことだからな」

 

 

「でも……」

 

 

「俺は、お前を助けられた良かったと思ってる。お前のせいで殺してしまったってなら、殺さなければお前が死んでたんだ。せっかく助かったんだから、そんな風には思わないでいてくれ」

 

 

全部終わって、アジトらしき場所の前で泣きそうなササマルにため息を吐いた。

戦ってる時から、よく物語とかにある興奮とかも特にない。けれど、俺のやったことは間違いではない、とも思えない。間違いとわかって、それでも選択した。

 

 

「悪いな、一人にさせてくれ」

 

 

「あ、うん。ハチマン、本当にありがとう」

 

 

「俺からも礼を言うよ。ハチマン、ササマルを助けてくれてありがとう」

 

 

ケイタとササマルに片手をあげて、俺は二人に背を向けた。

キリトは……凄いな、ちゃんと事後処理を手伝ってるのか。

 

 

「……っは」

 

 

少し離れたところで、俺は誰にも見えなくなってから木に寄りかかった。……やった。

この手で、人を殺した。血も飛ばない、消えるだけの現実感のない死だけど、それでも、俺は人を殺した。

 

 

「小町、お兄ちゃん人殺しになっちまったよ」

 

 

これで本物の外道だ。四人も殺せば言い訳もできないだろう。

誰かが肯定したって、俺が否定する。クラディールだけでもいいはずだった。それなのに他に殺したのは、間違いなく俺に殺意があったから。あいつらに対して、尋常でない不快感と怒りを感じたから。

本当に、理性の化け物が聞いて呆れる。

 

 

「ハチくん……?」

 

 

「……アスナか」

 

 

「あっち、なんか凄く騒がしくて……私はそういう気になれなくて離れてきたの。ハチくんも、ここにいたんだね」

 

 

祝勝ムードと言うか、討伐隊は勝ちに盛り上がってはいた。

ラフィンコフィンを潰せたのは確かに大きいが……向こうは10人を、こちらは5人を超える死者が出てるのは素直に喜べない。

 

 

「……ごめんなさい、まさかクラディールがあんな……」

 

 

「こっちこそ、お前のとこの人間を殺しちまって悪いな」

 

 

「ハチくんは悪くない! ハチくんが悪かったら、私は……裏切り者を連れてきて、何もできなかった私はどうなるの?」

 

 

「無理に何かをする必要もない。いいんだよ、それで」

 

 

こいつもすぐ責任を感じて重く考えてしまうタイプらしい。

俺のことは俺の問題で、誰かのせいだなんて思うつもりはないってのに。

 

 

「……お、おい、アスナ……?」

 

 

不意に、正面から軽い衝撃を受けた。アスナに、抱きつかれているらしい。

 

 

「それでも、何かをしなきゃって思うの。人を殺すとかじゃなくても、何かしなきゃって……じゃなかったら、私は自分に嘘をついちゃうから。そうしなきゃダメなの」

 

 

「そ、そうか……」

 

 

「ハチくん、キミは否定するかもしれないけど、私はキミを肯定する。キミの正しさを肯定する。もちろん、悪いことは怒るけどね」

 

 

「……お前も変わり者だな」

 

 

「これでも血盟騎士団の副団長ですから」

 

 

間近で俺を見上げるアスナは、少し泣いていたようだった。

……そろそろ、限界だな。

 

 

「さて、アスナ」

 

 

「なに?」

 

 

「離れてくれ。俺は女にこうやって貼り付かれることに耐性がない。ぶっちゃければ、こういうの、無理だ」

 

 

「ええー……そこでそんなこと言っちゃうの……」

 

 

「何を言って欲しかったんだよお前は」

 

 

「そ、それは……」

 

 

何故そこで顔をそらす。

 

 

「……まぁ、幾分か気は晴れた。俺は戻るから、離れてくれ」

 

 

「……うん!」

 

 

人殺しになってしまったことは忘れられない、が。やはりどういうことか、俺はここではぼっちにさせてもらえないらしい。

……多少は慣れてきたがな、こういうのも。

 

 

―――――

 

 

「影纏い君」

 

 

戻った先で、オウルに話しかけられた。結局、こいつは役に立たなかったな。

死ななかっただけ御の字か。死んでたら、負けてたのは俺らだった。こんなのが大将ってのがそもそもおかしいんだが。

 

 

「ありがとう、君が率先して敵を倒してくれたおかげで戦線を回復できたよ」

 

 

「誉められることじゃねぇから気にしなくていい」

 

 

「相変わらずだな、君は。にしても、血盟騎士団から裏切り者がでるとはねぇ」

 

 

「あんなもん、交通事故みたいなもんだ。今もし俺が裏切り者なら、お前は俺に殺されてるんだぞ」

 

 

「なるほど、理屈はわかる。が、周りはこれをどう評価するかな」

 

 

「……どうでもいい。じゃあな」

 

 

ダメだ、この期に及んでなお自分への評価を気にするこいつは、絶対に先になって障害になる。

……あー、しばらく刀も持ちたくないし、引きこもりたい。

いつもよりも沈んだ調子で、俺はため息を吐いたのだった。




ちょっと攻めたアスナさん。
八幡がわりと平気でいられてるなーって思った人。こういう後悔は後からじわじわ来るんですよ……多分ですが。
一つの山を終えて、アインクラッド編の終わりに向けて最後の山である軍について。
次回からこちらへも切り込んでいくので、終わりまでお付き合いよろしくお願いします。

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