ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

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出勤前になんとか……今回は現状の確認の回ですね。
細かい違いもありますので、その辺りのご容赦もお願いします。
感想は後で返しますので、ひとまずお先にどうぞです。


Episode6,part1

「ハチくん、お待たせ」

 

 

「ん、準備はできてるな?」

 

 

「もちろん」

 

 

SAOに入って二度目の誕生日を迎えて少しした頃、リアルじゃまだ夏だな。

そんな中で、俺は72層の迷宮に立ち入っていた。アスナに呼ばれ、レベル上げも兼ねて攻略を進めようとのことだった。

あと三つで例のクオーターポイント。間違いなければそこのボスは尋常ではないくらい強いだろう。

 

 

「今日はあの取り巻きいないよな?」

 

 

「当たり前です。クラディールがいたんじゃハチくん私ともまともに取り合ってくれないじゃない」

 

 

「面倒なのは嫌だからな」

 

 

キリトと以前話してから、だいぶ肩は軽くなった。

そもそも、最初に俺はここの住人として振る舞うことを良しと思って、この世界が綺麗だ。ってことだけは認めてたはずだったのにな。どうも卒業式は俺にとってそれなりに大きなものだったみたいだ。

――違うな、あいつらが俺より先に卒業してしまう。そのことが俺を追い詰めてたんだろう。我ながら、ずいぶん別人のようになってしまったらしい。

こいつらのおかげなのか、こいつらのせいなのか。

 

 

「また考え事?」

 

 

「さてな」

 

 

はぐらかされたことに頬を膨らますアスナを無視して先に歩き出す。

リアルでこいつらと会う。とやらには返答はしてはいない。それも含め、俺は全て先送りにした。

キリトのいうこの今とやらを生きることに意識を向けることにして、それらは置いておくことにする。

まだ、この理性の化け物は感情には鈍い。何故こいつらが俺にここまで友好的なのか、また俺の強さとの利害関係なだけなのではないか、なんていういつもの思考が強い。が、口に出せばサチを筆頭に説教されてしまうので、半信半疑程度には信用することにした。

 

 

「そうそう、料理スキル上げ終わったよ」

 

 

「ずいぶん早いな。もうカンストしたのか」

 

 

「思いのほか楽しくてね。ふふ、まさかこんなスキルを上げるなんて思わなかったな」

 

 

「……お前も、肩が軽くなったようで何よりだな」

 

 

「え、なんか言った?」

 

 

「いや、なんでもない」

 

 

呟いた独り言は聞かれずに終わった。いい、それでいい。

少なくとも俺の周りはこうして穏やかにはなっていってる。……問題は山積みではあるが。

 

 

「今回こそは、誰も失わないでいきたいね」

 

 

「……そうだな」

 

 

あれから68層のボスで、俺は抜刀術のユニークスキルを使った。

ダメージの通る部位が一ヶ所しかなく、一定ダメージはほとんど通さない。というユニークボスだったんだが、あまりのめんどくささに使った。そのあといろいろやっぱり面倒だったのは言うまでもない。

とは言え、今の話題は前の階層にて二刀流なんていうユニークスキルを使い、ボスを一人で討伐してたキリトだが。

どちらにせよ、まぁ面倒なのに粘着されやすくなってしまった俺とキリトである。主に軍な、軍。

あいつらは、確かに人海戦術とかで大きく貢献はしている。しているが、装備のある中層上がりのプレイヤーなんて技術はたかが知れている。軍がまた攻略に関わってから、攻略組の中に死者が出始めた。

装備に技量が追い付かないんだ。どう足掻いても限界は来る。

攻略組の中で小さな問題になりつつはあることだ。キリトが二刀流でボスを攻略した時も軍が先行してボス部屋へ行ったところ、全滅の危機にあったから、という話だしな。

 

 

「少なからず問題が出るかと思ったが、問題だらけだったな」

 

 

ひとりごちて柄に手をかける。ラフィンコフィンだってまだ活動中らしく、中層のプレイヤーがやられたりしているそうだ。

なんだかんだ、やはりクリアは早めにしないといけないのは間違いない。

 

 

「ハチくん」

 

 

「ん」

 

 

ザン。と先手の一撃を与える。抜刀術のソードスキルで一体のモンスターは倒れ、俺はそのまま後ろへ引いて、アスナと位置を交換した。

 

 

「はぁっ!」

 

 

入れ換わる形でアスナの攻撃が入り、そのままもう一体を倒して終わり。

レベル的には問題なくなってきているようだ。ここのところ、モンスターのアルゴリズムがおかしくなってきているから、尚更レベルだけでも余裕を持てるようにしておかないといけないからな。

 

 

「……それにしてもハチくんもキリトくんもユニークスキル持ちかぁ」

 

 

「アスナも持っててもおかしくなさそうだがな」

 

 

「何か条件があるのよね、きっと。それもわりと厳しめのやつが」

 

 

まぁ、ヒースクリフも俺もキリトもどこかしら極振りしてるステータスで戦ってるからな。

それに相当するアスナもユニークスキルくらい持っててもいいとは思うが……

 

 

「私はね、多分ハチくんがいるから取れないのかなって思う」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

「私も敏捷振りだけど、ハチくんほど早くない。硬さ、速さ、手数の最高峰にそれぞれユニークスキルは発動してるから」

 

 

アスナの強さは本人の技術によるところが多いのは確かだ。正確無比の突き。あれは誰にも真似できないもので、あれだけで既にユニークスキルみたいなものと言える。

キリトの反応速度も尋常じゃないしな。一回圏内でちょろっと戦闘してみたがあいつ俺の攻撃を反応して避けやがった。戦闘自体は何もなく引き分けだったが。あいつ、俺に攻撃届かないと見るや待ちになりやがったからな。俺も攻めるの止めておしまいだ。

 

 

「ま、安心しとけ。お前もキリトやヒースクリフみたいに充分化け物染みてるから」

 

 

「む、自分はどうなのよ」

 

 

「ばっかお前、俺は普通だ。ステ極振りのごり押しプレイ。ゲームとしての強みを活かしてるんだよ」

 

 

「一太刀でモンスター倒すような人がよく言うわね」

 

 

「あんなもん、首狙って振っておしまいだろ。悩むまでもねぇ」

 

 

キリトにこれを言ったら狙って首に当ててクリティカルを出すってことがどれほど難しいかを力説されたが、相変わらず何が難しいかわからん。力技で手数押しのキリトとは合わないだけなんだろう。

 

 

「さらっと簡単に言わないでよね……私だってクリティカルは狙ってても上手くできないのに」

 

 

「……そうなのか?」

 

 

「うん。ハチくんほどは無理ね。ふふ、ハチくんも充分な化け物よ」

 

 

「そうかよ」

 

 

何がおもしろいのか笑顔になるアスナを尻目に納刀して、俺は息を吐いて視線を前に向けたのだった。




キリトが原作よりも早くユニークスキルを披露しております。
あと、八幡もだいぶ険が取れています。とは言え、実はまだほとんど変わってないのでここからどうなっていくか、という話でもあります。
アインクラッド編後半戦、どうかよろしくお願いします。

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