ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

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お待たせしました、八幡側のお話です。
Kの映画を見てきました。面白かったです。
続編来るならまた見たいなー。


Episode4,part6

――side 八幡――

「でね、ハチくん」

 

 

アスナは先ほどとはずいぶん変わって楽しそうにいろいろ話している。名前の呼び方に関しては一言申したいものはあるんだが、まぁ……とりあえず終わったとしよう。

しかし凄いなハチマンパワー。こんな説教じみたことを言っても真面目に通るとは。

「ヒキタニまじきもいんだけどー」とか「あいつ何様のつもりだよ」とか言われるのが常なのにな。こうも違うのか。

……やっぱりキャラじゃないからもうやりたくはないけどな。今回はあまりにもアスナの様子がおかしかったから八幡物申す。ってやったけど。

自分の心の内を話すってのは思ったより度胸がいるもんだな。話すと確かに幾分かすっきりするが……

 

 

「……まぁ、あいつらとの予行演習みたいなもんだったってことで」

 

 

「ん? 何か言った?」

 

 

「独り言だから気にしないでくれ。で、だ。お前が落ち着いたから言うが、あのボスは正攻法じゃ倒れない。あれだけ攻撃してそれでも生きてたからな」

 

 

「うん」

 

 

「ゲームでの経験で言うなら頭を潰すとかが可能性としては高いか」

 

 

「それは二つ同時に?」

 

 

「そこはどれが正解か怪しい。まぁ、どっちも潰して損はないだろうけどな。つーわけで、その方向でやってみるか」

 

 

「わかった」

 

 

そんなわけで改めてボス部屋へ入っていく。

……おいアスナ、さっきよりなんか近くね?

 

 

「アスナ」

 

 

「なに?」

 

 

「近い、離れろ。俺はそうやって近寄られるのは苦手だ」

 

 

「却下します。今はパーティ組んでる最中なんだから」

 

 

……本当にどうしたんだこいつ。いちいち態度が変わりすぎて女まじ怖い。微妙にトラウマ刺激されるわ。

 

 

「じゃ、俺右から行くわ」

 

 

「わかった。私は左ね」

 

 

同時に駆け出して、俺は刀を抜いた。アスナもレイピアを構えてボス越しに俺と視線が合う。

 

 

「行くよ、ハチくん!」

 

 

「合図はお前に任せる。好きなタイミングでいい」

 

 

「うんっ! せーのっ!」

 

 

俺の刀とアスナのレイピアがボスの頭に直撃して、お互いの位置が交差する。

振り返ればボスは消滅していく最中で、どうやら俺達の考えは当たっていたようだった。

 

 

「さっきまでの苦労はなんだったんだかな」

 

 

「うー……悪かったわね」

 

 

「いや、別にそういうつもりで言ってねぇよ」

 

 

ボスが守っていた扉が開かれて、そこから本当のダンジョンが始まる。

実を言えばこれはNPCからのクエストであり、綺麗な山々は中腹から火山へ変わり果てて、村へ時おり災害を振り撒く。その元凶である火山のモンスターを駆除してくれというクエストで、そのボスモンスターの状況限定で落とす部位破壊ドロップがお求めの物だ。

 

 

「いやぁ、バーチャルってすげぇ」

 

 

「どうしたのよいきなり」

 

 

扉から出るとマグマが蠢く火山となっていた。暑さを感じさせないものの、正直見てるだけで精神的には暑くなってきた気がする。

 

 

「だって見てみろよ、マグマだぞ。普通こんなところ来たらどうにかなっちまう」

 

 

「それは……確かにそうかも」

 

 

モンスターも急に変わって硬そうな甲羅を背負ってたり、どう考えても炎系です! って言わんばかりの見た目に変わり、スリップダメージとかいろいろ警戒しなきゃいけなさそうだ。と俺はため息を吐いた。

 

 

「めんどくさそうだな……」

 

 

「そうね、けど大丈夫よ。私達なら」

 

 

「……お前、熱でもあるのか?」

 

 

「なんでそうなるのよ!」

 

 

 

いきなりそんなことを言うなよ。びっくりして顔そらして以降顔見れなくなっちゃうだろ。

 

 

「……でもね、さっきと違ってこうやってパーティを組んで戦ってて、凄く楽しいなって素直に思える。

今まではそう思っちゃいけないって思ってたんだけどね」

 

 

「そりゃ良かった」

 

 

そう言われれば多少無理してでも捲し立てた甲斐があったってもんだ。

……まぁ、俺はまだ卒業できてないからな、奉仕部にいるしゲーム内で問題解消してもバチは当たらないだろ。というかリアルに戻ったら雪ノ下に恩賞を求めるまである。……フルボッコにされそうだが。

 

 

「さて、そろそろ行くぞ」

 

 

「うん」

 

 

言って、それなりの速さで俺達は駆け出した。キリトに比べて足の速さは俺もアスナも速いから結構な敵をスルーしていく。

別にレベルは足りてるしな、どっちも。

 

 

「ねぇハチくん」

 

 

「あ?」

 

 

「ハチくんは、この世界を楽しんでるの?」

 

 

「……それなりにはな。リアルのことはリアルに戻ってから考えることにした。こっちを解決するまで先送りだ」

 

 

「そうだよね。うん、私もハチくんみたいに考えようかなって思う」

 

 

「あまり褒められた話ではないな、それは」

 

 

「いいの。私がハチくんみたいに考えようって思っただけなんだから。これは私が決めたことだからハチくんにも何も言わせないから」

 

 

「……そうかよ」

 

 

恥ずかしくない。恥ずかしくなんてないからな。

くっそ、やはりこの世界での俺への評価はいろいろ間違い過ぎだろ。




今回もまた短めに。
八幡としてはいたってシンプルです。元々アスナに対して何か深く思うこととかがなかったのでそれに合わせたものでした。
むしろここからが八幡はまた認識の差に(いろいろと)悩むことになるのではないかと思います。
ではでは、またお会いしましょう。

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