ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

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……明日も仕事だけど、ここは書いておかないといけない。
そんな使命感に駆られ書いている今この頃。

これからの本編でかなり重要だから、まとまってるものが暖かいうちに投稿したいのです。

では、始まります。


Episode4,part4

――side 八幡――

「……はぁ……」

 

 

翌日の昼過ぎ、木々の生い茂る山の中で俺は大きくため息を吐いた。

今ごろ卒業式は終わっただろうか。あいつら、全員卒業できただろうか。

同行者のことも含めて、俺は何重にも憂鬱な気持ちになってもう一度ため息を吐いた。

 

 

「……何よ、そんなに私じゃ不満?」

 

 

「そうじゃねぇよ。お前には関係ない」

 

 

突っかかってくるアスナを流して俺は目の前のモンスターを斬り払った。

今の俺の装備はリズベットに渡された刀だ。なるほど腕はいい。要求の低さのわりにステータスは高く、中級者くらいに好まれそうな造りをしている。

 

 

「……本当に、なんなのよ」

 

 

「俺は俺だ。お前は俺に何を抱いて、何に失望したのか知らないが、これが俺だ。あまり、過剰な期待を寄せるな」

 

 

「そうね、そうするわ。他のプレイヤー達みたいにゲームを楽しんで、リアルなんて忘れればいいんだわ――」

 

 

「――俺はっ!」

 

 

耐えきれず、大声が出た。最近慣れてきたとは言え、大声はやはりあまり好きじゃない。

悪い、なんて謝るつもりもないが。

 

 

「……俺は、今日、何もなければ卒業式だった」

 

 

「っ!」

 

 

「忘れられるかよ。なんだって、誰だって、忘れられるか。俺を知らないこの世界は住み心地がいいかもしれないが、それでも俺は…………本物が欲しかった。愚かかもしれないが、な」

 

 

だから、だからあの二人と話をするはずだった。

何がなんでも、クリアしてやるって決めた。

 

 

「攻略組の連中だけじゃない。誰だって、みんなクリアしたいと思ってるだろうよ。でもな、真っ直ぐに突き進めるのは一握りだ。

……全員が全員、お前と同じくらい強いなんて思うんじゃねぇよ」

 

 

無理矢理に会話を打ち切って、俺はアスナに先導して道を歩き始めた。

……人に対して正面から感情的に言葉を向けたのはどれくらいぶりだっただろうか。

 

 

「……はぁ」

 

 

ため息を吐いてモンスターを斬り捨てる。

だから言ったんだ、こいつとは相性が悪いってさ。

 

 

―――――

 

 

「ここは……」

 

 

「このダンジョンを抜けた先にそのモンスターの巣があるんだと」

 

 

「そう」

 

 

グイグイと進んでいくアスナ。

人の相性は悪いものの、戦闘に関してはお互い問題ないせいか、ダンジョン攻略もどんどん進んで行く。

ダンジョンにもボスはいるようで、最深部の先、扉を守るようにして頭を二つ持つリザードマンが立っていた。

 

 

「どうする?」

 

 

「私がやるわ。すぐに片付けて進みましょ」

 

 

仕事をしなくていいならそれに越したことはない。

アスナに任せて、俺はその様子を眺めていた。

 

 

――side アスナ――

 

 

「……なによ」

 

 

遠めに立つボスに、武器の切っ先を向ける。

何階層も前から、私の心は荒れに荒れていた。彼も結局、私の理解者じゃなかった。そう思ってたはずなのに……

私は、彼をフレンドから消せなかった。あのボス戦の時、死にそうになるハチマンくんを見て背筋が凍った。そして怒鳴られて、まるで反論できなくて、悔しかった。

そして――

 

――俺は、今日、何もなければ卒業式だった。

 

あんなに悲痛なハチマンくんの顔を見たのは初めてかもしれない。

わかってる、あれは私が悪い。……ハチマンくんだけじゃない、みんなリアルに戻りたいから攻略してるわけで、リアルを忘れてる人なんて、ほとんどいないなんて、当たり前なのに。

 

 

「フラッシング――」

 

 

助走を付けて、細剣の最上位ソードスキルの準備をする。

自分への嫌悪感と、もやもやと、この荒れた気持ちを全て剣に乗せる。

 

 

「――ペネトレイター!」

 

 

最速、最大のソードスキル。助走が必要なのを除けば、このスキルの最高速の私はハチマンくんにも並ぶくらい速い。

59層の、ただのダンジョンレベルのボス。確認なんてするまでもなく私はそのボスを貫通していた。

 

 

「……ふぅ」

 

 

けれど、少しも心は晴れなくて、そんな私を――

 

 

「この、バカ野郎が」

 

 

――ハチマンくんが思いきり突き飛ばしていた。

 

 

「きゃっ……」

 

 

金属音が響く。慌てて目を向ければボスはまだ立っていて、ハチマンくんがいつも通りの速さでそれを斬り付けていた。

 

 

「ちっ、距離離すぞ」

 

 

イライラを隠しもしないで私に言って、私達は距離を取った。

 

 

「いつかのリプレイかよ。相手が倒れたかどうか確認できないような素人じゃないだろ、お前は」

 

 

 

「それは……」

 

 

「もういい。いいから下がってろ」

 

 

――それは、その言葉はあまりにも冷たくて、切り捨てるようで。

その言葉に私は自分の中の感情が抑えきれなくなって、彼の言葉を聞かず、私は一気に駆け出していた。




少し短めの今回。まだ続くアスナのターン。
意固地になってるアスナは、ある意味ゆきのんよりも硬くなです。

しかもこれを溶かすのが八幡……なにこの難易度。

そして、圏内事件とラフィンコフィン、本当に悩みます……

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