ぼっちアートオンライン(凍結)   作:凪沙双海

15 / 56
やっとこのエピソード終盤、かな。
コメント返しにも書いたのですが、ヒッキーらしい。ヒッキーっぽい。という感想がとても嬉しいです。
難しいキャラクターだから、所々崩壊したりしてしまってるかな? なんて自分で思うところもあったのですが、安堵もしました(笑)

ではでは、はじまります。


Episode2,part8

「……ここね」

 

 

会議も済ませ、万全な状態で来た俺達はボス部屋の前で一泊おいた。

……あの後帰らずにアルゴに攻略組の全プレイヤーにポーションの買い込みをやらせろって伝えたから、即死しない限り、大丈夫のはずだ。

 

 

「……ヒースクリフ、まじで任せるぞ。俺、基本的に直撃したら死ぬからな」

 

 

「心得た。こちらも影纏いの力、しかと見せてもらうとしよう」

 

 

「だからそれやめろって」

 

 

メインアタッカーはいつもと同じく。全プレイヤー中最大火力であろうキリト、カリスマ性、技量ともにトップクラスのアスナ、盾役として全プレイヤー最高峰のヒースクリフ、そして全プレイヤー最速であろう俺。四人パーティにしない理由は何かがあったときのフォローだ。

すぐに動けないと意味がない。

 

 

「……みんな、生きて戻りましょう」

 

 

ボス部屋が開く。……いた。

三つ首の犬がいる。ケルベロスだとさ。なるほど冥福の番犬か。

由比ヶ浜のとこの犬くらい可愛らしければいいんだが。

 

 

「作戦、開始!」

 

 

アスナの声に合わせて一足飛びで駆け出していく。

これが俺が影纏いと呼ばれる所以らしい。隠匿スキルを使いつつ、敏捷極振りの全力疾走。攻略組レベルすら影が動いてるようにしか見えないから、影纏い。

ほんと、年齢がもう数年若かったら大喜びだったろうな。

 

 

「……っ!」

 

 

バカな思考は一瞬で止められる。

俺は慌てて方向転換をして、ヒースクリフの隣まで一気に戻った。

 

 

「どうかしたかね」

 

 

「あの犬、俺の姿を追っかけれてるぞ」

 

 

あのまま行ってたら危なかった。あれ、やばい。

臭いか何かでわかるのか? とにかく、一人で攻めるのはまずい。

 

 

「君の姿を見ることができる、ということか。確かに、厄介ではあるな」

 

 

「前衛交代した方がいいかもな」

 

 

「なら、私が行こう。どうすればいい?」

 

 

「ヘイトをとにかく稼げ。したら三人で総攻撃をかける」

 

 

「心得た」

 

 

俺の代わりに飛び出していくヒースクリフは、ボスの爪を器用に盾で捌き、剣で一太刀入れる。

なるほど、上手い。立派なタンクだな、ありゃ。

 

 

「キリト、アスナ」

 

 

「ああ」

 

 

「ええ」

 

 

ヒースクリフへと攻撃するためにボスが腕を振り上げた瞬間、俺は一息で接敵した。

そのまま三連撃のソードスキル"緋扇"を叩き込み、後続に繋ぐ。

 

 

「リニアー!」

 

 

アスナが閃光たる所以の、光速の突きが放たれる。

切っ先から先が消えて、刺突が何回も出される。最後にキリトのバーチカル・アークを受けて、ケルベロスはあっさりとHPを0にして倒れ伏した。

 

 

「え?」

 

 

「終わったらポリゴンになって消えるはずだ。油断するなよ、みんな」

 

 

キリトの声が聞こえ終わるよりも早く、獣の雄叫びが聞こえた。途端に地面から手が生えてきて、俺達を雁字搦めにした。

 

 

「きゃっ……」

 

 

「これは……」

 

 

ボスは立ち上がり、ギラついた目をこちらへと向ける。

そして、今になってやっと沸く取り巻きの雑魚……ってゾンビかよ。雪ノ下がいたら俺だとか何だとか言われそうだな。

 

 

「……って、そんな場合じゃねぇ。これどうやって……」

 

 

悲鳴ばっか聞こえる。くそ、急がねぇと俺達も壊滅しちまう――

 

 

「ハチマンくん、身体を動かせ!」

 

 

「ヒースクリフ?」

 

 

見れば、ヒースクリフは既に動き出していた。

身体を動かせ……ああ、つまり――

 

 

「お前ら! レバガチャしろ!」

 

 

さすがゲーマー達。意味がわかったらしくすぐに拘束を解除していた。

 

 

「ちょっと、ハチマンくん、何よそれ!」

 

 

「……あー、ちょっと待ってろ」

 

 

アスナに近づくと、ほどく。というアイコンが現れる。

やっぱりな。他人でもほどけるのか。

 

 

「よっと」

 

 

「きゃあっ!」

 

 

ずん。と衝撃が走ってアスナが俺に寄りかかってきた。

 

 

「あ……ご、ごめん」

 

 

「いいから離れろ。頼むから離れてくれ」

 

 

「な……って顔真っ赤!」

 

 

「うるせぇ耐性ないんだよ早くしろ。勘違いしちゃうだろ」

 

 

慌てて離れる。あーくそ、ボス戦なんだから集中させろちくしょう。なんだよキリトその顔は。

 

 

「……くっそ、行くぞヒースクリフ」

 

 

「いいのかね?」

 

 

「お前まで茶化してんじゃねぇ。真面目にやるぞ」

 

 

ヒースクリフが俺の前に出て盾を構える。その上から斬りかかって、鬱憤を晴らすかのように斬撃を叩き込んだ。

怒濤の勢いで叩き込んだら、わりとびっくりな早さでボスは倒れた。

 

 

「……あ」

 

 

「バカ! ハチマン!」

 

 

「……わり」

 

 

てへぺろ。なんて言ったら殺されるな。とか思ってたらボスが吠えた。

案の定拘束されて、ゾンビが出てくる。って、前の全滅させなくても沸くのかよ。

 

 

「……なるほど、こりゃ面倒だ」

 

 

死んでも甦る、取り巻きの沸きに制限がない。初見殺しの塊じゃねぇか。

 

 

「あのボス、こっちには近づいて来ないのな」

 

 

「接近した時に鎖が見えた。おそらく、前進はできないだろう」

 

 

「なるほどな、なら、ひとまず雑魚処理するか」

 

 

範囲攻撃で一気にゾンビを斬り払う。面倒なやつらだな、ったく。

落ち着いてやればひとまず死にはしない。ゆっくりじゃないと攻略できないが。

 

 

「軍の連中はどうせ一気に突撃して、おそらく中級者があいつに狩られ、残りもこのループでやられてったんだろうな」

 

 

動けなくとも俺の動きを目で追えるようなやつだ。

気を付けるに越したことはない。

 

 

「……キリト、お前他のゲームでこういう敵とかやったことない?」

 

 

「ない。ハチマンは?」

 

 

「ない。一応ヒースクリフ、アンタは?」

 

 

「残念ながら、ない。ふむ、手詰まりかね」

 

 

「なんとかできるなら突っ込んでいいぜ?」

 

 

「やめておこう、私とて死にたくはないよ。ハチマン君」

 

 

ボスの吐くブレスを器用に全員躱しながら会話を続ける。

他のメンバーも悩んでいるみたいだ。

 

 

「いつか直撃しかねないわ、なんとかしないと……」

 

 

「わかってる……なぁ」

 

 

「どうしたんだ、ハチマン」

 

 

「俺の知ってるゲームに一ついたわ、あんな感じの」

 

 

「え?」

 

 

「厳密に言うと違うけどな。そいつは序盤のボスでな、試験中の主人公達を追っかけてくるんだ。クモみたいな機械でよ、30分しか時間ねぇのにひたすら追っかけてくる」

 

 

「どうやって切り抜けるんだ?」

 

 

「エンカウントしちまったら、ある程度HPを減らせば勝手にダウンして逃げれる。それを繰り返して集合場所に着けばイベント発生。そのイベントで教官が倒してくれるぜ」

 

 

ずいぶん懐かしいゲームを出してきたな、と自分でも思う。

まぁ、ここまで面倒なボスじゃなかったけどな、あいつ。あのゲーム主人公超強いし。なんでSAOにはガンブレードないんだろうな。ガンが入ってるからか?

 

 

「あとは、そいつはダウンするとHPを修復させてくんだが、その最中にもダメージを与えて本来のHPまで減らすと全回復する。で、それを繰り返すとやがて修復機能を失って自力でも倒せるんだが……どうだろうな、リスクが高すぎるか」

 

 

「……いや、着眼点は悪くない。試す価値はあるぞ」

 

 

「このまま何もしなくたって、いつかこちらに大きな被害が出る。なら、やろう、ハチマン」

 

 

「ハチマンくん、私は、私達だって覚悟は決まってるんだよ?」

 

 

「……おーけーおーけー。ならお前ら、あいつがダウンしたら死ぬ気で叩けよ。いいな、行くぞ」

 

 

一瞬、一層の感覚を思い出した。

全員が同じ敵へ向かう。そうすれば、俺が紛れてようと問題ない。

一つ、前と違うとすれば俺も勘違いはしない。こいつらは事が終わればまた嫉妬や敵視もする。だから、利害の一致で、そう心に決めて、俺は雷切丸を構えてボスへと向かって行ったのだった。

 




気がついたらお気に入りが800超えそうに……もしかしたら超えてるかも?
いろんな方に読んで貰えて幸せです。

ちなみにハチマンが言っていたゲームのボス、実在するかなり有名なタイトルのRPGのボスです。僕はこのシリーズはこのナンバリングから入りました。お分かりになって貰えたらちょっと嬉しく、次回後書き辺りで答えを出してステマしようかと思います(笑)

次回でボス戦は終了。やっと本編が始まっていく感じとなりますので、皆さまよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。