コメント返しにも書いたのですが、ヒッキーらしい。ヒッキーっぽい。という感想がとても嬉しいです。
難しいキャラクターだから、所々崩壊したりしてしまってるかな? なんて自分で思うところもあったのですが、安堵もしました(笑)
ではでは、はじまります。
「……ここね」
会議も済ませ、万全な状態で来た俺達はボス部屋の前で一泊おいた。
……あの後帰らずにアルゴに攻略組の全プレイヤーにポーションの買い込みをやらせろって伝えたから、即死しない限り、大丈夫のはずだ。
「……ヒースクリフ、まじで任せるぞ。俺、基本的に直撃したら死ぬからな」
「心得た。こちらも影纏いの力、しかと見せてもらうとしよう」
「だからそれやめろって」
メインアタッカーはいつもと同じく。全プレイヤー中最大火力であろうキリト、カリスマ性、技量ともにトップクラスのアスナ、盾役として全プレイヤー最高峰のヒースクリフ、そして全プレイヤー最速であろう俺。四人パーティにしない理由は何かがあったときのフォローだ。
すぐに動けないと意味がない。
「……みんな、生きて戻りましょう」
ボス部屋が開く。……いた。
三つ首の犬がいる。ケルベロスだとさ。なるほど冥福の番犬か。
由比ヶ浜のとこの犬くらい可愛らしければいいんだが。
「作戦、開始!」
アスナの声に合わせて一足飛びで駆け出していく。
これが俺が影纏いと呼ばれる所以らしい。隠匿スキルを使いつつ、敏捷極振りの全力疾走。攻略組レベルすら影が動いてるようにしか見えないから、影纏い。
ほんと、年齢がもう数年若かったら大喜びだったろうな。
「……っ!」
バカな思考は一瞬で止められる。
俺は慌てて方向転換をして、ヒースクリフの隣まで一気に戻った。
「どうかしたかね」
「あの犬、俺の姿を追っかけれてるぞ」
あのまま行ってたら危なかった。あれ、やばい。
臭いか何かでわかるのか? とにかく、一人で攻めるのはまずい。
「君の姿を見ることができる、ということか。確かに、厄介ではあるな」
「前衛交代した方がいいかもな」
「なら、私が行こう。どうすればいい?」
「ヘイトをとにかく稼げ。したら三人で総攻撃をかける」
「心得た」
俺の代わりに飛び出していくヒースクリフは、ボスの爪を器用に盾で捌き、剣で一太刀入れる。
なるほど、上手い。立派なタンクだな、ありゃ。
「キリト、アスナ」
「ああ」
「ええ」
ヒースクリフへと攻撃するためにボスが腕を振り上げた瞬間、俺は一息で接敵した。
そのまま三連撃のソードスキル"緋扇"を叩き込み、後続に繋ぐ。
「リニアー!」
アスナが閃光たる所以の、光速の突きが放たれる。
切っ先から先が消えて、刺突が何回も出される。最後にキリトのバーチカル・アークを受けて、ケルベロスはあっさりとHPを0にして倒れ伏した。
「え?」
「終わったらポリゴンになって消えるはずだ。油断するなよ、みんな」
キリトの声が聞こえ終わるよりも早く、獣の雄叫びが聞こえた。途端に地面から手が生えてきて、俺達を雁字搦めにした。
「きゃっ……」
「これは……」
ボスは立ち上がり、ギラついた目をこちらへと向ける。
そして、今になってやっと沸く取り巻きの雑魚……ってゾンビかよ。雪ノ下がいたら俺だとか何だとか言われそうだな。
「……って、そんな場合じゃねぇ。これどうやって……」
悲鳴ばっか聞こえる。くそ、急がねぇと俺達も壊滅しちまう――
「ハチマンくん、身体を動かせ!」
「ヒースクリフ?」
見れば、ヒースクリフは既に動き出していた。
身体を動かせ……ああ、つまり――
「お前ら! レバガチャしろ!」
さすがゲーマー達。意味がわかったらしくすぐに拘束を解除していた。
「ちょっと、ハチマンくん、何よそれ!」
「……あー、ちょっと待ってろ」
アスナに近づくと、ほどく。というアイコンが現れる。
やっぱりな。他人でもほどけるのか。
「よっと」
「きゃあっ!」
ずん。と衝撃が走ってアスナが俺に寄りかかってきた。
「あ……ご、ごめん」
「いいから離れろ。頼むから離れてくれ」
「な……って顔真っ赤!」
「うるせぇ耐性ないんだよ早くしろ。勘違いしちゃうだろ」
慌てて離れる。あーくそ、ボス戦なんだから集中させろちくしょう。なんだよキリトその顔は。
「……くっそ、行くぞヒースクリフ」
「いいのかね?」
「お前まで茶化してんじゃねぇ。真面目にやるぞ」
ヒースクリフが俺の前に出て盾を構える。その上から斬りかかって、鬱憤を晴らすかのように斬撃を叩き込んだ。
怒濤の勢いで叩き込んだら、わりとびっくりな早さでボスは倒れた。
「……あ」
「バカ! ハチマン!」
「……わり」
てへぺろ。なんて言ったら殺されるな。とか思ってたらボスが吠えた。
案の定拘束されて、ゾンビが出てくる。って、前の全滅させなくても沸くのかよ。
「……なるほど、こりゃ面倒だ」
死んでも甦る、取り巻きの沸きに制限がない。初見殺しの塊じゃねぇか。
「あのボス、こっちには近づいて来ないのな」
「接近した時に鎖が見えた。おそらく、前進はできないだろう」
「なるほどな、なら、ひとまず雑魚処理するか」
範囲攻撃で一気にゾンビを斬り払う。面倒なやつらだな、ったく。
落ち着いてやればひとまず死にはしない。ゆっくりじゃないと攻略できないが。
「軍の連中はどうせ一気に突撃して、おそらく中級者があいつに狩られ、残りもこのループでやられてったんだろうな」
動けなくとも俺の動きを目で追えるようなやつだ。
気を付けるに越したことはない。
「……キリト、お前他のゲームでこういう敵とかやったことない?」
「ない。ハチマンは?」
「ない。一応ヒースクリフ、アンタは?」
「残念ながら、ない。ふむ、手詰まりかね」
「なんとかできるなら突っ込んでいいぜ?」
「やめておこう、私とて死にたくはないよ。ハチマン君」
ボスの吐くブレスを器用に全員躱しながら会話を続ける。
他のメンバーも悩んでいるみたいだ。
「いつか直撃しかねないわ、なんとかしないと……」
「わかってる……なぁ」
「どうしたんだ、ハチマン」
「俺の知ってるゲームに一ついたわ、あんな感じの」
「え?」
「厳密に言うと違うけどな。そいつは序盤のボスでな、試験中の主人公達を追っかけてくるんだ。クモみたいな機械でよ、30分しか時間ねぇのにひたすら追っかけてくる」
「どうやって切り抜けるんだ?」
「エンカウントしちまったら、ある程度HPを減らせば勝手にダウンして逃げれる。それを繰り返して集合場所に着けばイベント発生。そのイベントで教官が倒してくれるぜ」
ずいぶん懐かしいゲームを出してきたな、と自分でも思う。
まぁ、ここまで面倒なボスじゃなかったけどな、あいつ。あのゲーム主人公超強いし。なんでSAOにはガンブレードないんだろうな。ガンが入ってるからか?
「あとは、そいつはダウンするとHPを修復させてくんだが、その最中にもダメージを与えて本来のHPまで減らすと全回復する。で、それを繰り返すとやがて修復機能を失って自力でも倒せるんだが……どうだろうな、リスクが高すぎるか」
「……いや、着眼点は悪くない。試す価値はあるぞ」
「このまま何もしなくたって、いつかこちらに大きな被害が出る。なら、やろう、ハチマン」
「ハチマンくん、私は、私達だって覚悟は決まってるんだよ?」
「……おーけーおーけー。ならお前ら、あいつがダウンしたら死ぬ気で叩けよ。いいな、行くぞ」
一瞬、一層の感覚を思い出した。
全員が同じ敵へ向かう。そうすれば、俺が紛れてようと問題ない。
一つ、前と違うとすれば俺も勘違いはしない。こいつらは事が終わればまた嫉妬や敵視もする。だから、利害の一致で、そう心に決めて、俺は雷切丸を構えてボスへと向かって行ったのだった。
気がついたらお気に入りが800超えそうに……もしかしたら超えてるかも?
いろんな方に読んで貰えて幸せです。
ちなみにハチマンが言っていたゲームのボス、実在するかなり有名なタイトルのRPGのボスです。僕はこのシリーズはこのナンバリングから入りました。お分かりになって貰えたらちょっと嬉しく、次回後書き辺りで答えを出してステマしようかと思います(笑)
次回でボス戦は終了。やっと本編が始まっていく感じとなりますので、皆さまよろしくお願いします。