横島inハイスクールD×D   作:雪夏

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裏側系。


横島inハイスクールD×D その11

 

 

 

 

「そうだ、ソーナちゃん」

 

「何でしょう?」

 

 一誠と祐斗と別れ帰宅した横島は、先に帰宅していたソーナに話しかける。横島から学生鞄を受け取りながら、首を傾げるソーナの姿には新妻のような初々しさがあった。

 

「くっ、他の人がやっていると何か悔しいわね」

 

「あらあら、リアスったら。でも、本当ね」

 

「リアスも朱乃も何を言っているのですか。それで、忠夫は何のようなのですか? あなたのサポートは私の任務なのですから遠慮せずに言ってください」

 

 嫉妬するリアスと朱乃に勝者の笑みを向けながら、忠夫の言葉を待つソーナ。帰宅後のやり取りでソーナが出遅れたときは、逆にリアスたちがその笑みを浮かべるのだから仕返しのつもりなのだろう。

 

「前に言ってた堕天使に襲われた男子学生。リアスちゃんの眷属になったんだけどさ……ソーナちゃんも狙ってた?」

 

「いいえ。忠夫の言葉通り、神器持ちなら魅力的だったのは確かです。でも、私の眷属は生徒会を拠点に活動することになりますから、生徒会の一員として認識させる必要があります。彼は普段の行動が行動なので、認識させようにも手間がかかりますし、私の眷属としてあまり相応しいとはいえないので」

 

「あー、なるほど。リアスちゃんのとこは活動拠点がオカルト研究部とかいう怪しい部活だもんな」

 

 怪しい部活との忠夫の言葉に落ち込むリアスであったが、気を取り直しソーナに話しかける。

 

「でも、あの子は強くなるわよ。神器はまだ確認していないけど、おそらく神滅具(ロンギヌス)だわ。兵士の駒を八個消費したんだもの」

 

「八個ですか……うちの匙が四個ですから、その可能性もありますね」

 

 仲がよく親友同士でもある二人だが、レーティングゲームにおいてはライバル。相手に強力な眷族が出来ることは喜ばしい反面、警戒もしなければならない為、内心は複雑である。

 そんなソーナの心境を感じ取ったリアスが、話題を変える。

 

「そう言えば、あなたの眷属にはきちんと教えたの?」

 

「ええ。神器を狙い堕天使の過激派が入り込んでいるとは。幸い、私の眷属たちは遭遇していないようですが。リアスの方はどうだったんですか?」

 

「私のとこも直接見たのはいないわね。使い魔が目撃はしたけど、すぐ離れていったし。この街を出て行ったのかも分からないわ。取りあえず、三日くらいは用心して頂戴。ま、こっちの方が遭遇はしやすかもしれないわね。イッセーを消したと思っている筈だから、イッセーが生きていると知れば動くだろうし」

 

「その彼は大丈夫なのですか? 過激派なら家族もまとめて始末する奴もいるのでは?」

 

 一誠の家族が襲撃されるのではないだろうかとのソーナの心配に、笑って答える横島。

 

「それは大丈夫だ。父親の方は黒歌に監視させてるし、母親の方はうちのメイドたちとお茶してたからな」

 

「お茶?」

 

「そ。何せ、お隣さんだからな」

 

 その言葉に、驚愕するソーナとリアスたち。ソーナはリアスたちが驚いていることにも驚いている。

 

「何で、リアスが知らないんですか! 昨日彼を自宅に送ったのでは!?」

 

「だって、忠夫が任せろって抱えていったし。やけに早く帰ってくるなとは思っていたけど、隣だったの」

 

「そういうこと。引越し蕎麦も配ったんだぞ?」

 

 このあたりの感覚は生粋の悪魔でお嬢様である二人にはないものだろう。横島は元人間であるから、ご近所付合いなどという考えが浮かんだのである。

 

 

 

 その後、くつろいでいた横島たちの目の前に転移魔方陣が広がる。紋章はアスタロトとグレモリー、シトリーの特徴を混ぜたようなものである。その見たこともなり紋章に、リアスたちは警戒するが横島と黒歌、メイドたちは気にしていない。やがて、魔方陣から現れたのはリアスたちの良く知る二人の人物であった。

 

「やー、リーアたん。忠夫とは宜しくやってるかな?」

 

「タダオ様、グレイフィア到着しました」

 

 現れたのは、魔王サーゼクス・ルシファーとグレイフィアの二人。気楽に話しかけるサーゼクスに対し、リアスたちは驚愕で固まっていたが、やがてリアスが話しかける。

 

「何故、お兄様がここに? 魔王の仕事はいいのですか?」

 

「当然、終わらせて来た……と言いたいところだが、これも仕事でね。な、忠夫」

 

「仕事を言い訳に遊びに来たんだろ? 連絡ならグレイフィアだけで十分だろうが」

 

 横島の指摘に、そっぽを向いて笑うサーゼクス。図星であったらしい。そんなサーゼクスに呆れた視線を向けていたリアスだが、先ほどの紋章のことを思い出し尋ねる。

 

「お兄様、先ほどの魔方陣の紋章は一体? グレモリー家とアスタロト家、シトリー家のものにも似ている気がしましたが」

 

「それも、仕事の一つさ。まず、リアス・グレモリー」

 

 砕けた雰囲気から、真面目な雰囲気に変わったサーゼクスに、リアスたちも横島と黒歌を除いて身を正す。

 

「駒王町の管理者である君には、この町に潜伏しているはぐれ悪魔、バイパーの討伐を眷属とともに行ってもらう。これは大公からの命令だ」

 

「謹んでお受けいたします」

 

「次に、ソーナ・シトリー。君には駒王学園における結界の構築作業の調査を頼む。まだ計画の段階なので何時になるかは分からないが、駒王学園にてあるイベントを行う可能性がある。その為の準備だ。効率よく結界を張るポイントをグレイフィアと共に調査してくれ。期間や細かい注意事項はグレイフィアに聞いてくれ」

 

「宜しくお願いします、ソーナ様」

 

「謹んでお受けいたします。グレイフィアさん、宜しくお願いします」

 

 頭を下げあう二人を確認したサーゼクスは、横島に向き直ると先ほどの紋章を紙に浮かび上がらせる。

 

「そして、忠夫。いや、古の魔神アシュタロスを継ぐ者よ。これが君の紋章だ。今まで紋章を不要と持たなかった君だけど、これからはそうもいかないからね。眷属に刻むといい」

 

「へー。何かアジュカが昔使っていた紋章に似ているな? あと、リアスちゃん家にソーナちゃん家」

 

「それはそうさ。先ほどリーアたんが言ったように、グレモリー家とアスタロト家、シトリー家の紋章を参考に作っているからね。魔神アシュタロスの紋章は残ってないからね。どんな紋章にするかと考えていたら、アジュカがアスタロトの紋章をあげると言いだしてね。流石にそれはダメだろうとセラフォルーと口を出していたら、そんな形になったよ」

 

「ま、こだわりなんてないから、どうでもいいか。で、あっちの方は?」

 

 紋章を受け取り見つめていた横島が、どうでもよさそうな顔で、受け取った紋章をメイドたちに手渡し続きを促す。メイドたちは紋章を手に、部屋を後にしたが展開についてこれていないリアスたちは、後で横島を問い詰めてやると決意しながら事態を見守っている。

 

「堕天使だね。確認したが、総督殿の意思ではないらしい。いや、神器を集めていることは否定しなかったが、駒王町への立ち入りは認めていないが正確かな。こっちの裁量に任せるとさ」

 

「これで、オレらが原因で全面戦争に突入ってシナリオはなくなった訳だ。にしても、堕天使側でアイツらを引き上げさせてくれればいいのに」

 

「まぁ、下級堕天使のようだしね。それに神器所有者を狙って、こっちの領土に侵入してきたが、まだ悪魔と決定的に敵対した訳ではないからね。何が起きても上層部は関与しないと言質を取れただけマシさ」

 

「ま、正当防衛を主張できるだけマシか」

 

 うんうんと頷く横島に、リアスが食って掛かる。

 

「ちょっと、私たちが原因で全面戦争って何なの!?」

 

「まぁ、さっきもソーナちゃんが言ってたが、一誠が襲われるかもしれんだろ? で、今んとこ三勢力の争いは休戦状態な訳。そこで、眷属を守る為とはいえ魔王の妹が堕天使をとかなったら……」

 

「それを言い分に、再び戦争状態へと発展するということですか?」

 

「逆に、堕天使に魔王の妹が傷つけられたりとかもな。人間界でその二勢力が争ったから、天使が介入ってのもありえる」

 

 朱乃の言葉にそう返す横島。言いがかりに近いが、リアスの立場というのはそういうものなのである。そして、それはソーナも同じである。

 

「そんな先のことを考えて、お兄様に連絡したの?」

 

「それもあるけど、こういうのは組織のトップに告げ口するのがいいんだ。相手に対する弱みを握れるかもしれんからな。今回だって、それで何をしても正当防衛ってなったし」

 

「そ、そう」

 

 告げ口と言う言い方に引っかかりを覚えたが、それらが有効なことは理解できたリアスたちはそれ以上、この件について質問することはしなかった。

 その代わり、先ほど追求しなかった件について尋ねる。

 

「で、紋章のことなんだけど、魔神アシュタロスってどういうこと? アスタロト家とは違うの?」

 

「何て言えばいいかなぁ。簡単に言うとだな。オレは魔神アシュタロスってのを倒したことで、悪魔となったんだ。魔神アシュタロスの後釜として。で、アスタロト家は魔神アシュタロスの家系って感じかな」

 

 思いのほか上手く説明できたと頷いている横島を他所に、サーゼクスが言った継ぐ者とはそういう意味だったのかと納得するリアスたち。彼女たちは現魔王と旧魔王のような関係なのだと理解する。

 

「では、眷属とはどういう意味なのですか? 忠夫はサーゼクス様の眷属なのでは?」

 

 ソーナの言葉に頷くリアスたち。それに対して、サーゼクスとグレイフィア、横島、黒歌の四人は首を傾げる。

 

「何を言ってるにゃ。忠夫は眷属じゃないにゃ」

 

「え?」

 

「で、でも、サーゼクス様の領地に屋敷を構えていますよね?」

 

「そ、それに、お兄様の命で任務に出かけてたし」

 

「パーティもサーゼクス様の眷属の方と一緒に……。ミリキャス様や、教育係のグレイフィア様とも仲が良いですし」

 

 黒歌の言葉に、驚愕するリアスたちはそれぞれ横島がサーゼクスの眷属と思われる行動を取っていたと告げる。だが、それに対して否定が帰ってくる。

 

「屋敷は私が忠夫に与えたが、それは単純にあの屋敷が余っていたからだ。家賃代わりに任務を受けてもらっていたしね。パーティは知り合いのところに固まっていただけだし、ミリキャスは生まれた頃から知っているからね。仲が良いのも当然さ。それに、グレイフィアは……」

 

「私は元々、タダオ様の専属メイドです。今は、教育係としてミリキャス様のお世話をしていますが、タダオ様が眷属を集めることになった以上、夏にはタダオ様の傍に参ります」

 

「私は、忠夫のペットにゃ」

 

 黒歌の戯言はスルーして、改めて状況を整理していくリアスたち。

 

「と言うことは、忠夫もレーティングゲームに出るの?」

 

「それが、サーゼクスからの依頼だからな。で、眷属集めとレーティングゲームの勉強の為に、こっちに来たって訳」

 

「サポートと言うのは、眷族集めのことだったのですね」

 

「そうだけど……言ってなかったっけ?」

 

「「「言ってません!!」」」

 

 口を揃えて言うリアスたちに、横島がたじろいでいると朱乃が思いついたと言うように、リアスに提案する。

 

「リアス、トレードを……」

 

「しません!」

 

「部長」

 

「しません!」

 

 そんな三人を他所に何を思ったのか、ソーナが横島に提案する。

 

「忠夫。あなた私の眷属になりませんか?」

 

「あ、ずるい、ソーナ! 私の眷属にならない!?」

 

 そんな二人に、サーゼクスがそれは無理だろうと告げる。

 

「ははは、それは無理だろうと思うよ。私の女王の駒でも眷属に出来なかったんだから。リーアたんやソーナちゃんが眷属になることは可能だとは思うけどね」

 

 その言葉に考え込む二人。それを笑って見ていたサーゼクスだったが、グレイフィアが時間ですと告げると、考え込む二人に声をかける。

 

「では、私は冥界に戻るよ。リアス。はぐれ討伐をしっかりと果たしてくれ。ソーナちゃんも結界の方は頼むよ。今日はグレイフィアは置いていくけど、夏までは基本的にミリキャスの方を優先するから、今のうちにしっかり打ち合わせをしてくれ。忠夫は、次に戻ってくる時は、一人くらい眷属を紹介してくれ。それじゃ」

 

 そういうと、今度は自分の転移魔方陣で転移していくサーゼクス。それを見送ったリアスたちは、各々思うところを胸に抱えたまま、それぞれの役目を果たしに行くのであった。

 

 

 




 横島(アシュタロス)の紋章については、各自脳内で保管しておいてください。グレモリーの紋章さえどんな形だか忘れてしまったので、皆様のセンスにお任せします。作中では、登場する際は、文中に横島またはアシュタロスの紋章と書きますので、あれかと思ってください。

 今回は、下準備回でした。リアスとソーナが同居している関係で起きたことと、ソーナたちに役目を与えておこうと言う回。あと、彼女たちを生存させる為の下準備。因みに駒王学園のイベントは会談ではなく、授業参観です。横島もいるので、魔王たちが突入する気満々という。

 横島たちの屋敷が一誠宅の隣。横島(アシュタロス)の紋章。レイナーレたち教会の堕天使の処遇。 
 これらは作中設定です。

 関連活動報告は【HY】と記載します。
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