元気いっぱいに悪魔になることを宣言した一誠に、リアスは笑顔となると早速とある物体を取り出す。
「それは?」
「これは
「特性……ですか?」
「そう。転生悪魔の主、つまり私ね。私を『
「げ、下僕っすか」
それはいやだと顔に書いてある一誠に、リアスが安心させるように説明を続ける。
「昔は違ったんだけど、今は下僕として転生した後、実力次第では爵位を持つことが出来るようになったの。さっきも言ったけどゲームでの活躍次第では主より人気になることもあるわ。それに爵位持ちになれば今度は自分が、下僕を持つことも出来るわ」
「つ、つまり、オレがハーレムを作るにはゲームで活躍して、人気者になって嫁を見つけていけばいいんすね!? しかも、下僕も作れる!?」
瞬間、下卑た顔をする一誠。おそらく、ハーレムを作ったときのことを考えているのであろう。人様に見せられないその顔に、横島は自分にもこんな頃があったなぁと思いながら、再び白音の目を塞ぐと見ちゃいけませんと注意する。
「話を戻すけど、駒には特性があるわ。イッセーはチェスの駒のモデルが何か知っている?」
「まぁ、多少は」
「悪魔の駒が与える特性は、チェスのそれと通ずるものがあるわ。例えばこの僧侶の駒。これを使って転生した悪魔は、魔力が底上げされるわ。魔法使いとかと相性がいい駒ね」
「魔法使いもいるんすか……」
次々と自分の常識が崩れていくのを感じる一誠。そんな一誠に構わず、リアスは話を続ける。
「騎士の駒はスピードが速くなるし。戦車はシンプルに体が頑強になるわ。あと、王と位置を入れ替えるキャスリングが可能となる。そして、女王。兵士、僧侶、騎士、戦車の全てを兼ね備えた最強の駒ね」
「へぇー。ってことは、ここにいる皆も何かしらの駒の特性を持ってるわけだ」
改めて周囲を見回す一誠。朱乃と白音、横島は変わらず羊羹に夢中で、目を合わしてくれたのが祐斗だけだったことに肩を落とす一誠であった。
「ボクは騎士の駒を部長から貰ったんだ。今度、騎士の速さを見せてあげるよ」
「私がリアスの女王ですわ。白音ちゃんは戦車。とても、力が強いんですのよ」
「先輩には負けません」
「へぇー。じゃ、忠夫は何の駒なんすか? 兵士?」
純粋な疑問をぶつける一誠に、横島は笑って否定する。
「オレはリアスちゃんの眷属じゃない。ま、リアスちゃんの下僕ってのは心惹かれるけどな」
その言葉に同意しかけた一誠だったが、決してお姉さまの下僕になりたくて悪魔になるわけではなく、ハーレムの為なのだと自分に言い聞かせる。そのうち、一誠は横島が何故ここにいるのかが気になる。てっきり、リアスの眷属だと思っていたのが否定されたからである。
「じゃ、何で横島はここにいるんだ? お前も悪魔にスカウトされたのか?」
「違うわ。忠夫も悪魔よ。今はお兄様の命で人間界に来ているの」
リアスの言葉に、リアスの兄の眷属なのだと判断した一誠は、自分の駒が何になるのかをリアスに尋ねる。
「で、オレは何の駒を貰えるんすか? 今いない僧侶ですか?」
「僧侶は一人いるわ。イッセーに与える駒はこれ」
「……兵士っすか。これって何の特性があるんですか?」
「特に何も」
その言葉に愕然とする一誠。ハーレムへの道が一気に閉ざされた気分となる。そんな一誠に、リアスは続ける。
「但し、私が敵の陣地だと認めた場所に限れば、最強の駒となるわ。王の許可を経て、全ての駒の特性を得ることが出来るのだから」
「それって、つまり……女王にもなれるってことっすか?」
「ええ」
その瞬間、雄たけびをあげる一誠。一誠の中で先ほどまで暗く閉ざされていたハーレムへの道が、明るく照らされたからである。
「きたー! オレのハーレムへの道が今開けた! で、リアス先輩、オレはどうすれば?」
「これからは部長と呼びなさい。イッセーは何もしなくていいわ。ただ、駒を受け入れるだけ。大丈夫、痛くないわ」
「あ、心なしかエロい響き……」
馬鹿なことを呟きながら、目を閉じて受け入れる体勢になる一誠。別に目を閉じる必要はないのだが、いちいち指摘しても仕方ないと思ったリアスは兵士の駒を一つ一誠に押し当てる。すると、駒は一誠の体内へと消えていく。しかし、リアスの表情は優れない。
「……ダメみたいね。まだ足りないのかしら」
一つでダメならと、数を増やしていくリアス。だんだんと増えていく数に、部室にいた全員が注目している。
「おお、六個でもダメか」
「凄いですね。相当神器が強いのか、一誠君が凄いのか」
「神器だと思います」
「私も」
祐斗の言葉に即効神器が凄いのではと意見を述べる朱乃と白音。正直、一誠の噂を知っている祐斗としても、否定は出来ない。そうこうしている内に、駒の数は最後の一つとなっていた。
「これで最後ね。忠夫が薦めるわけだわ。いい子が見つかったみたい」
呟いたリアスが最後の一つを押し当てると、静かに消えていく駒。次の瞬間、一誠から一際強い光が放たれたかと思うと、彼の背中にある変化が起こっていた。
「うん。成功したようね。駒八個か……前言っていたことが本当になったのかもしれないわね」
そういって頷くリアスたちを他所に、一誠は自分の身に起こった変化に気を取られていた。
「は、羽!?」
一誠の背中から、コウモリのような一対の翼が出現していた。
「そう。悪魔の羽よ。ようこそ、悪魔の世界へ。歓迎するわ」
そういって立ち上がると、自身も翼を広げて一誠に見せるリアスたち。その様子に、本当に不思議な世界に足を踏み入れたのだと改めて感じる一誠だった。
「で、横島は何をしているんだ?」
ソファーから立ち上がり、息んでいる横島に疑問の声をあげる一誠。リアスたちも疑問に思っているようで、黙ってやりとりを見守っている。
「くっ……、羽が出らん。大分、長いこと出しとらんかったから、出し方が分からん」
その言葉にずっこける一誠。それに構わず、息んでいた横島が一際強く息を吐いたその瞬間、ばさっという音を立てて横島の翼が現れる。
「おおー、やっと出た。どうだ? オレの翼」
自慢気に見せる横島の背中には、
「あちゃー、久しぶりだったからちょっと力が漏れちゃったか。よっと」
軽い横島の掛け声と共に、二対四枚だった翼はリアスたちと同じ一対二枚へと数を減らす。それに云々と頷いた横島は、再度一同に問い掛ける。
「どうよ、オレの翼。久しぶりに出したけど、似合ってるか?」
「え、今、四枚……?」
「一誠。知っているか?」
「何を」
「秘密が男を魅力的にするってな。秘密が多い、ミステリアスな男ほどモテるってことさ」
「あ、兄貴……」
人差し指を立てて適当なことを言う横島に、何やら感動しているらしい一誠。そんな二人のやり取りに追求するタイミングを逃したリアスたちは、いつか追求すると心にとめて今日のところは解散するのであった。
活動報告のアンケの結果、一誠くんのヒロインはレイナーレのみに決定しました。他のアンケ結果もまとめて活動報告に記載しています。
アニメと原作でいろいろとタイミングが違った気がしますが、記憶がはっきりしません。多分、拙作は原作準拠で進んでいるはず。
悪魔の駒適用の方法。
これらは作中設定です。
関連活動報告は【HY】と記載します。
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