俺がアイツと戦えないのはどう考えてもお前らが悪い   作:魔法使い候補

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思ったより早く書けたので投稿します。毎回この調子で書ければ良いんですけどね。


いんたーばる
俺もベホ●使いたい!!


川神鉄心

川神学園の学園長にして川神院のトップ、スーパーおじいちゃん。川神百代の祖父でもある。百代とまともに戦える数少ない人物の一人。かなり高齢の筈だが、実力は世界中から挑戦者が来る程の超人。最近は全盛期程の体力は無い為、孫の百代に戦闘欲求の発散を兼ねて挑戦者の相手をさせている。

 

2009年4月26日(日) 深夜

歓楽街 廃ビル

 

釈迦堂を倒した大和は、宇佐美巨人に川神院の技を使う奴に襲われた事を伝え、川神鉄心及びルー師範代に『身柄の確保と処遇について相談したいので此方まで来てもらいたい』と伝言を頼んでいた。無論、呉々も川神百代に気付かれないように気を付けろと念押しして。

 

「そう、場所はゲンさんも知ってるから。しっかり伝えてくれ」

 

「分かった、充分に気を付けて待っとけよ」

 

ブチッ

 

大和は返事もせずに電話を切り、フラつきながら窓へ近寄ると身を乗り出した。

 

「オエェェッ!!」

 

ビシャッ

 

激闘が終わり気が弛んだのか、外へ遠慮なく嘔吐する。

 

 肋骨は折れてないようだが、腹を殴られまくったせいで内臓が悲鳴を上げている。特に大蠍撃ちとかいう技は効いた、後ろに跳んであの威力ならまともに喰らっていたらと思うとゾッとする。

 

(勝つには勝ったが、運が味方したところが大きい勝利だ)

 

 今回の喧嘩は予定外だったが、色々課題が見えた収穫の多い戦いだった。まず、何よりも必要なのは強い練習相手、組み手で実際に技を練習し戦い方の幅を広げたい。自分以外の人間の考え方や知識も学ぶ事で喧嘩に活かせる筈だ。毎回毎回実戦で経験を積む事がどれだけ無謀な事だったのか改めて思い知った。そしてもう一つ必要なのが…

 

(ダメージを回復させる為の休息)

 

 対戦候補の板垣姉妹の相手をしている余裕は無くなった、あのオッサンが板垣姉弟とどういう関係かは知らないが、川神院の技をそいつらに教えている可能性がある。門外不出の武術だ、ルー師範代や川神鉄心が吐かせようとするだろう。仮に吐かないとしても、板垣竜兵の名前を使えば姉妹を更正させるとして、川神院に縛り付ける事はできそうだ。

 

(俺もベ●マが使えれば…!?)

 

『オエェェ』

 

 

 

 

 

2009年4月26日(日) 深夜

川神院

 

「分かった、すぐにその廃ビルへ向かうとするかの」

 

大和が釈迦堂を倒し、これからの方針を考えている頃。川神鉄心はルー師範代から『歓楽街にて川神院の技を使う輩に直江大和が襲われた』と宇佐美巨人から連絡があった事を聞いていた。

 

「…やはリ、釈迦堂の仕業なんでしょうカ?」

 

二人の脳裏に思い浮かぶのは、以前に破門とした男。自身の戦闘欲求を満たす事を優先する、獣が人の皮を被ったような弟子の事。

 

「確かめてみないと何とも言えんの」

 

本当に釈迦堂だとすれば、直江大和に負けたという事になる。でなければ川神院に連絡が来る理由が無い。破門された理由が好戦的な性格にあったのだから、川神院の技を素人の高校生相手に使ったと知られたらどうなるか、分からない程頭が悪い訳でも無い。最悪粛清の対象になる事を覚悟して使ったのか?それ程直江大和は強かったのか?

 

「では、モモに気付かれないよう気配を消して行くとするかの」

 

二人は廃ビルへと向かう、自分達の疑問を解く為に。

 

2009年4月26日(日) 深夜

歓楽街 廃ビル

 

「随分ボコボコにヤられたようだが大丈夫か?」

 

「大丈夫だ、問題ない。骨は折れていないし、数日安静にしていれば痛みも治まるだろ」

 

「自己診断じゃなくて病院に行け」

 

川神鉄心とルー師範代が川神院から出発して5分後、宇佐美巨人と源忠勝は大和が待機している廃ビルで釈迦堂と大和の応急処置をしていた。大和が廃ビルでタクシーを降りた後、忠勝は大和が負けたときに備えて一旦巨人と合流し近場で待機していた為、数分後には大和の居る廃ビルに到着していた。

 

「まあそんな事より、設定を確認しよう。俺は代行のバイト帰りにオッサンに襲われた」

 

「あらかじめ非常時に備えて、俺か親父にワン切りすると逃走車としてタクシーが来る手筈になっていた」

 

「逃げ切れそうになかった為、二手に別れて腕に覚えのある大和が廃ビルで時間稼ぎ。忠勝が俺を呼びにタクシーで迎えに来る予定だったが」

 

「俺が強すぎて二人が到着する前に撃破。川神院の技を使用していたので川神院に連絡した。完璧な理由だな!!」

 

「まあ、追及されそうな事もしらを切れば確認できねえだろうしな」

 

「板垣竜兵を煽るときに使った奴らも、あれから何も喋ってないのを確認したし」

 

事前確認で矛盾がないか確認する三人の姿は、手際が良すぎて騙し慣れている詐欺師のようだった。

 

 

 

 

 

それから更に10分程経った頃、川神鉄心とルー師範代が廃ビルに到着した。二人は大和と釈迦堂の外傷を診断して、命に別状が無い事を確認すると大和に事情を尋ねた。

 

「…ふむ、確かにこの者は以前川神院で師範代をしていた釈迦堂刑部という者じゃ。精神的に問題があった為破門にしたのじゃが…」

 

「詳しく話を聞きたいんだけド、大和クンは身体の方は大丈夫かナ?どこか酷く痛むような箇所とかハ…」

 

「腹部をボコボコに殴られたんで吐き気が凄いですが、骨折はしてないかと。頭は打ってないですし、絞めが極まりかけただけですので」

 

「そうか…では、少しだけ話を聞かせてもらうぞい」

 

大和は、先日板垣竜兵に絡まれ撃退した事。釈迦堂に板垣竜兵を倒したのが自分か尋ねられ否定した事。その場を立ち去ろうとしたときに釈迦堂が自分を捕まえようとしている事に気付き、逃走しようとした事。念の為、二手に別れて逃げ切れたか確認して逃げ切れていなかった事。自分が時間を稼ぎ、忠勝が宇佐美を連れて来る予定だったが倒してしまった事を話した。

 

「板垣と釈迦堂の関係は知りませんが、それなりに交流があったのかもしれません。調べてもらえますか?」

 

「分かった、この件は川神院が責任を持って調べよう。釈迦堂の方も此方で身柄を預かるが、それで良いか?」

 

「はい、それと万が一板垣姉弟が釈迦堂から川神院の武術を教わっていた場合は…」

 

「川神院が責任を持って更正させるヨ。安心して良いからネ」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあそろそろ帰りますか。直江と忠勝はオジサンが寮まで送ってやるよ」

 

「よろしく頼んだぞい」

 

この一件は、川神院に責任を押し付ける形で収束した。喧嘩を売らせるように周到に準備し、予定外の事態が起こっても対処出来るように罠を張っておいた喧嘩。唯一その可能性を睨んでいた釈迦堂も確証を得られなかった以上、板垣をスパイに煽らせた事が露見する事はないだろう。川神鉄心とルー師範代がそれに気付く可能性は摘み取られた。

 

2009年4月27日(月)

島津寮 居間

 

早朝、朝食を摂る為に皆が一階に集まるが大和の姿は無い。

 

「あれ?今日は大和の奴遅いな」

 

「珍しいね、いつもならとっくに起きてる時間なんだけど…」

 

不思議に思う者

 

「寝坊か?誰か起こしに行った方が良いんじゃないか?」

 

「!?あの、でしたら私が…」

 

起こした方が良いのではと思う者

 

大和がバイトで深夜まで働く事があると知っている者もいるが、学校を休むという事は無かった為気になったようだ。

 

「直江の奴は昨日のバイトで負傷した。今日は休んで病院に行くと言ってたぞ」

 

そんな中、唯一事情を知っている忠勝が風間達に説明し始める。当然、知られても構わない部分だけを選択して口にする。

 

「何ぃ、大和がヤられただとぉ!?」

 

「本当に珍しいね、そこらの不良相手なら無傷で倒せるでしょ?」

 

「俺も詳しくは知らんが、相当強い奴に絡まれたみたいだな。勝ちはしたが、腹を殴られまくって吐き気が治まらんと言っていた」

 

(流石に本当の事を話す訳にはいかねえからな)

 

「そっかー。よしクッキー、お前は今日は大和の世話をしておけよ」

 

「了解だよ、マイスター。任せといてよ」

 

その後、大和はクッキーに引き摺られ病院に連れて行かれた。

 

2009年4月27日(月) 昼休み

川神学園 賭場

 

川神学園には時折賭場が開かれる事がある。非公認なイベントだが、教師も積極的には取り締まらないので、教育の一環として黙認されているようである。そんな賭場、もとい社会勉強の場で、一人の青少年の悲鳴が響き渡った。

 

「ギャアアァァァ!?チックショオォォ!!」

 

青少年の名前は福本育郎、渾名はヨンパチ。カメラを手に女体を撮るエロの権化。どうやら麻雀で大負けした様子。

 

「身の程知らずに此方に挑むからじゃ、少しは腕を磨いてから出直すのじゃぞ」

 

(フフン♪最近F組の連中はバカの癖に調子に乗っておるからのう。いい気味じゃ)

 

こっちの少女は不死川心。ボッチ、家柄至上主義のヘタレ美少女。此方は逆に大勝した様子。

 

「くっそ、可愛いからっていい気になりやがって。こうなったら大和に仇を取ってもらうぜ」

 

※注意・大和は今日は欠席です。

    興奮して忘れている様子

 

「劣等らしい捨て台詞じゃのう。バカクラスから誰を連れて来ようが、此方に勝てる訳無いであろう」

 

賭場の空気は最悪と言えるだろう。不死川の言動は福本以外の生徒であっても、気持ちの良いものではない。福本の方も時折台詞に下ネタが混ざる為、軽蔑の眼差しを向けられている。

 

「言ったなぁ、後になって逃げるんじゃねえぞ!!」

 

「貴様こそ、後になって泣いても知らんぞ!!」

 

こうして大和が休んでいる間に、F組対S組の構図が出来上がっていた。

 

 

 

 

 

大和は腹部にダメージが溜まっている!

大和は(ブラフ)を使った!

川神院に責任を押し付ける事に成功した!

大和対不死川の決闘が勝手に決まった!




次回から不死川心ちゃんの出番が増えるかもしれない。ちなみに作者の好きな台詞は、男性なら井上準の「え」女性なら不死川心の「げっ!!!」

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