俺がアイツと戦えないのはどう考えてもお前らが悪い   作:魔法使い候補

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いよいよ週一での投稿になってきました。展開は決まっているのに、自分の実力が足を引っ張っている!!。・゜゜(ノД`)


死の谷へご案内します

風間翔一

川神学園2年F組所属

風間ファミリーのリーダー、大和とは幼馴染みになる。両親達が仲が良く、大和からすれば一番古い友人になる。でもファミリーには入らない。この小説では大和が百代の舎弟ではないので、翔一自身のカリスマと器の大きさを気に入ってファミリーに加入している。スキンシップもされているが、今のところ意識はしていない様子。バイト三昧でやっぱり時折旅に出る。

 

2009年4月26日(日) 深夜

歓楽街 廃ビル

 

ミシッ ギシッ

 

「ぐぅぅ…」

 

(完全に極められた、自由に動かせるのは両足と左腕だけ)

 

一度深く極まった絞め技を外すのは、フィジカルに相当差がないと難しい。背面を取られているなら更に難易度が上がる。

 

 左腕で外すのは不可能、右腕を掴まれているから回転も出来ない。俺が外すのではなく、相手に外させるしか方法は無い!!

 

メキッ メキッ

 

(お…落ち……る…)

 

 

 

 

 

「これで終わりだ」

 

 なかなか苦戦したが、何とか絞め技を極める事ができた。鼻骨折れたかな?かなり痛えし。

 

(指でも折りたかったが、親指を包むように拳を握ってやがる。まだ諦めてねえのか?)

 

 その根性には敬服するが、根性では絞め技は外せない。落ちるのも時間の問題だ。

 

トン

 

(…?)

 

 タップのつもりか?

 

トン

 

 生憎落ちるまで外すつもりは無い、タップしても無駄だぜ。

 

トン

 

 

 

 

 

(…あった………ろ……つ…)

 

 もう限界が近い、今の俺にできる抵抗は痛みを与える事くらいだ。左腕が届く範囲で絞め技を外す程の痛みを与えられる部位、筋肉の薄い肋骨の間しかない。これは賭けだ、痛みを与えたからといって外すとは限らない。だが、緩みさえすれば脱出できる可能性が上がる。

 

タップするフリで肋骨を探し

 

左手を置いた大和は

 

右手の拳を解き

 

シャツを掴んで上半身を制し

 

肋骨の間を狙って

 

親指を全力で捩じ込んだ

 

「ぐがあぁ!?」

 

拘束の緩んだ後の大和の行動は速かった

 

釈迦堂が右腕を掴んでいた両手を離すと

 

右腕を引き足と首の間に入れ隙間を作り

 

回転し床に片膝を着け

 

左腕と右足で下半身を押し

 

強引に頭を引き抜いた

 

「ッハァ、ハァーッ、ハァーッ」

 

(き…距離……を…)

 

フラつきながらも下がろうとするが

 

釈迦堂も素早く起き上がり

 

追撃を掛けようとしていた

 

 

 

 

 

(トンデモねえやり方で脱出しやがって!!)

 

 脇腹には激痛が残っている、シャツに血が染みていて皮が少し裂けたのが分かる。傷は浅いから徐々に痛みも引いていくだろうが、待っている暇は無い!!

 

(コイツは本当に強い、呼吸を整えられる前に勝負を決める!!)

 

 さっきの攻防で確信した、意識がある限りコイツは負けを認めない、諦めるなんてあり得ない!!時間を稼がれ、態勢を整えられても此方が不利になるだけ。一気に攻めて倒しきる!!

 

(リングで吹き飛ばせば爆発で見失う可能性がある、ここは打撃で倒す!!)

 

 奴は足下が覚束無い程疲れている、今なら大技で決められる!!

 

その技は

 

川神流の数多くの技でも

 

使える者が限られる大技

 

あまりに強力で危険な為

 

禁じ手として伝わっている

 

それの名は

 

「川神流禁じ手、富士砕き!!」

 

 

 

 

 

(頭が回らない……ただ…決めに来るのは……分かってる…)

 

 時間を掛けて失敗したんだ、打撃で一気に決めるつもりだろう。ただ、今の状態で防ぐ自信は無い。

 

(…せめて……あと…15…いや…10秒)

 

 何とか時間を稼ぎたいが、会話する余裕も無いくらい呼吸が乱れている。

 

(アレしか無い…)

 

「川神流禁じ手、富士砕き!!」

 

相手は一度両目を潰されている

 

そこを利用する

 

今度も上手く潰せるとは思っていない

 

ただ攻撃を中断させるのが目的

 

袖からフラッシュライトを取り出し

 

釈迦堂へ向け点灯する

 

「チッ!?」

 

(一度使った手だ、目を眩ませるのは無理だろうが、一度喰らったからこそ攻撃を中断し避けようとするだろう)

 

 狙い通り、フラッシュライトを向けた瞬間攻撃から回避に移行した。ライトを点けたまま、距離を離していく。

 

「同じ手を喰らう程間抜けじゃねえ!!」

 

左に回避した釈迦堂が

 

身を屈めながら突っ込む

 

(フラッシュライトはここまでだな)

 

 ライトを消し、窓から外へ投げ捨てる。ライトを点けたままだと此方の視界も悪くなるし、相手に取られて利用される恐れもある。

 

(タックルからグラウンドに持ち込む気か?)

 

 打撃にしては体勢が低すぎる、マウントを取るつもりか?

 

(膝蹴りでカウンターを狙うか?いや、ここは付き合わずに距離を置く)

 

 階段へ向け走り出す、オッサンも追いかけて来たが構わず階段を駆け上がる。広い空間を離れ狭く段差があり、打撃を当て辛い階段で戦う!!

 

(オッサンも気付いて警戒している。階段を駆け上がらず、歩いて登って来ている事が何よりの証拠だ)

 

 此方が態勢を立て直す前に勝負を決めたかった筈、だが今は時間を掛けてでも警戒を怠らない選択をした。確実にこの階段で仕掛けて来ると確信している。

 

(普通なら戦う事がない場所での攻防は俺に分があるか、最悪五分五分と判断しているが…)

 

 相手は川神流の技を使い、これまでの攻防からも相当の使い手だと確信している。俺の知らない技や技術で仕掛けて来る可能性もゼロではない。

 

(…考え方を変えよう、格上相手に五分五分まで持ち込めたと)

 

 元々予定外の相手との喧嘩だ、とっくに俺の計画は狂っている。だが、自分が強くなったか確認するのにこれ程都合の良い相手はいない。

 

(あらゆる手を使って勝つ、勝って俺が強くなった事を証明してやる!!)

 

 

 

 

 

(結局決められなかったな。それどころか時間を稼がれ、ヤりづらい場所に誘われる。失態ばかりだな、今日は)

 

 何処の誰とも分からないガキに粘られ、手古摺っている。しかも向こうは勝つ気満々ときた。

 

(こんな奴が隠れていたのか…)

 

 ガラスが散乱している階段での攻防、勝率を少しでも上げる為に誘っているとバレバレだが…

 

(そんな小細工で俺に勝てるかよ!!)

 

釈迦堂はゆっくり階段を登る

 

大和が居るであろう上のフロアへ

 

 

 

 

 

(向こうから売ってきた喧嘩だ。好戦的な性格をしている以上、自分から売った喧嘩で退く訳がない)

 

 さっきまで戦っていたフロアから2階も登っていない、そろそろ姿が見える頃だろう。ガラスを踏み潰す音も聞こえてきた。

 

(これ以上長々と戦っても俺の勝率が下がるだけだ、短時間で終わらせる)

 

 ガラスを粉々に踏み潰し、両手に握り込む。後はアイツをブッ潰すだけだ。

 

「こそこそ逃げ回るんじゃねえよ」

 

最後の攻防が始まる

 

 

 

 

 

(路地裏でしてやられたな、アレを思い出すぜ)

 

 狭い空間を活かした攻防だった、この階段も似たような狙いで選んだ筈。余程特殊な場所で戦う事に自信があるということだろう。

 

(この狭さと段差なら、頭から投げ落とすのが上策だな)

 

 読まれている可能性もあるが、此方が低いから蹴りに注意すれば掴むのは容易いだろう。掴みさえすれば背負い投げで決める。

 

 

 

 

 

(必ず掴みに来る、投げ落とすか壁に叩きつけるかのどちらかだ)

 

 向こうの方が低い位置に居る、掴んでしまえば投げ落とすのは簡単だと思っているだろう。頭を掴んで壁に叩きつける可能性もあるが、自分より身長が高い奴の頭を低い位置から掴むのは難しい。また、威力も考えると投げ落とす確率の方が遥かに高い。

 

(胸ぐらと袖を掴みに来る!!)

 

釈迦堂が階段を駆け上がる

 

右腕を胸に伸ばし

 

左腕は大和の右袖を掴みにいく

 

(防がずにあえて掴ませる)

 

大和は胸ぐらと右袖を掴ませると

 

釈迦堂の顔を左手で掴む

 

手の内に握り込んだガラスが

 

両目に入るように

 

「ッ!?」

 

釈迦堂は慌てて両目を瞑る

 

大和はその隙に釈迦堂の左側から

 

同じ段へ降りる

 

顔を掴んだままの左腕で

 

後頭部を壁に叩きつける

 

ゴガッ

 

左腕を顔から離し

 

胸ぐらを掴んでいる右腕を掴む

 

両腕を使えない為がら空きの股間に

 

左膝で金的

 

ドズッ

 

「グッ!?」

 

右腕を掴んでいる左腕を振り払い

 

逆に掴み返し脇に頭を差し込む

 

右腕を掴んでいた左腕を

 

釈迦堂の股に通し担ぎ上げる

 

(何度も俺の打撃を防ぎやがって!!)

 

 その技は消防やライフセービングでは人間を担ぎ上げる技術だが、プロレスでは様々な派生技が存在する技として使われている。いわゆる…

 

ファイヤーマンズキャリー

 

(段差がある分、より高い場所から落とす事ができる。この技が耐えられるかよ!?)

 

大和はファイヤーマンズキャリーではなく

 

派生技をフィニッシュに決めていた

 

その技は

 

別名、死の谷落としと呼ばれる

 

「これで終わりだ」

 

釈迦堂を担ぎ上げたまま

 

頭から落ちるように

 

自分も横に倒れこみながら階段を跳んだ

 

その派生技の名は

 

 

 

 

 

デスバレーボム

 

 

 

ドゴォン

 

 

 

 

 

大和は怪しげなオッサンを倒した!

チャラチャラシテンジャネー♪

大和はレベルが上がった!

大和は"死の谷落とし(デスバレーボム)"を覚えた!

大和のちからが3上がった!

大和のかしこさが2上がった!

大和のすばやさが5上がった!

大和は怪しげなオッサンを川神院に通報した!


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