俺がアイツと戦えないのはどう考えてもお前らが悪い   作:魔法使い候補

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もはや書くことが無い。(;´д`)
感想お待ちしてます。ヽ(・∀・)ノ


俺はタクシーを召喚するぜ!!

釈迦堂刑部

元川神院師範代だったが、精神面の問題を克服できなかったとして破門される。その後、政府の諜報員として活躍するが辞職し、今は無職。

現在は板垣姉妹の素質を見込み、武術を教えている。

 

―――――――――――――――――――

 

川神院には(かつ)て二人の師範代がいた

 

一人は現在も師範代を務めているルー

 

もう一人は既に破門された釈迦堂

 

優しく努力家なルーと

 

才能に恵まれ実力を重視する釈迦堂

 

二人は結局相容れる事なく雌雄を決する

 

獣のような男は自分の力を持て余し

 

裏の世界で猛威を振るう

 

2009年4月26日(日) 深夜

親不孝通り 路地裏

 

「板垣竜兵をヤったの、お前か?」

 

 このオッサンが何者かは知らないが、川神百代とダブった時点で俺の方針は決定した!!板垣竜兵の名前を口にしたんだ、まず板垣姉弟側の人間だろう。変に怪しまれるのは最悪、無関係を装ってこの場をスマートに離れるのが理想、もし戦う事になればあの廃ビルまで誘導するのが絶対条件。これはただの勘だが、俺では真正面から戦ってたら確実に負ける。情けない、ビビってんのか?俺が!?

 

「まさかぁ、俺みたいな一般人が敵うわけないじゃないですか」

 

 上手く答えられたと思う。冗談でしょ、といった感じで。我ながら愛想笑いには自信がある。

 

「そっかー、悪かったな。引き留めて」

 

「いえいえ、それでは俺はこれで」

 

 よし!!良い感じだ。だがまだ焦るな、オッサンの姿が見えなくなるまでは急ぐな。ダッシュでここを離れるのではなく、近くのタクシーにでも乗ってスマートに離れる!!相手に不信感を与えないことを最優先に!!

 そう段取りを決め、背を向ける。そして速くもなく、遅くもない速度で歩き出そうとしたとき…

 

嫌な予感がした

 

まるであの日

 

勝利を確信したあと

 

無様に敗北したときのような

 

 

 

 

 

 

 理屈なんて無い。強いて言えば、今まで培ってきた経験から導き出した結論。聞いていた特徴に該当する奴がいたから呼び止めた。質問でもして確認する。結果は当然シロ。ここで肯定する奴はいないだろうが、少なくとも表面上は怪しいところは無い。

 だが、どうしても気になる。受け答えも完璧、オカシイところなど一ヶ所たりとも無いのに。だからこそ不自然、例えるなら詐欺師のような胡散臭さを感じた。

 

(諜報員をやってた頃を思い出すぜ、居たよなあ息をするように嘘をつく奴)

 

 標的は既に背を向けて立ち去ろうとしている。慌てず騒がず、ごく自然な速さで。よくやるぜ、普通の奴なら疑う事無く立ち去れただろうが…

 

(悪いが俺は、手を出してから確かめるタイプなんだよ)

 

 確証は無いが、自分の勘に従って仕掛ける。もはや合ってるのか間違いなのかさえどうでもよくなっている。せっかく面白そうな奴を見つけたんだ、逃がすものか。

 

 

 

標的を捕まえようと

 

釈迦堂は手を伸ばした

 

 

突如振り返った標的に蹴り飛ばされた

 

 

 

 

 

 嫌な予感がした。ここにいるのがこのオッサンではなく、川神百代だったとしたら。このまま立ち去らせるなんてあり得るだろうか?恐らく確証を得ぬまま攻撃するか、逃がさぬよう捕まえようとするか。どちらにしても、大人しくここを離れる事ができないのは間違いない。

 

もしこいつが

 

川神百代と同類の

 

戦闘狂(バカ)だったら

 

 これは賭けだ。杞憂かもしれない、俺が気にし過ぎなだけかもしれない。何も起こらないという自分に都合の良い甘い幻想、余計なことをして状況を悪化させるだけなのではという危惧、それらを捨て去り自分の直感を信じる!!今俺が一番やってはいけない事は、何の根拠も無い自分に都合の良い展開に期待する事だ!!

 

そう結論を出し

 

俺は

 

振り向き様

 

敵を蹴り飛ばした

 

ドガッ

 

「チッ!?」

 

(この近距離からの蹴りを、片腕でとはいえ防ぐのかよ!?)

 

 やっぱり俺を捕らえようとしていたのか、右腕が俺に向かって伸びていた。咄嗟に左腕でガードし、威力を殺すため後ろに飛ぶなど、明らかに素人じゃない!?だが、距離を開ける事には成功した。前もって開いていたゲンさんの番号にワン切りする。

 

(指定していた場所まで約200m、ダッシュで20秒弱ってところか)

 

 折り返しでワン切りしてくるまで時間を稼ぐ。出来る限り無傷でいたいが、最悪重傷だけは避ける!!俺の勝負所は此処じゃない、何としてもあの廃ビルに誘い込む。

 

「やるじゃねえか坊主。お前の(ブラフ)、いい線いってたぜ」

 

 やはり見抜かれていた、洞察力もかなりのモノと見て間違いない。経験、技術、場数、全て俺より上なのを感じる。俺が勝つには、策を使ってそれらを活かせない状況を作る必要がある。

 

「…あんた、何者だ?」

 

 馬鹿正直に答えるとは思っていない、会話で少しでも時間を稼ぐのが目的。仮に答えたとしても確かめる時間が無い、少なくともこの喧嘩では役に立たないと思われる情報。だからこそ答える可能性は低いながらも有るが…

 

「俺か?…勝てたら教えてやるよ!!」

 

 そう言いつつ此方に駆けてくる。まあこれからぶっ倒そうとしている相手に教える訳無いわな。

 

「俺が勝ったらって、それじゃお前口がきけなくなってるだろうが」

 

 悪態をつきつつ、サークリングで一定の距離を保つ。殴りに来るか?蹴り?それとも掴みに来る気か!?狙いが絞れない!!

 

「ハッハッ♪面白え、やってみろ坊主!!」

 

 右腕を引きながら此方に踏み込んで来る!!生半可な攻撃じゃ止められない、回避に専念しろ!!

 

「川神流、無双正拳突き!!」

 

「!?」

 

 コイツ、川神院の技を!?的の広い胴を狙った拳を、かろうじて肘で防ぐ。が、勢いは殺せず数m吹っ飛ぶ。マジで痛え、後でボコボコにしてやる!!

 

「よく反応できたなオイ、その調子で頑張ってくれよ」

 

 追撃を掛けに来た、会話で時間を稼ぐ隙もない。だが、奴が川神院の技を使える事が分かったのは大きい。傷を一瞬で癒せる奴がゴロゴロいるとは考えたくないが、否定はできない。

 

(ここは危険を犯してでも確かめる!!)

 

 追撃を避ける為、バックステップで更に距離を開ける。十分に反応出来る間合いを保つ。

 

「下がってばかりじゃ捕まっちまうぞ」

 

 確かに狭い路地裏で下がってばかりでは、すぐに壁に追い込まれるが、俺が下がったのは何も追撃を避ける為だけじゃない。()()()を使えるか確認する為には、頭部へ出血するくらいの傷を与えるのが理想的。より狭く行動範囲を限定し、回避と防御が困難な場所へ誘い込んだ。当然、俺が攻撃を受ける確率も上がるが、それでも今は確認を優先する。両腕を下げ気味にし、半身に構える。

 

「誰がてめえみたいなオッサンに捕まるかよ、寝言は寝て言え」

 

 このオッサンも、自分の実力を疑わないタイプだろう。これまでの言動からしても、戦う事に楽しみを求める戦闘狂と見て間違いない。だったら此方の誘いに乗ってくる確率はかなり高い。罠の可能性が有ってもねじ伏せようとしてくるだろう。

 

「上等だ、簡単に倒れるんじゃねえぞ!!」

 

 人が二人通れるくらいの狭いスペース、投げ技や絞め技を仕掛けるには狭すぎる。まず間違いなく打撃でくる、その打撃もこれだけ狭いとかなり限られてくる。先程のような正拳突きか、前蹴りやタックルで倒してマウントを取りにくる。(いず)れにせよ直線的でリーチの長い打撃か組んでくる!!加えて俺の構えは顔面か膝くらいしか有効部位が見えない。更に狭いスペースでは、心理的に蹴りが打ちづらくタックルも仕掛けにくい。確実に顔面へ殴りかかってくる!!

 

(ハイ、馬鹿が引っ掛かった)

 

 予想通り、左の上段順突きで顔面を狙ってきた。下げ気味だった左腕を、肘から先だけ振り上げる感じで弾く。逆突きが届かないように、左足を相手の左足の外側へ踏み込み、左腕の外側へ回り込む。左手でシャツを掴み引き寄せながら右肘でカットを狙った肘打ち!!

 

スパッ

 

「!?」

 

 そのままの勢いで位置を入れ替える。かろうじて肘が掠り、なんとかカットできた。それにしてもコイツ、首を捻って避けようとしやがった。もう少し早く反応されたらカットすらできなかったな。まあこれで確認できる。頭部は派手に出血する、目に血が入る前に止血しようとするだろう。

 

「素敵なメイクだぜ、オッサン」

 

(使えるのか、使えないのか?)

 

「まさか出血させられるとは、お前イイな!!」

 

 止血しない、少なくとも一瞬で癒せる技は使えないと判断する。後は廃ビルへ行き待ち伏せる、恐らくコイツも、ある程度の距離なら気を辿って追跡できる。誘い込むのは容易い。

 

ヴゥ

 

 ゲンさんがワン切りしてきた、指定した場所まで急いで行く。

 

「悪いがここまでだな、サラバだ!!」

 

「!?」

 

 振り返り駆け出す!!オッサンも逃がさぬよう追いかけてくる!!死ぬ直前をイメージしろ!!

 

"リミッター解除"

 

 劇的に速くなる訳ではないが、しないより速くなるのは確かだ。200mなら数秒はタイムが縮む。

 

(あと、100mちょっと)

 

 オッサンもなかなか速い。中年のクセに、何処にそんな体力が有るんだよ!?

 

(50m切った)

 

 見えてきた、ゲンさんがタクシーのドアを開けて待っている。あ、こっちに気付いた。

 

「急げ、捕まるぞ!!」

 

 叱咤されながらも走る!!心臓が凄い動いてるのが分かる。転がり込むように乗った直後、タクシーが勢い良く発車する。

 

「さっき言った場所まで急いでくれ」

 

 バテバテの俺に変わって、ゲンさんが目的地を伝えてくれる。勝負はこれからだ、気を引き締めないと。

 

 

 

 

 

 

「やるな、アイツ」

 

 まさかタクシーまで用意してやがるとは、認識を改める必要があるな。竜兵の件も、仕組まれていた可能性が有る。

 

(窮地に陥っても切り抜ける術に長けている)

 

 気を辿れば追跡できるが、まず確実に罠が張ってあるだろう。どうする?追うか?

 

(考える迄もないか、強い奴と戦いたかったんだろうが、俺は)

 

 

 

 

 

 

大和は"ワン切り"を使った!

タクシーが現れた!

大和はタクシーに乗って逃げ出した!

怪しげなオッサンは大和を追いかけた!


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