俺がアイツと戦えないのはどう考えてもお前らが悪い   作:魔法使い候補

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じわじわ書き続け完結まで頑張ります!


僕が彼に懐く理由

川神一子

川神学園2年F組所属

川神院の総代、川神鉄心の孫。川神百代の妹にあたる。忠勝と同じ児童養護施設"白い家"の出身で旧姓は岡本。里親が亡くなったのを切っ掛けに川神院に引き取られる。天真爛漫(てんしんらんまん)、アホの子、マスコット。渾名(あだな)はワン子。夢は川神院の師範代になり、総代となるであろう姉、百代のサポートをする事。

勇往邁進(ゆうおうまいしん)!!ι(`ロ´)ノ

 

―――――――――――――――――――

『うむ。冬馬は自慢の息子よの』

 

『お前なら、私のようになれるさ』

 

『おおお!冬馬!早くもそのファイルを見つけられたか!偉いぞ!』

 

『何が表で何が裏か…世の中面白いだろ冬馬』

 

『冬馬。お前なら私が築き上げたこの病院の表も裏も、全てを安心して継がせられる』

 

『小さなモノから少しずつ、悪い事をしていこう』

 

『さぁどんどん知識を身につけて悪い事したりいい事したりしよう、どんどんどんどん』

 

『はっはっは大丈夫。お前なら私のようになれるさ』

 

 

 

『――なんたって…』

 

 

 

『私の血を引いているもんな!』

 

2009年5月4日(月) 夜明け前

親不孝通り

 

依頼を無事に成功させた大和、忠勝、巨人の三人は帰途に就いていた。

 

「いやぁ~、今日も働いちゃったねえ。キャバ嬢のお姉さんも喜んでたし、一件落着!!」

 

「お前さんはキャバ嬢の姉ちゃんとイチャイチャしていただけだろ。忠勝は良くやったな。ストーカーだろうと怪我が無い方が良いに決まってるからな」

 

「怪我の程度によっては、こっちが訴えられる可能性が出てくるからねえ。流石ゲンさん、頼りになるぅ~」

 

「よーし、お前ら、風呂に入っていこうぜ。オジサンが奢ってやる」

 

「…?この辺に銭湯なんてあったか?」

 

「おう、泡の風呂だがな」

 

「いらねぇよ!」

 

「ガチか…理解はするが俺は勘弁してくれよ」

 

「違う、好きな奴はいる」

 

「…………」

 

「そいつをこんな所で思い出すのも嫌だぜ…」

 

「純なのな、直江はどうする?」

 

「俺も止めとくわ、初めては惚れた女にって決めてるから」

 

「お前ら見かけによらず純情だな。じゃあ、俺だけ行くわ」

 

「行くのかよ!」

 

「薬は持ってる。これで硬さと持続力は完璧だ」

 

「んなこと訊いてねえ」

 

「じゃあな、気を付けて帰れよ」

 

 

 

 

 

巨人が一人で風呂に行った後、大和は余計なお世話と理解しつつも忠勝に話し掛けた。

 

「ゲンさんがさっき言ってた好きな奴ってさ、ワン子の事だよね?」

 

「…………」

 

「告白とまではいかなくても、アタックを掛けたりしないの?」

 

「…………」

 

「あまり人の恋路に口を出したくないけど、ワン子が相手なら()ずは好意を伝えないと何も始まらないと思うよ」

 

「…………」

 

「………まあ、俺に出来る事があれば言ってくれよ。今は九鬼しか告白して来てないけど、多分ワン子はモテるから口説くなら少しでも早い方が良い」

 

「…………」

 

「んじゃ、早く帰って寝ようぜ。最近生活リズムが滅茶苦茶だから眠くてしょうがない」

 

(………我ながら女々しいぜ)

 

 こっちが面倒見ているつもりが、痺れを切らして向こうが世話を焼こうとしている。俺が一子に好意を持ってる事を見透かされ、行動に移らねえからと急かしてきやがった。アイツも一子とは長い付き合いだから思うところがあるんだろう。

 

『タッちゃーん!!』

 

(見守ってるだけでいいと思ってたが、俺にとっては自分で幸せにしてみせるのが一番だよな)

 

「おい、直江」

 

「ん~、何?」

 

「………………(ありがとな)

 

2009年5月4日(月) 夜

箱根の旅館

 

「大和とゲンさんをファミリーに入れたいからお前ら意見を出していけ!」

 

「「「「「「「………ハ?」」」」」」」

 

夕食を終えゆっくりしていた時の事。箱根に旅行に来ていた風間ファミリーは、翔一のいきなりの発言に一瞬呆けた。

 

「おいおいキャップ、いきなりどうした?先日クリスとまゆっちが加入したばかりじゃねーか」

 

「別にいきなりじゃねーぞ。大和とゲンさんは前から誘ってるんだ。クリスとまゆっちが加入して女が五人、男が三人になっただろ。どうせなら後二人男を入れて、五人五人にしてぇなぁと思っただけだ。ホラ、ドンドン自分の意見を出していけ!」

 

「まあ俺様は特に反対しないぜ。大和は昔から知ってるし、ゲンも強面だが性格は悪くねえ。女子の方が強いってのもカッコがつかねえし、アイツらなら打って付けだ」

 

「僕も特に反対する理由はないかな。クリスやまゆっちの時とは違って、ある程度どんな人柄なのか分かってるしね。ただ、あの二人がすんなり入るとは思えないなぁ」

 

「アタシは賛成するわ♪大和もタッちゃんも雰囲気は恐いけどいい人達よ!まあ、モロの言うように入ってくれるとは思えないけど…」

 

「私は反対かな。二人とも悪い人とは思わないけど、深く交流するのは危険だと思う。親不孝通りとか治安の悪い場所によく行くみたいだし、今まで通り浅い付き合いの方が良いんじゃないかな?」

 

「自分は直江の軽い性格が気に入らん。源殿はいい人だが、アイツは小細工はするし嘘もつく。反対だな」

 

『クリ吉は反応(リアクション)が面白いからからかわれてるんよ』

 

「わ、私は賛成です。確かにお二人共少し恐いけれど、いい人達です!大和さんだって一見軽く見えますが、気遣いも出来る優しい人です」

 

「…………」

 

「今のところ賛成が三人、反対が二人、様子見が二人か。モモ先輩は?」

 

「………私は反対だな。特に、直江は私がいる限り絶対に入らないだろ。」

 

そう言うと百代は、部屋を出ようと立ち上がった。

 

「アレ?モモ先輩何処行くんだ?」

 

「ちょっと夜風にあたって来る。後は勝手に決めてくれ」

 

 

 

 

 

「珍しいね、モモ先輩が反対するの」

 

「そもそも大和とモモ先輩が面識あったなんて知らなかったぜ。ワン子は知ってたか?」

 

「う、うん。…お姉様と大和、喧嘩した事があるらしくて…島津寮や2年の教室に近寄らないのも多分それが原因だと思う…」

 

「モモ先輩と喧嘩って…無謀ってレベルじゃねーぞ。よく生きてたな大和の奴」

 

「喧嘩っていっても口喧嘩とかでしょ?流石に暴力でモモ先輩に勝とうなんてしないだろうし…」

 

「…それがね…喧嘩を売ったのはお姉様かららしくて。強い問題児がいるらしいって話を聞いて喧嘩を吹っ掛けたって…」

 

「「「「「「………(;・ω・)」」」」」」

 

「私はその時の喧嘩で負けた大和が入院して初めて知って…お姉様にかなりキツく言っちゃって…それ以来お姉様から勝負を申し込む事はかなり減ったわ…」

 

「それ、ルー先生や学長は知ってるの?」

 

「知らないと思う。私は大和に口止めされてて言ってないし。入院していた期間も大和が途中で抜け出したからかなり短いし…お姉様が素人相手に喧嘩を吹っ掛けた事すら知らないんじゃないかな?」

 

「キャップ、どうやら大和を誘うのは無理があるみたいだぜ…」

 

「流石に喧嘩した相手と同じグループには入りたがらないよね」

 

「そーだな、下手に事情を探ろうとすれば大和の事だ。余計なお世話だ!とキレられかねない。この話は極力触れないようにしよう」

 

2009年5月5日(火) 夕方

駅前商店街 梅屋

 

葵冬馬は珍しく一人で行動していた。正確には人に会う為に、一人で待ち合わせ場所に来ていた。

 

(この店に居る筈ですが…)

 

「おい!こっちだ、こっち!」

 

待ち合わせ相手と(おぼ)しき男が冬馬に呼び掛ける。待ちきれなかったのか、それとも待つ気はなかったのか、既に豚丼を食べている。

 

「久しぶりだなぁ。最近ちょっと忙しくて会えてなかったからな」

 

「そうですね。相変わらず息災なようで安心しましたよ。()()()さん」

 

 

 

 

 

山籠りを終えた釈迦堂は、葵冬馬からの呼び出しもあり久し振りに梅屋に来ていた。

 

「………そうですか。板垣姉妹と共に川神院で行動を制限されていたと」

 

「ああ、竜兵の奴はまだ逃亡しているようだが暫くは動けねえだろうな。アイツも結構ボコられてたし、俺や辰子達もまだダメージがある。何よりルーや鉄心の爺さんに警戒されている事が問題だ。"カーニバル"の実行は難しいかもな」

 

「……仕方ありません。私達が甘かったのでしょう。まさか釈迦堂さんが負けるなんて思ってもいませんでしたし、竜兵にも"カーニバル"が始まるまでは大人しくしているように言っておくべきでした。改めて思い知りましたよ。この世に絶対は無いと」

 

「だな。俺もまさか負けるとは思ってなかった。だから負けちまったんだが…」

 

(そう、負けるとは思ってなかった。自分が負ける可能性を考えなかったから、最後の攻防で競り負けた)

 

 今にして思えば、直江大和は自分より強い相手に勝つ為に努力していたのだと思う。問題は努力し始めた理由だ。ルーから聞いた話じゃ昔から強かったみたいだし、竜兵のように努力しそうにない。(いず)れにせよ、もっと調べる必要がある。

 

「それより、釈迦堂さんに勝ったのはどんな人だったんですか?川神院の人間ではないんですよね?」

 

「お前と同じ、川神学園の生徒だよ。名前は直江大和っていうんだが知ってるか?」

 

「!?」

 

2009年5月6日(水) 深夜

親不孝通り

 

振替休日を含めたゴールデンウィークの最終日。大和は宇佐美巨人と共に親不孝通りで夜回りをしていた。

 

「よりによって此処かよ。ガラの悪い奴等は粗方ボコってんだけど」

 

「まあこれも仕事だ。やらないって訳にはいかない。噂じゃ妙なクスリも出てきてるって話だ。サボるなよ」

 

「へーい」

 

 

 

 

 

「結構見て回ったが、クスリを売ってる奴は見なかったな。川神学園(ウチ)の生徒も夜遊びしてないみたいだし、今日はもう帰るか」

 

「明明日ボる気の奴等くらいだろ。連休の最終日に夜更かしするような奴は。クスリの方は今後も注意する必要があるだろうけど」

 

「騒がしくなれば警察が動くだろ。オジサン達はあくまで一般人なんだから、仕事以外で関わるなよ」

 

「分かってる。大事な時期に余計な事に首を突っ込むような事はしねえよ」

 

(そうさ、余計な事をしている暇は無いんだ。川神百代は卒業したら武者修行に出る!)

 

 アイツの事だ、強者を求めて世界中を飛び回るに決まってる。確実に接触出来る今年度が最後の好機(チャンス)だと思え。予定では8月中に倒すつもりだが、予定通りに事が運ぶとは限らない。余計なリスクを負っている余裕は無い。

 

「ならいい、忠勝にもそう言っといてくれ。…そういえば直江、お前は忠勝にかなり(なつ)いてるが、忠勝の何処が気に入ったんだ?」

 

「……?どういう意味だ?」

 

「いや、俺が言うのもなんだが忠勝は誰に対しても無愛想だろ。人付き合いも消極的で不器用な接し方しか出来ない。普通なら最低限の付き合いで済ませるようなタイプの人間だ。親としては嬉しいが、理由が分からないから不思議に思ってたんだよ」

 

「………理由ならあるぜ。ゲンさんは俺にとってある意味理想なんだよ」

 

「理想?忠勝とお前はあまり似てないだろ。典型的な不器用な奴と、要領よく立ち回る奴。理想と言われてもピンとこないな」

 

「放っとけ。少なくとも、俺はゲンさんを尊敬している。知り合えて良かったと思っている」

 

(そう、本当に尊敬している。…俺は親父のようにはならない!)

 

「………そうか。なら、これからも仲良くしてやってくれ。アイツも態度こそアレだが、楽しんでいるみたいだしな」

 

「言われるまでもない」

 

(…ん?葵からメールか)

 

「どうした?何か問題でもあったか?」

 

「いや、何でもない。それよりさっさと帰って寝ようぜ」

 

 

 

 

 

『決闘の日時を決定しました』

 

『5月8日、明後日に決闘を行いたい』


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