俺がアイツと戦えないのはどう考えてもお前らが悪い   作:魔法使い候補

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今更ですが、この小説には暴力や犯罪等の描写がありますが、作者はそれらを推奨している訳ではありません。良い子の皆は勿論、悪い子もどちらでもない子も絶対に真似しないで下さい。


君がッ 泣いても 殴るのをやめないッ!

井上準

川神学園2年S組所属

葵冬馬、榊原小雪と仲が良いロリコンハゲ。自尊心の高い生徒が多いS組では珍しく人当たりが良い好青年にして変態紳士。『一緒にお風呂に入ったりしたい』等の危険な発言もあり、似非(えせ)紳士の疑惑あり。続編が出る度に対象年齢が下がっていると思ったのは作者だけではない筈。

 

"煉獄(れんごく)"とは

 

片手型

・裏拳(鳩尾(みぞおち)

・裏打ち(顔面)

・鉄槌(金的)

・肘打ち(側頭部)

・手刀(顔面)

 

両手型

・鉤突き(脇腹)

・肘打ち(側頭部)

・両手突き(顔面+金的)

・手刀(首)

・貫手(鳩尾)

 

片足型

・下段廻し蹴り(膝関節)

・中段廻し蹴り(脇腹)

・下段足刀(膝)

・踏み砕き(足甲)

・上段足刀(顎)

 

両足型

・左下段前蹴り(膝)

・右背足蹴り上げ(金的)

・右中段前蹴り(下腹)

・左中段膝蹴り(鳩尾)

・右上段膝蹴り(脇腹)

 

片手片足型

・肘振り上げ(顎)

・手刀(側頭部)

・鉄槌(脳天)

・中段膝蹴り(鳩尾)

・背足蹴り上げ(金的)

 

両手両足型

・左上段順突き(顔面)

・右中段掌底(鳩尾)

・右上段孤拳(顎)

・右下段廻し蹴り(膝関節)

・左中段膝蹴り(脇腹)

 

両手両足頭型

・右中段廻し蹴り(脇腹)

・左上段後ろ廻し蹴り(側頭部)

・左中段猿臂(えんぴ)(胸部)

・右下段熊手(金的)

・右上段頭突き(顎)

 

以上の三十五手の組み合わせで出来た連打

 

左右対称の動きも合わせると七十手にも及ぶ五手のパターンを選択して打ち続ける事で、相手の反撃を許さずに一方的に殴る事を可能とした技である。三打を綺麗に続けて入れれば、あとは体力の続く限り打ち続ける事が容易に出来る。

 

2009年5月2日(土) 深夜

歓楽街

 

肝臓を狙った鉤突きを喰らった不良は、痛みと苦しさからナイフを落とし倒れまいと両足を広げて踏ん張った。

 

「!?ぐぇ…」

 

時間にすれば1秒にも満たない一瞬。前屈みになり視界が下がった不良の死角から、大和の肘打ちが側頭部に飛んで来る。

 

ゴゴッ

 

間髪入れずに両手突きが顔面と股間に命中する。不良は既に、自分が何を喰らったのか分からない程視界が動き、反撃も(まま)ならないくらい体勢が崩れている。"煉獄"で一番難しい初手~三打を綺麗に打ち込んだ今、不良が"煉獄"から逃れる術は無くなった。あとはひたすら連打が止むのを祈るしかない。

 

手刀、貫手、肘振り上げ、手刀、鉄槌、中段膝蹴り、背足蹴り上げ、左上段順突き、右中段掌底、右上段孤拳、右下段廻し蹴り、左中段膝蹴り、裏拳、裏打ち、鉄槌、肘打ち、手刀………

 

 

 

 

 

初手の鉤突きから1分程経った頃、大和の"煉獄"は不良が崩れ落ちると同時に終わった。

 

「ッハァー、ハァー、きっつ~」

 

(とりあえず限界まで打ち続けてみたが、1分ちょっとが今の限界か)

 

 さっきの"煉獄"の課題は

・繋ぎ目のトコで考えてしまい、技を繰り出すタイミングが遅れる。

・呼吸を入れるタイミングが掴めず、息を止めたまま打ち続ける時間が長過ぎた。

 

(繋ぎ目を消す事と呼吸を入れるタイミングを掴む事が出来れば、もっと余裕を持って打ち続ける事が出来そうだな)

 

 あとは寝ている奴等全員の携帯を使って、俺の写メを持っている奴等を誘き寄せる。敵を誘き寄せる事に成功した以上、証拠になりかねない写メを残しておく理由は無い。携帯を止められる前に写メを全て削除し、他にデータが移されていないか確認する。今夜中には終わらせる。

 

(全員の携帯を没収し、リーダー格っぽい奴を一人拉致して拷問で吐かせるか)

 

 警察に通報されると面倒だ。コイツらも凶器準備集合罪等の犯罪を犯していたから通報される可能性は低いが、念の為没収した携帯は全て破壊して、証言以外の証拠は全て消す!!

 

2009年5月3日(日) 朝

宇佐美代行センター

 

「それでこの携帯を処分してほしいって、…全部でいくつあるんだよコレ!?」

 

「全部で39ある。抜き取る時は指紋も残さないように手袋を嵌めてたし、誰にも目撃されなかった。俺の外見が分かるようなデータは全て削除したから、あとは携帯そのものを破壊するだけなんだよ。なんならバイトを手伝うし、勿論ゲンさんと代わった日以外で」

 

自分に関するデータを全て削除した大和は、不良達から抜き取った携帯の処分を宇佐美巨人に依頼していた。二十人の携帯から自分を探している奴等の情報を引き出し、一人だけ拉致した不良を脅して釈迦堂と戦った時の廃ビルに誘き寄せ殲滅した。

 

「……別に構わないんだけどさ。お前さん、最近暴れ過ぎたから噂になってるぞ。板垣姉弟をヤったのもソイツじゃないのかって」

 

「問題無い。どうせ暫くは練習相手に事欠かなくなる。バイト以外じゃ近寄る事もない」

 

「そっか。ということは、ようやく()()()()()()ってところか?」

 

「ああ、何とか今年中には達成出来そうだ」

 

「そいつは何よりだ。オジサンも色々と手を貸した甲斐があるってモンだ。どうだ?卒業したらウチで働かないか?」

 

「断る!俺には内閣総理大臣になって日本を立て直すという使命があるからな!!」

 

「そりゃ残念だ。んじゃ、今のうちにコキ使ってやるとするか。今夜ボディーガードの依頼があるから、今のうちに寝とけ」

 

「了解だ。時間になったら起こしてくれ」

 

「ここで寝るのかよ!?」

 

2009年5月3日(日) 昼

●●●●ジム

 

「蹴られまくって腕が痛い。ユキ、もう少し手加減してくれ」

 

「え~、大和のキックはもっと痛いよ?」

 

(蹴り技の対策にユキとスパーリングをさせてみたのは良いですが、やっぱり慣れるまでに時間が掛かりそうですね)

 

 上手くいけばカウンターを狙えるかと思いましたが、ボクサーの準には少々難しい様子。蹴りに対する防御が不得手な為、カウンターはリスクが高過ぎる。

 

(大和君は絶対に調べあげてくるでしょう。準が拳闘(ボクシング)をやっている事は既に知られていると考えた方が良い…)

 

 スタンディングでの殴りあいに展開する可能性は低い。グラウンドを狙うか、蹴り技主体で攻めてくる可能性が高い。寝技や組技では敵わない以上、長引けば此方が不利になるばかり。準も言っていたように奇襲を仕掛けて短時間で勝つしかない。

 

(流石に女性を自分の代わりに戦わせるのは気が引けますし、大和君は女性でも容赦なく攻撃しています。準に頑張ってもらうしかないのが辛いところですね)

 

2009年5月3日(日) 夜

宇佐美代行センター

 

「おい、起きろ!そろそろ準備して歓楽街に向かうぞ」

 

「?………ああ、そういえばボディーガードのバイトがあったね。ゲンさんも一緒なの?」

 

「ああ、今回の依頼は俺と親父、お前の三人でやる。行きがけに葵冬馬に関しての報告をするから顔洗って来い」

 

「了解」

 

(向こうに何か動きがあったのか?)

 

 

 

 

 

歓楽街へ向かう途中、車内で巨人と忠勝と大和は依頼内容を確認する。

 

「さて、今回の依頼はキャバ嬢をストーカーから守って、ストーカーを警察に突き出すのが仕事だ。店を出たキャバ嬢と同伴してストーカーを煽る奴が一人。ストーカーを後方から尾行する奴が一人。随時状況を知らせる奴が一人。役割は同伴者が大和、尾行担当が忠勝、連絡役が俺だ。何か質問はあるか?」

 

「ストーカーの目的は分かっているのか?仮に殺害や強姦を目的としているなら、俺が同伴してたら出てくる確率は下がるだろ?」

 

「確実とは言えないが、交際を強要するのが目的だろう。キャバ嬢自身、ストーカーに心当たりがあるらしい。恐らく以前もストーカーしていた男だと言っていた。警察に突き出す理由も、最近行動がエスカレートしてきたからだ」

 

「人数は?一人と思って良いのか?」

 

「集団で来る事は無いだろ。一人か二人仲間を連れて来る可能性はあるが、その時は依頼人の護衛を最優先しろ。イケるようなら忠勝がストーカー優先で捕縛しろ。首謀者を捕らえれば、あとは金で雇ったであろう仲間だけ。逃げ出す可能性が高いから深追いはするなよ」

 

「そもそもストーカーが依頼人の妄想である可能性は?」

 

「それもまずないだろう。同僚のキャバ嬢達から話を聞いたが、不審な男を店の周辺で見たり依頼人の携帯が短時間に何度も鳴っているのを見ている。ストーカーは間違いなく存在する」

 

(電話番号を知っているって事は、ストーカーは依頼人の知り合いって事か?……まあ、俺達は仕事を遂行するだけだしどうでもいいか)

 

「質問が無いなら仕事の話は終わりだ。次は俺が集めた、葵冬馬に関する情報を報告する。ここ最近奴が接触した人物の中で、お前との決闘で助っ人になる可能性が一番高いのが井上準、次いで榊原小雪だ。井上は拳闘をやっているらしく、殴りあいに強く身長もお前より高い。お前の"金剛"は大振りだから当たらないと思え」

 

(拳闘…ボクシングか。こりゃマジで"金剛"は当たらんかもな。蹴りによる"金剛"ならともかく、基本の拳撃によるパターンが当たらないのは面倒だ。一発で倒すのは無理っぽいな)

 

「そして榊原小雪だが、こっちはテコンドーの使い手で蹴り技が強力だ。掴み所が無い性格をしているらしく、お前としてはコイツの方が厄介かもな」

 

(あの白髪の女か。確かにアイツは何を考えているのか読みづらい。そういう意味では井上(ハゲ)より厄介だな)

 

「………分かった。ゲンさんは引き続き葵冬馬周辺の監視と調査をお願い。特に井上に関する情報が欲しい」

 

「了解だ。それじゃ、仕事に集中しろよ」

 

2009年5月3日(日) 夜

川神市周辺の山中

 

板垣姉妹の更正の為山籠りをしているルーと釈迦堂は、川神水を飲みながら雑談をしていた。

 

「初めての山籠りで疲れたのか、板垣達ハ眠ってしまったネ」

 

「今時のガキが山籠りなんてやった事ある訳ねえだろうからな。俺はまだダメージが残っているからリハビリ程度だが、アイツらは軽傷で済んだからってシゴキ過ぎなんだよ」

 

「彼女達ハまだまだ若い。数日で適応出来ると思うヨ。それより直江大和と戦った時ノ事を話してくれ。川神院だと百代や一子、板垣姉妹に聞かれるから今しか無いンだよ」

 

「ア~、面倒臭えなぁ。……んー、一言で言えば逆境に強く容赦がない。あと、俺が戦った時はかなり禍々しい気をしていたな。気を使った技は出来ないみたいだったが、体術はかなりのモンだし身体も鍛えているのがよくわかる。武道家というより破落戸(ならず者)、無法者の方がしっくりくるな」

 

「昔のお前ニそっくりだな」

 

「バァカ、俺の方が可愛いげがある。アイツは三回も目潰ししてくるとか、階段の段差を使って頭から落とすとか殺す気満々の攻撃してくるんだからよ。…それより、お前こそ一子達から直江大和に関して何か聞いてないのか?」

 

(俺の考えじゃ、竜兵はアイツに絡むように仕組まれていた。何の為かは分からないが、直江が仕組んだとしたら必ず理由がある。アイツの目的が分かれば、目的を邪魔する形で喧嘩を仕掛ける事が出来るかもしれない)

 

「一子達からは特に変わった事は聞けなかったけド、直江大和の素性を調べたラ中学時代ハかなりヤンチャしていたらしいネ。そして、妙な時期に大人しくなってル。今から二年と半年程前だから受験を意識したにしては少し早いシ、この時期に何かあったのは間違いないト思うヨ」

 

(そういう話は百代の方が詳しいよな。旅行から帰ったらそれとなく聞いてみるか。ジジイにはバレないように気を付けろと言われたが、生憎俺は負けっぱなしで引き下がる程大人じゃない)

 

『待ってろよ、直江大和』

 

 

 

 

 

歓楽街の治安がちょっと良くなった!


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