仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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今回から新章突入です。


海鳴巷説物語
第七話 「チームデンライナー本局へ」


結界が破壊され、海鳴市は無人の街---ゴーストタウンから人が溢れ、イルミネーションが輝く眠らない街へと戻ろうとする頃、海鳴市に一筋の光が走った。

光が消えると、ビルの屋上にいた野上良太郎、フェイト・テスタロッサや別のビルの屋上にいた高町なのは、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、そして、ユーノ・スクライアをおぶったモモタロスやソレに合流したアルフといった先程まで戦闘を繰り広げていた者達の姿はなかった。

 

 

次元空間の中で一際目立った建造物があった。

外観からしてSFチックな物だと言われても言い返せないだろう。

その中では次元航行艦アースラと同等の大きさの艦や小型の運送に使われる艦など種類様々な艦が行き来していた。

発着場ではアースラはメンテナンスを受けていた。

中にはエイミィ・リミエッタやリンディ・ハラオウンと似たような格好をしている者達があちこち行き来していた。

ここは時空管理局本局である。

「なのはちゃんとユーノ君の検査結果ですが、なのはちゃんもユーノ君も怪我そのものは大したことはないようです」

「そう。それはよかったわ」

エレベーターの中でエイミィは景色を眺めていると思われるリンディに報告する。

「ユーノ君は全身筋肉痛なので、血行を良くするためにストレッチを受けています」

「全身筋肉痛ってユーノ君、そんなに運動不足だったかしら……」

リンディが知る限り、ユーノはクロノ・ハラオウンとフェイトの模擬戦には何度も付き合っているため簡単にはならないはずだと思っている。

「ユーノ君個人ならば、そんなことにはならなかったんです。ユーノ君にモモタロス君が憑依した事が最大の原因かと思われます」

「憑依?」

「はい。映像に映ったユーノ君の魔力を測定してみると、明らかに以前測定した魔力よりも上がっていたことがわかったんです」

「魔力の向上はモモタロスさん、つまりイマジンの憑依が原因ってこと?」

「まず間違いないでしょう。憑依を解除した事による反動で全身筋肉痛というツケが来たんだと思われます。あと、なのはちゃんですが魔導師の魔力の源であるリンカーコアが異様なほど小さくなっているんです」

「そぉ。じゃあ、やっぱり一連の事件と同じ流れね」

リンディは変わりゆく景色を見ながら、状況を整理する。

「はい。間違いないみたいですね。休暇は延期ですかね……。流れ的にウチの担当になっちゃいそうですし……」

休暇を待ち望んでいたエイミィとしては残念で仕方がない。

「仕方ないわ。そういうお仕事だもの。それに……」

リンディも休暇を望んでいたわけなので、それが延期となるのは残念でならないが、自分の職業がどのようなものかわかっている以上、頭を切り替えるのは早い。

「良太郎さん達が来た理由も気になるわね」

「良太郎君達が来た理由ですか?」

「あの人達が旅行気分で来るとは思えないもの……」

エイミィはまだ休暇が延期したのを引きずっているのかため息をつく。

リンディはエイミィに顔を向けて、苦笑するしかなかった。

エレベーターは停まった。

 

「君の怪我も大した事なくてよかった」

別室でクロノはフェイトに応急処置を終えると、廊下に出ていた。

手に包帯を巻かれたフェイトもついていくように廊下に出る。

「クロノ、ごめんね。心配かけて」

「君となのはでもう慣れた。気にするな」

フェイトはその言葉にただ、笑みを浮かべるしかなかった。

「クロノ。良太郎は?」

「彼ならなのはやユーノと同じ部屋にいるよ。行ってみるか?」

「うん!」

フェイトはクロノの案内でなのは達がいる別室へと向かった。

 

「痛い!痛いです!」

別室では男性医師にストレッチを受けているユーノの悲鳴が聞こえた。

「すぐ動けるようになるには血行を良くしなければならないんだ。そのためにはストレッチが最適なんだよ」

男性医師はそう解説しながら、ユーノの右腕をほぐしていく。

ほぐしてもらっている側は涙目になっている。

「でも無茶苦茶痛いんですけど!」

「それだけ効いているということだよ」

ユーノの叫びは男性医師には届かない。今度は脚をほぐしていた。

「あだだだだだだ!!」

普段のユーノなら上げないような声を出す。

それからグッタリしたユーノをベッドに寝かせて、男性医師はなのはに目を向ける。

「ユーノ君。大丈夫なんですか?」

「ああ。さっき彼にも言ったように筋肉痛を治す方法として最適なのは安静にしたり入浴して筋肉を温めるか、ストレッチをして血行を良くしたりするのがいいんだよ」

男性医師がなのはの胸元に検知器のようなものを向けている。

「さすが若いね。もうリンカーコアの回復が始まっている。ただ、しばらくは魔法がほとんど使えないから気をつけるんだよ」

つまり、日常生活を送る上では何の支障もないということだ。

「はい!ありがとうございました」

なのはは男性医師に感謝の言葉を述べた。

「さて、最後の彼だが……」

男性医師はベッドで寝転がっているとしかいいようがない良太郎をみる。

「意識はハッキリしているようだね?」

「はい」

「正直言って『電王』という特殊な存在である君の容態を診療するというのは私個人としてはとても興味深かったんだよ」

「はあ……」

良太郎は身体を起こす。

良太郎は自分が実験動物にでもなったかのように感じた。

「でも……、正直ガッカリしたよ」

「え?」

「いくら調べても君は普通の人間と変わりがないんだからね。君が倒れたのは単純に体力が尽きただけで、それこそ食べ物でも食べていればすぐ元通りだよ」

「そうですか……」

ぐぎゅるるるるるぅぅぅぅと腹の虫が鳴った。

「では君に今必要な食事

とっこうやく

を持ってきてもらおう」

「ありがとうございます」

それから十分後に良太郎の前には、なのはからして見ただけで腹いっぱいになりそうなほどの量の料理が運ばれてきた。

 

イマジン四体とコハナは本局の中を案内人なしでうろついていた。

「しっかし、見たことのねぇもんばっかりだよなぁ」

モモタロスが外を眺めたり、周りを見たりしてそんなことをこぼした。

「これで十年前の時間のことだからねぇ。十年後

僕たちがいる時間

だとどうなってるんだろ……」

ウラタロスも冷静に装っているが、圧倒されていた。

「これより進歩しとるやろなぁ」

キンタロスが腕を組んで、ありえる事を想像して述べた。

「時間警察やターミナルより広いよねぇ。ここ」

リュウタロスは比べる対象が少ないのか、比べても仕方のないもの同士を比べる。

「ホント、正直この地図なかったら確実に迷子になってたわね」

コハナはエイミィが作ってくれた地図を広げて見ていた。

地図といっても紙面ではなく、立体映像のようなものでコハナも貰った時にはその技術ぶりに驚かずにはいられなかった。

「で、今俺達どこにいるんだよ?」

「ココよ」

コハナは地図に指差す。

近くに売店があるようだ。

「プリンでも買ってくか?良太郎やなのはやユーノも腹減ってるだろうしよ?」

「センパイ、冴えてるじゃない」

「モモの字も気配りができるようになったんやなぁ」

「モモタロスが賢くなってるぅ!」

「よせよ。照れるじゃねぇか」

モモタロスは褒められたと解釈し、照れている。

「アンタ達、盛り上がってるところ悪いけどね。無理よ」

「「「「は?」」」」

コハナの発言にイマジン四体は同時にコハナを見る。

「時空管理局では私達、食べる事はおろか何も買う事もできないのよ」

「何でだよ?オッサンから金貰ってるじゃねぇか?」

モモタロスはコハナがオーナーからお金を受け取っている事を知っている。

「まさかまた、ケチるつもり?」

ウラタロスはコハナならやりかねない事を口に出す。

「ハナ、頼むわ。少しぐらいええやないか?」

キンタロスはコハナに財布の紐を緩めるように頼む。

「ええやないかー」

リュウタロスはキンタロスの口真似をしていた。

イマジン四体の抗議にコハナは腹を立てるどころか、割と平静だった。

「あのね。私がオーナーから貰ったお金は海鳴市でしか使えないのよ」

つまり日本円という事だ。

「時空管理局本局は明らかに日本じゃないから、日本円は使えないの。わかった?」

コハナは締めくくるようにイマジン四体に語った。

「「「「うそぉぉぉぉぉ!!」」」」

イマジン四体は雄叫びを上げるしかなかった。

 

「みんな、どうしたの?」

「相変わらず騒がしいな。貴方達は……」

 

四体は後ろからする声に顔を向ける。

フェイトとクロノだ。

「フェイトとクロイノじゃねぇか」

モモタロスは二人の名前を口に出した。

「ちょっと待て」

クロノが平静を保ちながらもどこか低い声を出している。

「モモタロス、僕の名前をもう一度言ってくれないか?」

「オメェ、俺をバカだと思ってるだろ!?オメェの名前ぐらい言えらぁ!クロイノ・ハラキラレルンだろ?」

モモタロスは自信を持って言った。

フェイトは口元を押さえている。必死でこらえているのだ。

「センパイ違うよ。彼はクロイノ・ハラケラレルンだって」

ウラタロスも自信を持って言い張る。

クロノの額に青筋が増える。

フェイトは顔を俯きだした。

直視できないほどこらえているのだ。

笑いを。

「お前等、人の名前を間違えるなんてひどいで。こいつの名はクロイノ・ハリタオサレルンや」

キンタロスが我こそは正しいと思った名を言う。

クロノの青筋は更に増える。

フェイトは涙目にまでなっていた。

臨界点寸前である。

「みんなー、こいつの名はクロイノ・ハラウチヌカレルンだってば!」

リュウタロスが堂々と言い放つ。

「アンタ達、それくらいにしときなさいってば。フェイトちゃん、必死で笑いこらえてるんだから」

コハナが笑いをこらえるフェイトの背中を擦り、気持ちを楽にさせようとしている。

「あ、ありがとう。ハナ」

「ごめんね。でも気をつけたほうがいいわよ。あいつ等の笑いに取り込まれたら出られなくなるわよ」

「う、うん。気をつけるよ」

コハナのアドバイスを素直に聞くフェイト。

「「「「で、オマエ何て名前だっけ?」」」」

イマジン四体が揃ってクロノにぶつける。

「クロノ・ハラオウンだ!」

クロノは平静の仮面を脱ぎ捨てていた。

そのあと、コハナはクロノの案内で手持ちの金の一部を両替場で交換してから、売店でプリンやファーストフードなどを多量に買い込んだ。

 

良太郎達がいる部屋のドアが開いた。

クロノとフェイトそして、イマジン四体にコハナが入ってきた。

「みんな……」

良太郎が餃子を空にしてから、部屋に来た面々を見る。

「良太郎差し入れだ。分けて食えよ?」

モモタロスがファーストフードが入っている紙袋を良太郎に渡す。

「ありがとう!さっき食べただけじゃ、まだ足りなかったんだ」

「「ええ!?」」

良太郎の一言になのはとユーノが驚きの声を上げる。

「ふえええ!?まだ食べるんですか!?良太郎さん」

「よく食べれますね。餃子三人前にチャーハン三杯、酢豚にチャーシュー麺、シュウマイに鳥のから揚げにレバニラ炒めにゴマ団子に杏仁豆腐も食べてるのに……」

なのはは良太郎の異常な食欲に驚き、ユーノは良太郎が既に食べ終えた料理の名前を全て言いながらどこか恐ろしいものでも見るかのような顔をしていた。

「電王で戦ったり、みんなの特訓に付き合ううちに食欲旺盛になっちゃって……」

良太郎は苦笑いを浮かべながらも、モモタロスが渡してくれたファーストフードの中身を物色する。

「ユーノ、何か食べたいものある?」

良太郎が隣にいるユーノに好きなものは何か訊ねる。

「ではハンバーガーを」

「はい」

そう言ってユーノに向かって軽くハンバーガーを投げる。

「ありがとうございます。あれ?さっきのような激痛がほとんどないや……」

ユーノは確認するかのように拳を作ったり、手を回したり、首を動かしたりする。

あのストレッチが聞いたのだろうとユーノは解釈する事にしたようだ。

「なのはちゃん、フェイトちゃんは?」

「わたしもユーノ君と同じハンバーガーで」

なのはが言い、

「わたしはフライドポテトかな」

フェイトが言った。

良太郎はベッドから離れて、頼まれた二つの品を直に二人に渡した。

なのはの場合は距離が遠いので、直に渡した方が品に対するリスクはないと、フェイトの品は投げれば高確率で散乱すると判断したからだ。

イマジン四体はというと、買ってきたファーストフードやプリンを食べる事に集中していた。

コハナは静かにハンバーガーとジュースを手にして食事をしていた。

クロノは男性医師に呼ばれ、部屋を出ていた。

「良太郎、なのは。その……大丈夫?」

フェイトが良太郎となのはの容態を念を押して訊ねる。

「怪我とかなら僕はほとんどしてないから大丈夫だよ」

良太郎はそう言いながら、両手を軽く振っていた。

「わたしはちょっとまだ変な感じ、かな」

なのははベッドから離れずに身体に纏わりつく違和感を素直にフェイトに打ち明けた。

「それに、大丈夫ならフェイトちゃんの方だよ。手、大丈夫?」

「良太郎さんの言うとおりだよ。大丈夫?痛くない?」

フェイトは包帯に巻かれた手を背に隠す。

「う、うん。全然平気だよ」

フェイトは笑みを浮かべる。

なのはや良太郎も釣られて笑みを浮かべた。

「うん。わかった。ありがとうアルフ」

ハンバーガーを食べ終えたユーノはアルフと念話をしていたようだ。

「みなさん。ちょっと来てもらいたい所があるんですがいいですか?」

ユーノの申し出に室内にいる全員が頷いた。

 

ユーノの案内で、なのは、チームデンライナー、フェイトは別室へと向かっていた。

ちなみにユーノは大分よくなったとしても念を押して車椅子に乗り、なのはに押してもらっていた。

「なのは、ごめんね。なのはもまだ万全とはいえないのに」

「ううん。わたしのは魔法がしばらく使えないというだけで、普通に生活するには問題ないんだって」

なのはは笑みを浮かべてユーノの車椅子を押している。

「アルフ、入るよ」

「ユーノ、準備はできてるよ。良太郎、なのは、アンタ達。久しぶりじゃないか!」

アルフが笑顔で迎え入れてくれ、クロノが機械の起動させていた。

「「アルフさん……」」

良太郎となのはは声をそろえて名を呼ぶ。

「よぉ、獣女」

「アルフさんは変わってないね」

「元気やったか?」

「ワンちゃん、久しぶりー」

イマジン四体も彼等なりにアルフとの再会を喜ぶ。

「ユーノ。準備は粗方終わっている。始めてくれ」

「わかった」

クロノがその場から離れると、破損したレイジングハートとバルディッシュが置かれていた。

短い距離なので車椅子を押して、キーボードの前に立つ。

カチャカチャカチャと叩きながら、宙に浮かぶモニターに字が並んでいく。

「破損状況は?」

クロノがユーノに訊ねる。

「正直あんまりよくない。今は自動修復をかけているけど基礎構造の修復が完了したら、一度再起動して部品交換しないと……」

「そうか……」

クロノにしてみればある意味、予測の範囲内の回答だったらしい。

「オーバーホールしないと駄目って事?」

ウラタロスの言葉にユーノは首を縦に振る。

「それだけじゃ駄目だろ。バラして直したってまたアイツ等と戦っても結果はわかりきってるぜ」

モモタロスの言葉にその場にいる誰もが何も言えなかった。

完全修復したとしても、勝てるか否かと言われると答えは『否』だろう。

そもそもの性能が向こうの方が上なのだから。

「パワーアップしちゃえばいいんだよ!」

リュウタロスがレイジングハートとバルディッシュをなのはやフェイト同様に眺めながら言った。

「そうやな。今んところ、五分以下なんやから何とか五分五分にもちこまんとなあ」

キンタロスもリュウタロスの言葉に賛同していた。

「でも、デバイスってパワーアップできるのかしら……」

デバイスの知識はないに等しいコハナは呟く。

「そういえばさ、あの連中の魔法って何か変じゃなかった?」

アルフが尻尾を揺らしながらユーノとクロノに訊ねる。

「何か弾丸みたいなものを使ってたね。フェイトちゃんやなのはちゃんとは違うスタイルだと思ってるんだけど……」

良太郎は戦闘で見たことを思い出していた。

 

「あれは多分ベルカ式だ」

 

クロノが一番ありえることを口にした。

「ベルカ式?」

アルフが聞き返す。

「「「「ベルマーク式?」」」」

イマジン四体は間違って記憶した言葉で聞き返す。

「ベルカ式です」

ユーノはイマジン四体に憶えてもらうためにもう一度言った。

「その昔、ミッド式と魔法勢力を二分した魔法体系ですよ」

ユーノが大まかな事を告げた。

「遠距離や広範囲攻撃をある程度、度外視して対人戦闘に特化した魔法で優れた術者は『騎士』と呼ばれる」

クロノはそのスタイルについて語った。

「シグナムさんのことだね……」

「うん。あの人、ベルカの騎士って言ってた」

いちはやく頭が回転したのは良太郎とフェイトだった。

「最大の特徴はデバイスに組み込まれたカートリッジシステムと呼ばれる武装。儀式で圧縮して込めた弾丸をデバイスに組み込んで瞬間的に爆発的な破壊力を得る……」

「僕達でいうフルチャージみたいなものだね」

ウラタロスの解釈にユーノとクロノは頷く。

「相手もフルチャージ使うんやったら厄介やで」

キンタロスはカートリッジシステムをフルチャージとして受け止める事にしたようだ。

「だけどよ、ずっと使えるわけじゃねぇんだろ?それなら何とかなるんじゃねぇか」

モモタロスは割と気楽だった。

「何でさ?モモタロス」

リュウタロスが訊ねる。

「アイツ等がフルチャージするにはタマがいるんだろ?つまり回数が決まってるってことじゃねぇか」

「「「「「「「「「なるほどぉ」」」」」」」」」

クロノは目を丸くし、他の一同は感心していた。

弾丸が戦闘中にでも無限に作り出されるのならば厄介な事この上ないが、それが出来ないなら弾丸使用時にのみ気をつければ大した脅威にはならないということだ。

「フェイト。そろそろいいか?面接の時間だ」

クロノはキリがいいと判断したのか、フェイトに声をかけた。

「うん」

フェイトはクロノの言葉に頷く。

「なのは、良太郎。二人もちょっといいか?」

「「?」」

クロノの呼びかけに良太郎となのはは、?マークを頭に浮かべる事しか出来なかった。

 

レイジングハートとバルディッシュを修復にかけている中、イマジン四体、コハナ、ユーノ、アルフは休憩場に設置してある自販機でジュースを買って寛いでいた。

「あ、みんな!久しぶりー!」

エイミィが笑顔でイマジン四体とコハナに声をかけた。

「よぉ、クロイノの姉ちゃんじゃねぇか」

「エイミィさん、久しぶり」

「どないしたんや?クロイノの姉ちゃん」

「クロイノなら良太郎やなのはちゃん、フェイトちゃん連れてどこか行ったよ」

「面接とか言ってたわね……」

イマジン四体とコハナはそれぞれの反応をとる。

「クロイノって……、相変わらずだなぁ。ユーノ君、アルフ。レイジングハートとバルディッシュの部品、今発注してきたよ」

エイミィはウインクして完了したという合図をとる。

「今日明日中には揃えてくれるって」

「ありがとうございます」

ユーノはエイミィの働きに感謝の言葉を述べた。

「でね、今回の事件が正式にウチの担当になったの」

エイミィは今後の方針を述べた。

「え、でもアースラは整備中じゃ……」

アルフの言う事にその場にいる誰もが気になる部分だった。

「そうなんだよね……」

エイミィもどのように対策するかはわからないようだ。

「あ、そうだ。ちょうどいい機会だから君達に聞いていいかな?」

「何をだよ?」

モモタロスが代表して反応する。

「君達が今回ここにきた目的を、だよ」

エイミィの言葉にチームデンライナーは顔を見合わせ、やがて決意し、コハナが話し始めた。

目的を聞き、ユーノ、エイミィ、アルフは顔を青ざめるしかなかった。

 

「クロノ、今から会う人はどうして僕のことを?」

廊下を歩きながら、良太郎は先頭を歩くクロノに訊ねる。

「貴方達のことは書類や映像には残っていないが、噂話としては知れ渡っているからね」

「うん、良太郎達は凄く有名なんだよ」

クロノの意見を裏付けるようにフェイトが付け足す。

フェイトの口調はどこか我がごとのように喜んでいるようにもとれた。

「ごめんね。なのはちゃん、何かお株奪っちゃって……」

「にゃはは。いいですよ。モモタロスさん達が聞いたら大喜びしそうですね」

良太郎は謝るが、なのはは喜んでその立場を譲るとまで言い出した。

「着いた。ここだ」

クロノはドアを開く。

「失礼します」

そこには銀髪もしくは白髪の長身の男が一人いた。

「クロノ、久しぶりだな」

「ごぶさたしています」

クロノは普段とは違い、丁寧語を使っていた。

つまり、クロノが敬意を払う相手もしくはクロノより立場が上の存在という事は安易に推測できる。

時空管理局顧問官ギル・グレアムである。

紅茶が人数分出され、とても『面接』という厳かなものには思えなかった。

だが相手の気を削ぐという戦術ならばこれほど効果的なものはないだろう。

「保護監察官といっても、まあ形だけだよ。リンディ提督から先の事件や君の人柄についても聞かされたしね。とても優しい子だと」

グレアムは笑みを浮かべて語る。

「……ありがとうございます」

その言葉にフェイトは照れているのか、頬を染める。

グレアムは電子資料を見ながらなのはに視線を向ける。

「なのは君は日本人なのか。懐かしいな日本の風景は……」

「「え?」」

なのはと良太郎は声を上げる。

「私も君と同じ世界の出身だよ。イギリス人だ」

「ふえええ!?そうなんですか!?」

なのはは目を開いて驚く。

「あの世界の人間のほとんどは魔力を持たないんだ。稀にいるんだよ。君や私のように高い魔力資質を持つ者が……。ははは、魔法との出会い方まで私とそっくりだ」

良太郎はなのはが魔法とであった経緯はコハナやなのは当人から聞いている。眼前の老人も誰かを助ける事がきっかけで魔導師としての道を歩み始めたという事だろう。

(フェイトちゃんやなのはちゃんに用があるのなら、僕に用はないはずだが……)

「フェイト君、君はなのは君の友達なんだってね」

「はい」

グレアムが本題に入ろうと切り出してきた。

それだけの室内の空気が変わった。

「約束してほしいことはひとつだけだ。友達や自分のことを信頼してくれている人達のことは決して裏切ってはいけない。それが出来るなら私は君の行動について、何も制限しない事を約束しよう。できるかね?」

静かだが、どこか迫力のある声だ。

「はい。必ず」

フェイトは視線を外すことなく決意を込めて答えた。

「うん、いい返事だ」

グレアムは満足し、フェイトの左隣に座っているなのはは笑みを浮かべる。

良太郎も笑みを浮かべる。

「そして、君が別世界からきた電王、だね?」

グレアムは良太郎に視線を向けた。

「はい」

「名前は野上良太郎。世界は違えど、日本人だね?」

「はい」

探りを入れているような口調にも解釈できた。

「君や君の仲間達は、フェイト君やなのは君達から随分と信頼されているようだね」

「そうですね。前に来た時には僕も随分とお世話になりましたし、一緒にイマジンと戦ったりもしましたから……」

これは嘘偽りのない意見だ。

「そうか。これからもフェイト君やなのは君達をよろしく頼むよ」

「はい」

しばらく、グレアムと会話を続けたが良太郎は何故か警戒心を解くことはなかった。

なのはとフェイト、そして自分も会釈して退室しようとした時だ。

「提督。もうお聞き及びいただけていると思いますが、先程自分達がロストロギア闇の書の捜索捜査担当に決定しました」

「そうか……。君がか。言えた義理ではないかもしれんが、無理はするなよ」

グレアムとクロノの会話が続く。

(!!)

良太郎は先程の会話の時とグレアムが違うと感じた。

フェイトやなのは、そして自分と先程まで会話をしていた時には感情の色のようなものが瞳にはなかった。

だが、いま『闇の書』という言葉をクロノが発した時、明らかに違うものがあった。

「大丈夫です。急事にこそ冷静さが最大の友、提督の教え通りです」

「うむ、そうだったな」

二人の会話は続く。

自分が警戒を解かなかったのも納得できた。

彼は何かを隠しているのだ。

それも闇の書関連で。

「良太郎?どうしたの?怖い顔してるけど……」

隣にいたフェイトが不安げな表情をしている。

「え?そんな顔してた?」

「してましたよ。どうしたんですか?」

なのはも心配してくれているみたいだ。

「いや、何でもないよ」

首を横に振って良太郎は二人に笑みを浮かべて答えた。

二人は納得してくれた。

グレアムのいる部屋から離れても良太郎は何かが起こるという予感がしてならなかった。




次回予告

第八話 「ハラオウン家、海鳴へ」

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