仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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今回で第二部である仮面ライダー電王LYRICAL A'sは完結します。

本当に最後まで読んでくれた皆様ありがとうございます。


最終話 「新たなる路線が走る」

『闇の書事件』及び『ネガタロスの逆襲』から六年が経過した海鳴市。

 

あのお花見以来、仮面ライダー電王と仮面ライダーゼロノスの姿を誰も見ていない。

 

まるで夢の存在だったかのように。

 

 

満開に咲く桜の下で一人の少女が立っていた。

誰かを待っているかのようにも思えた。

 

八神家の玄関では一人の制服姿の少女が靴紐を結んでいた。

この家の主である八神はやてである。

「ほならシャマル。グレアムおじさんに小包送っといてな」

玄関で送ろうとしているシャマルに指示を送る。

「はい!お任せです」

シャマルも六年も生活してるのかすっかりエプロン姿が様になっていた。

ただし、料理の腕は十品中二品がハズレ料理だったりするのだが。

「シグナムは後で合流やね」

シャマル同様に玄関で送ろうとしてくれているシグナムに確認を取る。

「はい。後ほど」

シグナムは短く答えた。

六年経った今でも野上良太郎の事を想い続けている。

なおこの事は八神家全員に知れ渡っており、再会の際には総出で応援するとまで宣言されていたりする。

嬉しいやら恥ずかしいやらというのがシグナムの本音だったりする。

「おしっと!」

六年前まで使えなかった両脚は完治しており、ゆっくりと立ち上がる。

学生鞄を持って、元気よく玄関を出て外に向う。

「はやて。行ってらっしゃい!」

門を抜けると、リード線が繋がったザフィーラ(こいぬ)を散歩しているヴィータがはやてに向って声をかける。

ザフィーラはあれからアルフにこいぬフォームの利点を説かれて、外出する際にはこの『こいぬ』状態で行動するようになっていた。

ヴィータは六年経っても、背が伸びたとか発育がよくなったとかという外見的な変化はまったくといっていいほど見当たらない。

ご近所の老人方に怪しまれる時には「成長が遅い」という苦し紛れの言い訳で通すようにしていた。

「行ってきます!」

はやては走りながらも一瞬だけ後ろで手を振っているヴィータに返すと、また前を向いて走り出した。

 

八神はやて。

私立聖祥大付属中学校三年生兼時空管理局特別捜査官。

守護騎士ヴォルケンリッターを率いる優秀な魔道騎士として、ロストロギア関連事件の捜査に才覚を発揮する。

 

 

ハラオウン家では六年前と髪形を変えた私服姿のリンディ・ハラオウンが、お弁当をこしらえていた。

「うん。よしっと」

お弁当の中に入っているおかずの配列具合に満足したのかリンディはお弁当に蓋を閉じて、布で包み始めた。

彼女の役職は現在も時空管理局提督であるが、前線ともいえる艦長職といういわば命の危険を感じる職を退いて現在は平穏かどうかはわからないが時空管理局本局での内勤勤務をしていた。

そのためか割と海鳴市にいる時間が多かったりする。

「フェイトぉ。はい。お弁当」

リンディはリビングでアルフ(こいぬ)と遊んでいるフェイト・T・ハラオウンを呼ぶ。

長い金髪はツインテールではなく、ストレートにおろしている。

フェイトは立ち上がり、リンディが側まで歩み寄った。

「ありがとうございます。義母

かあ

さん」

フェイトも感謝の言葉を述べながら、両手で受け取る。

制服のポケットから懐中時計を取り出して、時刻を見る。

この懐中時計は野上良太郎から貰ったものであり、肌身離さず携帯している。

そろそろ行かないと待ち合わせ時間に遅れる時間だ。

「それでは行ってきます」

フェイトは玄関まで送ってくれるアルフとリンディに手を振ってから、外を出た。

 

フェイト・T・ハラオウン。

私立聖祥大付属中学校三年生兼時空管理局執務官。

使い魔アルフを伴って、執務官として第一線で活躍中。

そして六年経った現在でも一途に野上良太郎を想い続け、逢える日を心待ちにしている。

 

 

「あ、なのは」

「なのはちゃん」

一人の少女---高町なのはは名を呼ばれて、後ろを振り返った。

六年前の短めのツインテールではなく、現在は左側のみに髪をまとめているサイドポニーである。

なのはに声をかけたのはアリサ・バニングスと月村すずかだった。

「アリサちゃん!すずかちゃん!」

なのはが二人に見えるようにして左手を振る。

「おはよ」

「おはよう。今日もお仕事?」

アリサとすずかが挨拶をする。

三人は特に意識しているわけでもなく、並んで歩き出す。

「うん。今日は久しぶりにみんな集まるんだ。お昼過ぎに早退しちゃうから午後のノートお願い!」

なのははアリサとすずかに授業のノートのまとめを依頼する。

「はいはい。頑張ってコピーしやすいノート取るわよ」

アリサは慣れた感じで「任せなさい」というようにウインクする。

「にゃはは。ありがとう」

実際、なのは、フェイト、はやての三人がこうして安心してもう一つの事に専念できるのはアリサとすずかがサポートしてくれているからである。

中間試験や学期末試験等の時はまさに『神様、仏様、アリサ様、すずか様』と崇めたっておかしくないくらいにありがたかったりする。

 

高町なのは。

私立聖祥大付属中学校三年生兼時空管理局武装隊戦技教導官。

新任局員の傍ら捜査官として活躍。

優秀な成績を残している。

 

 

なのは、アリサ、すずかが談笑しながら歩いてると、フェイトとはやてが手を振っていた。

「おはよう」

「おはよー」

「おはよう。今日は集まるんだって?」

アリサがなのはから得た情報をフェイトとはやてに早速ぶつける。

「うん」

「ほんまに楽しみやわぁ」

フェイトとはやては首を縦に振る。

五人は一つの団体となって、通学路を歩く。

「そんな風な会話されると、本当にお仕事?って疑っちゃうわよねぇ」

「遠足じゃないよね?」

アリサとすずかが、本当のところはどうなのかと訊ねてくる。

「え?ちゃんとしたお仕事だよ。でもみんなで集まる任務だからつい嬉しくって」

なのはは嬉しそうに言う。

「それでも危険が孕んでるのは確かだけどね。締めるところは締めるよ」

「ま、それでもみんなで集まるんは楽しいねんけどな」

フェイトは真面目な事を言うが、はやてがそれを緩和させてしまう。

「そういえば元気してるかなぁ……」

すずかは青空を見上げながらふと呟く。

「ん?誰がや。すずかちゃん」

「仮面ライダーのみなさんだよ。だってあれから六年も経ってるけど一回も見てないなぁって」

「なのは達の方ではどうなの?会ったりしてないの?」

すずかはチームデンライナー、ゼロライナーを思い出し、アリサは自分達より会う確率が高い三人に訊ねる。

三人とも首を横に振る。

「でも、きっと逢えるよ」

フェイトは制服のポケットから懐中時計を取り出して握り締めている。

「フェイトちゃん?」

自信を持って答えるフェイトに対して、なのはは首を傾げていた。

「良太郎は言ってたんだ。未来で必ず逢えるって。だから私は信じてる。良太郎と逢える日が来るって」

フェイトが自信と決意を持って告げるのに対して、他の四人は目をパチパチとしていた。

「?どうしたの?みんな……」

「フェイトちゃんが自信を持って言うとそんな気がしてきたなぁって」

なのはもモモタロス達と逢える日が来ると信じる事にした。

「なのはちゃん。違うってこれはもうフェイトちゃんの……」

「そうね。これはもうフェイトの……」

はやてとアリサがニンマリと素敵でありながらどこか関わりたくない笑顔をフェイトに向けている。

 

「「愛ね(や)」」

 

告げると、フェイトの顔はぼんっという音を立ててもおかしくないくらいに急に真っ赤になる。

「フェイトちゃん。顔真っ赤だよ。大丈夫?」

「え、え、う、うん。わかってる!だ、だだだ大丈夫だよ!うん!そんな愛なんて……」

心配してくれるすずかはありがたいと感じながらもフェイトは自分の体内の温度が上がっている事を自覚していた。

「いいなぁ~。フェイトちゃん」

なのははそんな風に一人の人間を想い続ける事が出来るフェイトに羨望の眼差しを向けていた。

「そ、そういうなのはだって、ユーノとはどうなの?はやてだって人の事言えないよ!桜井さんから貰った物を肌身離さず持ってるってシャマルが言ってたよ!」

自分ばかりが弄られるのは癪なので、なのはとはやてに矛先を向ける。

「ほっほー。それは興味深いわね~」

「興味深いね~」

アリサとすずかがニンマリと素敵でありながら関わりたくない笑顔をなのはとはやてに向けていた。

「は、はやてちゃん……」

「わ、私はまだええ方やで。フェイトちゃんと同じで六年逢ってへんからネタらしいネタはコレしかあらへんし……」

はやては制服のポケットから一枚のカードを取り出す。

黒の素体に緑と黄色のラインが入ったゼロノスカードだ。

桜井侑斗が信頼の証として一枚くれたものであり、現在ははやてのお守りになっている。

「ふーん。ま、はやてはフェイトと同じで待ち続けるしかないってわかったけど、なのは。アンタはどうなのよ?この中で一番逢う機会があるのはアンタだけだし」

「ユーノ君と二人っきりで会ったりとかしてないの?」

すずかの記憶が確かならば、なのははどちらかというと自分達で会っている機会のほうが多いような気がする。

「うん。ユーノ君もお仕事大変そうだから、その……」

なのははユーノ・スクライアの身体を気遣って敢えて逢わない様にしているようだ。

「な~んだ。季節は春なのに、誰にも春は巡ってきてないってことなのね~」

アリサはいかにも『恋人ほしい』というような台詞を発しながらも、このままでもいいか、なんて思っていた。

 

 

地球を見下ろす形で一隻の艦が漆黒の宇宙空間に佇んでいた。

次元航行艦アースラである。

艦長が座る席にはバリアジャケットを纏ったクロノ・ハラオウンが座っていた。

現在の彼は提督であり、アースラの艦長でもある。

「今日は久しぶりに全員集合だな」

六年経ったためか声も低い声になっていた。

「そうだね。クロノ君の艦長就任以来、初めてかもしれないね」

先程までキーボードを打ちながらメインモニターと睨めっこをしていた女性---エイミィ・リミエッタが椅子を回転させながら、笑顔でクロノの台詞に相槌を打った。

現在の彼女は時空管理局管制司令という凄い肩書きを持っていた。

ただこの二人に変わらない事といえば、各々昇進してもコンビネーションは抜群であるという事である。

「まぁ平和な任務だ。ちょっとした同窓会みたいなものだ……」

「そのようで……」

クロノの表現にエイミィは笑みを浮かべていた。

「ユーノもいいか?」

クロノは頬杖を着きながら、通信先の一人の少年に向かって言った。

 

 

緑色の携帯電話を右手にハニーブロンドの長髪を後ろでまとめた少年---ユーノ・スクライアは自然が見える時空管理局本局の廊下を歩いていた。

左肩には白い毛並みで青いメッシュの入ったフェレットが乗っかっていた。

「ああ。時間通りに……」

ユーノはクロノに返事をしていた。

『そういえばユーノ君。なのはちゃんと何か進展とかあった?』

エイミィがいきなり回線に割り込んで、年若い少女なら誰もが好む『コイバナ』を持ちかけてきた。

「え!?いや……あの……会える時には会っていますが、別に進展とかそういうのは……」

『何だ~』

『エイミィ仕事中だぞ。一応』

『へえへえ』

クロノとエイミィのやり取りを電話越しに聞きながらも、「相変わらずだなぁ」なんて思いながら苦笑していた。

一通り打ち合わせが終わると、ユーノは携帯電話を切った。

そしてそのまま自分の職場である『無限書庫』へと向かう。

『無限書庫』に入ると、制服を着た司書達が本棚を睨めっこしていた。

ユーノの姿が書庫内に入ると、全員がその場で挨拶をする。

ユーノも手を軽く上げて返す。

司書長室に入って、手に携えていた本を専用の机に置く。

それから専用の椅子に腰を下ろす。

とりあえず、一仕事終えたので小休止である。

「ふうー」

一息吐いてから天井を見上げる。

左肩に乗っていたフェレットは机に飛び移る。

「お疲れさまです!ユノさん!」

このフェレットは喋れるらしく、ユーノに労いの言葉をかける。

「ありがとうロッキー。でもまた仕事しないといけないからね」

「ドウソウカイ的任務っていう平和な任務って言ってたから楽できるんじゃないんですか?」

「それは前線にいる人達の理屈だよ。僕達は対して差はないよ」

「むー!」

ロッキーと呼ばれたフェレットはこれからの任務が楽できるのではと希望を持つが、ユーノがあっさりと砕き、ロッキーが頬を膨らます。

そんな仕種を見ながらユーノは笑みを浮かべて、席を立ち上がる。

「さて準備に取り掛かるよ」

「はい!」

ロッキーはまたユーノの左肩に飛び移った。

司書長室を出て、仕事場に向おうとした時だ。

司書長室に設けられている警報機が鳴り出した。

ユーノは机に置かれている端末を操作する。

その表情はクロノやエイミィと談話した時とは別人といってもいいくらい真剣な表情だった。

「第162観測指定世界か……。確かなのは達の任務もそこのはず……」

「ユノさん……」

ロッキーが心配げな表情を浮かべる。

ユーノはパーカーのポケットから携帯電話を取り出す。

カチカチっと相手を選択する。

「あ、もしもしアルフ。ユーノだけど」

『どうしたんだいユーノ。今そっちに向おうとしてる所なんだけどねぇ』

「急いでこっちに来れる?」

『もしかして……』

ユーノの言いたい事がアルフには理解できるようだ。

「うん。そのもしかして(・・・・・)なんだよ」

『わかった。プランAZだね?』

「うん」

『あいよ。任せときなって。アンタは間に合うように片付けるんだよ!』

そう言うと、アルフが先に通話を切った。

携帯電話をパーカーにしまってからユーノは机に置かれている一冊の本を一冊文のスペースが開いている本棚に収納する。

ガチャっと音が鳴って、ガガガーっと音を立てながら本棚が左にスライドする。

その先にはエレベーターがあり、ユーノとロッキーは乗り込む。

エレベーターはドアを閉じて、そのまま真っ直ぐ下に下りていく。

最下層に到着すると、エレベーターのドアが開く。

同時に暗闇だった部屋の照明が点灯される。

そこには三両編成の列車が置かれていた。

黒い車体に青い色が施された三両編成の列車だった。

ユーノとロッキーは当然のようにして、列車の一両目に乗り込む。

一両目には大きなモニターと中央に列車のコントローラーの役割を果たしているバイクが一台あった。

ユーノは跨る。

「目的時間は現在。目的場所は第162観測指定世界っと」

必要事項を入力し終えると同時に列車はガッタンと車輪を回す。

列車の前は壁であり、本来ならば通れるはずがないのだが空間が歪み始めていた。

 

「「発進!!」」

 

ユーノとロッキーが同時に告げると、列車は線路を敷設しながら歪んだ空間の中へと走っていった。

そして列車の姿が完全になくなると空間は元に戻っていた。

 

ユーノ・スクライア。

時空管理局データベース『無限書庫』司書長。

司書の傍ら古代史の論文を発表、学者としての実績を重ねる。

そして……

 

 

新たなる時間はまた刻まれていき、それは『記憶』となる。

 

 




第二部 仮面ライダー電王LYRICAL A's  完

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