仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第五十五話 「夜の終わり。旅の終わり。~降臨 蒼翼の電王~」

海鳴市海上に佇んでいるドーム状の黒い淀み。

『闇の書』の防衛プログラムである。

クロノ・ハラオウンは総攻撃を始める前に時空管理局本局にいるギル・グレアムとリーゼ姉妹に現在の状況をモニターするように促していた。

「提督。見えますか?」

『ああ。見えているよ』

「『闇の書』は呪われた魔導書でした。いくつもの人生を食らい、関わってきた多くの人々の人生を狂わせてきました。アレのおかげで僕の母さんも、他の多くの被害者遺族も『こんなはずじゃなかった』人生を歩む事になった。それはきっと貴方もリーゼ達も……」

クロノは右手に手にしている白いカードを見る。

グレアムが託したデバイス---デュランダルだ。

「なくしてしまった過去は変えることはできないし、変える力を持っていても変えてはならない事を彼等から教わりました。過去があるからこそ今の自分があるのだという事を。過去を否定すればその時点で今の自分を否定するという事を。だから……」

クロノは待機状態のデュランダルを宙に投げる。

待機状態から白がメインカラーとなり青色が装飾されている杖へと変化した。

「今を戦って未来を変えます!」

クロノは晴れた笑顔で高らかに宣言した。

 

 

宇宙空間のアースラでも防衛プログラムに対しての準備を行っていた。

「アルカンシェル。チャージ開始!」

リンディ・ハラオウンの指揮の下、それは着々と行われていた。

 

 

ゼロライナーの操縦席でゼロノスはマシンゼロホーンに跨ってモニターに映っている光景を見ていた。

黒いドーム状を囲うようにして、タコの足やら得体の知れない生き物の尻尾などが海中から飛び出しており、不気味さを際立たせている。

「改めて見ると、イマジンが巨大化した時の比じゃないな」

ギガンデス化したイマジンは確かに巨体だがここまで大きくはない。

「うん。大きさだけなら多分今までで一番だ」

隣でモニターを見ているデネブも率直な感想を告げる。

「潰しがいがあるぜ」

指をパキポキ鳴らしながら、ゼロノスは防衛プログラムを睨んでいた。

「八神やみんな、怪我しなきゃいいけど」

デネブは外で準備をしている魔導師サイドの面子の心配をしていた。

 

 

黒いドーム状の防衛プログラムは自身を守るようにして、更に触手やらタコの足やらを出現させていた。

『暴走開始まであと二分!』

エイミィ・リミエッタの連絡を聞き、海鳴市海上にいる全員の表情が引き締まる。

今度は黒い柱が海中から数本飛び出す。

「始まる……」

クロノが防衛プログラムが暴走を開始しようとしていると予感していた。

「『夜天の魔導書』を呪いの魔導書と呼ばせたプログラム。闇の書の闇……」

八神はやての言葉に呼応するかのようにドーム状の防衛プログラムは自身の身体を巨大にさせてから、シャボン玉が割れるようにして黒い外壁を破り捨てた。

そこにある姿は異形の中の異形。

キメラといえば聞こえがよくなるかもしれないが、目の前のそれには『美しさ』とか『品性』と呼べるようなものはなかった。

上半身は女性の裸体で下半身は獣もしくは怪物と形容されても仕方がないモノだった。

まさに歪んだ人間の欲望の集大成とでもいうべき醜悪さのある姿だ。

「ホワアアアアアアアアアアアア」

防衛プログラムが妙な鳴き声を上げている。

「チェーンバインド!!」

アルフが右手をかざして橙色の魔法陣を展開させて、中央から数本の橙色の鎖を出現させてタコ足に向かって放って絡みつく。

「ストラグルバインド!」

ユーノ・スクライアが右手に翡翠色の魔法陣を展開させて、中央から翡翠色の鎖を数本出現させてアルフ同様に防衛プログラムの壁役になっている触手やタコ足に絡み付ける。

「縛れ!鋼の軛!!」

ザフィーラが両腕をクロスさせて魔力を練りこんで、白いベルカ式魔法陣を展開させてから白い鞭の様なものを出現させて、薙ぎ払うようにタコ足や触手を切り裂く。

『行くぞぉ!!』

ゼロノスの声と同時に、ゼロライナー・ドリル(以後:ゼロライナー)が牛の顔から百八十度回転してドリルになる。

後続車両であるゼロライナー・ナギナタ(以後:ナギナタ)が連結解除して屋根部分からナギナタを模したプロペラを出現させる。

ナギナタは線路から離れてプロペラを回転させながら、独自の行動で防衛プログラムに向かっていく。

そして、プロペラでタコ足や触手をスパスパと切っていく。

ゼロライナーは線路を防衛プログラムに向かって敷設しながら、ドリルを回転させながら突っ込んでいく。

『おらああああああ!!』

回転しているドリルがタコ足や触手に穴を開けながら、ポトポトと落としていく。

「クアアアアアアアアアアアアアアアア」

防衛プログラムが悲鳴のような鳴き声を出すが、それがダメージによるものなのかは判断しかねるところだった。

「侑斗さん!なのは達が次に来ます!」

ユーノがゼロライナーでバリケードの撤去作業をしているゼロノスに退がるように促す。

『わかった!』

ゼロライナーをドリルから元の牛の頭部へと百八十度回転させて、ナギナタが後部車輌へと連結させて元の状態に戻してから防衛プログラムから離れた。

 

 

デンライナーの屋根の上に野上良太郎、モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジークは防衛プログラムがいる場所を睨んでいた。

風に乗って女性の声が聞こえてくる。

「みんな、行くよ!」

良太郎の声と共に、全員が頷く。

「ではまず私からだ」

そう言うと同時にジークは白い光球となって、良太郎の中に入り込む。

髪型が白いメッシュの入ったコーンロウになって、白い瞳になる。

また、首下にはフェザーが巻かれていた。

ジークが憑依した良太郎---W良太郎である。

W良太郎はそのまま身体エネルギーの一つであるチャクラを利用して、デンオウベルトを出現させて腰元に巻きつける。

従来のデンオウベルトと違い、フォームスイッチがなく装飾が金色のウイングバックルでバンドは黒色となっていた。

カチリという音が鳴ってしっかりと巻かれる。

「変身!」

W良太郎はパスを右手に取り出し、ウイングバックルに向かってセタッチする。

『ウイングフォーム』

銀と黒がメインカラーになっているプラット電王に変身してから、鳥の羽が散りばめながら、オーラアーマーが出現して装着される。

オーラスキンが黒色から金色へと切り替わる。

白鳥が頭部を走って、変形して電仮面へと変形する。

背部に白をメインとした機械的な双翼が展開されて、すぐに消える。

左手を薙ぎ払うように振ってから、右手を天に掲げる。

右手首を軽く捻らせる。

 

「降臨!満を持して!」

 

仮面ライダー電王ウイングフォーム(以後:ウイング電王)の完成である。

「はい。ごくろーさん」

モモタロスがウイング電王に棒読みで労いの言葉を送る。

(次はみんなだよ)

深層意識の良太郎が促す。

「行くぜぇ!」

「やりますか!」

「よっしゃぁ!」

「すんごいてんこ盛り~!」

四体のイマジンは準備体操をしてから、ほぼ同時に赤、青、金、紫の光球となってキンタロス、ウラタロス、リュウタロス、モモタロスの順番でウイング電王の中に入り込んだ。

ウイング電王のオーラアーマーと電仮面が外れて消え、それからプラット電王へと戻る。

その直後、両腕両脚にデンレールが装われてからクライマックスフォームのオーラアーマーが出現して装着される。

電仮面が出現して最初に電仮面ロッドが右肩に。

次に電仮面アックスが左肩に。

背部用になっている電仮面ウイングが背部に。

電仮面ガンが胸部に。

最後に、電仮面ソードが頭部に装着されてからクライマックスフォーム同様にカパっと開く。

全身からフリーエネルギーが溢れ出す。

ブォンというフリーエネルギーの突風が舞う。

 

「俺達!完成!!」

 

それは最強を超えた最強。

それは『絆』というものが具現化した究極の姿。

我々の『時間』と『想い』を守る守護者。

その名を。

仮面ライダー電王超クライマックスフォーム(以後:超電王)

 

 

宇宙空間。

「戦闘区域から数百メートル離れた位置より高エネルギー反応!!」

エイミィが、キーボードを叩きながら艦長であるリンディ・ハラオウンに告げる。

「まさか敵!?」

この状態で新手のイマジンが出てこられたら事態は最悪の一途を辿る事になる。

「いえ、これは……」

エイミィがキーボードを叩きながら、モニターに映像を映す。

デンライナーが映っており、屋根には超電王がいた。

「良太郎君達です!電王です!」

「助かったわぁ。高エネルギー反応といわれて思わずイマジンかと思ってしまったわよ」

「でも凄いですよ。このエネルギー量なら十分すぎるくらい助けになりますよ!」

高エネルギー反応の正体が判明すると、リンディは胸をなでおろしてホッとする。

エイミィは超電王のエネルギー測定値を見て、希望がわいてきていた。

 

 

防衛プログラムとの戦いは現在進行形の形であった。

「ちゃんと合わせろよ?高町なのは!」

ヴィータが高町なのはに同時攻撃を促す。

だが、なのはから返事はなかった。

ヴィータはなのはがいる後ろを振り向くと、両目を潤ませてこっちを見ていた。

「な、何だよ?」

いきなりそんな目で見られるようなことをした憶えがないので、狼狽する。

「ヴィ、ヴィータちゃんが初めてわたしの名前を呼んでくれた……」

なのはが両目をウルウルしながら感激している。

今まで『高町あろま』なんて言って急に本名の『なのは』と呼ぶことは別段、ヴィータには不自然には感じなかった。

むしろ何故今までそうしなかったのが不思議に思えたくらいだ。

「と、とにかくちゃんと合わせろよ!?」

「う、うん。ヴィータちゃんもね!!」

ヴィータが確認の際にもう一度言い、なのはは今度は共に戦える事に対する喜びの笑みを浮かべながられ返事をする。

「鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼン!!」

ヴィータはグラーフアイゼンを振りかぶって叫ぶ。

足元に紅色の魔法陣が展開される。

ガシュンとカバーがスライドしながら音を立てて、カートリッジをロードする。

『ギガントフォルム』

ヘッド部分が円形のハンマーから変形して六角形の巨大なハンマーへとなる。

「轟天爆砕!!」

グラーフアイゼンを振り回しながら、ヴィータの意思で巨大化していく。

それはかつてソード電王と戦った際に切り札として使用したものだ。

 

「ギガントォォォォォォシュラァァァァァァァク!!」

 

そして、振り上げたグラーフアイゼンを防衛プログラムの脳天に狙いをつけて振り下ろした。

ドォォォォォンという音を立てながら、防衛プログラムの物理バリアに亀裂が入り始める。

そしてその亀裂は物理バリア全部にまで行き届き、粉々に砕け散った。

「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン!行きます!!」

なのははヴィータを見習ってか、名乗りを上げる。

桜色の魔法陣が足元に展開されてから、レイジングハート・エクセリオンを天に掲げる。

『ロードカートリッジ』

ガシュンガシュンガシュンガシュンとカートリッジを四個排出する。

レイジングハート・エクセリオンのヘッドに桜色の翼が展開される。

くるくるとその場で振り回しながら構える。

 

「エクセリオンバスタァァァァァァ!!」

 

防衛プログラムが触手をなのはに向かっていく。

『バレルショット』

ゆらゆらと陽炎のようなエフェクトがなのはの前に現れる。

そして、ドォンという音を立てて衝撃波が防衛プログラムへと向かっていく。

防衛プログラムはまともに食らい、一時的に麻痺状態になる。

「ブレイク……」

足元に桜色の魔法陣が展開されて、レイジングハート・エクセリオンに三箇所の環状魔法陣が巻かれている。

ヘッド先端に桜色の魔力球が五つ中心に出現し、囲うように環状魔法陣が出現する。

そして、中心の魔力球から防衛プログラムに向かってレーザーサイトのような青い光線が走っている。

四方にある魔力球が曲線を描きながら、防衛プログラムへと向かっていく。

「シュゥゥゥゥゥトォォォォォォ!!」

既に飛んでいる四方の桜色の魔力球は更に威力を増し、中心にある魔力球は一直線に向かって飛んでいく。

最初に飛んだ四方の桜色の魔力球は螺旋を描いて防衛プログラムのバリアに直撃する。

赤色のバリアは亀裂が入り、砕け散る。

防衛プログラムが悲鳴のような声を上げる。

「次、シグナムとテスタロッサちゃん!!」

シャマルが別位置にいる二人に促した。

 

デンライナーの屋根に立っている超電王は確認するかのようにして、両手を広げたりしていた。

力が漲る。

身体中にフリーエネルギーが溢れ出そうとしている感覚だ。

今ならどんなヤツが相手でも後れを取る事はないと確信できる。

(モモタロス)

深層意識の良太郎が促す。

「おう!わかってるぜ!」

超電王はモモボイスを発して答える。

電仮面ウイングがフリーエネルギーによって巨大な双翼となる。

その翼は蒼くそして透き通るほど澄んでいた。

バサァと翼を羽ばたかせて、超電王の足はデンライナーの屋根から離れる。

「行くぜぇぇぇぇぇぇ!!」

防衛プログラムのいる場所を睨んでそのまま飛行していった。

 

防衛プログラムのバリアの内、二つはヴィータとなのはによって破られた。

次はシグナムとフェイト・テスタロッサの出番だった。

「先に行かせてもらうぞ。テスタロッサ」

シグナムが先に打って出ると告げる。

「はい。シグナム」

フェイトは不満をこぼすことなく、了承した。

「剣の騎士シグナムが魂---炎の魔剣レヴァンティン」

鞘に納まっていたレヴァンティンを名乗りながら抜刀する。

レヴァンティンの剣先がキラリと光る。

「刃と連結刃に続くもう一つの姿……」

シグナムはレヴァンティンの柄尻に鞘を連結させる。

同時にレヴァンティンはカートリッジを一つ排出させた。

鞘は紫色に輝き、レヴァンティンに酷似した姿となって更に姿を弓状へと変化させた。

紫色の魔力で構築された弦が出現する。

『ボーゲンフォルム』

レヴァンティンは自身の形態を名乗る。

弦を引っ張ると同時に、紫色の魔力光が矢の姿へとなっていく。

レヴァンティンの弓から蒸気が噴出する。

シグナムの足元には紫色の魔法陣が展開されており、炎まで吹き上がる。

 

「吹けよ!隼!!」

 

触手やらタコの足をわらわらと増殖させる防衛プログラムに狙いをつける。

『シュツルムファルケン』

鏃が輝き、矢は紫色の光となって放たれた。

音速の壁を超えて、ひたすら真っ直ぐに向かっていく。

薄い橙色の防衛プログラムのバリアに直撃して、炎を伴う爆発と衝撃波が生じてバリアが粉々に砕け散った。

「フェイト・テスタロッサ。バルディッシュ・ザンバー行きます!!」

すかさずフェイトが攻撃の態勢に入っていた。

ザンバーフォームのバルディッシュ・アサルトを振り下ろして、足元に金色の魔法陣を展開させる。

三回ほどバルディッシュ・アサルトのカバーがスライドしてカートリッジロードされる。

その場で円を描いて、衝撃波を発生させて防衛プログラムにぶつける。

防衛プログラムは、なのはの時と同じ様に麻痺状態になる。

バルディッシュ・アサルトを天に掲げる。

雷が剣先に纏わりつく。

 

「撃ち抜け!雷刃!!」

 

バルディッシュ・アサルトを両手持ちにして、何の小細工もなく防衛プログラムに向かって一気に振り下ろす。

『ジェットザンバー』

バルディッシュ・アサルトが告げると同時に、刀身が長くそして伸びていく。

防衛プログラムを守る青いバリアが出現するが役割を果たすことなく、粉砕されて自身の肉体の一部を切断される事を許す結果となってしまった。

「ホワアアアアアアアアアアアアアアア」

防衛プログラムが鳴く。

その場にいる誰もが確信を持っていた。

この鳴き声はダメージによる悲鳴なのだと。

 

超電王の前には巨大なタコの足やら得体の知れない生物などが行く手を遮っていた。

「そう簡単には行かせてはくれないみたいだね」

ウラボイスを発しながら、空中であるにも関わらずウラタロスのポーズを取る超電王。

「問題はあらへん。目の前にあるヤツ、片っ端から潰してしまえばいいんや」

キンボイスを発しながら、腕組をする。

「だったらさっさとやっつけちゃってなのはちゃん達のところに行こうよ!」

リュウボイスを発しながら、その場でくるりとターンして人差し指でタコ足を差す。

「家臣一同よ。私の能力もあるこの姿で存分に働くがいい」

ジークボイスでタコ足に背を向けた状態で右手を天に翳しながら言う。

「言われなくたってやるんだよ!!」

モモボイスを発しながら正面を向いて超電王は双翼を広げて、フリーエネルギーで構築された羽を無数、タコ足と生物に向けて弾丸もしくは矢のようにして放つ。

ドスドスドスドスと羽はタコ足と生物に刺さっていく。

刺さった羽の一つが爆発すると、他の羽も誘われるようにして爆発していった。

タコ足も生物も跡形もなく塵になっていた。

超電王の前には他にもタコ足やら生物や触手がわらわらと出現していた。

どうやら、自分を最も厄介な相手として認識しているようだ。

「鈍った身体に気合入れるにはちょうどいいぜ!!」

首をカキコキ鳴らし、手と手を結んで伸びをしてから超電王はタコ足と触手と生物の中を突っ切るようにして前へと進んだ。

 

 

アルカンシェルの発射態勢を完了したアースラは宇宙空間で待機中だった。

「す、凄い戦闘能力です!!たった一人で防衛プログラムが作り出したバリケードを潰しながら目的地まで向かっています!!」

アレックスが超電王の行動を興奮気味にリンディに報告する。

リンディとエイミィもモニターで超電王が触手を引きちぎったり、タコ足とタコ足をくくりつけたりしている光景を見ていた。

「エイミィ。電王が現場に到着するまでにかかる時間は?」

リンディが即座にエイミィに調べさせる。

「三分後です!」

エイミィがキーボードを超速に叩き出して、導いた結論をすぐに報告する。

「現場にいるみんなに伝えて。三分後に最強の仮面ライダーがやってくるって。あとたった今より電王を仮面ライダー電王と呼称し、現場にいるゼロノスもまた仮面ライダーゼロノスと呼称します」

「了解!って艦長はいつその名称を知ったんですか?」

エイミィが訊ねるのも尤もな事だ。リンディがその名称を知る機会なんてなかったからだ。

「地球の文化に馴染むために私も陰で努力してるのよ」

リンディの至極まともな回答にエイミィは苦笑するしかなかった。

 

 

『みんな!よく聞いてね。今から三分後に最強の仮面ライダーがやってくるから、もう少しだけ踏ん張って!!』

エイミィの報告は防衛プログラムと対峙している者達全員にとっては朗報だった。

「最強の仮面ライダー?まさか……フェイトちゃん!」

なのはは首を傾げたが、それが誰なのか理解できた。

「うん!間違いないよ!」

フェイトは強く頷き、自信を持って言える。

他の面々も皆わかっているようだった。

表情が先程よりも和らいでいるのだから。

「え?もしかして野上さんなん?」

はやては良太郎と会った事が一度しかない。

彼が侑斗の仲間内だから『仮面ライダー』である可能性はあると踏んではいたが、なのはやフェイトはもちろんの事、身内であるヴォルケンリッターにまで認められているとは思わなかった。

「遅ぇーんだよ!あのバカ!」

ヴィータが憎まれ口を叩きながらも、笑みを浮かべている。

「やはり蘇ってきたか……。野上」

シグナムも予感はしていたが、それが確定になると喜びの表情を隠さなかった。

「信じられないわ……。あれだけのダメージを受けてる状態なのに……」

シャマルから見ても良太郎達の怪我の状況は安心できるものではなかった。

だが、安心してばかりもいられないのが現状だ。

ニョロニョロと海中から今までと違う触手を出現させているのだから。

防衛プログラムが再生を繰り返し、反撃をしようとしていた。

「盾の守護獣ザフィーラ!砲撃なんぞ撃たせん!!」

両腕をクロスさせてから白い魔法陣を展開させて、防衛プログラムに向かって白くて巨大な針が触手やタコ足に突き刺していく。

「はやてちゃん!!」

シャマルが次に攻撃する者の名を呼ぶ。

はやてが『夜天の魔導書』を左手に持ったまま広げて、両目を閉じて詠唱を始める。

「彼方より来たれ。宿木の枝。銀月の槍となって撃ち貫け!」

はやては右手に握られている杖を薙ぎ払うようにして振ると、足元に白色の魔法陣を展開させていた。

別の位置から白色の魔法陣が出現して六個の白い魔力球が出現する。

 

「石化の槍!ミストルティン!!」

 

右手に持った杖を振り下ろす。

杖が輝いた直後に、六つの魔力球と魔法陣から後に構築された魔力球は一直線に防衛プログラムに飛んでいってドスドスドスと刺さっていく。

刺さっていく場所を基点にして、石化が始まっていく。

石化して比較的に脆い部分はどんどん崩れ落ちていく。

防衛プログラムは破損箇所から触手やら尻尾やら頭部やらを出現させる。

その姿は初見の姿がまだマシに思えてくるほどの醜さだった。

「うわ……、何アレ……」

「な、何だか凄い事に……」

アルフとシャマルが目を背けたくなるのも無理のないことだった。

『やっぱり並の攻撃じゃ通じない!?ダメージを入れた側から再生されちゃう!』

エイミィが弱音が混じりながらも、事実を述べる。

「攻撃は通ってる。プラン変更はなしだ!行くぞ。デュランダル!」

『OK。ボス』

デュランダルが承諾すると、クロノは両目を閉じて詠唱を始める。

「悠久なる凍土。凍てつく棺の内にて永遠の眠りを与えよ」

両手を広げると同時に、足元に青色の魔法陣が展開される。

クロノを基点として雪のようなものがちりばめられていく。

水面が白くスケートリンクのようになっていく。

それは水面を氷付けにするだけでなく、防衛プログラムの動きも凍結させていた。

「凍てつけ!」

『エターナルコフィン』

デュランダルを突きつけると同時に魔法名を発する。

防衛プログラムの身体は完全に凍結した。

脆い部分はバキリと折れてしまった。

しかし、すぐさま強引に凍結を解除して破損箇所を再生しながら醜い姿を更に醜くしていた。

『行け!』

ゼロライナーに乗っているゼロノスが触手の増殖を防ぐために、二両目のナギナタに伐採作業させる。

プロペラでスパスパ切られていくが、直後にニョロニョロウニュウニュと再生していく。

ザフィーラが切り落とした砲撃可能の触手まで出現して、手当たり次第にぶっ放そうとする。

しかし、触手は全部方角を同じにして、一直線に魔力砲を発射させる。

そこには誰もいないため、一見すると的外れな攻撃をしているとしか思えない。

「まさか!?」

『街をぶっ飛ばすつもりか!?』

フェイトとゼロノスは防衛プログラムの発射した先に海鳴市がある事を思い出したが、時既に遅しだった。

魔力砲は海鳴市に向かっていく。

そこにいる誰もが海鳴市の一部が火の海になると想像してしまった。

 

「うおらああああああああああ!!」

 

聞き覚えのある叫び声が全員の耳に入った。

魔力砲は海鳴市には直撃しておらず、その場に停まっていた。

いや正確に言うならば、声の主が停めていたのだ。

声の主---超電王だった。

 

超電王は右拳一本で防衛プログラムの魔力砲を受けていた。

バチバチバチバチと拳に魔力が伝わる。

「やっぱり僕達が厄介者だったわけだね」

右肩が上下に揺れる。

「この一発も俺等を狙っての事やな」

左肩が上下に揺れる。

「アイツ本気なんだね~」

胸部は揺れずに、能天気に言う。

「私を狙うとは眼の付け所はいいと見える。家臣に加えてやろう」

背部がズレた事を言う。

「テメェ等ぁ!うるせぇから少し黙ってろぉぉぉぉぉ!!」

超電王は内にいる仲間に文句を言いながら魔力砲と密着した右拳を離して、腰を捻って右拳を振りかぶって素早く放つ。

ドォンという音を鳴らして、超電王に向けて放たれた魔力砲は軌道を百八十度変えて発射主に向かっていった。

防衛プログラムは先程と同じ魔力砲を発射する。

正面から魔力砲と魔力砲がぶつかり合って両方が消えるという結果になった。

魔力砲のぶつかり合う余波によって、飛沫が立つ。

「よぉ。随分と手の込んだ事してくれたじゃねぇか。ぼ……ぼ……」

超電王は名称を懸命に思い出そうとする。

 

「ボケポリグラフ!!」

 

その場にいる誰もがあまりの間違えっぷりに目を大きく開いて呆れるしかなかった。

防衛プログラムは本体を更に形状を変えながら、タコ足と砲撃触手の数を増やしていく。

『何か凄い速度で再生していくけど、クロノ君どうなってるの?』

エイミィがモニターで計測できる数値を見ながら急激な変化に対して、クロノに訊ねてきた。

「多分だけど防衛プログラムは電王を意識したんだと思う」

先程までとは比べ物にならない速度での再生と受動の態勢を取っていたのに急に攻撃を繰り出した事がその証明だろうとクロノは考えている。

「きれいな翼……」

なのはは超電王の翼に目を奪われていた。

透き通るような澄んだ蒼翼。

自分の桜色の翼とは何かが違うからこそ、憧憬の眼差しを向けてしまうのかもしれない。

「て、モモタロスさん違いますよ!防衛プログラムです!」

我に返ったなのはは超電王の間違いを指摘する。

「あ、それそれ」

超電王となのはがそんなやり取りをしている間に、防衛プログラムがウニュウニュウネウネしながら再生している。

「二人とも、遊んでる場合じゃないよ!また再生を始めてる!」

このまま漫才になりかねないと感じたフェイトは二人に注意する。

「わーってらぁ!!」

超電王はフェイトに了承の返事をすると、防衛プログラムに顔を向ける。

「キュエエエエエエエエエエ」

防衛プログラムは咆哮を上げながら、砲撃可能な触手(以後:砲撃触手)を超電王に狙いをつけて、一斉に放つ。

「お、おい!?マジか!?テメェ!!」

超電王は自分に向かって飛んでくる魔力砲を翼を羽ばたかせながら、宙を巧みに動いて避けていく。

右へ左へ斜めへと。

中には身体にギリギリに触れる位置ながらも上手く避けていく。

その内の一発が、避け切れそうにない位置に向かって放ってきた。

ドォォォォンという爆発音が響き爆煙が起き、そこにいる誰もが「直撃した」と思った。

爆煙の中から何かが海面に向かって落下していく。

広げていた双翼を前面にして、守るようにしていた超電王だった。

翼を閉じている状態なので、飛行は出来ない。

シュバァっと閉じていた双翼を広げて、また上昇する。

「今度はこっちの番だぜぇ!!」

超電王の両腰にあるデンガッシャーがフリーエネルギーによって、ホルスター部分からひとりでに離れて宙に浮く。

四つのデンガッシャーのパーツは持ち主の想いを汲んでいるのかひとりでに連結していく。

左側の二つが横連結され、右側の二つが上下に挟まる。

超電王が右手でグリップを握ると、フリーエネルギーが伝導されて武器らしい大きさになると赤いオーラソードが出現する。

「うらああああああああああああ!!」

超電王は双翼を羽ばたかせて間合いに入り込み、砲撃触手を首を刎ねるようにして横一線に斬りつける。

切り落とされた触手の頭はドボンという音を立てながら、海中へと沈んでいく。

その後も砲撃触手の頭を超電王はDソードで次々と切り落としていく。

その度に海鳴の海底に醜い汚物が沈んでいく。

砲撃触手の頭を全て切り落とすと、そのままDソードの切先を前に構えた『突き』の体勢で突っ込んでいく。

Dソードの刃は防衛プログラムの頭部ともいえるものに突き刺さる。

そのまますぐに引き抜いてから、両手持ち上段にして一気に振り下ろす。

頭部は真っ二つになって割れるようにして横に倒れる。

そのまま頭部の側にある尻尾も切り落としていく。

「何かマグロの解体みたいや……」

はやてが超電王がまるでマグロを解体している職人のように見えた。

しかし、これが圧倒的な力量がなければできないという事は『戦い』というものの空気を味わって間もないはやてにも理解できた。

粗方脅威となりそうな部分を切り落とし終えた超電王は防衛プログラムの側から離れる。

超電王はDソードを手元から離すと、自動的に連結が解除されて腰元に収まっていく。

(モモタロス。何かするつもり?)

「ああ。ま、見てろって」

超電王はパスを取り出して、ケータロスのチャージ&アップスイッチを押してから普通に一回、パスを開いてから更に一回セタッチする。

『チャージ&アップ』

その直後に超電王は両腕をクロスしてから、斜め下に掌を見せるようして広げる。

両掌にフリーエネルギーが収束されていく。

バチバチバチバチと両掌のフリーエネルギーは球体になっていく。

球体はギュンギュンギュンギュンと音が鳴り、今にも暴れだしそうな勢いだ。

『あいつ、何するつもりだ……』

ゼロノスは過去の戦闘を掘り起こしても超電王が何をしようとしているのか理解できなかった。

「よぉーし、いい具合だぜぇ」

両掌に乗っているフリーエネルギーの球を見て、超電王は満足げな台詞をはく。

左足を前に出してから、腰を左に捻って両掌に乗っているフリーエネルギーの球を一つに凝縮させる。

胸部の電仮面ガンが光ってから、パカッと上に開く。

「行くぜ!ボケポリグラフ!!」

超電王の行動に誰もが固唾を呑む。

何かをする。

そして、それが自分達にとって『大吉』になるという事を。

 

「俺達の新必殺技ぁぁぁぁぁ!!」

 

超電王は両手で押さえている凝縮させた球を電仮面ガンの発射口の前に向けると、発射口は衝撃波を放つと同時に前にあるフリーエネルギーの球を押すようなかたちで発射された。

球は一直線の巨大な光線となって防衛プログラムに向かっていく。

直撃を受けた防衛プログラムは身体をウネウネさせながら光線によって肉体を消滅させられていく。

その威力はまさに、なのはのスターライトブレイカー級といっても過言ではない。

それでも防衛プログラムはゆっくりながら再生をしていく。

先程と違って、再生速度が遅いのは防衛プログラムも疲弊しているという事だろう。

「後は任せたぜ」

超電王はなのは、フェイト、はやてを見てから告げた。

 

「はい!行くよ!フェイトちゃん!はやてちゃん!」

「「うん!」」

なのはの言葉にフェイトとはやても頷く。

なのはとレイジングハート・エクセリオンはスターライトブレイカーの発射準備をする。

レイジングハート・エクセリオンには桜色の翼が展開され、雲のかかった夜空から桜色の光がレイジングハート・エクセリオンに向かって降り注ぐ。

「全力全開!!」

足元に桜色の魔法陣が展開され、なのはの前に巨大な桜色の魔法陣が展開している。

「スタァァァァライトォォォォォ!!」

なのはは魔法陣内でレイジングハート・エクセリオンを振り下ろす準備をしていた。

バルディッシュ・アサルトを肩にもたれさせるような状態でフェイトは足元に金色の魔法陣を展開させていた。

「雷光一閃!!プラズマザンバァァァァァ!!」

バルディッシュ・アサルトと金色の魔法陣と雷が走る。

バルディッシュ・アサルトの黄金の魔力刃に大きな魔力が伝導されていた。

はやては杖を天に掲げて、魔力を収束させていた。

足元には白い魔法陣が展開されている。

はやては再生を繰り返している防衛プログラムを見下ろす。

「ごめんな。お休みな……」

悲しげな表情を一瞬だけ浮かべると、すぐさま表情を戻す。

「響け!終焉の笛!ラグナロク!!」

杖が輝きだし、足元の魔法陣が更に巨大化して三方向から超特大な黒い雷を帯びた白色の魔力球が出現する。

 

「「「ブレイカァァァァァァァァァ!!」」」

 

三人が同時に声を上げる。

なのはは目の前でチャージを完了している桜色の魔力球を撃つ。

球は巨大な桜色の光線となって向かっていった。

フェイトは防衛プログラムに狙いをつけると、バルディッシュ・アサルトの魔力刃を黄金の光線に変えて一気に放つ。

はやては出現させていた超特大の白い魔力球を同時に発射させた。

三方向から超特大の攻撃をまともに受ける防衛プログラム。

やがてあらん限りの力を出し尽くし、三色の光が消えると巨大な赤色の柱が立って、さらに大爆発を起こした。

 

シャマルは足元に緑色の魔法陣を展開させてクラールヴィントのペンデュラムを使って、自身の前に巨大な輪を作っていた。

「本体コア。露出」

シャマルは緑色の空間を凝視する。

その中に一粒の光が見えた。

それはやがて黒いものになっていく。

精神を集中するために、目を閉じていたシャマルは開く。

「捕まえた!」

シャマルがコアを捕まえた事がわかると、ユーノとアルフは同時に右手を広げる。

「長距離転送!!」

ユーノが右手を広げて自身が繰り出す魔法の種類を口にする。

「目標!軌道上!!」

アルフも右手を広げて、目標を設定する。

シャマルが見ている空間の中に上に橙色、下に翡翠色の魔法陣が黒い塊を挟むようにして出現した。

 

「「「転送ぉぉぉぉ!!」」」

 

シャマル、ユーノ、アルフは同時に叫んだ。

コアは転送され、海面に浮かぶ防衛プログラムの肉片を覆うようにして三色が混じった環状魔法陣が出現して、そのままコアを宇宙空間へと転送させた。

同時に環状魔法陣は消え、残ったのは防衛プログラムの肉片だけだった。

 

 

宇宙空間のアースラ。

「コアの転送。来ます!」

アレックスがモニターを見ながらコアがこちらに向かっている事を報告する。

「転送されながらゆっくりとですが生態部品を修復中!」

「アルカンシェル!バレル展開!!」

エイミィが超速でキーボードを叩きながら準備をする。

アースラの前に小、大、中の白色の環状魔法陣が展開される。

その中心を白い粒子が走っている。

環状魔方陣大に光が収束されていく。

「ファイアリングロックシステム。オープン」

リンディの声に反応するように、前に環状魔法陣に囲まれた四角い箱が出現した。

「命中確認後。反応前に安全距離まで退避します!準備を!」

 

 了解!!

 

リンディの指示にアースラスタッフは従った。

地球からアースラに向かって一筋の火会の柱が現れる。

中にいるのは再生中の防衛プログラムのコアだ。

気色の悪い魚みたいな姿になっていた。

リンディがキーボックスにアルカンシェルの発動キーを差し込む。

ボックスの色が赤くなった。

アースラの前にコアが防衛プログラムが出現した。

先程より気持ち悪くなっていた。

 

「アルカンシェル!発射!」

 

リンディはキーをボックスに差し込んだキーをカチリと傾けた。

環状魔法陣大の中心に収束されていた光は休息に巨大化する。

そしてアースラから一筋の巨大な光となって発射された。

防衛プログラムに直撃する。

アースラは反応が起こる前に安全距離へと退避する。

光が膨れ上がっている。

反応が起こり始めたのだ。

膨れ上がった光はやがて急速に収縮していく。

大爆発を起こした後、宇宙空間は先程と変わらぬ静かな状態に戻った。

 

「空間内の物体。完全消滅。再生反応ありません!」

 

エイミィの報告に、リンディは瞳を閉じる。

「準警戒態勢を維持。もうしばらく反応区域を観測します」

「了解」

リンディの指示を聞いてから、エイミィは椅子の背にもたれて脱力していた。

 

 

海鳴市海上では、宇宙空間に転送された防衛プログラムがどのようになったのか気になり、見えるわけがないのだが誰もが天を見上げていた。

『現場のみんな!お疲れ様でしたぁ!状況無事に終了しましたぁ!』

エイミィの報告を聞いて、緊張の糸が切れた。

その場にいる誰もが安堵の表情を浮かべる。

『この後、残骸の回収とか色々あるんだけどみんなはアースラに戻って一休みしてて』

ユーノ、アルフ、シャマルは互いに顔を見合わせて笑みを浮かべあっていた。

クロノはデュランダルを待機状態に戻していた。

ヴィータは両肩の力を思いっきり抜いていた。

シグナムとザフィーラも安堵の表情を浮かべていた。

なのは、フェイト、はやては手を叩き合って喜んでいた。

「あの、アリサちゃんとすずかちゃんは?」

なのはがエイミィに気になっていたことを訊ねる。

『ああ、被害から遠い周囲外の結界は全て解除してあるから元いた場所に戻ってるよ』

エイミィの回答に、なのはは本当の意味で胸をなでおろしていた。

「クロノ。お疲れ様」

「ああ。よく頑張ってくれた……。ありがとうフェイト。もう一人労いの言葉をかける相手がいるだろ?」

「うん!」

フェイトがクロノに労いの言葉をかける。クロノはその厚意を受け取ると同時に促した。

超電王はゼロライナーの屋根に下りていた。

フリーエネルギーの双翼は小さくなって、電仮面ウイングへと戻っており、超電王の身体全身が光りだす。

そこには良太郎、モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジークがいた。

「良太郎!みんな!」

フェイトがゼロライナーの屋根に着地する。

「フェイトちゃん」

「よっ!」

良太郎とモモタロスが軽く声を上げる。

他の四体は疲れているのかグッタリしていた。

「お疲れ様」

「フェイトちゃんもね」

短い言葉だが、フェイトも良太郎もそれだけで十分なため互いに笑みを浮かべあっていた。

 

「はやて!!」

 

ヴィータの悲痛な声が突如響いた。

はやてがグッタリとして、気を失っていたのだ。

ヴォルケンリッターが介抱しようとしている。

『八神!』

変身を解除した侑斗が叫び、ゼロライナーがはやてとヴォルケンリッターがいる方向に針路を変えて急に動き出した。

無論、突然の事なのでフェイトを除く屋根の上に乗っかっている者達が本人たちの意思に関係なく、海鳴の冬の海に飛び込むようなかたちになってしまうのは言うまでもないことである。




次回予告


第五十六話 「最後の暗躍者」

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