仮面ライダー電王LYRICAL A’s   作:(MINA)

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第十八話 「海鳴 冬の陣 上編」

天候は晴れだが、太陽のぬくもりは吹く風によって打ち消されてしまう今日。

ハラオウン家に居候を始めて最初の日曜日だ。

野上良太郎は起床して、準備体操をしてから着替える。

それからドアに内蔵されている新聞受けを探る。

本日の新聞があり、その中から広告を取り出す。

スーパーに求人案内にパチンコ店に墓石まであった。

「ん?」

良太郎は流す感じで目を通す中でひとつだけ、その目を止めた。

『○○剣道場。一日無料体験。本日のみ』

と、面を取ったポニーテールの女性がでかでかと映っている広告だった。

(あれ?この人。どこかでみたことあるような……)

良太郎は広告に映っている女性をもう一度見る。

「シグナムさんだ……」

一度だけ戦った相手のことを思い出す。

勝敗で言うなら良太郎としては引き分けだと思っている。

理由としては自分は体力を数字で表すなら百で、シグナムはフェイトと交えた後なので九十八くらいだったし彼女は自分が優勢となる空中戦に移行しなかった事もある。

「でも、あの人。こういうのに乗り気で参加するとは思えないなあ」

シグナムの性格をよく知っているわけではないが、広告の被写体に進んでなりたがるような人物ではないと思っている。

それに広告に映っている表情は『自然体』であって『作られた表情』ではない。

恐らく、隠し撮りしたものだろう。

「まあ、これが本人と決まったわけでもないしね……」

良太郎の今までの仮説はあくまでこの被写体がシグナム本人だった場合の事だ。

もしかしたら、ただのそっくりさんということも捨てきれない。

真実はシグナム本人に訊ねてみないとわからないことだ。

「さてと、朝ごはん作るかな」

良太郎はキッチンに立って、朝食の献立を考え始めた。

 

フェイト・テスタロッサは日曜日だというのに、いつもの時刻に双眸を開いた。

パジャマから私服に着替える。

今日は高町なのは達と一緒に、翠屋JFCの練習試合の応援に行くのだ。

私服に着替え終えると、彼女の鼻腔をくすぐる匂いがした。

「誰か作ってるんだ……」

朝食を作っているのは良太郎かエイミィ・リミエッタのどちらかだろう。

どちらも美味しいので、正直楽しみだ。

使い魔のアルフ(子犬)はまだ眠っている。

起こすのも気の毒なので、そのまま寝かせる事にした。

廊下を出て、リビングに入ってキッチンを見ると良太郎が朝食の支度をしていた。

「おはよう。良太郎」

「おはようフェイトちゃん。日曜日なんだから、ゆっくり寝ててもいいのに」

挨拶をすると、良太郎は返してくれた。

「アースラで生活していた頃は曜日なんて関係なかったから……」

次元空間の中を四六時中、航行していたら曜日の感覚なんてないに等しいのかもしれない。

「習慣は中々変えられないよね」

良太郎はそう言って納得すると、味噌汁の具を鍋の中に放り込んだ。

「何か手伝える事ある?」

フェイトは朝食の手伝いを申し出てみる。

「玉子焼き作れる?」

「良太郎が作ったのならできるよ」

「じゃあ、お願い」

「うん!」

フェイトはキッチンに入って、冷蔵庫を開けて卵を数個取り出した。

良太郎が作った玉子焼きなら何度も食べた事があるので、作ろうと思えば作れる。

以前に作り方も教わった。

(大丈夫。できる。できる……)

そう自分に言い聞かせてから、フェイトは調理に取り掛かった。

 

ハラオウン家の全員が起床して、リビングに入ってくる頃には良太郎とフェイトは朝食の支度を終えていた。

リンディ・ハラオウン、クロノ・ハラオウン、エイミィはそれぞれ所定の席に着く。

良太郎、フェイト、アルフ(人型)が朝食を並べていく。

「今日は良太郎が作ったから、和食だな」

クロノは品を見ながら言う。

「玉子焼きはフェイトちゃんが焼いたけどね」

良太郎は付け足した。

「へえぇ。フェイトちゃんが焼いたんだぁ。なら味見しないとねぇ」

エイミィが美食家じみた事を言いながら、玉子焼きに箸をつけるジェスチャーをとる。

「さぁ。早く食べましょうか。冷めてしまうわ」

リンディの言葉を皮切りに、全員が朝食を食べ始めた。

「この玉子焼き。良太郎君が作ったのと同じだぁ」

エイミィが玉子焼きを食べて、そのような感想を述べた。

「良太郎に教えてもらったから、その通りにしたんだ」

フェイトは答えてから味噌汁をすする。

「もしかして、不味かった?」

おそるおそるフェイトはエイミィに訊ねる。

「ううん。凄く美味しいよ!」

エイミィの称賛にフェイトは胸をなでおろした。

「何だったら、私の手伝いもしてみる?」

「え?いいの?」

エイミィの申し出にフェイトは目を丸くする。

「いいよぉ。その代わり、私は厳しいからね~」

迫力のない凄みをエイミィは言う。

「はい!」

フェイトも笑みを浮かべて返事をした。

 

 

高町家の日曜日、特に今日はいつもの平日と違っていた。

まず一家の長ともいうべき高町士郎の雰囲気が違っていた。

いつもの士郎は『隙のない、どこか不思議なナイスミドル』なのだが今の彼は『戦場に赴く戦士』のような雰囲気を出していた。

本日は河川敷でサッカーの練習試合がある。

翠屋JFCのコーチ兼監督を勤めている士郎は選手達同様の気持ちになっているのだ。

「オメェ等、準備は出来てるな?」

モモタロスも似たような雰囲気を出しながら、ウラタロスとキンタロスに声をかけていた。

「もちろんだよ」

「準備はオッケーやで」

二体ともクルクルと巻いて何かを丸めていた。

「ソレ何ですか?」

なのはがモモタロスやウラタロス、キンタロスが持っている物を訊ねる。

「それは後のお楽しみってヤツだ」

モモタロスははぐらかした。

「気になるよねー。ユーノ君」

「キュキュー」

なのはは左肩に乗っかっているユーノ・スクライア(フェレット)に意見を求める。

ユーノは正体を知る者以外もいる場なので、泣き声で答える。

「リュウ君。そろそろ朝ご飯だよー」

高町美由希が庭でサッカーボールでリフティングをしているリュウタロスに告げた。

「はーい」

リュウタロスは宙に浮いたサッカーボールを両手でキャッチしてから家の中に入った。

道場で朝練をしていた高町恭也がリュウタロスが閉め忘れていたドアを閉めた。

「朝ごはん、できたわよぉ」

「みんな、席に着いてぇ。アンタ達も早くしなさい!」

朝食の準備をしていた高町桃子とコハナが朝食を乗せたトレーを持って、テーブルに置いていった。

 

高町家の朝食は賑やかだ。

特にイマジン四体とコハナが来てからは尚の事だろう。

食事の形式も若干変化している。

中央に十人前分の料理がどんと置いてあり、後は各々で好きなだけ食べるという形式になっていた。

この形式になると、和食より洋食の方が何かといいため自然と朝食は洋食となっていた。

「なあ、とっつぁん。試合って何時からだよ?」

モモタロスがバスケットに入っているパンをひとつ取ってから士郎に尋ねる。

「集合は九時半で、試合開始は十時半かな。俺は選手達の事もあるから、早く出なければならないけどね」

「僕もおじさんと同じ時間なんだよね?」

リュウタロスはサラダを食べながら確認のために士郎に尋ねる。

「ああ。リュウタロス君はレギュラーとして最初から出場するのは初めてだからね。選手達と最後の打ち合わせをするためにも早く来てもらうよ」

「はーい。よーし、初レギュラーだ!」

リュウタロスは半年前に来た際に、翠屋JFCの選手として後半から出場した事がある。

「じゃあ僕達は、なのはちゃん達と同じ時間帯でいいよね?キンちゃん」

「そうやな。そのくらいで十分やしな」

オレンジジュースを飲んでいるウラタロスと牛乳を飲んでいるキンタロスがなのは達と時間を合わせるように打ち合わせをする。

「私は桃子さんと翠屋にいるわ。アンタ達が帰ってきたら祝勝会か残念会をやるって言いかねないしね」

コハナは行かないと言い、後々起こりえるだろうの準備に取り掛かるようだ。

朝食が終わるとコハナと桃子は食器の片づけをして、なのはと美由希はユーノと遊んでおり、士郎は本日の深部を読み始め、恭也は何かを考えているかのように窓から空を見上げていた。

雲はちらちらと見えるが、太陽は我が物顔でいる。

「なぁに見てんだよ?オメェ」

モモタロスが恭也の横に立っていた。

「試合日和だなっと思ってな」

「まあな」

「それに……」

「まだ何かあるのかよ?もったいぶらずに言えよ。バカ兄貴」

『バカ兄貴』と呼ばれて恭也の額に青筋が立つが、『自分は大人』と言い聞かせて平静に接する。

「何かが起こりそうな気がする。そう思ってな……」

「おいおい。不吉な事言うんじゃねぇよ」

ただでさえ、不吉な事ばかりが自身に起こっているモモタロスにとって恭也の台詞は不吉の予兆というには十分なものだった。

 

 

ハラオウン家では朝食を終えた後、各自が自由に行動していた。

クロノは海鳴市の地理に詳しくなるために、地図を広げていた。

エイミィも同様でタウン誌をパラパラと捲っていた。

リンディは茶をたてて、独自のブレンド(砂糖とミルク)を淹れてすすっていた。

良太郎、フェイト、アルフ(子犬)は外に出ており、デンバードⅡを洗っていた。

洗っているといっても、デンバードⅡを洗っているのは良太郎だけでフェイトとアルフは見ているだけだが。

「前にはなかったよね?そのバイク」

良太郎達が別世界

ここ

に来て既に一週間経っており、今更ではあるがフェイトはデンバードⅡの入手経緯を訊ねた。

「前に来た時は、僕まだ無免許だったんだよ」

そう言いながら、良太郎はズボンのポケットから運転免許証を取り出した。

「?」

「何だい?ソレ」

フェイトとアルフは見てもわからないのか首を傾げていた。

「運転免許証だよ。これがないと車もバイクも乗れないんだ。」

「「ええええ!?」」

驚く一人と一匹。

「それって難しいテストをパスしないとダメなんでしょ?」

嘱託魔導師試験を経験しているためか、フェイトは運転免許を取得するためには難易度の高いテストを合格しないといけないという考えが直結していた。

「アンタ、よくパスできたねぇ」

アルフもフェイトの使い魔ということで、全部ではないが嘱託魔導師試験を経験しているのでフェイトと同じ様に考える事が出来たのだ。

「実技に関しては教官達が驚いてたよ。とても自動二輪に乗ったのが初めてとは思えないってね。筆記の方は特に問題なかったしね」

良太郎は教習時代を思い出しながら語った。

「良太郎。アンタ、頭よかったのかい!?」

アルフは意外そうな声でストレートに失礼な発言をする。

「ア、アルフ!」

フェイトは止めようと声を荒げるが、時既に遅しである。

気分を害したのかもしれないと思いながら、フェイトは良太郎の顔を見る。

良太郎は特に気分を害している様子もないようだ。

「高校は中退してるけど、成績は悪くはなかったよ。それに中退した後も暇があれば少しだけ勉強はしてたしね」

彼なりに知性をアピールする。

良太郎は履歴書で経歴を記すならば、『高校中退』で学歴が止まる。

彼の場合、中退理由は『家庭内の事情』であり定番の『素行不良』や『不祥事』といったものではない。

だが、世間から見ればどっちでもいいというのが事実だろう。

「ねえ。わたしも取れるのかな?車の免許」

「今は無理だよ。年齢制限があるからね」

良太郎はポケットに運転免許証をしまいこみながら、事実を告げる。

「何歳からなの?」

「普通免許なら十八だよ」

「「ふうん」」

フェイトとアルフはまたひとつ新しい知識を身につけた。

良太郎は止めていたデンバードⅡの洗浄作業を続行した。

「良太郎は今日はみんなと応援に行くの?」

フェイトとアルフはこれから、なのは達と共にサッカーの試合に応援に行く。

「いや、これに行こうと思ってるんだ」

良太郎はジャケットのポケットから一枚の折りたたんでいるチラシを出す。

フェイトは受取り、チラシを広げる。

「○○剣道場。一日無料体験?良太郎、剣道習うの?」

「一日でモノにできるなんて思ってないよ。僕、戦闘の才能はないほうだしね」

「そっかなぁ。アンタ、十分に恵まれてると思うよ」

「うん、アルフの言うとおりだよ。良太郎は十分に恵まれてると思うよ」

アルフとフェイトは良太郎の自己分析をあっさりと否定した。

「そうかな……」

自己分析を否定される事を不思議とショックどころか不快に感じないことに良太郎は不思議に感じた。

「そろそろ時間じゃないの。行かなくていいの?」

良太郎はケータロスの時間を見ながらフェイトとアルフに促した。

「あ、本当だ!じゃあ良太郎。行ってくるね」

「お土産はないけどねー」

一人と一匹を見送ると、良太郎は洗浄作業の道具を片付けて目的地に向かってデンバードⅡを駆った。

 

 

海鳴市の河川敷は季節もあってか、本来は殺風景な場所だ。

だが今日は人がたくさんいて、熱気に満ちていた。

軽く百人近くはいる。半年前とは比べ物にはならない人口密度である。

「……なのは」

アルフを抱きかかえているフェイトは隣で口をぽかんと開けている親友の名を呼ぶ。

「な、なに?フェイトちゃん」

なのははフェイトの一声で現実に帰ってきた。

「サッカーっていつもこんなに盛り上がるの?」

フェイトは今回が初観戦であり、初応援なのでそのように訊ねるのも無理のないことだろう。

「こんなに盛り上がってるのは初めて。一体どうなってんのよ?」

なのはの代わりに答えてくれたのはアリサ・バニングスだった。

「何だかカメラとか持ってる人がいっぱいいるね」

月村すずかは観客の何人かが手にしているものを見ながら言う。

「何で、こんなに人が来たのかな?」

(多分だけど、リュウタロスが出場しているから敵情視察に来たんだと思うよ)

なのはの疑問にユーノが念話の回線を開いて答えてくれた。

(どうして?)

なのはも念話の回線を開いた。

(何度か練習試合があったじゃない。そのたびに相手チームの監督さんは士郎さんにリュウタロスの事に関して探りを入れてたじゃない?)

(そういえばお父さん。リュウタ君のことに関しては上手くはぐらかしていたような……)

実を言うと、この半年間。翠屋JFCは他のチームとも練習試合を何度かしている。

戦績は『程々に勝って、程々に負けている』といったところだ。

試合開始前には必ずといっていいほど、相手監督が訊ねてくるのだ。

「リュウタロスという選手はいるのか?」と。

聞かれるたびに、なのはの言うように適当に上手くはぐらかしていた。

(翠屋JFCに突如現れた謎のストライカーが半年振りに帰ってきたんだ。この業界にいる人達は今日の試合を見たがるのも無理はないよ)

ユーノは考えられる可能性をなのはに語った。

「おーし、そろそろ広げようぜ」

モモタロスは手にしていた包みを開けて、広げる。

高町家で準備をしていたのは応援をするための旗だった。

しかも一体につき、一本なので計三本用意している。

モモタロスの旗には『無敵!翠屋JFC』とデザインされ、ウラタロスの旗には『VICTORY!!』となっており、キンタロスの旗には『必勝!!』となっていた。

「よぉーし!今日は小僧の晴れの舞台だ。テメェ等いいなぁ!?」

「任せといてよ。センパイ」

「リュウタの晴れの舞台や。ヘマはせえへんで!」

モモタロスの一声にウラタロスとキンタロスはそれぞれ返事をした。

 

謎のストライカーことリュウタロスはシュートの練習はせずに、チームメイトとパスの練習やトラップの練習をしていた。

スポンジのようにサッカーの基本テクニックを吸収していく。

「上手い上手い。リュウタロス君」

「そお?僕、上手なんだ」

練習相手に褒められると、リュウタロスはブイサインで返す。

「リュウタロス君。コレを着るんだ」

士郎がリュウタロスにタンクトップのようなものを渡す。

番号がプリントされているビブスだ。

「本当はユニフォームのほうがよかったんだが、君に合うサイズとなると特注で作ってもらうしかなくて、時間がなかったんだ。すまない」

「いいよ。こっちの方が着易いし、ありがとう。おじさん」

士郎は謝罪するが、リュウタロスは気にする様子もなくビブスに腕を通す。

彼等も何度か服に袖を通したことがあるが、とにかく着づらいという印象しかないので、ビブスくらいが丁度いいのだ。

「さてと、そろそろ始めますか」

「そうですね。応援席は異常なくらいに温まってきましたからね」

相手チームの監督が士郎の側まで歩み寄り、試合を始めるように進言する。

士郎もその言葉に応じた。

それから選手達が整列して試合が始まった。

観客が盛り上がったのは言うまでもないことだろう。

 

 

河川敷が異様に盛り上がっている頃、良太郎はデンバードⅡから降車して眼前の建物を見ていた。

高町家よりも和風であり、武道を教える場所といわれたら首を縦に振ってしまうくらいに似合っていた。

門を潜って、案内の看板に沿って足を進めていく。

道場らしき建物の前に机が置かれており、門下生とも思われる男女がいた。

「本日の無料体験に来たんですけど……」

良太郎が受付の男女に言うと、二人は笑顔で一枚の紙を良太郎に出した。

「こちらにお名前をお願いします」

良太郎は女性からボールペンを受け取って、さらさらっと記していく。

(あっ。しまった……)

良太郎はポカをやらかしてしまったことに気がついた。

このままでは過去の時間に自分がいたという足跡を残してしまう。

記入した名前を見ると、『野上良太』まで書いてしまっている。

(こうなったら!)

良太郎は紙に書いている名前で最後の部分を『郎』を『朗』にして提出した。

『野上良太郎』が過去の時間にいたというのは何かと問題だが『野上良太朗』なら問題ないだろうと判断したのだ。

「これで何とかなるかなぁ」

正直、『確信』ではなく『賭け』の域を出ていないのがしこりとなっていた。

受付の男性から体験用の剣道着(袴も含む)を受け取った。

 

男性更衣室で剣道着に着替え終えると、既に先客が何人かいた。

自分と同じタイプの剣道着を着ていた。

男が半数を占めており、女性は三人くらいだ。

(まさか、アレを真に受けて来たのかな……)

良太郎はあのチラシにいる女性がここにいるとは思っていない。

つまりここにいる男性のほとんどは道場側の思惑に乗せられたということになる。

もう一度、自分と同じ無料体験者を見回す。

真面目に剣道を習おうとしている者もいれば、明らかにチラシの女性目当てとも思えるような者もいる。

実際の真意は聞いてみないとわからないが。

待つこと五分くらいで、道場主ともいえる初老の男を筆頭に数名の男女が入場してきた。

その中には先程、受付をしていた男女も含まれていた。

「おおおおおっ!!」と良太郎の周辺にいた男達がそのような声を上げた。

チラシに載っていた女性が入場してきたからだ。

その女性とは良太郎が知る人物でもあった。

「シグナムさん……」

良太郎はその人物の名を口に出した。

 

「野上。……何故?」

シグナムは自身の名を呼ばれた方向に顔を向けると、そこには自分を打ち負かした相手がいた。

そう野上良太郎がいたのだ。

 




次回予告

第十九話 「海鳴 冬の陣 中編」

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