艦娘幼稚園の更新を再開いたしますっ!
まだストックが少ないのと、同人誌用の作業があるので不定期にはなりますが、できるだけ早く更新できるように頑張ります!
今章はタイトルからも分かる通り、あの艦娘たちがついに幼稚園にやってきます!
だけど、実はメインは……あの艦娘っ!?
今回いきなり、子供たちがメインじゃないんだよっ!
さぁさぁ、これからも宜しくお願い致しますっ!
その1「クロスアタック」
午後3時15分。
指定された時刻に、鎮守府内の第一埠頭に出頭せよと言われたのは昨日の事だった。
もちろん今回も夜遅くに高雄が自室に尋ねて来たのだが、以前の記憶と経験上、またもや海底に沈んでしまうのではないかと心配した。だが今回は、俺が船に乗ってどこかに行くのでは無く、どうやら出迎えをする為のようだった。
詳しく聞いてみれば、ヲ級を連れて帰ってくる事になった佐世保への出張を俺が失敗してしまった為、こちらから迎えに行くのでは無く、あちらの方から出向いてくれるという事になったそうなのだ。俺が全面的に悪いのでは無いと思うのだけれど、当事者である事に変わりは無いし、向こうから来てくれる人に顔を会わすのは少しばかり気が引ける。しかし原因を作ってしまった以上、最低限の償いくらいはしなければならないだろうから、俺がこの場で迎えるのもあながち間違ってはいないのだろう。
「ふあぁぁぁ……」
あくびが聞こえたのでそちらの方へ目をやると、真っ白い軍服に身を包んだ青年が海を眺めながら大きく口を開けていた。彼は、この舞鶴鎮守府の最高司令官である元帥であり、艦娘幼稚園の設立者である。
その隣には秘書艦である高雄の姿があり、あくびをしていた元帥のお尻を思いっきりつねって、眠気を覚ますように促していた。
「た、高雄さぁ……もうちょっと加減して欲しいんだけど……」
「あら、これでもかなり手加減したつもりですけれど?」
「ひ、ひきちぎれるんじゃないかと思ったんだけど、それでも手加減してくれたんだよ……ね?」
元帥は問いかけるように言ったのだが、高雄は全く素知らぬ振りで海を眺めていたので、仕方なくつねられたお尻をさすっていた。
表情から見ても痛いのが丸分かりなんだけど、如何せん懲りない元帥が悪いと思うんだけどなぁ。
先月に行われた遠足でもしかり、幾度となく高雄にフルボッコにされたにも関わらず、未だ何かが改善したとも思えないし。
まぁ、それでも直らない所が元帥っぽいと言われれば仕方がないのだけれど。
「そろそろ時間ですけど……まだ船は見えませんね」
腕時計を見ながら呟くが、目の前に開けた海に船影は見当たらない。深海棲艦に襲われた経験があるだけに、少し心配になってしまうのだが……
「いえ、多分あれがそうだと思いますわ」
高雄が前方を指差すが、俺には何も見えなかった。
「……えっと、何か見えますか?」
「艦娘は僕達と違って目がかなり良かったりするからねー。まぁ、そうじゃなければ砲撃戦とか大変だろうしさ」
言われてみればその通りだと思える元帥の言葉に、俺は頷きながらもう一度高雄が指した先を見る。すると、うっすらと小さな影が見えたような気がした。
「確かに何かが見えるような……見えないような……」
「あの距離ですと、もう10分もすれば到着すると思いますわ。もしトイレなどを済ませるなら今のうちですけれど……」
そう言った高雄に俺は首を左右に振って大丈夫だと答える。他の鎮守府から来る客を迎えるという大事な役目なのだから、ここに来る前に済ませるのは当たり前なのだが、
「よし、それじゃあちょっと行ってくるねー」
言って、元帥はそそくさと近くの建物へと走っていった。
この鎮守府で一番上に立つ人物が全然できていなかった辺りどうなのかと小一時間問い詰めたくなるが、もちろん高雄も同じ考えのようで、大きく深いため息を吐いて目を閉じていた。
到着した輸送船から降り立った子供達と、護衛していた艦娘が到着し、俺達の前に佇んでいた。子供達の数は4人で、見た事がある服装に見を包んでいる3人と、長く青い髪の大人しそうな感じの子が俺や元帥の顔を伺っている。しかしそれ以上に目立つのは、長いストレートの金髪で少しきつめの目に、見た事の無い服装をした艦娘の姿だった。
「Guten Tag. 佐世保より参ったビスマルクよ。貴方がここの司令官かしら?」
目の前の艦娘はそう言って、あろう事か俺の前に歩み寄って来た。
「え、あ、いや……それは、そこにいる方がそうですけど……」
言って、俺は元帥に向けて手で示す。
どこをどう間違ったら俺を司令官と見間違えるのだろう。至って普通の洋服にエプロンを着けている男よりも、真っ白な軍服の男性がすぐ横に立っているのに……だ。
「あら、貴方がそうなの? なんだかパッとしない顔をしてるわね」
「んなっ!?」
「そうなのですわ。どこかへ行ったと思ったらトラブルばっかり抱えてきて、今度は大丈夫かと思えば帰ってこなくなったりで……本当に問題だらけな人なので困っているのですよ」
「んななっ!?」
ビスマルクと高雄が元帥を見ながら言いたい放題にモノを言い、元帥はうちひしがれるようにその場で崩れ落ちた。
出会って早々あんな事を言われた挙げ句、身内にまでこっぴどく言われたらそうなっちゃうよね……
まぁ、日頃の行いが悪いのだから仕方ないけどさ。
「――と、こんな感じで良かったのかしら、高雄?」
「ええ、ぶっつけ本番にしては良かったわ」
「あ、あれ、2人はお知り合いですか……?」
「ええ、そうよ。高雄とは総合合同演習の時にやりあった仲でね」
「そうなのですわ、先生。それ以来、たまに連絡を取り合っていたのですけど……本当に久しぶりね」
2人はそう言って、にこやかに握手を交わしていた――はずだったのだが、
「……どういうつもりかしら、高雄?」
「貴方こそどういうつもり?」
握手をしている手がブルブルと震え、2人の表情が険しくなっている。
も、もしかして、2人はその……犬猿の仲とかそういうやつなのでは……と、焦りながら様子を見守っていたのだけれど、
「それよりビスマルク、僕と一緒に今度デートにでも行かないかな?」
いつの間にか復活していた元帥が、薔薇を口にくわえて2人の側に立っていた。
どこにそんな物を隠し持っていたんだよと突っ込みたくなるが、元帥の事だからいつでも口説けるようにとかそういう理由で、常時用意してそうだ。
「「………………」」
ビスマルクと高雄の顔が、ギギギ……と油が切れた機械のようにゆっくりと元帥に向かって動いていく。
「良い料理を出す店を知っているんだけどね、是非そこでお酒を酌み交わしながらお話でもどうだろう?」
全くもって空気を読まない元帥は、髪をかきあげてビスマルクに向けてウインクをする。二人はもの凄く嫌そうな表情を浮かべた後に握手を解き、くるりとその場で身体を回転させた。高雄は右回転、ビスマルクは左回転と、同じ速度で合わせるように右手を大きく振りかぶり……
「もちろんその後は僕のエスコートで……ぶべらっ!」
見事な右フックと裏拳が、元帥の両頬に突き刺さった。
もちろんその瞬間に元帥の意識は遥か彼方へと吹き飛んでいき、先ほどと同じように崩れ落ちる。そんな姿を全く見る事無く、二人は右手をぷらぷらと脱力させながら、大きくため息を吐いていた。
「興が冷めたわね……」
「まぁ、いつもの事ですわ」
そう言ってお互いを睨み合う二人を見て、俺は心の中でこう思う。
艦娘って、怒らせたらマジで怖い――と。
「それでは私は元帥を連れて指令室に戻りますので、後は先生にお任せしても宜しいですか?」
「は、はい。ビスマルクさんや子供達の幼稚園案内は俺がちゃんとしますので、高雄さんは元帥を宜しくお願いします」
「ええ、それではくれぐれもお願いしますね」
そう言って頭を軽く下げた高雄だったけれど、視線の先は完全にビスマルクを捕えていた。
うーむ、さっきの事と言い、高雄とビスマルクの関係は火に油っぽいよなぁ。
覚えておかないと、後々大変な事になるかもしれない。重々気をつけなければ……
「それじゃあ、早速幼稚園に案内していただけるかしら?」
「あ、はい。では俺の後に続いてきて下さい」
言って、俺は埠頭から幼稚園のある方へと歩き出す。
「高雄は貴方の事を先生と呼んでいたけれど、そうすると、幼稚園に勤務している方って事で良いのかしら?」
「その通りです、ビスマルクさん。1年ほど前からこの鎮守府にある艦娘幼稚園で、先生として働いてます
「ふうん……なるほどね。あと、堅苦しいのはあまり好きではないから、私の事は別にさん付けしなくて良いわよ」
「分かりました。それじゃあ、ビスマルク……で良いですか?」
「ええ、構わないわ。その代わり貴方の事も先生と呼ばせていただくわね」
微笑を浮かべてそう言ったビスマルクに、俺は頷いて返事をした。会って早々フレンドリーだとは思ったが、俺の方も堅苦しいのは好きではないのでその方が気楽だし、断る理由も無いだろう。
「あの……少し宜しいでしょうか?」
「ん、大丈夫だけど、君は……えーっと……」
「私は金剛型戦艦の榛名です。お尋ねしたい事はいくつかあるのですが……」
榛名はそう言って、一緒に歩いている子供達と顔を合わしてからもう一度俺を見た。
「幼稚園に、金剛お姉さまはいらっしゃるのですよね!?」
「うん、金剛だったら幼稚園で元気に過ごしているよ。そうか……君達が金剛の妹である、比叡と榛名、そして霧島だね?」
子供達の服装が見た事があると思っていたのだけれど、良く考えてみれば金剛の服装の色違いである事が分かる。
「はい! これから色々とお世話になりますが、宜しくお願いします!」
頭を大きく下げて挨拶をする榛名に微笑みかけ、「こちらこそ宜しくね」と言いながら頭を撫でた。
「……っ!? あ、あの……先生はいったい何を……」
「あ、あぁ、ごめんごめん。いつも子供達にこうやってるから、癖でつい撫でちゃったんだ」
「そ、そうなのですか……ちょっとびっくりしてしまいましたが、少しだけ心地が良かったかもです……」
頬をうっすらと赤く染めながら俺を見上げた榛名はそう言って、恥ずかしげに笑みを浮かべていた。
「はいはーい、その辺でストップー。榛名は恥ずかしがり屋なんだから、少し手加減してあげて下さいね」
「比叡姉さまの言う通りです。先生も行き過ぎたスキンシップはセクハラ行為に当たるという事を肝に免じてください」
「うっ、わ、分かったよ……」
今のがセクハラになってしまうのならば、先生としてどう触れ合って行けば良いのだろうと思うのだが、確かに初対面でいきなり頭を撫でるのもやり過ぎと言われればそうかもしれない。この辺りは、後々仲が良くなってから徐々に馴らしていけば良いだろう。
――って、馴らしていくとか言っちゃったけど、実際には慣れてからでの間違いである。前者は色んな意味で危うい発言だ。
「えっと、ところで君が比叡……で良かったのかな?」
「ええ、宜しくお願いしますね、先生」
「そして、私が霧島です。姉妹共々宜しくお願い致します」
二人はそう言って、軽めに頭を下げた。警戒しているという感じには取れないけれど、まだ気を許している様子では無さそうだ。
「えっと、そして君は……」
「あっ、わ、私は五月雨って言います! ちょっと佐世保ではドジっちゃってこんな恰好になっちゃいましたけど……宜しくお願いします、先生!」
元気良く頭を下げた五月雨だけど、長い髪がブンブンと揺れて、くしゃくしゃになっていた。
……なるほど。こりゃあ天性のドジっ子なんだな。
しかし、佐世保でドジってしまったとか言っていたけれど、いったい何があったのだろうか。高雄からは新しい子供達がやって来ると説明されたが、詳しい事は何一つ聞かされていないのだけれど……
「先生のその顔は……もしかして、何も知らないのかしら?」
「あー、はい……お恥ずかしながら……」
「全く……高雄ったら、いったい何を説明したのかしら。それとも間接的に嫌がらせを……?」
「い、いや、さすがにそれは無いと思います! 色々とすみませんっ!」
不穏な空気を感じて、俺はビスマルクに深々と頭を下げた。高雄が絡むと機嫌が悪くなるのは十分に理解しているし、幼稚園を案内する前からこんな調子では先が思いやられてしまうのだけれど……
「あら、別に先生が謝らなくても良いのだけれど……潔いのは感心するわね」
「は、はぁ……ありがとうございます……」
ニッコリと笑みを浮かべるビスマルクを見てホッと胸をなでおろした……つもりだったのだが、何故か不穏な空気を感じてしまった俺は、素直に喜ぶ事ができなかった。
この感じは……どこかで覚えがあるのだけれど、いったいどこで……?
本当にお待たせしてすみませんでした。
なんとか同人誌用の執筆も終え、現在修正&編集作業に入っております。
残念ながら知り合いのサークルにお願いしようと思っていたのですが、冬コミに落選してしまい、急遽変更して調整中であります。
詳しくは決定し次第ご連絡させて頂きます……が、どうやら当日参加できそうな予感ですっ!(イベント参加は10年近くぶりなので今からドキドキです)
次回予告
佐世保から到着した子供達とビスマルク。
初っ端から元帥が倒れ、主人公一人で幼稚園まで案内する事になった。
そして、ついに金剛姉妹の感動の再会――となるはずが?
艦娘幼稚園 ~佐世保から到着しました!~ その2「全員、敬礼ッ!」
乞うご期待!
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