明日の朝。参加者が一同に読みあげられ、各自が一言話していく。
そして遂に、俺の出番がやってきたのだが……
「おはようございます~」
「「「おはよーございますっ!」」」
いつもの朝礼にいつもの時間。
しかし、この場にいる子供達&俺の声は、いつもと違って元気いっぱいだった。
その理由は、もはや語る必要が無いくらい分かりきっている。大半の子供達は久しぶりのバトルを参加ではなく見れることに興奮しているし、参加する子供達は賞品である俺を目指して気合い充分といった表情を浮かべていた。
もちろん、気合いが入っているのは俺も同じである。昨日交わした愛宕との約束により、今回のバトルで勝利することを心に強く誓っている。
勝利者になれば、愛宕からご褒美が貰えるのだ。ここで興奮しないのならば、男として終わってると言っても良いだろう。想像力の高さを遺憾無く発揮してしまった俺は、興奮しすぎて夜寝るのが遅くなってしまったくらいだからなっ!
別にやらしいことは何一つしていない。そんなのしちゃったらご褒美の時に勿体ないっ!
日頃の溜まりに溜まったこの欲求……全て出さしていただくぜっ!
――とまぁ、気合い充分なのは分かって頂けただろうが、さすがにそこは子供達の前。普段と変わらない装いで、朝礼の進行を行っていた。
「それでは、本日の昼寝の時間が終わった後に、バトルを開催します~」
「「「わあぁぁぁっ!」」」
一斉に上がる子供達の歓声に俺の胸が高鳴っていく。しかし、冷静さを失えば勝てる戦いも負けてしまうので、しっかりと自分を保つようにと深呼吸をした。
「そして、今回のバトルの参加者ですが……今から読み上げるので手を挙げて意気込みを一言お願いしますね~」
愛宕の言葉に歓声が鳴り止み、ごくりと唾を飲み込むような音が聞こえた気がした。
「まずは、エントリーナンバー1番。天龍ちゃんで~す」
右手を天龍に向けた愛宕は、ニッコリと笑って一歩前に出るように促した。コクリと頷いた天龍は、気合い充分な表情で俺を一瞬見つめた後、大きく口を開いて声を出す。
「先生は俺のもんだっ! 他のヤツに渡すつもりはねぇってことを教えてやるぜっ!」
天龍はそう言って、右手の拳を天高く振り上げた。その瞬間、周りから大きな歓声と拍手が挙がる。
いや、もう何が何だかって感じなんだけど、言ってる意味を分かって喋っているのだろうか。
恋愛感情による告白とかそんな生易しいものじゃない。完全に俺というモノを所有すると公言しているのだが……色んな意味で問題になりそうである。
特に元帥辺りが思いっきり反応しそうだ。もちろん厄介ごとのおまけ付きで。
「はいはーい。天龍ちゃん、ありがとうございました~。
それでは続いて、エントリーナンバー2番。時雨ちゃんで~す」
さっきと同じように愛宕は時雨に右手で促した。
「他のみんなには悪いけど、先生は僕が頂くよ。僕の知識と判断力で、必ず勝利を手に入れるつもりさ」
特別なポーズはせずに、時雨は淡々と喋ってお辞儀をした。俺にはその冷静さが非常に恐ろしく目に映り、思わずゴクリと生唾を飲んでいた。
「続きまして、エントリーナンバー3番。金剛ちゃんで~す」
「ハーイ! 私の実力で、どんな相手でも一網打尽にしてアゲルネー! それで先生は私のモノになりマース!」
金剛は気合いが入った大きな声で宣言し、右手を振りかざした。
「続いてはエントリーナンバー4番。電ちゃんで~す」
「せ、先生は絶対渡さないのですっ! い、電の本気を見せてあげるのですっ!」
少し緊張しながら声を上げる電。しかし、その目は気合いに満ちて、俺の顔を見つめている。
「その次は、エントリーナンバー5番。雷ちゃんで~す」
「先生には私が必要なのっ! だから、誰にも渡さないんだからっ!」
胸を突き出して堂々と言った雷なのだが、今の内容だと俺って相当なダメ人間にしか聞こえないんだけど……
「そして、エントリーナンバー6番は、ヲ級ちゃんで~す」
「フフ……オ兄チャンヲ誰カニ渡スツモリハ無イヨ。僕ニ立チ向カオウトスル者ハ、誰一人トシテ立ッテイルコトハ出来ナクシテアゲルサ……」
怖い怖い怖いっ! もはや発言がラスボスを超えて裏ボスじゃねぇかっ!
容姿も含めて完全な敵役ぶりに、感嘆してしまいそうになっちまったぞっ!
「さぁ、これで全員と思いきや……スペシャルゲストの登場ですっ!」
盛り上げるように叫んだ愛宕に向かって、子供達が驚いた表情で一斉に振り向いた。
「エントリーナンバー7番! なんと賞品である先生が最後の参加者で~す」
「「「な、なんだってーっ!?」」」
うん。驚くのは分かるんだけど、元帥達とまったく一緒ってのが俺もちょっと驚いたかな。
あと、某編集部っぽいのも追加で。宇宙人とか出てこないけど。
「それでは先生、一言お願いします~」
愛宕の声にしっかりと頷き、子供達に向かって視線を向ける。
「俺を所有したいって気持ちはありがたいけど、俺は俺の生き方があるんでな。全力で勝たしてもらうことにするぞ!」
もちろん愛宕のご褒美が目当てだけどな! ――とは声に出さず、心の中で叫んでおいた。
これでバトルの参加者は全員揃った。後は時間になるのを待つだけだと思っていたのだが……
「と言うことで、先生が新たに参加者として名乗りを挙げましたが、ここで少しルール変更をしたいと思います~」
「……えっ!?」
事前に聞いていなかった愛宕の言葉に、俺は驚きを隠せない。しかしそれは子供達も同じようで、ビックリとした表情で固まっている。
つまり、今までのバトルでこんなことは無かったのだろうと予想出来るのだが……
「今回は艦娘ではないとはいえ大人の先生が参加しますので、ちょっとしたハンデを設けたいと思います。
参加者に対して攻撃を当てた場合、点数が1点加算されますが、先生を当てた場合のみ、倍の2点を加算することにします~」
「おおおっ! つまりそれって、勝利に一気に近づくってことだよなっ!」
「先生を倒せば2人分の点数か……それは確かに有利になるね」
「どっちにしたって、全員倒せばオッケーってことデスネー!
でも、どうせならばっちり狙ってあげマース!」
「真っ先に先生を狙うのですっ!」
「大丈夫よ先生っ! 雷がきちんと当ててあげるわっ!」
「フフフ……オ兄チャンノ悲鳴ヲ聞クノガ楽シミダヨ……」
………………
なんでいきなり火に油を注ぐようなことを言うんだよっ!
ご褒美をあげる気なんて更々無いってことじゃないですかーっ!?
このままじゃ、確実に真っ先に狙われるのは俺ってことでファイナルアンサー!?
「「「イエス、ウィー、キャン!」」」
「こんな時だけ息ピッタリに合わすんじゃねぇっ!」
俺の全力の叫びが部屋の中にこだましたのは、言うまでもない出来事だった。
次回予告
まさかの新たなルールに驚く主人公。
しかし、ここで諦める訳にもいかない。頑張らなければならないのだ。
そして準備する為に参加者たちが集まった遊戯室で、すでに戦いは始まっていた。
艦娘幼稚園 ~第一回先生争奪戦!~ その4「鋼鉄と硝子」
乞うご期待!
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