艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 愛宕から聞かされるバトルの説明。
しかし、その内容に主人公は驚き、自分が不利でないかと焦りだす。
大丈夫だと愛宕が言って、持ち出してきた物は、とんでもないアイテムだった。


その2「FPSなら基本装備」

 

「バトルと呼ばれているのは、一種の戦闘訓練なんですよ~。艦娘として海に出る前に少しでも経験を積ませるためにと、幼稚園を設立した当初から行っているんです」

 

「ふむふむ……」

 

 バトルについて説明を始めた愛宕は、俺に分かりやすいようにとゆっくりと喋ってくれた。

 

「基本的には子供達全員で行うのですが、今回は状況がああいった感じだったので参加者を募る形にしました」

 

「結果、俺が賞品になっちゃいましたけどね……」

 

「あはは~。でもまぁ、それによって収まってくれましたからね~」

 

 笑ってごまかそうとしているようだけど……可愛いから許すっ!

 

「バトルの詳細ですけれど、まずは場所の説明からですね。まだ子供達を海の上でという訳にはいきませんから、幼稚園の敷地内をフィールドにして行います。ですが、後片付けが大変なので建物内は禁止してますけどね~」

 

「そりゃあ、戦闘訓練の一環ですから、建物内だと何かが壊れてしまうことも考えられますよね」

 

「はい、先生の言う通りです。ご褒美に頭を撫で撫でしてあげますね~」

 

 言って、愛宕は俺に近づいて頭を撫でだした。

 

 うむ、久しぶりの撫でられに、ちょっとどころかかなり嬉しいです。

 

 特に目の前にある……おっきいやつがたまらんです。今すぐ押し倒したいんですけど、それはちょっとヤバいですよね?

 

 ぶっちゃけちゃうと、そんな根性無いですけどねっ! 無理矢理とか好きじゃないんでっ!

 

「次にバトルのルールになりますけど、基本的には模擬砲撃戦を行います。ですが、模擬弾を使用してしまうと、実弾では無いにしろ子供達に危険が及ぶ可能性がありますから、専用のペイント弾を使って行います」

 

 愛宕はそう言って、ポケットに入れていた透明のプラスチックで出来たボールを俺に見せてくれた。

 

「この中にペイント液を入れて使用するんですが、簡単に言えばコンビニなどに置かれている防犯用のモノと同じと考えてもらえればオッケーですよ~」

 

「あぁ、なるほど。比較的割れやすいやつで、中に蛍光塗料が入ってるやつですね」

 

「その通りです~。更に撫で撫で~♪」

 

「お、おふう……」

 

 撫でる手が動く度に、目の前でおっぱいが踊ってるんですがっ!

 

 正に至福の時っ!

 

「もちろん使用する方法も色々あって、そのまま投げたりすることもあれば、子供用の専用艦装で打ち出したりも出来ますよ~」

 

「えっ!? そんなモノまであるんですか!」

 

「戦闘訓練の一環ですからね~。全艦種に合わせてバッチリ揃えてありますよ~」

 

「うふふ~」と笑いかけた愛宕だが、その言葉を聞いた俺は唖然とした。身体能力が普通の子供と違うだけでも結構危ういと思っていたのに、そんな装備まであるのなら、大人の俺でも太刀打ち出来ないのではないか思うんだけれど。

 

「あれ……ちょっと待ってください。子供達は良いんですけど、俺の場合は人間であって艦娘じゃないですから、対応出来そうな装備って無いですよね?」

 

「そうですね~。確かに艦装としての装備はありませんけど、使えそうなモノは色々ありますよ?」

 

「例えば……どんなモノが?」

 

 俺の問いに対して、愛宕は「ちょっと待っててくださいね~」と言いながら、スタッフルームの奥の方にあるロッカーを開けて、ガサゴソと中を物色し始めた。

 

「これなんかどうでしょうか~?」

 

 言って、俺の前に持ってきたものは……

 

「……どこからどう見てもRPGにしか見えないんですけど」

 

「正解で~す。もう一度頭を撫でな……」

 

「それってダメでしょうっ! こんなモノでペイントボールを打ち出したら、例え割れやすいといっても怪我くらい簡単に……」

 

「あっ、そういえばそうです。これは本物ですからペイントボールは使用できなかったですね~」

 

 いやいやいやっ! 訓練に使う模擬弾とか発射するやつじゃないのっ!?

 

 本物がスタッフルームのロッカーに入ってるとか、どれだけ無用心なんだよっ!

 

 そんな危険な場所で、毎日着替えしてたのかよ俺はっ!

 

「それじゃあ、他に先生が使えそうなモノと言えば……」

 

 RPGを持ってもう一度奥のロッカーへと向かった愛宕は、ブツブツと呟きながら中を物色し、俺の方へと戻ってきた。

 

「ぱんぱかぱーんっ。このジャベリンなんかどうでしょうか~」

 

 なんでそんなモノが出てくんのっ! 更に悪化しちゃってるよねっ!?

 

 つーか、なんでこんな場所に対戦車装備が仕舞ってあるんだよぉっ!

 

「あれ、気に入らないですか~?」

 

「いや……そもそもそれも、ペイントボールを打ち出せるような代物じゃないですよね?」

 

「はっ! 確かにそう言われればっ!」

 

 気づいて……ないだとぉっ!?

 

 赤外線誘導が出来るジャベリンに、中身が液体しか入っていないプラスチックボールを入れたところで全く意味が無いだろう。仮に撃てたとしてもまっすぐにしか飛ばないだろうし、そもそも発射した時点でボールが粉砕し、砲身の中が液体まみれになるのは目に見えている。それらを全て対応できるペイントボールがあったとしても、そんな危険なモノを子供達に向けて発射する勇気を俺は持ち合わせていない。

 

 と言うか、RPGとほとんど変わらないだろうし。

 

「それじゃあ、これもダメですよね……」

 

 ガックリと肩を落とす愛宕だけれど、訓練の一環である模擬戦に、本物の、しかも高火力な武器を提供しようとするのは如何なモノかと思うのだが。

 

 あと、奥のロッカーは整理するべきだと思います。安心して着替えすら出来ません。

 

 特に、龍田辺りに知られてしまっては、俺の命が危ないかもしれないので。

 

 対戦車武器、ダメ、絶対。

 

 いや、それ以前って話だけどさ……

 

「しかし、これ以外となると……先生の使えそうなモノは無さそうですね~」

 

「そうですか……」

 

 RPGとジャベリンは使えると思ったんだろうか?

 

 それはそれでどうかと思うんだけど、突っ込んだら負けのような気がする。

 

「あっ、そういえば……」

 

「他に何かありましたか?」

 

 思い出したように愛宕が声を上げたので、少し不安になりつつも聞いて見ることにしたのだが、

 

「いえいえ、話が結構逸れちゃいましたね~」

 

「……そ、そうですね」

 

 ニッコリ笑ってそう言った愛宕に、俺は呆れ顔を浮かべながら頷いたのであった。

 

 

 

 

 

「えっと、装備のお話は終わりましたから……次はバトルのルールについての説明ですね」

 

「はい、お願いします」

 

 一番重要になる部分なので、俺はしっかりと聞き逃さないように愛宕の顔を見ながら耳を澄ませた。

 

「フィールド内で参加者同士がペイントボールや専用のペイント弾を使用して戦うのですが、当てられた時点でその参加者はリタイアになります。もちろん復活することは出来ませんから、いかにして当てられないかが重要になりますね~」

 

「ふむふむ……」

 

「逆に、他の参加者を当てた場合は1点のポイントが加算されます。そして、残り時間が0になるか、参加者の残り人数が1人になった時点で終了になります~」

 

「ということは、勝利するにはポイントが一番高くないと?」

 

「その通りですね。もちろん、それまでに当てられてリタイアになったとしても、最終的にポイントが一番高ければ勝利者になりますよ~」

 

「なるほど……」

 

 つまり、生き残ることに重視するだけでは意味が無いということだ。俺の考えでは、戦場から帰ってくることが一番優先しなければならないだろうと思っているのだが、そういった行動を小さい頃からやり続けてしまうと、臆病な性格になってしまう可能性があるということだろう。実際の演習などでは、艦が大破認定を受けた時点で行動不能となるようだが、子供達に怪我を負わせる訳にもいかないので、このルールは最善だと思えたのだが……

 

「開始直後にリタイアする子が出そうですよね……」

 

「さすがは先生、良い読みをしてますね~」

 

 言って、愛宕はまたも頭を撫でてくれた。

 

 揺れる胸をそれとなく見つつ、俺は続けて口を開く。

 

「そうすると、生き残りつつ他の参加者を倒すことが出来るか……つまり、完全なバトルロワイヤルですね」

 

「そうですね~。もう少し慣れてきたらチーム戦なんかも経験させてあげたいのですが、今のところはこのバトル形式でやってます。もちろん、毎回盛り上がってますし、定期的にやってほしいという声も子供達から上がってるんですよ~」

 

 確かに血気盛んな子供もいるから、愛宕の言うことも分かる。だが、今回は俺という賞品がついているだけに、さっきの雰囲気からしても気合いの入り方は尋常じゃないような気がするのだが……

 

「とは言え、負けるわけにはいかないからなぁ……」

 

「そうですね~。先生が負けちゃったら、勝利した子の所有物になっちゃいますもんね~」

 

 勝手に決めた愛宕が言うのかよ……と、さすがに呆れそうになったが、悔やんでいたって過去に戻れる訳じゃない。今考えなければならないのは、いかにして勝利者になれる方法を考えるかが重要なのだ。

 

「でも、そうなったからと言って、その子に手を出すようなことはしちゃダメですよ~?」

 

「し、しませんよっ! だって俺は……その……」

 

 愛宕さんが好きですから……と、言えたら良いのだけれど、俺にはまだその勇気がない。

 

 本当にチキンで申し訳ないです。

 

「それなら問題ないですけど……先生が勝利した場合の利点が無いですよね~」

 

「……え?」

 

 いやいや、俺が勝利すれば身の安全が確保されるってことだから万々歳なんだけど。

 

 まぁ、その後も気は抜けないとは思うけどさ。

 

「言い出したのは私ですから、ちょっとばかり……そうですね。それじゃあ、こういうのってどうですか~?」

 

 言って、愛宕は少し背伸びをしながら耳打ちをしてきた。

 

 そして腕に触れる胸の感触っ! 本日二回目の至福の時っ!

 

「先生が勝利者になった場合は、私がご褒美をあげちゃいましょう~」

 

「ほ、本当ですかっ!? 絶対ですよっ!」

 

「もちろん約束は守りますよ~。それじゃあ、先生も参加するってことでオッケーですね?」

 

「はい! 絶対に勝って、ご褒美を貰いにきますっ!」

 

「うふふ~。そんなに張りきってもらえると、私としても嬉しいですよ~」

 

 ニッコリと笑みを浮かべる愛宕と、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる俺。

 

 こうして、子供達が俺を狙い、俺は愛宕を狙うという思惑を秘めた、幼稚園内バトルロワイヤルが明日の昼に開催されることになったのだ。

 




次回予告

 バトルの説明を聞き、参加を決意した俺は愛宕に頷いた。
明日の朝。参加者が一同に読みあげられ、各自が一言話していく。
そして遂に、俺の出番がやってきたのだが……

艦娘幼稚園 ~第一回先生争奪戦!~ その3「選挙じゃないよ?」


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