しかし、天龍は不満げな表情を浮かべていた。
そして時雨が口を開き、事態はさらに悪化する!?
今章はこれでラスト!
しかしまだまだ続きますっ!
「ん、なんだよ時雨?」
横槍を入れられた天龍は少し不満げに時雨に声をかけた。
「僕が喋っている最中だったんだけど……まぁ、いいかな。ここで言えばいいんだし」
「……何が言いたいんだ?」
ふぅ……と、時雨はため息をついてから目を閉じ、しっかりと天龍とヲ級を見据えて口を開いた。
「簡単な話さ。ヲ級ちゃんなんかに先生は渡せない。先生は……僕のモノなんだから」
「「「……なっ!?」」」
時雨の突然の告白に、部屋に居た誰もが驚き、声を上げた。
「し、時雨……お前もなのかっ!?」
「うん、そうだよ天龍ちゃん。僕は先生が居なくなってから、ずっと考えてたんだ。そして、ヲ級ちゃんが許嫁って言った瞬間ようやく分かったんだよ。僕は先生を……初めて会ったときから好きだったんだって」
「へ、へへ……そうか。それだったら仕方ないよな……」
ニヤリと笑みを浮かべる天龍に返すように、時雨も笑みを浮かべた。これからはライバルとして戦おうと、2人は固く誓い合うように――って、なんだこの展開っ!?
俺ってモテモテじゃん! 嬉しいけど、みんな年齢を考えてっ!
手を出したら確実に憲兵さんに連れてかれちゃうからさぁっ!
「……フゥ、分カッテハイタケレド、オ兄チャンノライバルガ2人モイルトハネ」
そう言ってもう一度ため息を吐こうとしたヲ級に、更に声がかけられた。
「まっ、待つのですっ!」
「そうよっ、雷のことを忘れたらダメなんだからっ!」
手を上げながら輪に入ってきたのは雷と電の姿だった。2人は少し頬を染めつつも決意を込めたような表情で、しっかりと口を開く。
「電だって、先生のことは好きなのですっ。ヲ級ちゃんに渡すわけにはいかないのですっ!」
「先生の傍には私が必要なんだからっ! そうよね、先生っ!」
電が、雷が……俺の顔を見上げつつ、ハッキリとそう言った。
やばい……恥ずかしいのもあるけれど、それ以上に嬉し過ぎて涙が出そうだ。
だけどやっぱり年齢が……完全にアウトである……
先生として本当に嬉しいんだけれど、内容に関しては完全に恋愛対象としてだからなぁ……
これが愛宕だったらどれだけ嬉しいことか……と、ヒッソリ顔を眺めてみたんだけれど……
「先生~、私の顔に何かついてますか~?」
「あっ、い、いえいえっ、なんでもないですっ!」
バッチリ見破られてしまった。
どうせならここで上手いことを言えば良いのに……と、自分のへたれっぷりを後悔していたんだけれど、
「……オ兄チャン」
「ん、なんだよヲ……級……」
そう言って、ヲ級の方へと視線を移したとき、完全に失敗してしまったことに気がついた。
ヲ級が、天龍が、時雨が、雷が、電が。
怒りMAXモードの表情で、俺を見上げている。
――あ、これ死んだわ。
と、死を覚悟したときだった。
「チョット待つデス!」
大きな声が俺の背中の方から聞こえ、全員が振り返った。
そこには余裕たっぷりの表情で金剛が立ち、その手には白いシャツが握られていた。
「先生を初めて見初めたのは金剛デース! その証に、このシャツを見るのデス!」
ま、まさか……
それってあれかっ! かくれんぼのときのやつなのかっ!?
「なんだよそれ。そのシャツがどうかしたのか?」
天龍はマジマジと金剛の握っているシャツを眺めてそう言った。
「どこかで見た覚えがある気がするんだけど……どこだったかな……」
時雨は思いだそうと頭を捻っていた。だが、見る機会はほとんど無かったし、思い出せなくても仕方がないだろう。
「でも、どこかで見たことがあるような気がするのです……」
「そうよね。誰かが着ていたような……あっ!?」
何かを気づいたように雷が俺の方へと振り向き、それに気づいたほかの子どもたちも、同じように振り向いた。
その視線の先は、俺の身体。エプロン姿から見える袖は、金剛が持っているシャツと全く同じ銘柄である。
「マサカ……ソンナコト……」
言って、ヲ級が金剛に近づきシャツに顔を近づけた。くんくんと匂いを嗅ぐように……って、お前は犬か何かかっ!?
しかし、金剛にも言っておかなければならないことがある。
ここでそのシャツを持ち込むなんて、火に油じゃなくて火災現場に爆弾だろうがあっ!
「……ハッ! コノ匂イハ紛レモナクオ兄チャンノ……ッ!」
「「「な、なんだってーーーーっ!?」」」
一同に驚く子どもたち。というか、輪の外からも聞こえたんですけどっ!?
「マ、マサカ……貴様……ッ!」
ギリギリ……と、歯ぎしりするヲ級は1歩2歩と後ずさる。
いや、何でそんなに緊張した場面になっちゃってるの?
たまたま……じゃないけど、俺のシャツを持ってただけでそんなに有利になっちゃうようなモノなの?
「僕ト同ジヨウニ、オ兄チャント一夜ヲ過ゴシタト言ノカ……ッ!」
「なんだってーーーーっ!?」
あっ、これは俺の叫びね。絶叫だね。
――ってか、なんで俺以外叫んでないのっ!?
「くそっ! まさかそんなことが……っ!」
思いっきり悔しがる天龍が床を拳で叩いた。
だから、なんでそんなに悔しがってるんだっ!?
そもそもそれ以上に、ヲ級の言葉に突っ込むべきじゃないのかっ!?
もちろん勝手に隣で寝ていただけですけどねっ! 手なんか出してませんよっ!
「くっ……これは1歩……いや、数歩先の場所に立ってるってことだね……」
だーかーらー、なんでそうなるんだよ時雨ぇっ!
「フッフッフー。これで私が先生の一番だってコトが分かったでショ? だから、みんなは先生のことを諦めテ……」
「だが断るわっ!」
「Why!? これ以上の切り札があるとは思えまセーン!」
「違うのですっ! そのシャツは先生から貰っただけなのですっ!」
「……っ! な、何故それヲッ!?」
いや、金剛の語尾がヲ級と間違えそうになってきたんだけどっ!
「電の情報収集を舐めないで欲しいのですっ! 青葉のお姉さんに頼めばこれくらい朝飯前なのですっ!」
それはそれで信憑性無いけどねっ!
つーか、俺心の中でツッコミまくって疲れてきたよっ!
「はいは~い。そろそろ先生が限界になってきたのでお終いにしましょう~」
パンパンと両手を叩いて注目を集めた愛宕は、続けて口を開いた。
あ、愛宕先生……あなたは救いの神です……
これ以上のツッコミは……本当にしんどかったですから……
「みんなが先生を大好きなのは、よ~く分かりました~。でも、ここでお終いって言っても、すぐにまた言い争いになっちゃうかもしれませんよね~」
「……え?」
な、何を言ってるんでしょうか、愛宕さん……?
これで終わらせてくれたら、俺のツッコミは終了出来るのに……
「ですから、みんなにはコロシア……じゃなかった、先生の争奪戦をやっていただきます~」
………………
今、何て言いましたか?
後に続くのは『イ』ですか!? それとも『ム』ですかっ!?
どっちにしたってありえないんですけどっ!
「誰が勝っても負けても、恨みっこなしの白熱バトルですよ~」
「「「わぁぁぁぁ……っ!」」」
愛宕の声に輪の外に居た子どもたちが一斉に声を上げた。
「やった! 久しぶりのバトルだねっ!」
「この前のはかなり面白かったからねっ!」
「今度は新しくヲ級ちゃんも入ってるし、すごく楽しみだよっ!」
なんか目茶苦茶盛り上がってるんですけどぉぉぉぉぉっ!?
っていうか、バトルっていったい何なんだっ!? 今までに全く聞いたこと無いぞっ!
「フフフ……まさかこんな展開になるとはな……ワクワクしてきたぜっ!」
「こうなった以上、僕も負けられないね……本気を出させてもらうよ」
「先生を頂くのは私デース! みんなには悪いですケド、一網打尽にしてあげマース!」
「い、電の本気……見せてあげるのですっ!」
「この雷様に敵うと思ってるのかしら……? 最後に笑うのは私なのよっ!」
天龍が、時雨が、金剛が、電が、雷が……そして、
「コンナコトニナルトハ思ッテモイナカッタケド……バトルト言ワレタラ引ク訳ニハイカナイネ」
……いや、なんでお前がバトルのことを知ってるんだ?
「クックック……イ級ヤレ級ト食事ヲ賭ケタ戦イヲ百回以上ヤッテキタ僕ニ、敵ウ筈モ無イコトヲ思イシラセテヤルッ!」
最早、盛り上がりきった子どもたちを止めるなんて俺の力ではどう考えても無理な話だった。
もし、この場で何か一つの願いを叶えられるというのならば、こう答えるだろう。
頼むから、平穏な日々を過ごさせて下さい――と。
「ところで愛宕先生~、テトロドトキシンってあるかしら~?」
「うーん、確かロッカールームにあったと思うけど……」
「少し分けてもらえると嬉しいんだけど~」
「致死量はダメよ~? 本人に後悔する程度で止めないと、後始末が大変だからね~」
「は~い」
こっちはこっちでマジ怖いんですけどぉぉぉぉっ!
艦娘幼稚園 ~ヲ級とみんなの許嫁騒動!?~ 完
次回、第一回先生争奪戦! 続きます!
前章に引き続き、今章も続く引っ張りっぷりにごめんなさいっ。
まさかのバトル展開に、気づいた人もいるのでは?
そう、少年誌のテコ入れ……と思っても仕方がない?
いえいえ、そんな事はありません。
相変わらずの、ギャグ満載で突っ走りますからっ!
次回予告
主人公を得るために子供たちでバトルが開催されることになった。
さすがにこれはやり過ぎだと焦る主人公は愛宕に問い詰める。
何故こんな事を……そう言った主人公に、愛宕はまさかの提案をしたのだった。
艦娘幼稚園 ~第一回先生争奪戦!~ その1「賞品、俺、絶対」
乞うご期待!
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