暴走する元帥を抑え込む高雄。しかしそんな高雄を愛宕がからかって……
実際な話、主人公ってモテ過ぎじゃないかと思い込む。
そんな思考が大惨事への第一歩……新たな悲劇の階段を着々と上がっていく主人公だった。
とまぁ、そういうことで……ヲ級は幼稚園に入園することが決まり、手続きも順調に進んでいった。正直な話、弟と知っていれば入園なんかさせる訳が無いのだが、知らなかったとは言え、言い出しっぺは俺である以上あの場でいきなり反対することも出来ず、元帥はあっけらかんな表情でOKを出してしまった。
ちなみに、その後のことなんだけど……
「そっかー。男の娘から今度は女の子かぁー。先生ったら、恵まれ過ぎだよねー……こんちくしょうっ!」
と、いきなりブチ切れモードに入ったところで、高雄の2回目となる延髄蹴りによって昏倒し、その他の話は元帥抜きで行われた。
ちなみに会話の内容なんだけれど、ほとんどがヲ級の衣食住に関することだった。ヲ級はすぐに俺と一緒の部屋に住むと言い出したのだけれど、それはダメだと高雄と愛宕が猛反対し、相談の結果、愛宕の部屋に住むこととなった。寝泊まりに関しては、元々高雄と一緒に居た2人部屋なのでスペースには問題ないし、食事に関してはしばらくの間混乱を避けるために、鳳翔さんにお弁当を頼むという事になった。
それじゃあ、高雄さんはいったいどこに住んでいるのかと気になって聞いてみたんだけれど……
「元帥から目を離すとすぐに脱走してしまいますからね。仕方なく元帥の部屋に寝泊まりしています」
「そ、それって、同棲ってやつでは……」
「……っ! ち、違いますっ。決してそういうモノではありません! こんなクソ元帥の世話なんて……はっ!?」
「そうよね~。毎日お世話が大変なのよね~」
「あ、愛宕っ!」
「あら~、私今……変なこと言ったかしら~?」
「……くっ!」
何やら一触即発のような雰囲気が漂い、焦った俺は2人を宥めようと声をかけたのだけど……
「「先生は黙っていて下さい」」
「は、はいっ!」
すんごい目で睨まれたので後ずさりながら返事をしてしまった。
うぅむ……情けないぞ俺……
ちなみに元帥は昏倒中、翔鶴と瑞鶴は冷や汗をかきながらの見て見ぬ振り状態だった。
多分アレだ。以前にもあったんだろうね……こういうの。
しかしまぁ俺としても、ヲ級と一緒に住むことになってしまったならば何をされるか分かったもんじゃないので、非常に助かったのだけれど……
「オ兄チャンハ、何デソンナニ嬉シソウナノカナ?」
言って、ジト目を向けるヲ級。
「べ、別に嬉しくなんか無いぞっ!?」
「嘘ダネ。ソノ証拠ニ、鼻ノ穴ガピクピク動イルジャナイカ」
「な、なにっ!?」
「あら~、本当ですねぇ~」
「そうですね。確かにピクピク、ポコポコと……」
ヲ級どころか言い争っていた愛宕と高雄まで加わって、鼻の穴を凝視されるという羞恥プレイに我慢できなくなった俺は、急いで退散することになったのだ。
そして今は、自室のベットの上……ということである。
「はぁ……まさか、ヲ級が弟だったなんてなぁ……」
今考えても、ありえる話ではない。
何せ、漫画や小説なんかでしか有り得るはずもない転生というやつなのだ。世の中にはそれが起こってくれれば泣いて喜ぶ人が五万といるかもしれないが、生憎俺にとって弟が転生してきて前に現れるというのは、大手を振って喜べるとは言い難い。
その理由は、元帥の前でも話した通り。ヲ級が俺を好いてくれているということである。
もちろん、兄弟としてならば何の問題もない。それなら俺も、それ相応の愛情で接すれば良いだけなのだ。
だがしかし、ヲ級の……弟のそれは、異性の愛情なのである。
いや、実際には同性だったのだが、男の娘という段階でもはやよく分からない。
――っていうか、俺よりでかいアレをぶら下げた可愛い子が、金剛のようにラブラブビームを随時送りつつ、好きあらば抱きつこうとするんだぞ?
すでにこれは拷問以外何物でも……って、あれ?
よくよく考えたら今のヲ級は男の娘じゃなくて、女の子になってるんだから……
………………
姿形は違えども、やってることは金剛と一緒なのか……?
それならば、いっそのこと……
………………
いやいやいや、待て待て俺。その考えはマズイ。倫理的とかもやばいけど、手を出した段階で憲兵さんに連行されちゃうから。
いくら両者が同意でも、年齢的にアウトである。
ヲ級に加えて、天龍も、龍田も、金剛も、雷も、電も……って、結構好かれてるなぁ……俺。
もしかして、人生で一番のモテ期じゃないのか?
問題はちっちゃい子ばっかだけど。
どうせなら愛宕が良いんだけどなー。おっぱい大きいし。でも、さっきの睨み顔はマジ怖かったけど。
でも、尻に敷かれる生活も悪くは………………ごくり。
物理的な意味でも非常に俺得である。
あっ、そういやル級もスタイルはかなり良かった。中身はオッサンだったけど。
んーむ。やっぱり今が一番モテてるぞ俺。
今を逃したら……もしかしてやばいんじゃないのか?
恋愛するなら……今でしょ――って、天国の両親も言ってくれている気がするし。
間違っても、ヲ級とヤッちゃいなYO! とは言ってない――と、思いたい。
うん、まぁあれだ。今日は色々と出来事が多過ぎた。
まずはゆっくり休んで……明日から幼稚園に復帰しないとな……
そう思いながら、俺はゆっくりと目を閉じていく。
海底で出会ったル級たちは無事に北へ行けたのだろうか。
また、会う日があればいいのにな……と、そこで俺の意識は暗闇へと落ちていった。
◆ ◆ ◆
そして次の朝。
以前と同じように出勤しようとしたのだけれど、自室を出ようとした俺の前には愛宕の姿があった。
「先生、おはようございます~」
「おはようございます愛宕さん。なんか、久しぶりですね……こういうの」
「そうですよ~。私ったら、結構寂しかったんですから~」
「えっ!?」
そ、それって、俺が居なかったからとかそういうのでしょうかっ!?
やっぱりモテ期きちゃってるよっ!
「スタッフルームで1人朝礼は寂しいですからね~。やっぱり挨拶をしないと始まりませんし~」
「え……あ……あぁ……そ、そうですね……」
思い違いも数秒で破綻し、ガックリと肩を落とす俺。
うむ。モテ期襲来はただの勘違いでした。
でも、1人で朝礼する愛宕ってもの凄く悲しそうなので、やっぱり俺が居ないとなっ。
前向きな思考に切り替えて、愛宕と一緒に幼稚園に向かうことになったのだが……
「先生は裏口から入ってくださいね~」
「えっ!? な、なんでですか……?」
別に一緒に幼稚園に来たからといって、噂になるようなことでもないだろうし……って、もしやそんなに俺って嫌われてしまったのかっ!?
そんなことになるんだったら、海底で暮らしていた方がよっぽどマシだったよ! もはや希望は地上には無いんだよっ!
「子どもたちにドッキリを仕掛けたいですからね~。先生が急に現れたら、ビックリして大喜びだと思うんですよ~」
言って、両手をポンと叩きながらニッコリと愛宕が笑みを浮かべていた。
なるほど……確かにそれも面白いかもしれないと思ったけれど、多分これは愛宕なりの配慮なのだろう。
昨日の元帥との会話で知ったのだが、俺は船から落ちてからずっと行方不明ということになっていたらしく、幼稚園の子どもたちにもそう伝えられていた。そんな状況で朝からいきなりいつも通りにやってきたら、それはそれでドッキリなんだけれど、収集がつかなくなることも十分に考えられる。それなら皆が一同に集まっている朝礼のときにことを説明しながら入っていけば、驚きはするだけろうけれども手間は1回で済むので俺としても非常に助かるのだ。
「分かりました。それじゃあ裏口からこっそり入って、見つからないようにスタッフルームに向かいますね」
「はい、それでお願いしますね~」
お互いに笑みを浮かべたまま頷き合い、しばらく談笑しながら幼稚園の近くまで向かうことになった。
あぁ……この平和な時間が非常に懐かしく、本当に嬉しく思えた。
海底での会話や触れ合いもアレはアレで楽しかったけれど、やっぱり俺はこの場所が一番好きだ。
身の危険は……まぁ、少し高まってしまったけれど、それでもこのかけがえのない時を過ごせるのなら、どんな努力も厭わない。
――そう、思っていたんだけどね。
ことは上手く運ばないから面白いんであって……って、当の本人には非常に迷惑なんだけど。
恐れていたことが起こるのは、それから程なくしてのことだった。
つづく
次回予告
愛宕の提案によりドッキリを仕掛けることになった主人公。
子どもたちの様子を伺いながら、ヲ級と会話をするのだが……
艦娘幼稚園 ~ヲ級とみんなの許嫁騒動!?~ その4「2つを合わせて読んでみてね」
乞うご期待!
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