艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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※ヤンデル大鯨ちゃんの新作も公開してますっ。

 会話で説得され、海底で働くことになった主人公。
やっと出てきたちっちゃい奴らっ! ついでにル級が本性を現すっ!
いったいどうする主人公!? 色んなところが危ないよっ!(ぇ


その5「沈んだ先にも幼稚園!?」

 深海棲艦との契約を交わした俺は、ル級の後をついて歩くことになった。

 

 もちろん口約束なので、逃げれるチャンスがあればさっさと逃げる。契約書に判子は押してないし。

 

 問題なのは、今俺がいる場所は明らかに海底としか言いようが無いことだ。地面はごつごつとした岩場で湿気が多く、周りには水だらけ。どういう仕組みかは分からないのだが、海底の一部分が空気のシェルターのような空間になっていて、酸素もしっかりあるようだった。

 

「ドウシタ。ココガソンナニ珍シイカ?」

 

「珍しいも何も、こんな場所、見たことも聞いたことも無いぞ……」

 

「フム。確カニ人間ハ陸ノ上デ生活シテイルカラナ。貴様ガソウ言ウノモ仕方ガナイノカモシレヌ」

 

「いや、それにしたって、どういう理屈でこうなってるんだ……」

 

 俺はそう言って、海水と空間の境目に手を触れてみた。ふにゃりとした感触が手の平に伝わるが、どれだけ押してみても水中の方には行くことが出来ないようだ。

 

「興味津々ナノハ分カラナクモナイガ、アマリヤリ過ギルト、空間ガ破裂スルゾ?」

 

「マジかよっ!? それを先に言えよっ!」

 

「別ニ我々ニ問題ハ無イカラナ」

 

「いやいやいや、俺が死んじゃうから!」

 

「私ハ一向ニ構ワン」

 

 お前はどこの中国拳法家だよっ!

 

 ――と、心の中で突っ込みつつ、俺は大きくため息を吐いた。

 

 そんな俺の気持ちを全く気にすることなく、ル級はスタスタと進んでいく。岩場に出来た小路のような場所をすり抜け、空気の層で出来たトンネルをくぐって暫く歩いて行くと、急にル級が立ち止まった。

 

「着イタゾ」

 

 ル級はそう言って振り向いた。だが、俺には全くその行動が理解できない。何故なら、ル級の立っている場所は行き止まりにしか見えないし、周りを見ても何かがあるとは思えない。

 

「いや、着いたと言われても、何にも見えないんだけど……」

 

 冷や汗を垂らしながら俺はル級に言う。すると、ル級は不適な笑みを浮かべ、空気の層に手を触れた。

 

「ちょっ、ま、まさかっ!?」

 

 強く押せば空間が破裂すると言ったはずだよねっ!?

 

 ってことは、初めからそういうつもりで連れて来たのであって、もしかしてここは、死体を捨てる場所か何かですかーーっ!?

 

「ククク……マァ、静カニ見テイロ……」

 

「いやぁっ! 止めてっ! 死んじゃうーーっ!」

 

 言葉だけ聞いたらエロいかもしんない叫び声を上げながら、俺は首をブンブンと振った。

 

 ちなみに野郎が言っても全然嬉しくないと思うので、自重しろって話である。

 

 って、突っ込み部分は冷静なのねっ、俺!

 

「フム……ナンダカソノ叫ビ、ソソルモノガアルナ……」

 

 ル級が頬を少し赤くしてるんですけどっ!?

 

 やばいっ! これって貞操の危機っ!?

 

「……ト、話ガソレテシマッタ。マズハ、ココヲ開ケルゾ」

 

「……え、開ける?」

 

 その言葉を聞いた俺は、叫ぶのを止めてル級を見た。空気の層に触れた手がグググ……と押し込まれると、想像もしなかった音が俺の耳に入ってきた。

 

 

 

 ……ガチャリ

 

 

 

「……は?」

 

 目が点になって立ち尽くす俺。

 

 ル級の手が触れていた空間は、水疱のように消えてなくなり、

 

 目の前には20畳程の、大きな空間が視界に広がった。

 

「こ、これって、どういう仕組みなんだよ……」

 

 そんな俺の問いに、ニヤリと笑みを浮かべたままのル級。あと、頬が赤くて視線が厭らしく感じるようになったのは、なんででしょうか?

 

 うーん、本格的にやばいかもしれない。

 

「我々モ、詳シクハ知ラサレテハイナイ。元々存在シタ場所ヲ使ッテイルダケカモナ……」

 

 説明しながら、舌なめずりをするル級。

 

 たーすーけーてー、おーかーさーれーるー

 

 うぅ……初めては愛宕がよかったのに……しくしく……

 

「フム。貴様ガ何ヲ考エテイルノカ、少シズツ分カッテキタ気ガスルゾ」

 

 ちょっ、心の中を読むのは禁止だぞてめぇ!

 

「貴様、サッキカラ私ノ尻ヲ見テ興奮シテイルナッ!」

 

「全くこれっぽっちも見てねえし、興奮なんてしてる訳がねぇ!」

 

「ムウゥ……違ッタノカ……」

 

 何で残念そうな顔をしてるんだよっ! 人間と歩み寄ろうとしてるのかっ!? それともあれかっ、やっぱり肉欲にまみれた日々なのかっ!?

 

 あと、何気に背後霊を出せそうなポーズで言うんじゃねぇ!

 

 どっちにしたって誰か早く助けてお願いぷりぃぃぃぃぃずっ!

 

「分カッタゾ! 尻デハナクテ、コノ胸ノ方ダナ!」

 

 あー、うん。そっちの方は良い感じですね。かなりおっきいし。

 

 ――って、なんでそうなるんだぁぁぁぁぁっ!

 

「マァ、冗談ハコレクライニシテダナ」

 

「色々と心臓に悪いから止めてくれ……」

 

「ナンダ、冗談ハヨシコサンノ方ガ良カッタノカ?」

 

 いつの生まれだよお前はっ!

 

 あ、でも、過去の記憶を持っていたら、それもありえるのか――って、全然無理だよ! 

 

 つーか、そろそろ突っ込み疲れで息も絶え絶えだかんねっ!

 

「ドウシタノダ? 息苦シソウニ見エルガ……」

 

「誰のせいだ誰の」

 

「ハテ、私ト貴様以外ニハ誰モ……ハッ!?」

 

 そう言って、辺りを見回すル級。

 

「マサカ、オッカサンガ……見エルノカ……」

 

「いやもうお前、深海棲艦の面を被った人間じゃねえかっ!」

 

「冗談ハヨシオクン」

 

「もう聞き飽きたよっ!」

 

 ぜぇぜぇと肩で息をする俺を見て、ル級はニコニコと笑っていた。

 

 やべぇ……今まで出会った全ての生き物の中で、こいつが一番やばい気がするぜ……

 

「サテ、ソレデハ本題ニ入ルカ」

 

 今までは準備運動と言わんばかりに、首をコキコキと鳴らしながら開けた空間へと入っていくル級に続き、俺もその中に入る。ゴツゴツとした岩場ではなく、まるでここだけが整地されたような地面が広がり、フットボール位なら余裕で出来そうな広さだった。

 

 そして、その中には、いくつもの影が一塊になっていて、

 

 俺の姿をじっと見つめていた。

 

「オ前タチ、元気ニシテイタカ?」

 

「ヲッ、ヲヲヲッ」

 

「イーッ」

 

「レ、レレッ?」

 

 まるでそれは、深海棲艦の子どもたち。

 

 その様子は、紛れもなく幼稚園。

 

「ウム、奴ガオ前タチヲ見ル人間ダ」

 

 そして、超がつく無茶ぶりを言っているル級。

 

「ヲッヲー」

 

 喜んでいるようなヲ級の子ども。

 

「イイッ、イー」

 

 黒いタイツのやられキャラみたいな台詞を吐くイ級の子ども。

 

「レッレレー」

 

 可愛すぎるレ級の子ども。あと、その発音はドッキリっぽいから止めてほしい。

 

 そして、そんな子どもたちを見た俺は、ル級に対してこう言いたい。

 

 

 

 難易度高すぎ――と。

 

 

 

◆   ◆

 

 

 

「ソレデハ後ハ任セタゾ」

 

「いやいやいや、無理でしょこれはっ! 第一、言葉が通じないもんっ!」

 

「ソノヘンハ、気合イデナントカ」

 

「無茶言うなっ!」

 

「人間ヤレバ出来ル」

 

「どれだけ前向きなんだよっ! ってか、本当にお前は深海棲艦なのかっ!?」

 

「見レバ分カルダロウ?」

 

「中身の話をしてるんだよっ!」

 

 肩で息をしながら叫びまくる俺に、ル級は微笑みながら口を開く。

 

「貴様ハ本当ニ面白イ」

 

「そっくりそのままお前に返すわっ!」

 

 すると、何故かキョトンとした表情を浮かべるル級。

 

「長年オ笑イガマッタクダメナ奴ダト言ワレ続ケタ私ニ何ヲ言ウ……」

 

 いやもう、どう突っ込んで良いのか分かんねぇよ!

 

 つーか、深海棲艦でもお笑いとかあるのっ!?

 

 目茶苦茶気になるんですけどっ!

 

「……ヲ?」

 

 いつの間にか俺の服の裾を掴んでいたヲ級の子どもが、ぐいぐいと引っ張りながら何かを訴える。

 

「えっ?」

 

「ヲヲッ、ヲ?」

 

「あ、いや、その……」

 

「フム。早速気ニイラレルトハ……ヤハリ侮レン」

 

「気に入られてるのっ!? ってか、ここに連れて来たのに侮れないとか意味が分からねぇっ!」

 

「アノ伝説ガ……現実ニナルト言ウノカ……」

 

「伝説って何っ!?」

 

「我ラガ困リシ時、人ノ姿デ現レル。ソノ名ハ、伝説ノ先生ト……」

 

「………………」

 

 突っ込み所が満載過ぎて、限界超えちまったぁぁぁっ!

 

 つーか、名前が先生ってなんだよっ! 深海棲艦なら、深海棲艦でいいじゃんかよっ! なんでわざわざ人に任そうとすんだよっ! そもそも伝説にするほどじゃねぇだろっ!

 

 

 

 突っ込みやり切っちゃったよっ!!

 

 

 

「……ヲ?」

 

「ウム。タマニ変ナ行動ヲ起コスガ、心配シナクテモイイ」

 

「ヲッ、ヲッ」

 

 コクコクと頷いたヲ級を見て、ル級はニコリと笑みを浮かべる。そして、俺の顔を見てから口を開く。

 

「ト言ウコトデ、コノ子ラノ面倒ヲ頼ムゾ」

 

「あー、もう、やりゃあいいんでしょう……」

 

「人間諦メガ肝心ト言ウガ……サスガニ腐ッタ魚ノヨウナ目ハドウカト思ウガ」

 

 誰のせいだ誰の。

 

「マアイイ。暫クスレバ慣レルダロウ」

 

 そう言って、ル級は背を向けて歩き出した。

 

 ――と思っていたのだが、

 

「ソウダ、言イ忘レテイタガ……」

 

「なんだよ?」

 

「興奮スルノハコノ足ノ方ナノカ?」

 

「冗談もほどほどにしろぉッ!」

 

「ククク……ジャアナ」

 

 今度こそ背を向けて、ル級は去った。

 

 目茶苦茶お笑い出来るじゃんっ!

 

 天丼とか高等テクニックだろうがっ!!

 

 そんな心の叫びは、誰に聞かせることも出来ずに水疱のように虚しく消え、俺はがっくりと肩を落とした。

 

 その間、ずっとヲ級の子どもは裾をぐいぐいと引っ張っている。まるで懐いた子犬のように寄り添いながら。

 

「………………」

 

 な、何これ可愛いとか思ってなんかないんだからねっ!

 

 

 

つづく




次回予告

 ヲ級たちを主人公に任せ(おしつけ)て、去って行ったル級。
どうすりゃいいのかと迷っていると、子どもたちは急に走り出す。
鬼ごっとと理解した主人公は、幼稚園と同じようにやってみようとしたのだが……


 艦娘幼稚園 ~沈んだ先にも幼稚園!?~ その6「嘘」

 乞うご期待!

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