今度はお外で体育の授業……のはずが、とんでもないことを口走るっ!
先に言います。古過ぎてごめんなさい。
※ヤンデル大鯨ちゃんの最新作も更新してますっ。
「それじゃあ……勉強はこれくらいにして、今度は運動をしようかな……」
弥生お姉ちゃんはぐったりとしたみんなにそう声をかけると、急に復活した天龍ちゃんが立ち上がった。
「そ、それなら大丈夫だぜっ!」
机の上でガッツポーズを決める天龍ちゃん。それはさすがに危ないっぽと思ったんだけど、夕立より先に龍田ちゃんが続けて立ち上がる。
「て、天龍ちゃん……さすがにそれは危ないわ~」
「あっ、そ、そうだな……机の上じゃなくて椅子の上にすれば良かったか?」
「それもどうかと思うけど~」
さすがに苦笑を浮かべる龍田ちゃんだけど、そんな光景を見ていても弥生お姉ちゃんは顔色一つ変えずに頷いてから、
「なんとかと煙は高いところにって言う……」
「なんだそれ? 龍田、知ってるか?」
「今の天龍ちゃんのことよ~。でも、ちょっと弥生先生も言い過ぎじゃないかしら~?」
そう言って、弥生お姉ちゃんに向けて不適な笑みを浮かべた龍田ちゃんなんだけど……
「そ、そう……かな。褒め言葉だと思ってたんだけど……」
少し困った表情を浮かべて、弥生お姉ちゃんが焦っていた。
も、もしかして……本気で間違えてたっぽい……?
表情が少し変わっただけで信用度が一気に増して感じてしまうのは龍田ちゃんも同じようで、一転して苦笑を浮かべていたの。
だけど、そんな夕立と龍田ちゃんの心中を知らないまま、天龍ちゃんは大きな声で、
「おおっ! 俺って褒められてたのかっ!?」
そうじゃない――って、同じ突っ込みを心の中で入れたと思うっぽい……
「なんとかとハサミは使いよう……ってのもあったけど、これも違うのかな?」
そう呟く弥生お姉ちゃんだけど、もしかして国語はダメっぽい……?
愛宕先生ったら、人選を間違えたんじゃないのかな……と思った出来事だった……っぽい。
そんなこんなで広場に出てきた夕立たちは、軽いストレッチ運動をしてから弥生お姉ちゃんの前に集まったの。
「それじゃあ、まずは軽い準備運動でランニングをします。弥生の後についてきてね……」
そう言って、弥生お姉ちゃんは軽い足取りで広場を端を回るように走り出した。
「よしっ! かけっこなら俺に任せとけっ!」
天龍ちゃんは元気良く叫んで弥生お姉ちゃんの後に続いていった。みんなもさっきのことがあるから……と不安な表情を浮かべていたけれど、ここでじっとしても意味が無いからと、後に続くことにした。
「えっほ……えっほ……」
弥生お姉ちゃんの後ろにピッタリとつくように天龍ちゃんの姿が。そして少し離れるようにみんなが走っている。
まずは1周、2周と広場を大きく回っているけれど、弥生お姉ちゃんは夕立たちを見ることなく、ただひたすら走ることに集中していたっぽい。
そうして、10周を過ぎた辺りで変化が起きた。
「うー……」
さすがに飽きてきたような声を上げた天龍ちゃんは、スピードを上げて弥生お姉ちゃんの横について声をかけた。
「弥生先生ー、いつまでぐるぐる走るんだよーっ!」
天龍ちゃんの言葉に、弥生お姉ちゃんは「そうだね……あと20周くらいで準備運動は良いんじゃないかな……」と言った。
その瞬間、みんなの口からは、
「うげっ……」
「ま、まだ走るの……?」
「さすがにキツいね……」
「……なのです」
こんな風に、口々に不満を呟いていたので、夕立も不安になって弥生お姉ちゃんの横について声をかけたの。
「や、弥生お姉ちゃん……さすがにみんな、しんどいっぽい……」
「そう……かな? でも、高雄秘書艦のスパルタコースなら、これの10倍以上はあるけど……」
「ま、マジでっ!?」
大きく目を見開いて天龍ちゃんが驚いていたけれど、さすがにみんなも同じ心境なのか、後ろから大きなため息がいくつも聞こえてきた。
「ゆ、夕立たちには、まだ早いっぽい……」
「そ、そうだよなっ! さすがに俺もちょっと厳しいぜ……」
反論する夕立と天龍ちゃんの声に弥生お姉ちゃんもさすがに気づいたのか、後ろを振り返ってみんなを見てから、
「それは気合いが足りないだけ……」
――と、無茶苦茶なスポ根理論を持ち出してきた。
それはちょっと無理があると、夕立は弥生お姉ちゃんに言おうと思ったんだけど……
「気合いを入れるためには……歌わなきゃダメ」
そう言って、みんなの方へ顔を向ける。
「今から弥生が歌うから、『はい』って言ったら同じように後に続いて……」
有無を言わさずに前を向いて、大きく息を吸い込んだ。
「ファミコ●ウォーズがでっ、たっ、ぞー……はい」
「「「………………」」」
弥生お姉ちゃんを除くすべてのみんなの目が点になっていた。だけど弥生お姉ちゃんは真面目な顔で、「ちゃんと歌わないと……ダメ」と言って前を向き、もう一度歌い出した。
「ファミコ●ウォーズがでっ、たっ、ぞー……はい」
「「「ふぁ、ファミコ●……ウォーズがでっ、たっ、ぞー……」」」
戸惑いながら歌い出すみんなの声を聞き、弥生お姉ちゃんは小さく頷いてから更に口を開く。
「元帥の手には気をつけろー……はい」
「「「元帥の手には気をつけろー」」」
「すけこましっ!」
「「「すけこましっ!」」」
「浮気性っ!」
「「「浮気性っ!」」」
「いつかは元帥刺されるぞー……はい」
「「「いつかは元帥刺されるぞー……」」」
そんな歌を叫びながら、広場をぐるぐると回り続けることになってしまったっぽい。
なんでこんな歌なんだろうと、誰もが気にしながら……
そんなこんなで、広場を20周くらい走った後。
「も、もう……無理……」
ばたんきゅー……と言う効果音がバッチリ似合うように、地面に倒れた天龍ちゃんが息も絶え絶えにそう言っていた。
夕立も、膝に手を付けて肩で息をしながらなんとか走り切ったって感じっぽい。
「まだ準備運動の段階なんだけど……」
汗一つかかずにそう言った弥生お姉ちゃんの表情は、やっぱり無表情のままだった。
後ろの方を見てみると、みんなも地面に倒れ込むようにしながら息を整えている。
しかたなく夕立は、弥生お姉ちゃんに進言したっぽい。
「や、弥生お姉ちゃん……」
「ん、夕立ちゃん。今の弥生はお姉ちゃんじゃなくて先生だよ……」
「そ、それはそうなんだけど……その、勉強の時といい、運動の時といい、夕立たちには無茶っぽい……」
「え……でも、弥生たちはいつもこれ以上の訓練をしているけど……」
「いつもは、夕立たち……こんなことやってないっぽい」
「そ、そうなの……?」
「そうっぽい」
夕立は弥生お姉ちゃんに首を縦に何度も振って返事をする。
「……え、でも、臨時の教官をして欲しいって、聞いたけど」
「………………」
弥生お姉ちゃんは……何を言ってるっぽい?
「……あれ?」
「弥生お姉ちゃん……」
「え、えっと……」
夕立の真面目な顔に、弥生お姉ちゃんは少しだけ慌てているようだった。
「愛宕先生が言ってたのは、教官としてじゃなくて……幼稚園の先生っぽい?」
「………………」
無言になる弥生お姉ちゃんの後ろに、大きなカラスがゆっくりと横切った気がした……っぽい。
「……ぽい」
「お、怒ってない……よね……?」
「怒ってはないっぽいけど……疲れてるっぽい……」
「う……うぅぅ……そ、その……ゴメンね……みんな……」
顔を真っ赤にして謝る弥生お姉ちゃんだったけど、やっぱり表情はさほど変わっていなかった。
◆ ◆ ◆
こうして、弥生お姉ちゃんの臨時教官……じゃなくて、臨時先生の時間は終わったの。
夕立に指摘されてからは遊戯室で遊ぶのを見ていてくれたりしてたんだけど、広場での運動で疲れきっていたみんなの体力は少なく、手がかかるような状況ではなかったと言うのが実際で……
大きくなったらあれ以上の訓練が待っているんじゃないかと思うと、少し嫌な顔をするお友達もいたけれど、何よりも運動によって先生のことに関する悲しみを少しでも和らげることが出来たみたいで、結果的には良かったっぽい。
そう考えてみれば、もしかすると弥生お姉ちゃんはわざとああいった風なことをしたのかな……と思ったんだけど……
「元帥の手には気をつけろー」
「元帥の手には気をつけろー」
「元帥の口には気をつけろー」
「元帥の口には気をつけろー」
「すけこましっ!」
「すけこましっ!」
「浮気性!」
「浮気性!」
「いつかは元帥刺しちゃうぞー」
「いつかは元帥刺しちゃうぞー」
こんな風な歌が、幼稚園にしばらくの間流行ってしまったのは、防ぎ用がないことだった……っぽい。
もしかすると、高雄お姉さんの差し金じゃないのかな……とも思ったんだけどね。
艦娘幼稚園 スピンオフ ~夕立と弥生お姉ちゃんの臨時先生~ 完
※ヤンデル大鯨ちゃんの最新作も更新してますっ。
弥生ちゃん……じゃなくて夕立編は終了です。
いやもうなんか色々とごめんなさい。ネタが古過ぎましたね。
天龍編と正反対のギャグばかり。交互に来ちゃうってことは、次の作品シリアスメインだよっ!
次回の主人公は響。
先生が行方不明になったことで、雷と電の落ち込み具合が半端ない。
心配になった響は、過去の記憶から徐々に不安が広がっていく。
第六駆逐隊の4人による、涙溢れる? シリアスストーリー。
艦娘幼稚園 スピンオフ
響の場合 ~響のキズナ~
乞うご期待!
次回は2話構成ではなく一気に1話で終わらせます!
泣け! 泣くんだジョーッ!(マテ
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