艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 足柄お姉さんを見つけるために高雄お姉さんに話を聞いた暁。
次に向かう先は整備室。その中に居たのは、足柄お姉さんではなく別のお姉さんだった。

 果たして足柄を見つけ出す事が出来るのか?
リクエストにあったキャラクターも登場。今回は扶桑!
振り回されまくる暁ちゃんに、ご注目!



暁の場合 ~一人前のレディ道~ 中編

 それから暁は足柄お姉さんに会うべく、整備室がある建物に着いたの。高雄お姉さんが言ってたことが気になったけど、折角ここまで来たんだから勿体ないわよね。

 

 あ、ちなみに高雄お姉さんが言ってたことについてはしっかりと聞こえていたわ。意味は分からなかったけど、雰囲気的に聞こえなかった振りをした方が良さそうだったから、あんな風に答えておいたのよ。

 

 そんなことを考えているうちに、ドックをある場所を通り過ぎて整備室の前までやってきたわ。

 

 入口の扉は……鍵は開いてるみたいだし、入っても良いわよね?

 

「お、おじゃましまーす……」

 

「んっ? あれ、暁ちゃんじゃない。どうしたの、こんなところに来るなんて」

 

「あっ、隼鷹お姉さん、ごきげんよう」

 

「これはこれは、どっかのお嬢様がやってきたってかー?」

 

「えっ!? 暁ってお嬢様みたいに見えるかしらっ!?」

 

「オチビのお嬢様って感じだけどねぇ」

 

「むぅー、暁はオチビじゃないしっ!」

 

「あっはっはー。ゴメンゴメン」

 

 けらけらとお腹を抱えて笑っている隼鷹お姉さんをちょっとだけ睨みながら、足柄お姉さんのことを聞いてみることにしたの。

 

「足柄? ここの使用記録を見る限り、ちょっと前まで居たみたいだけど……私もさっき来たばかりだから会ってないんだよねー」

 

「そ、そうなの? 折角ここまで来たのに……」

 

「ありゃまぁ、そんなに残念がるなんて、なんかあったの?」

 

「色々と探し回っているんだけど、なかなか出会えなくて困ってるの」

 

「あー、入れ違いに擦れ違いってやつかー。そりゃあ大変だよなぁ」

 

「レディ道について、聞きたかったのに……残念だわ」

 

「レディ道?」

 

「そうよ。暁は早く一人前のレディになるべく、色んなお姉さんに大人のレディについて聞いて、訓練してるの」

 

「へぇー、それはまた面白そうじゃない。もし良かったら、お姉さんもいっちょ噛んでやろうか?」

 

「えっ! 暁噛まれちゃうのっ!?」

 

 隼鷹お姉さんの言葉にビックリした暁は、慌てて一歩下がったんだけど、

 

「ぶっ! あ、あははははっ! そうじゃないっ、そうじゃないってっ! あはははははははっ!」

 

「な、なんで急に笑うのよっ! 暁は変なこと言ってないわよね!?」

 

「ひー、ひーーーっ! あー、こりゃダメだっ! 可笑しすぎて止まらないってっ!」

 

「も、もうっ! なんで暁を指差して笑うのよっ! 隼鷹お姉さんのバカァァァッ!」

 

 隼鷹お姉さんは暁のことを見ながらずっと笑っていたから、もう知らないって整備室から出たわ。

 

 あまりに笑われたので思わず大きな声でバカって言っちゃったけど、それは失敗だったわよね。レディとしてあるまじき行為とは分かってるけど……訳が分からないまま笑われたんだし、大目に見ても良いわよねっ!

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 結局整備室に足柄のお姉さんは居なかったし、どこを探せば良いのか分からなくなっちゃったわ。

 

 仕方がないから、同じ建物の中にあるドックの方にやって来たんだけど……

 

「あら、そこにいるのは暁ちゃん……かしら?」

 

 ドックからちょうど出てきた扶桑お姉さんに出会ったの。

 

「こんばんわ、扶桑お姉さん。ごきげんよう、なのです」

 

「あら……ごきげんよう暁ちゃん。いったいこんなところでどうしたの?」

 

「ちょっと、足柄お姉さんを探していたんだけど……全然見つからなくて困ってるの」

 

「足柄……? あぁ、あの大食いの……」

 

「えっ……大食い? 足柄お姉さんが?」

 

「そうよ。普段はそうでもないんだけど……カツを目にしたときは……」

 

「か、カツ……?」

 

 なんだかどんどん足柄お姉さんが、想像するレディ像から掛け離れて行っている気がするんだけど……

 

「まぁ、見れば分かるんじゃないかしら。今の時間だと……あら? もう夕食時を過ぎてしまってるわね」

 

 扶桑お姉さんが壁掛けの時計を見てそう言ったので暁も見てみたんだけど、いつも夕食を食べている時間を大幅に過ぎてしまっていたの。足柄お姉さんを探しているうちに、ずいぶんと時間がかかってしまったのね……と思っていたら、お腹が急にぐぅぅぅ……って鳴っちゃったの。

 

「あらあら、暁ちゃんも夕食がまだだったのね」

 

「あ、あぅ……こ、これは、その……」

 

 レディにはあるまじき失態に、お顔が真っ赤になってしまったわ。暁はなんとかごまかせないかと思ったんだけど、

 

「それじゃあ、一緒に鳳翔さんの食堂に行きましょう」

 

「あ、う、うん。そうね。暁もお腹空いちゃったし」

 

 扶桑お姉さんの提案に、言い訳することも出来ずに陥落した感じになっちゃったの。さすがはレディの貫禄ってやつかしら?

 

「私もぺこぺこよ。帰ってきてからずっとお風呂に浸かってたから……」

 

「そう言えば山城お姉さんから聞いてたけど、もう大丈夫なのかしら?」

 

「ええ。時間はかかったけど、ここのお風呂は優秀なの。私は常連だから……うふ、うふふふふ……」

 

 な、なぜか急に笑い出した扶桑お姉さんを見て、正直暁はドン引きだったわ。

 

「ふ、扶桑お姉さん、ど、どうしたの……?」

 

「元帥にバケツを頼んでもくれないし、装甲強化するための近代化改修も却下されたし、砲塔が重くて肩が凝るし、伊勢や日向にMVP取られちゃうし、違法建築なんてあだ名がついちゃうし……不幸よね、私って……」

 

 怖い怖い怖い怖い怖いっ!

 

 扶桑お姉さんが淑女って言ったの誰よっ!?

 

 これじゃあ、淑女の前に不幸の……いえ、変態がつきそうじゃないっ!

 

「あら? 今……暁ちゃん、変なことを考えなかったかしら?」

 

「ぜ、ぜせぜぜっ、全然そんなこと考えてないわっ!」

 

「そう? なんだか不幸な香りがしたんだ……けど……」

 

 不幸な香りって何ーっ!?

 

「もしそうだったら……髪の毛を一本……」

 

「なななななっ、何に使うのっ!?」

 

「それはもちろん……うふふふふ……」

 

 きぃーーーーゃーーーーっ!

 

 このまま一緒に食堂に向かうのは非常に危ないわっ!

 

「あ、あのっ、暁は用事を思い出したからっ!」

 

「あら、そうなの?」

 

「そ、そうなのっ! 残念だけど、また今度っ!」

 

 暁はそう言って、扶桑お姉さんから逃げるように駆け出したわ。出来るだけ速く、ちょっとでも遠く離れたかったの。

 

「ちっちゃな子どもにまで逃げられる……うふ、うふふふふ……」

 

 後ろから不気味な笑い声が聞こえたけれど、建物から出るまで一切振り返らずに走ったら、息が上がっちゃって大変だったわ。

 

 ふぅ……レディ道も簡単じゃないわよね。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 扶桑お姉さんから逃げ出して、暁はもう一度宿舎の方に戻ってきたわ。お腹は減ってるけど、今食堂に向かうと扶桑お姉さんがいると思うから、時間をおいてからの方が良いと判断したからなの。

 

 でも、正直どこを探したら良いか分からなくなってきて、とりあえず足柄お姉さんの部屋にやって来たわ。

 

 コンコン……

 

 でも、予想通り返事はなし。部屋の中に居る気配はまったく感じられないわ。一体全体、どこをほっつき歩いているのかしら?

 

 ぐぅぅぅ……

 

 お腹から情けない音が鳴って慌てて周りを見回したけど、誰にも聞かれてなかったようでほっとひと安心ってところよね。レディにあるまじきなんだけど、いつもの夕食の時間からはかなり遅くなってるから、もうお腹はぺこぺこで限界なの。身動きを取るのもしんどくなってきたから、何か食べれるものを探しに行くのが最善よね――と思って売店の前まで来たんだけれど、そこに見知った姿を見かけたわ。

 

「あれ、暁ちゃんなのです」

 

「電じゃない。もしかして、牛乳を買いに来たのかしら?」

 

「なのです。毎晩ちゃんと飲んで、もっと身長と……お胸をおっきくするのですっ!」

 

「良い心がけよ。幼稚園の中で一番のレディである暁を見習って、しっかり精進するのよっ!」

 

「その割には、電とあんまり変わらないのです……(ぼそぼそ)」

 

「えっ、今何か言った?」

 

「な、何でもないのです」

 

「そう? なんだか嫌な予感がしたんだけど……」

 

 扶桑お姉さんの言う、不幸の香りってこんな感じなのかしら……って、それだと暁も変態淑女になっちゃうじゃないっ!

 

 暁は立派なレディなのよっ! 更に磨く為に色んなお姉さんから訓練になりそうなのを聞いてまわってるんだからっ!

 

 そ、その割には、あまり良いことを聞けてない気がするけど……今日は調子が悪いだけよねっ。

 

 それに、まだ足柄お姉さんに会えてないし……って、本当にどこにいるのかしら?

 

「暁ちゃん、急に黙り込んだりして、どうしたのです?」

 

「あ、ううん。ちょっと足柄お姉さんを探してるのを思い出したんだけど……」

 

「足柄お姉さんですか? それなら、さっき食堂に行くって言ってたのを聞いたのです」

 

「えっ、それって本当っ!?」

 

「はいなのです。そろそろ時間も良い頃だからって、一人で通路を歩いていたのですよ」

 

 一人で呟きながら歩いてるって……ちょっと可哀相というか、悲しいというか……ま、まぁ気にしないほうが良さそうね。

 

「それじゃあ、売店でパンでも買ってから食堂に向かおうかしら」

 

「それは無理なのです……」

 

 少し落ち込んだ表情を浮かべた電がそう言ったんだけど、どうしてかしら?

 

「売店は、もう全部売り切れてしまったらしいのです……」

 

「えっ……それって、もしかして……?」

 

「はいなのです。また、赤城お姉さんと加賀お姉さんが買い込んでいったみたいなのです……」

 

「少し前に、元帥に陳情したばかりじゃないっ!」

 

「そうなのですが……更に買い貯め出来るって喜んでるみたいなのです……」

 

「改善するどころか悪化してどうするのよっ!」

 

 暁の大きな声が通路に響いちゃったけど、時既に遅しだったわ。

 

 ホント、空母のお姉さんたちには勘弁してほしいわよね……

 




次回予告

 足柄お姉さんの足取りを掴んだ暁は、扶桑お姉さんのことを気になりつつも食堂へと向かう。
果たして足柄お姉さんを発見できるのかっ!? それともまたまた振り回されるのかっ!?
ちっちゃい暁奮闘記? 次回で終結ですっ!

暁の場合 ~一人前のレディ道~ 後編


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