艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 今後の情報を載せておりますので、是非ご覧下さいませ。

※タグにもありますが、ほんのちょっぴりR-15部分がある――かもです。


 後ろから聞こえた声。そして気絶してしまった主人公。
目覚めると見知らぬ場所に、主人公は焦りつつも犯人と会話をする。

 まさかの人物が現れて、驚愕の事実を突き付けられる最終話。
だがしかし、それで終わる――訳が無い?

 --●●の歴史に、また1ページ(ぇ


その15(完)「やっぱりお前か」

「うっ……」

 

 頭がズキズキと痛み、重たい頭がグラグラと揺れる。俺はなんとか苦痛に耐えながら目を開けた。

 

 辺りは暗く、何とも言えない梅雨のようなしっとりとした湿気が感じられ、不快感が一気に高まった。

 

「ここは……どこだ……?」

 

 明かりが少なく薄暗い視界の為、今居る場所がよく分からない。

 

 俺は倒れ込んでいた床からゆっくりと立ち上がり、痛む頭をさすりながら周りを見渡してみる。

 

「……遅いお目覚めですね」

 

「……っ!」

 

 後ろの方から声がして、俺は素早く振り返りながら構えを取る。気絶したときの記憶によって、身体が勝手に防衛反応を取ったのだ。

 

「そんなに構えなくても、今のところ先生を攻撃するつもりはありません。先ほどは――少々やっかいだっただけですから」

 

「今のところ……って事は、後々攻撃される可能性があるって事だよな?」

 

「なるほど……これは言葉を選び間違えました。それでは、こう言い換えさせていただきます。

『先生の返答次第では、攻撃するつもりはありません』」

 

「結局の所、あんまり変わってない気がするんだけど」

 

「そうでしょうか?」

 

 ふぅ……とため息のような声が聞こえた。

 

 たぶん、俺に向かって声をかけている誰かが吐いたのだろう。

 

「……とりあえず、姿だけでも見せて欲しいんだけど」

 

「ふむ……そうですね。警戒心を解くためにはそれも良いでしょうが……」

 

 そう言って、もう一度ため息を吐いたらしき音が聞こえた。

 

「しかし、このような状況に置いて、相手の姿を見てみたいというのは、度胸があるのか無謀なのか分かりかねますね」

 

 いや、その考えは俺とは少し違う。

 

 何故なら、俺にかけられる声の口調などから、大体は分かっているのだから。

 

「まぁ良いでしょう。今から明かりをつけますが、少々目が眩むかもしれません」

 

 言葉が終えた瞬間、パチンと音が鳴って明かりが灯された。

 

 すぐに目を閉じて眩むのを避けた俺は、ゆっくりと目を開ける。

 

 そこには、想像していた通りの艦娘の姿があった。

 

「やっぱり……加賀さんでしたか」

 

「そうですね。なんとなく分かっているとは思っていましたが……」

 

 じゃあなんで、度胸があるのか無謀なのかって言ったんだろ……

 

 相変わらずの無表情な加賀の思考が読みとれない。この状況を打破するには少しでも情報が欲しい所なのだが、この分だとかなり厳しいことになりそうだ。

 

「……で、なんでまた俺は気絶させられて、こんな場所に幽閉されてるのかな?」

 

「やはり度胸がある……で良いのでしょう」

 

「……いや、答えになっていないんですが」

 

「そうですね。答える気が無いと言う訳では無いのですが」

 

 うーん、いまいち分かりにくいなぁ。

 

「すべては役者が揃ってから……と思っていましたが、どうやらその時間のようですね」

 

「……?」

 

 3回目のため息を吐いた加賀の視線が俺の後ろに向けられ、俺は恐る恐る振り返ってみる。

 

 そこには、ガムテープで口と身体をぐるぐる巻きにされた元帥の姿と、いつもと変わらぬキリッとした表情の高雄さんの姿があった。

 

 

 

「あら、少し待たせてしまったでしょうか?」

 

「いえ、こちらも今さっき起きたところです。問題ありません」

 

「そうですか、それは良かった」

 

 ニッコリと笑みを浮かべる高雄は、まったく悪気が無く、まるで任務か何かをこなしているように、俺のすぐ隣に元帥の身体を突き飛ばした。

 

「むぐっ!?」

 

「げ、元帥っ!」

 

「むぐっ、むぐぐっ!」

 

 身体を揺らして何とかしようとする元帥に近づいて、顔に巻かれたガムテープに手をかけた俺は高雄の顔を見る。

 

「別に構いませんよ」

 

 先程と表情を変えぬまま高雄はそう言ったので、俺は遠慮なしにガムテープを引き剥がした。

 

「いてっ! 痛いよ先生っ!」

 

 粘着力の強い布製のガムテープ。しかも口だけで良い筈なのに、丁寧に後頭部までしっかりとぐるぐる巻きに3周させてあったので、剥がす際に髪の毛も一緒にもっていかれてしまい、元帥は何度も悲鳴を上げた。

 

 ここまでしなくても良いと思うんだけど、やっぱり元帥恨まれてないですか……?

 

 続いて手足を縛る役目をしていた部分のガムテープも引き剥がすと、大きなため息を吐いた元帥はゆっくりと立ち上がって俺に礼を言い、高雄に向き直る。

 

「……どういうつもりなのかな高雄。事と場合によっては軍法会議モノなんだけど?」

 

「そうですね。私がやっていることは充分承知しているつもりですけれど……はたして元帥はそうなのでしょうか?」

 

「……何?」

 

 何を言っている!? と言わんばかりに不機嫌な表情を浮かべた元帥だが、こんな表情は初めて見た気がする。

 

 それほどまでに追いつめられているのか、それともこれが本性なのか、それは俺には分からない……が。

 

「ですが、元帥を捕まえる指示をしたのは私ではなく、そこにいる加賀さんですわ。逆に、先生を捕まえるように指示したのは私なのですけれど」

 

「……?」

 

 どういうことだろう。

 

 元帥を連れてきた高雄は俺に用事があり、俺を拘束していた加賀は元帥に用事がある。

 

 どうしてそんな回りくどいことをしたのだろうか。

 

 それに、ドックの中で一緒にいた青葉の姿はどこに行ったのだろう?

 

「最初から最後まで説明して欲しい――といった顔をしていますわね、先生?」

 

「……ええ、正直何が何だかさっぱり分かりかねてます」

 

「そんなに難しいことではないと思いますが」

 

 後ろから加賀が声をかける。

 

 急にぼそりと呟くから、心臓に悪いんだけど。

 

「そうですね。答えを明かすだけなら簡単ですけど、それではあまり意味がありませんし……どうしましょうか、加賀さん」

 

「別に……やる事は変わらないのだから、どちらにしても同じ事」

 

「なるほど。それも一理あり……ですね。それじゃあ、簡単に説明いたしましょう」

 

 両手を合わせてニッコリと笑う高雄の顔を見た俺は、背筋にぞくりと寒気が走る。

 

 笑顔の奥に隠された、憎悪のようなモノが……感じられる気がするのだが……

 

「まず最初に言っておきますが、先生はそもそも捕獲対象になっていなかった事を先に伝えておきますね」

 

「……えっ!?」

 

「ですが……ちょっと『おいた』が過ぎましたね。なので、元帥と同じようにここに来てもらいました」

 

「ど、どういうことですかっ!?」

 

「それは自分で考えていただかないと意味がないのですわ。ですが、ヒントをと言うのならば――青葉に巻雲、飛龍と蒼龍」

 

 高雄はそう言って、俺の目をじっと見つめていた。

 

 その瞳の奥に憎悪の炎が、浮かび上がっているように見えてしまう。

 

 いったい……俺が何をしたというのだろう……

 

「そ、それって……今日出会った艦娘の4人……ですよね」

 

「ええ。それは間違いありませんけど、それだけでは全然ダメですわ」

 

 そう言って、高雄は目を閉じて微笑みを俺に向ける。

 

 分からない。一体何が問題なのか。

 

 『おいた』が過ぎた――と高雄が言ったその意味について考える為、4人に共通点か何かがあるのではと、頭の中で整理をする。

 

 青葉、飛龍、蒼龍の3人は以前にも会った事があるし、面識もある。青葉に至っては、ストーキングされていた事もあるが、高雄の言う『おいた』に当てはまるモノは――

 

「あ……っ!?」

 

 もしかすると、写真じゃないのかっ!?

 

 腹筋が割れていると言っていた蒼龍の言葉。つまり、俺の写真を持っていたと言う証拠。

 

 そして、その写真を売っていた青葉の存在。

 

 蒼龍から俺の写真を見せてもらった可能性がある、飛龍。

 

 本を読んでから青葉を崇拝し、俺や元帥のサインを欲しがった巻雲なら、以前に写真を手に入れていてもおかしくない。

 

 しかも、俺は青葉を許すため、秘蔵写真で取引をしてしまった……

 

 これが、高雄にバレていたのであれば、怒る理由も分からなくはない。

 

 つまり、高雄の言った『おいた』と言うのは、艦娘たちのあられもない姿の写真を指すのではないだろうか。

 

 

 

 ――いや、待てよ。

 

 もしそうだったのなら、問題になるのは俺と青葉だけになるんじゃないだろうか。

 

 飛龍や蒼龍、巻雲に関しては、俺の写真を見た可能性がある――という事だけなのだ。

 

 それならば、俺に非があるとは思えないし、青葉だけにお仕置きがいくだろう。

 

 いや、もし青葉との取引が聞かれていたのならば、その考えは甘いという事になるが。

 

「あら、このヒントでもまだ分からない……といった感じですわね」

 

 少し不機嫌な表情を浮かべた高雄は、ゆっくりと俺の周りを周回するように歩き出す。

 

 黙っていたのは考えをまとめていただけなのだが、現状において有力なのは写真の事だけだ。

 

 ならば、その事を高雄に伝えようと、俺は口を開こうとしたのだが、

 

「それじゃあ、もう一つのヒントです。先生の『おいた』と元帥の『おいた』は、まったく同じなのですわ」

 

「……はい?」

 

「これだけ言っても、まだ分かりませんか?」

 

「え、えっと……元帥と、同じ……?」

 

 そう呟いた俺に、高雄は更に不機嫌な顔をして、大きなため息を吐いた。

 

 そんな高雄を見た加賀は、無表情のまま、ぼそりと呟く。

 

「先生も元帥も、4人を口説きました」

 

「はあっ!?」

 

「いえ、正確には、先生は4人。元帥は3人ですわ」

 

「それは失礼しました。でも、結局同じ事です」

 

 高雄も加賀も、もう一度大きくため息を吐く。

 

「い、いやしかしっ! 口説いたなんて、そんな気は……っ!」

 

「先生にそんな気がなかったとしても、相手にとってそうでなかったとしたら?」

 

「……あっ!」

 

 

 

 ドックで逃げようとする青葉を追いつめた時――

 

『は、初めて……なの……で、や、優しく……して……ください……』

 

 

 

 怪我をしたかもしれないからと、巻雲にドックに行くようにと言った後――

 

『ひゃあぁぁ……もしかして、巻雲……おふたりから惚れられちゃってますっ!?』

 

 

 

 元帥に怒られた飛龍と蒼龍を励まそうとした時――

 

『「動いちゃダメですよ?」

 

「えっ……?」

 

「何が?」と、問いかけようとする俺に2人は近づき――

 

「「ちゅっ」」

 

 両方の頬を挟み込むようにして、口づけされた。』

 

 

 

 ――そう。

 

 4人全員が、俺のことを好いてくれたのかもしれない。

 

 だけど、仮にそうだったとしても、

 

 俺を捕まえる理由が分からない。

 

 だがまずは、分かるところからまとめよう。

 

 元帥に関しての理由はこう――だ。

 

 加賀が元帥を捕まえる指示をしたのは、これ以上ライバルを増やしたくないからだろうし、無節操に見かねた秘書艦の高雄も賛同したと考えられる。

 

 つまり、いつものパターンと言うやつだろう。

 

 なら、やっぱり、

 

 俺を捕まえた理由は、一体何なのだろう。

 

 これ以上、勘違いさせてしまう艦娘たちを出さないために?

 

 まさか、未来の俺が元帥以上の無節操さで世界の大半の女性を落としまくったりするのを防ぐために、未来から来た刺客が高雄だというのだろうか。

 

 そんなばかげた話は、マンガの中だけで良い。

 

 あと、そんなに俺は無節操じゃないし(と、思うんだけど)。

 

「ふぅ……どうやら、いつまでたっても分かりそうに思えません」

 

「そのようですわね。まったく、朴念仁にも程がありますわ」

 

 すごい言われようだけれど、全く分からない俺にとって、そう言われても仕方がない。

 

「それじゃあ、先生。大ヒントを差し上げますわ」

 

 そう言って、高雄は俺に向かって人差し指を立てる。

 

「1つ。幼稚園の先生を募集して審査を行ったのは、私と愛宕」

 

 その人差し指を、俺の胸に突きつける。

 

「2つ。先生の行動は全て愛宕が管理して、その情報を私に送ってくれていた」

 

 指の腹で撫でるように、胸からへそに下りていく。

 

「3つ。先生の顔も、身体も、性格も、全てが私の好みにピッタリなのですわ」

 

 下腹部に高雄の指が触れる。

 

 妖艶な声。

 

 艶めかしい指の動き。

 

 恍惚とした表情。

 

 全てが俺を、金縛りにかけたように拘束する。

 

「高雄の方はもう止まらないようですね。それでは、元帥、こちらの方も始めさせていただきます」

 

「や、やめるんだ……加賀……っ!」

 

「いいえ、聞けません。元帥には一度、私に溺れていただかなくては、いけないようですので」

 

 そうして、加賀は元帥を押し倒す。

 

 それから先、湿った室内に何があったかは、本人たち以外に知る由もなかった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「――という内容の物語を考えたのよ~」

 

「おおっ! 何という素晴らしいストーリーですかっ! 青葉ったら感激しちゃいましたっ!」

 

「あら~、それはとても嬉しいわ~」

 

 一番端にあるドックの中。

 

 罰として掃除をしていた青葉の元に、龍田が手作りの分厚い紙束を持って訪れていた。

 

「ぜひぜひっ、これを書籍――いえ、漫画化して皆さんに配らなくてはいけませんねっ!」

 

「それなら、秋雲さん辺りに頼もうかしら~」

 

「そうですねっ! 秋雲なら間違いなく最高の漫画にしてくれるでしょう! こうしちゃいられませんっ! 早速この資料を持って、秋雲の元に急がなくてはっ!」

 

「それじゃあ、私もご一緒して良いかしら~。秋雲お姉さんの絵の描き方も気になってるの~」

 

「それなら是非青葉と一緒に行きましょう! 向かう先は秋雲の部屋っ! 修羅場になっていなければ、手伝わされる心配もないでしょう!」

 

「それって逆に言えば、修羅場だったらアシスタントに無理矢理されちゃうって事じゃないのかしら~」

 

「そうなったらそうなった時の事ですっ! そのお礼として漫画にして貰うように頼めば問題ナッシング!」

 

「そうね~。それは良い考えだわ~」

 

 そう言って、2人は頷いてドックの中から外へと向かう。

 

 後に、舞鶴鎮守府の大半を巻き込んだという大事件になったのは、また別の話。

 

 機会があれば、語ることもあるかもしれないだろう。

 

 

 

 結論。

 

 触らぬ龍田に何とやら。

 

 すでに手遅れではあるけれど。

 

 俺の日常は、平和という文字にほど遠いのだろう。

 

 

 

 艦娘幼稚園 番外編? ~青葉と俺と写真と絵師と~ 完

 




※リクエスト結果を活動報告にて更新しました。
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 これにて、艦娘幼稚園 番外編? ~青葉と俺と写真と絵師と~ は完結致しました。
オチは……本当にごめんなさい。途中からプロット無視って暴走してました。
どこからどこまでが龍田の作り話なのかは秘密です。


 さて、次回の更新のお話です。
次は読み切り短編を1つ。書き方や手法の勉強で、テストサンプル的な作品になります。
一人称から三人称へ。上手く出来ているかどうかは分かりませんが。
内容に関しては、学生時代に読んだ英語の教科書を思い出しながら艦これ風にアレンジしてみたSSです。

 タイトルは、
艦娘幼稚園 ~噂の所以は本当か?~ です。

 更新はもちろん明日の予定。宜しくお願い致します。

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 どしどし宜しくお願いしますっ!

 最新情報はツイッターで随時更新してます。
「@ryukaikurama」
 是非フォロー宜しくですー。

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