艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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活動報告にて詳細を書いてありますので、まだの方は宜しくお願い致します。


 一括した元帥によって動きを止めた蒼龍と飛龍。
そんなふたりに、初めてと言えるくらいの元帥らしさを見せたのであったのたが、やっぱり元帥はいつも通りだった。
 しかしそんな元帥を見た主人公は、上手い具合に横やりを入れてふたりを助けようとしたのだが……


その13「またもや……見てたりして」

「もう一度言うよ。飛龍、蒼龍、こっちを向きなさい」

 

「「は、はい……」」

 

 うわぁ……滅茶苦茶気まずそうな表情になっちゃってるし……

 

 まぁ、相手が元帥なのだからと言えばそうなるのかもしれないけれど、今までふがいない所ばっかりを見てきただけに、どうにも似つかわしくないなぁと感じてしまう。

 

「まず1つ目ね。さっきの先生との会話は、冗談話だからね。真に受けて噂を広めないように」

 

「えっ、でも、本で書いてあった通りの……」

 

「蒼龍、今は僕がしゃべってるんだけど、発言を許可した覚えはないよ?」

 

「す、すみませんっ!」

 

「うん、それじゃあ2つ目。飛龍、さっき先生に向かって爆撃をしたようだけど、鎮守府内では演習場以外での発艦は許可していないよね? それに、今もこうして彩雲を飛ばそうとしているけど、規律はしっかりと守らなきゃいけないよね?」

 

「は、はいっ! 申し訳ありません、元帥!」

 

 ビシッと敬礼をして、そのままの体勢で固まる2人。

 

 額には大量の汗が浮かび、ぽたぽたと床に流れ落ちている。

 

 ……まるで、元帥を化け物か何かのように怖がっているように見えるのは気のせいだろうか。

 

 しかしよく考えてみれば、これ位の事が出来なければ、この鎮守府で元帥を名乗ることが出来ないのだろう。屈強な海軍の男たちの上に立ち、自分たちよりも強い艦娘たちを統制する為の有無を言わさぬ威圧感を持つというのは、元帥にとって必要最低限の事なのだ。

 

 ……正直なところ、女ったらしのスキルで成り上がったんじゃないかと密かに思っていたんだけどね。

 

 違う意味で裏切られた俺としては、少し安心できたので良かったのだけど。

 

「それじゃあとりあえず、罰の方は後々考えるとして――飛龍と蒼龍の考えを聞きたいんだけど」

 

「か、考え……ですか?」

 

「うん。先生から聞いたんだけど、君たち2人は青葉の書いた本を読んで、僕と先生が付き合っていると思ったんだよね?」

 

「は、はいっ、それはもうラブラブだと書いてましたっ!」

 

「それに加えてさっきの元帥と先生の会話ですっ! 先生が元帥の後ろに回って……ぶっ刺すなんて……きゃあぁぁ……」

 

「うん、ちょっと落ち着こうね2人とも。さっきの会話はただの冗談って言ったよね。それとも、僕の言うことが嘘だと思うのかな?」

 

「い、いえっ! そんな事はっ!」

 

「は、はいっ! 元帥は嘘をつきませんっ!」

 

 いや、その反応だと、恐怖政治に恐れる部下か、宗教団体の下っ端みたいに見えるんだけど……本当に大丈夫なんだろうか。

 

「とにかく、さっきの会話はちょっとした仲の良いトークみたいなもんだから、勘違いして変な風に取らないようにね。それと、仲が良いって言っても付き合っているとかそういう事じゃなくて、あくまで友達って事だから。青葉の本に至っても、完全な作り話であって事実ではない。それ位の事は言わなくても分かるよね?」

 

「「は、はい……」」

 

 2人が仕方なくといった感じで頷いたのを見た俺は、ひとまずほっと胸をなで下ろすことが出来た。まだ安心は出来ないけれど、噂を広めようとする2人を止めることが出来たのは非常に大きいと言えるだろう。

 

 ちなみにまったくと言っていいほど元帥の圧力に押されて、口を挟むことが出来なかったりするんだけどね。

 

 ちょっと見直しちゃったりしなくもない。

 

 ……これで女癖が悪くなければ言うことが無いんだけどなぁ。

 

「僕が好きなのは先生じゃなくて、君たちみたいな可愛い女の子だからね。良かったら、今晩辺りに部屋に来ちゃうかな?」

 

 ほら、やっぱりね。

 

「え、あ……そ、その……」

 

「もちろん2人一緒にでも良いよ? 思いっきり可愛がってあげるよ」

 

「えっ、え、えっと……」

 

 顔を真っ赤にして慌てふためく2人。

 

 さっきまで俺と元帥がって言いまくってたのに、どうしてこうコロコロ変わっちゃうんだろうか。

 

 でもまぁ、これ以上元帥の魔の手に落ちて行くのを見逃しちゃうのもアレだしなぁ……

 

「あれっ? あそこにいるのは……高雄さんかな……?」

 

「……っ!? ちょっ、ちょっと用事を思いだしたっ! それじゃあ2人とも、宜しく頼むよっ!」

 

「あっ、待ってくださいよ元帥っ!」

 

「は、早く行くよ先生っ! 青葉を問いつめなきゃいけないからねっ!」

 

「わ、分かりましたからそんなに急がなくても……」

 

 うわー、一目散に駆けちゃってるよ……

 

 そんなに高雄さんが怖いのかなぁ……元帥って。

 

「飛龍さんに蒼龍さん、そう言うことだから変な噂は流さないでね。それと、元帥に追いつめられちゃっても黙ってないで言いたいことを言っちゃった方が良いよ。あの人、女癖が悪いから泣きを見ちゃう可能性だってあるしさ」

 

「せ、先生……あ、ありがとうございます……」

 

「いやいや、元帥もその辺が治ったら良い人なんだけどね。あ、もちろん決して悪い人じゃないんだけど――って、それは俺よりも飛龍さんや蒼龍さんの方が付き合いが長いから分かってるか」

 

「あ、はい……まぁ、そうですけど……」

 

「まぁ、俺がさっきやったみたいに高雄さんの名前を出せば良いんじゃないかな。あんまり何度も使える手じゃないとは思うけど、今のところはいけそうだし。後はまぁ、赤城さんや加賀さんに協力してもらってさ――って、よく考えたら元帥に憧れてるって言ってたから、もしかすると余計なことしちゃったかな?」

 

「あ、あはは……あははははっ!」

 

 2人は『ぽかーん』とした表情を浮かべたけれど、俺が慌てながら聞いた途端に、急に飛龍が笑いだした。

 

「え、えっと……」

 

「せ、先生ったら、急に慌てちゃって……おかしいですよっ!」

 

「そうですよー。先生って見かけによらず面白い人なんですねっ」

 

「そうそう。腹筋も割れてますし」

 

「ちょっ、それをまた持ち出してくるのっ!?」

 

「あははははっ! そうなの蒼龍? 先生の腹筋割れちゃってるのっ!?」

 

「そうなのっ! お風呂上がりの先生の写真があってね……」

 

「それは無しっ! これ以上広めないでっ!」

 

「えー、どうしよっかなー」

 

「えー、私も見たいよ蒼龍ー。ねぇ先生、良いでしょう?」

 

「いやだから、恥ずかしいから俺の前で見ないでよっ!」

 

「えっ、じゃあ先生の前じゃなかったら見せても良いんですね?」

 

「あーもうっ! ああ言えばこう言うっ!」

 

「あははははっ! やっぱり先生ったら面白過ぎですっ!」

 

「いやもう……どうにでもしてくれ……」

 

「あれー、今度は拗ねちゃいましたか?」

 

「しくしく……もういいですよーだ……」

 

「もう……冗談ですよ、せーんせっ」

 

「そうそう。冗談ですからね」

 

 そう言って、2人は満面の笑みを浮かべていた。

 

 ……うん、これで大丈夫そうだ。

 

「先生、ありがとうございます」

 

「……え?」

 

「私たちのこと、励ましてくれたんですよね?」

 

「ん……そ、そんな気は……」

 

「……嘘。先生はすぐ顔に出ちゃうんですから」

 

「そうですよ。鼻の穴がぷくーって開いちゃってます」

 

「えっ、マジっ!?」

 

「さぁ、どうでしょうかねー」

 

 くすくすと2人が笑う。

 

 うーむ、どうも今日はよくからかわれているような気がする。

 

「でも、ちょっと嬉しかったです」

 

「ま、まぁ……それなら良かったかな」

 

「だから、これはお礼のしるし」

 

「?」

 

「動いちゃダメですよ?」

 

「えっ……?」

 

「何が?」と、問いかけようとする俺に2人は近づき――

 

「「ちゅっ」」

 

 両方の頬を挟み込むようにして、口づけされた。

 

「……っ!?」

 

「ふふっ、それじゃあ」

 

「先生、また会う時にでも」

 

 そう言って、飛龍と蒼龍は手を振りながら通路の先へと歩いていく。

 

 ……これって、夢じゃ……ないよな?

 

 俺は自分自身に何度も問いかけながら、ずっと通路の先を見つめていた――のだが、

 

「……元帥は見てたりして」

 

「うわおっ!?」

 

「ふーん、へー、そう言う事するんだー、先生ってー」

 

「あっ、いえっ、い、今のは意図しなかったって言うか、別に俺から誘ったとかそう言う事じゃ……」

 

「うん、見てたから分かってるけどねー。でもなんか納得できないなー。ここ最近、僕の彼女がどんどん減っていってる気がするしー。もしかして、先生ったら俺のこと嫌いだったりするのかなー? そうだったら、遠い辺境の地に飛ばしちゃったりしようかなー」

 

「ちょっ! 全然そんな気もないですし、元帥の事は嫌いじゃないですから、左遷なんかしないでくださいっ!」

 

「まぁ、しないけどさ」

 

 しないのかよっ!

 

 ――って、それで良いんだけど。

 

「先生は幼稚園に居てくれなきゃ困るからね。まぁ、ここ最近手が足りなくて困ってたから、ちょうど良いと思えば良いだけなんだけどねー」

 

 ……なんだか嫌な使い方をされそうで困るんだけど、さっきの場面を見られただけに言い返せない自分が憎い。

 

 しかし、さっきのは本当にビックリした。

 

 まさかほっぺにチューとは……想像していなかったぞ。

 

 ――って、なんだかこの言い方だと、天龍の事を思い出してしまうのはなんでだろう。

 

 そう考えたら、寝込みを襲われるよりは気が楽だしね。

 

 あと、年齢的な方面とか。

 

「よく考えたら、先生って昔の僕にそっくりだからね。このままいけば、僕以上の存在になるかもしれないかもよ?」

 

 いや、あなたのように女癖は悪くないつもりですからっ!

 

「うん、当の本人が気づいていない辺り、そっくりだよねー」

 

「……心の中を読まないでいただきたいんですけど」

 

「さぁ、なんのことかなー」

 

「ははは……」と笑いながら元帥はくるりと振り返って歩きだした。向かう先は青葉が居るドックのある建物だ。

 

「よし、それじゃあ早いところ青葉を問いつめちゃわないとね」

 

「……ですね。変な本も、変な噂も、全部消してしまわないと」

 

「僕としては、有っても無くても同じなんだけどね」

 

「いや、俺としては無くなってもらわないと困るんですけど……」

 

 つーか、本当に元帥ってそっちの気があるよねっ!?

 

 これから尻を守らなければ……いけないのだろうか……(ガクブル)

 

「まっ、冗談だけどねー」

 

「……程々にお願いします」

 

「ん、善処するよ」

 

 まったく気が許せないんだけれど、頼りになる存在というのは間違いない。

 

 俺はなんとなしに頷いてから、元帥の後に続いて通路を歩きだした。

 




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次回予告

 気を取り直して青葉の元へと向かう元帥と主人公。
しかし、周りにいる艦娘たちが騒ぎ出し、二手に分かれることになったのだが……


艦娘幼稚園 番外編? ~青葉と俺と写真と絵師と~ その14


 もう少し続きます!
 乞うご期待っ!


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