艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 結局ビスマルクが絡むとこうなっちゃうんだよなぁ……。

 ということで全班への臨時加入は終了。
ザラとポーラはどの班に……と思っていたら、新たな展開が!?



※年末年始にいくつかの不幸が重なって時間が取れない状態で、現在も進行中です。
非常に申し訳ありませんが、諸事情により次章以降の更新を暫くお休みさせていただきます。
復帰でき次第戻ってきますので、今後ともよろしくお願いいたします。


その11「悪魔のプレゼント?」

 

 なんだかんだでザラとポーラを連れて各班の授業が終わり、本日の予定を全て終わらせてから子供たちを帰し、後片付けを済ませてスタッフルームにやってきた。

 

「今日も1日、お疲れ様でした〜」

 

 そして始まる教員たちによる終礼と報告の時間は、愛宕の挨拶から始まるのだ……が、

 

「お疲れ様でーす」

 

「オ疲レ様ー」

 

「お疲れ様ね」

 

「お疲れ……さま……です……」

 

 疲労困憊の俺、すでに倒れそうです。

 

 ちなみに他の教員である、しおい、港湾、ビスマルクはピンピンしている。特にしおいに関しては、授業中に寝ていればそりゃあ体力も有り余るってわけだ。

 

 色々とツッコミたいところだが、この場で報告するのは少々可哀相な気がする。なんたって、しおい<<<超えられない壁<<<愛宕という公式が分かっている以上、後で酷い目にあわされる可能性が高いのは明白なのだ。

 

 ここでガツンと怒られて、反省すれば話が早いだろう。しかし、過去にしおいを教育してきたのは俺なのだから、ちゃんと責任を負うべきであると考えているのである。

 

 ……まぁ、俺に対する愛宕の評価が下がって欲しくないというのもあるんだけれどね。

 

 とにかくここでは報告せず、別の機会でしおいの再教育を……と思っているのだ。

 

「ところで先生、ザラちゃんとポーラちゃんの編入する班についての意見を伺いたいのですが〜」

 

「あ、そうですね……」

 

 しおいへの考えをまとめ終えたところで、愛宕から話を振られたので思考を切り替える。

 

 今日の1日で愛宕班、港湾班、しおい班、ビスマルク班と順に臨時加入させて様子を見てきたが、得られたのはいくつかあった。

 

 まぁ、失ったものも多かった気がするし、ザラにいたっては色んな意味で危うい気がしたんだけれど。

 

 その辺りはひとまず置いておくとして、それぞれの子どもたちの性格から、ザラとポーラらの相性を考えた上、導き出せる結論は……、

 

「ザラとポーラと相性が良いと感じたのは、港湾班の子どもたちだと思います。

 ヲ級に関しては先日ザラと面識があったこともありますけど、他の子どもたちとも比較的仲良く話をしていたように見受けられましたね」

 

「ふむふむ、なるほど〜」

 

 ニッコリ笑って頷く愛宕。

 

 無言で同じように頷いている港湾が胸の下で腕を組んでいたが、胸部装甲が強調されすぎて目に毒です。

 

 もちろん愛宕の方も同じだけどね!

 

 どっちも凄いよヒャッホォォォイッ!

 

「………………」

 

 ……と、そんなことを考えていたら、なぜかしおいから睨まれているんですが。

 

 おかしいな……。港湾や愛宕に視線を釘付けにしていた覚えはなく、あくまでチラ見程度だったんだけれど……。

 

「………………はぁー」

 

 続けてしおいから盛大なため息が。俺の顔から愛宕、港湾と見ていたので、危険度がマジパない。

 

 いやしかし、絶対にバレたというわけではないと思うが……。

 

「………………(チラッ」

 

「うーん……」

 

「………………(チラチラッ」

 

「いや、気にし過ぎかなぁ……」

 

「ちょっと!

 さっきから視線を送っているんだから、少しは気にしなさいよ!」

 

 そう叫びつつ放ってきた上段回し蹴りを屈んで避ける俺。

 

 もちろん攻撃してきたのはビスマルクであるのだが、

 

 ……なんで、港湾と同じように胸の下で腕を組んだまま蹴りを放ってきたんだろう。

 

 どう考えても、無理がある体勢にしか見えないぞ……?

 

「気にするとか以前に、何かあったらまず攻撃ってのを止めて欲しいんだが……」

 

「別に良いじゃない!

 何度やっても当たらないんだから、問題ないでしょう!」

 

「痛いのが嫌から避けているんだよ!

 普通に考えて、ビスマルクの蹴りなんかまともに食らったら、病院送りをすっ飛ばして首がもげるだろうがっ!」

 

「首を出せい!」

 

「なんでいきなり殺す気満々な台詞を叫ぶんだよ!

 つーか、完全に暗殺教団の初代首領じゃねえか!」

 

 叫び返しつつバックステップを取り、ビスマルクの間合いから離れたのだが、

 

「元気なのは良いことですけど、今は会議中ですよ〜」

 

「………………え?」

 

 いつの間にやら背後に立っていた愛宕に気づいたビスマルクが、後ろへ振り返ろうとするものの時すでに遅し。

 

「最近ちょ〜っとばかり手を出すのが早いと思うので、教育的指導をしちゃいましょう〜」

 

「えっ、いや、ちょ……」

 

 慌てるビスマルクが必死に逃げようとするが、

 

「覚悟はよろしいですね〜?」

 

 すでに愛宕の両腕はガッチリとビスマルクの腰を掴んでおり、

 

 愛宕が一気に後方へ体重を逸らすことで放たれる技……つまり、バッグドロップである。

 

「淑女のフォークリフトーーーッ!?」

 

 叫ぶビスマルクの頭は、放物線を描いて床へと吸い込まれていく。

 

 もちろん床はコンクリート製で、表面の床材と薄っぺらい絨毯しか無い。

 

 そんなところに頭を直撃したら最後、下手をすれば脳震盪だけでは済まないのでは……と考え終わる前に、

 

 

 

 ゴスッッッ!

 

 

 

「星が見えたスター…………がくっ」

 

 鈍い音と謎な言葉を残して、ビスマルクは昏倒してしまったのであった。

 

 頭が粉砕したりしなかっただけ、マシってことですかね……?

 

 

 

 

 

「痛たたた……」

 

 それからビスマルクが頭をさすりながら起き上がったのは、愛宕のバッグドロップを受けて3分後のことだった。

 

 ……いやいや、早いよ。

 

 思わずツッコミを入れそうになったけれど、よく考えたら愛宕が手加減したってことなのだろうか。

 

 人間でも大事になることは間違いないだろうけれど、艦娘同士のプロレス技。普通に考えたらドッグ送りは確定だろうと思っていたが……。

 

「お目覚め早々で悪いんですけど、会議に戻ってもよろしいでしょうか〜?」

 

「え”っ、え、ええ。

 だ、大丈夫よ……」

 

 ビクリと身体を震わせて頷いたビスマルクの表情は固く、目が完全に怯えきっている。

 

 そりゃあまぁ、あんなのを喰らえば仕方ないと思うけれど。

 

 ついでに、港湾としおいも身体を小刻みに震わせつつ固まっているし。

 

 愛宕を怒らせたらダメってことは、重々に承知しているからこそなんだろうが。

 

「それと先生〜」

 

「は、はいっ!?」

 

 いきなり声をかけられて、みんなと同じように条件反射で身体をビクリと震わせてしまう。

 

「鈍感すぎるのも、ダメなんですよ〜?」

 

「ど、鈍感……ですか……?」

 

「はい〜」

 

「は、はぁ……」

 

 とりあえず頷いておくが、言葉の意味がちょっと分かり兼ねちゃうなぁ……。

 

 鈍感……、鈍感……。

 

 ううむ、一体何のことだろう。

 

 ………………。

 

 も、もしかして、さっきしおいがため息をついたのと関係が……?

 

 つまり、俺が愛宕と港湾の胸部装甲をチラ見していて、怒っちゃったってことですかーーーっ!?

 

「ブッブー。

 はずれですね〜」

 

 愛宕が胸の前で両腕を使い✕のマークを作る。

 

「あ、あの、俺は何も喋っていないんですけど……」

 

「顔に出てますから〜」

 

「そ、そんなに明確に分かるもんなんですかね……?」

 

「ええ、もちろん〜」

 

「ワカリヤスイッタラ、アリャシナイワヨ」

 

「うんうん。

 分かっちゃいますよねー」

 

「未だに気づいていないことに、呆れ返るほどよ」

 

 愛宕、港湾、しおい、ビスマルクは一斉に首を縦に振る。

 

 ……いや、マジで、どうしてこうなってった感じなんだけど。

 

 そんなに顔に出やすいのかなぁ……俺って。

 

 まぁ、以前から言われまくっている気がするけど、本当に自覚できないんだよなぁ……。

 

 

 

 

 

「それでは、ザラちゃんとポーラちゃんは、ひとまず港湾先生の班でお願いすることにしましょう〜」

 

 パチパチと愛宕が拍手をし、俺も釣られるように手を叩く。

 

「分カッタワ」

 

 港湾は嫌な顔一つせず頷いて、この件は終わった……と済ませてはいけない。

 

「では今日の会議はこの辺りで終了に……」

 

「いえ、ちょっと待って下さい」

 

 俺は手を上げ、愛宕の返事を待つ。

 

「はい、先生。

 他に何かありましたでしょうか〜」

 

「ええ。

 実は、ビスマルクの班で聞いた話なんですけど、今月の末に催し会があるとか……」

 

「確かにありますね〜」

 

「そのことについて、俺はまだなんの情報も聞いていなかったんですが……」

 

「あらあら〜?」

 

 俺の問いかけを聞いた愛宕は、人差し指を口元につけながら頭を傾げて悩む素振りをする。

 

 そして視線を港湾に向けるが、

 

「………………(ブンブン)」

 

 首をゆっくりと左右に振る港湾に、愛宕の頭が反対側に傾く。

 

 そして今度はしおいの方へ視線が動くと、

 

「………………(ガクガクガク)」

 

 あるぇー?

 

 しおいの身体が無茶苦茶震えて、顔中が汗でまみれちゃっているんですけどー。

 

 これってまさか、この前の休日ラーメン会と同じく、デジャヴなんじゃないかなぁ……?

 

「しおい先生ー?」

 

「アッ、ハイ」

 

「先生に催し会のことをお伝えしてくれなかったんでしょうか〜?」

 

「そ、それは、その……」

 

「忘れていたんでしょうか〜?」

 

「そ、そそそそ、そのですね……っ!」

 

 じわりじわりと詰め寄る愛宕にパニックを起こし始めたしおいが、顔を激しく左右に振る。

 

 授業中に寝ていたことと言い、俺に伝達すべき情報を忘れていたことと言い、

 

 ちょっとばかり、失敗が続きすぎているのだから仕方がない……とは思うけれど。

 

「ま、まぁまぁ、愛宕先生。

 ここで催し会の話を聞ければ問題ないですから……」

 

「あら〜、そうですか〜?」

 

「ええ、ですからしおい先生の指導は後……と言うか、俺にお任せして下さい」

 

「「「えっ!?」」」

 

 ………………。

 

 ……いや、なんでこのタイミングで俺以外の全員が驚くんだ?

 

「……ソレハツマリ、先生ガ教育的指導ヲ行ウト?」

 

「いやいや、別にスパルタなことをするつもりはありませんよ。

 授業の仕方とかも気になることがあるので、もう1度指導をしておこうかなと思いまして」

 

「あらあら〜、それは良いことですねぇ〜」

 

「……それって、変な意味があるというわけではないのよね?」

 

「ビスマルクの言う変な意味ってのは分かりかねるが、普通に教育者としての心構えを見直しいてもらおうかと思っているだけだが……」

 

「そう……、それなら良いのだけれど……」

 

 言って、ビスマルクはジト目を浮かべつつ俺の顔を見る。

 

 意味ありげだな……という思考を通り越して、不信感丸出しの視線は止めてほしいんだけど。

 

 まぁ、ビスマルクのことだから放っておけば良いのだが、

 

「せ、先生に……教育的指導をされちゃう……っ!?」

 

 当の本人であるしおいの顔が、さっきから真っ赤になったり青くなったりと、何だか面白いことになっているんですが。

 

 いや、と言うか、ちょっとは自覚してくれないかなぁ。

 

「色ンナ意味デ、末恐ロシイワネ……」

 

「えっ、何か言いましたか、港湾先生?」

 

「イイエ、ナンデモナイケレド、ヤッパリ……鈍感ネ」

 

「は、はぁ……?」

 

 両手を広げた港湾が、やれやれ……と呆れたポーズを取る。

 

 なんでそんな仕草をするのかサッパリなんだけれど、今すべきことは催し会の情報を聞くことなので、話を戻そうと愛宕に問いかける。

 

「それで、催し会のことなんですが」

 

「ええ、それについてなんですけど……」

 

 こうして俺は、しおいから聞くはずだった月末の催し会について、詳しい話を聞くはず……だったのだが、

 

 

 

「先生は来週から、出張に出向いてもらいます〜」

 

 

 

「……はいっ!?」

 

 愛宕の口から放たれた言葉に、大きな声を上げてしまうのであった。

 

 

 

 艦娘幼稚園 第三部

 ~ザラとポーラはどの班に?〜 完




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