艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 交渉を済ませた主人公に、青葉から一つの情報が寄せられる。
しかし、その情報に不審な点を感じた主人公は、青葉を問い詰めようとするのだが……

 なんでこんな展開になったのか!
しかしこの行動が、後の主人公に大きな災いとなる……のかもしれない!


その4「乙女×壁=ドン!」

「あぁ、そう言えばですね、先生」

 

 青葉との交渉を済ませた俺は、ドックから出る為に扉の鍵を開け様とした時、後ろから声をかけられた。

 

「ん、他にまだ何かあったかな?」

 

「いえ、ちょっとしたサービス――と言うか、気になったことがありまして」

 

「気になったこと?」

 

「ええ。さっき、先生の写真の注文が急に増えたって話、しましたよね」

 

「あぁ、うん。結局理由は分からないけど、何か思いつくこととかあったのかな?」

 

「青葉、いくつか予想できるんですけど、そのうちのひとつにちょっと気になる艦娘が1人、先生の写真を購入したんですよねー」

 

「……そう言う人にまで、君は写真を売るんだね」

 

「あー、あはは……。まぁ、断れない理由がありまして……」

 

「で、その艦娘って?」

 

「秋雲って言う艦娘です」

 

 そう言った青葉の視線が、ほんの少し俺からそれていく。

 

 ……明らかに怪し過ぎる。

 

 つーか、青葉って基本的に嘘をつけない性格なんじゃないだろうか?

 

「教えてくれてありがとね。だけどさ……」

 

 俺はそう言いながら、青葉の方へと歩み寄った。

 

「は、はい? ど、どうしたんですか、先生……?」

 

「んー、なんでかなー。どうして今、視線をそらしたのかなー?」

 

「えっ、えええっ!? 青葉、し、視線なんかっ、そらしてないですよっ!」

 

 慌てふためく青葉だけれど、今の時点で思いっきり視線そらしてるやんと突っ込みたい。

 

 うーむ、てんぱっちゃうと、結構可愛いんだよなぁ、青葉って。

 

「そうなの? 今とか全然視線合わしてくれないよ?」

 

「だ、だって、先生の顔近過ぎですよねっ!」

 

「えー、近いって言ったら……これくらいだよね」

 

 俺はそう言って、青葉と鼻の先同士が触れる位に近づき、両手を壁に突きつけて逃げられないようにする。

 

「ひっ、ひゃあぁぁぁぁ……っ」

 

 顔一面を真っ赤にさせた青葉が、俺の方を見ないようにと横向きになって頬を壁に押しつけた。

 

「もう一度聞くね。どうして視線をそらしたのかな?」

 

「そ、それは……その……っ」

 

「ほら、こっち向いて喋んなきゃ……ね」

 

 壁に突きつけていた右手で青葉の顎に触れ、くいっと俺の方へと向かせる。

 

「……っ!?」

 

「さぁ、教えてくれるよね。青葉ちゃん」

 

「あ、ぁ、う……あぁ……っ」

 

「それとも、教えてくれないのかな?」

 

「そっ、その、あ、あお、青葉は……っ!」

 

 俺に問い詰められた青葉は、眼をきょろきょろと忙しなく動かした後、ギュッとまぶたを閉じて、ゆっくりと口を開いた。

 

「は、初めて……なの……で、や、優しく……して……ください……」

 

「………………」

 

「あ……あぅ……」

 

 潤んだ瞳をはんぶん開き、耳まで真っ赤に染めた青葉は、身体を小刻みに震わせたまま俺の動きを待っていた。

 

 

 

 

「………………はい?」

 

 いやいやいやっ! 何を勘違いしちゃってるんだよ青葉はっ!

 

 え、なにこれ、可愛い――とか言い出さないよ俺っ!

 

 いや、正直抱き締めてえっ! ってくらい、可愛く見えてきちゃってるんですけどねっ!

 

「あー、あの……さ、青葉……さん?」

 

「……は、はい」

 

「思いっきり勘違いしちゃってるようなんでアレなんだけど」

 

「……え?」

 

「今、俺が聞きたいのは、そう言うことじゃなくてですね」

 

「……はぁ」

 

「なんで、目線をそらしたのってことなんですけど……」

 

「………………」

 

 目が点になった青葉は、じっと俺の方を見つめたまま固まっている。

 

 その気持ち、分からなくもないんだけれどね。

 

「え、えっと……さっきのって、青葉に告白とか……そういうのじゃ……?」

 

「あー、ごめん。勘違いさせたなら、本当にごめん」

 

「あ……あぅ……あぅぅぅ……」

 

 泣き出しそうに再度瞳を潤ませながら、ワナワナと震え出す青葉。

 

 うーん、これは本当に悪いことをしてしまったのかもしれない。

 

「だ、だって、先生ったら壁ドンしたじゃないですかぁっ! そんなことされたら青葉、告白されたって思っちゃいますよぉっ!」

 

 壁ドンて……少女漫画じゃないんだからさ。

 

 でも勘違いさせたのは本当に悪いと思ってるし、素直に謝っておくことにする。

 

「そ、そんな簡単に頭を下げないでくださいよっ! 余計に青葉が惨めになっちゃじゃないですかっ!」

 

「いやしかし……勘違いさせたのは事実だし……」

 

「じゃ、じゃあ責任取って下さい!」

 

「……は?」

 

 いきなり何を言い出すのかと、今度は俺が目が点になる。

 

 責任を取れと言われても、一体何をすればいいのだろう。

 

「え、えっと……責任を取れと言われても、何をすれば……?」

 

「あ、青葉と……そ、その……」

 

 急にもじもじと身体をくねらせた青葉に一抹の不安を覚えつつ、耳を澄ませる。

 

「い、一緒に……」

 

「一緒に……?」

 

 心臓が高鳴りを上げ、ごくりと唾を飲み込む音が頭に響く。

 

「ドックの掃除をして下さい」

 

 真顔でそう言われた時、俺は完璧な芸人の滑り芸を披露することが出来た。

 




次回予告

 結局青葉とドックの掃除をすることになった主人公。
その際に青葉から得た秋雲の情報に驚愕する主人公は、なんとかしなくてはと出かけるのであった。

 タイトルから分かっていたよね!
そう、秋雲の影がここにあり。だけど影だけマジですかー!?

艦娘幼稚園 番外編? ~青葉と俺と写真と絵師と~ その5


 乞うご期待っ!


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