艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 非常に遅くなりましたが、艦娘幼稚園再開です!
ストック少ないので不定期ではありますけど……(汗


 とある日、時雨からの質問に答えた先生。
それから数日後の休日に、突如襲来者が現れて……?


〜子供たちの料理教室!〜
その1「ある休日のお呼び出し」


 

 舞鶴と佐世保の幼稚園が合併し、俺がサポート役に回ってから数週間が経った。

 

 小さなことは色々と起こったけれど、今のところ順調に運営はできている。つまり俺の出張は完全に終了し、通常に戻った……と思っていた矢先のことだった。

 

「そう言えば先生、好きな料理ってあるのかな……?」

 

 きっかけは、時雨からの言葉。

 

 昼食のお弁当を食べ終え、まったりとした時間の中、時雨が俺に質問してきたのだ。

 

「好きな料理……か。

 まぁ、なんでも食べるんだけど、強いてあげるならラーメンかな」

 

 俺は視線を天井に向けながら答える。

 

 ちなみに平静を装って……というのは大げさだが、実際はラーメンが大好きであり、時折鎮守府を出て近場の店を巡っている。

 

 仮に、朝昼晩の3食ラーメンが1週間続いても、同じのでなければ全く持って問題がないほどに。

 

「ふうん……、そうなんだ。

 僕もラーメンは好きだけど、鳳翔さんの食堂ではあんまりないよね」

 

「そうなんだよなー。

 たまにお昼の定食であると聞くんだけど、平日はここでお弁当だから食べられないしなぁ……」

 

「あはは……」と苦笑を浮かべた時雨が頬を掻くが、以前と比べて少しばかり大人びた感じに見えるのは気のせいだろうか。

 

 まぁ、子どもたちも成長する時期なんだし、それを喜ぶべきなんだろうけれど。

 

 そういった感じで時雨との会話を終えたのだが、ここで気づかなかったのが問題だったのかもしれない。

 

 そうーー。何人かの子どもたちが、キラリと目を光らせていたのを。

 

 

 

 

 

 コンコン……コンコン……。

 

「……んぁ?」

 

 ドアをノックされる音に起こされた俺は、寝ぼけ眼を擦りながらベッドから起き上がった。

 

 今日は休日。今日は少しゆっくり目に起きようと思って目覚まし時計をセットしていなかったんだけれど、時間を見ればすでに昼前になっている。

 

「うわ……。

 流石にこれは、寝過ぎちゃったかなぁ……」

 

 少々もったいないことをしたと思ったが、たまの休みなんだからこんな日もいいだろう。

 

 ちょうど昼食の時間だし、ぶらっと出かけて行ったことのないラーメン屋に入ってみようかな……。

 

 コンコンコン、コンコンコンコンコンッ!

 

「……って、ノックされていたのを忘れてた!」

 

 俺は慌ててドアの方に向かおうとしたが、その前に姿見の前で身だしなみをチェックする。寝癖は酷くないので手櫛で整え、着崩れを軽く直した。

 

 ちなみに寝間着はTシャツに短パン。軽く外に出かけてもおかしくない服装だと思うので、このまま出迎えても大丈夫だろう。

 

「はいはい、今行きますので、ちょっと待って……」

 

 

 

 バッカーーーン!

 

 

 

「どわあっ!?」

 

 ドアを開けに行こうと思った瞬間、木片が飛び散っているんですが。

 

 何これ、デジャヴ?

 

 運動会のときも同じことがあったよね!?

 

「な、なんでいきなり扉をぶっ壊すんですか!」

 

 俺は叫びながらドアがあった方へと視線を向ける。そこには前回同様しおいの姿があった。

 

「いやぁ……、なんだか最近、癖になっちゃいましてー」

 

 照れながら後頭部を掻くしおいだが、洒落にならないのでマジやめてほしいです。

 

 つーか、癖ってなんだ。そして、なんで照れるんだ。

 

 あと、前回は愛宕にこっぴどく怒られたんじゃなかったっけ?

 

「よいしょっと」

 

 ……と思ったら、替えのドアを取り付けているしおいがいた。

 

 壊す前提とか、マジで信じられないんだけれど。

 

「とりあえずさっさと直しちゃいますから、ちょっとだけ待ってくださいね」

 

「……いやいや、壊さなかったらその手間は必要ないと思うんだよね」

 

「……はっ!

 た、たしかにっ!」

 

「気づいてなかったのかよ……」

 

「いやぁ……、それほどでも……」

 

 そしてまたもや照れるしおいだが、もはや突っ込む気力はすでになし。

 

 俺の休日は早々に踏んだり蹴ったりの予感がしまくっているが、逃げ道はすでに防がれているため、仕方なくしおいがドアを直し終えるのを待つことにした。

 

 

 

 

 

「ふぅー、修理完了です!」

 

 腕で額の汗を拭ったしおいを見ながら、俺はやっと本題に入ることにした。

 

「それで、どうして休日に俺の部屋にきたのかな……?」

 

「あっ、そうです。

 それなんですよ!」

 

 大きく口を開けて驚くしおい。

 

「もうこんな時間じゃないですか!

 はやく一緒にきてください!」

 

「こんな時間って、しおい先生がドアを壊さなかったら変に時間を……ってうわっ!?」

 

 問答無用で俺の手を引っ張るしおいだが、ちょっと待って欲しい。

 

「ストップ、ストップです、しおい先生!」

 

「急いでください!

 子どもたちが待っているんですから!」

 

「……子どもたちが?」

 

 今日は休みなんだから幼稚園は閉まっているし、別途予定を入れていた訳ではない。だからこそ昼前まで寝ていても問題はなく、ゆっくりするつもりだったのだが。

 

 それに何度も言うけど今の出来事って完全にデジャヴってやつにしか思えないんだけれど、プロレスの第二弾が始まる訳じゃないんだよね?

 

「楽しみに準備して待っているんですから、早く行きましょう!」

 

「わ、分かった、分かったから。

 せめて着替えだけでも済ませたいし、ちょっとだけ待ってくれないかな?」

 

「ま、まぁ、それくらいなら良いですけど……」

 

 言って、しおいは俺に視線を向け、頭の先からつま先まで見下ろしてから、

 

「ラフな先生も……いい感じですね」

 

 若干頬を染めながら照れるしおい……ってなんだこれ。

 

「え……っと、その、あ、ありがと……」

 

 なんとなく気まずくなってしまった俺は言葉を詰まらせながらクローゼットに向かい、服を持って洗面所へ。

 

 そそくさと着替えて身だしなみを整え、しおいに連れられてある場所へと向かうことになった。

 

 よく考えたら、しおいがドアを修理している間に着替えを済ませておけって感じだよね。

 

 反省、反省。

 

 

 

 

 

 早足で鎮守府内を歩き、やってきたのは白い壁の建築物の前。幼稚園からはそれなりに遠く、普段は付近に寄る必要もない場所なので、来たことのある覚えはない。

 

「到着しました!

 中で子どもたちが待っていますので、早速入りましょう!」

 

「それは良いんだけど、この中で一体何が行われるのかな……?」

 

 俺は恐る恐るしおいに問う。まさかプロレスの第二弾が始まるのでは……という懸念があったものの、目の前にある建物はそれほど大きくはなく、リングがあるように思えない。

 

 しかしそれでも、念には念を。もし、呼び出しの理由に元帥が絡んでいたら全速力で逃げたいが、子どもたちらしいので無下にはできない。

 

「それは入ってからのお楽しみです!」

 

 しかし、しおいから帰ってきた言葉によって懸念は晴れず。

 

 でもまぁ、ここまで来て引き返すというのもなんだか癪だし、本当に子どもたちが俺を必要としているのであれば悪いもんなぁ……。

 

「さあさあ、行きましょう!」

 

 しおいに腕を引っ張られて建物の中に入った俺は、ロビーを抜けて通路を歩きながら付近を見る。

 

 真っ白な壁と定期的な窓が設置されているのが鎮守府内にある他の建物と似通っているが、それだけではなんの目的で建てられているのか分からない。

 

 おそらく寮のような居住場所でないだろうけれど、ほとんど特徴がないんだよなぁ。

 

「もう少しで着きますよ!」

 

 言って、グイグイと腕を引っ張るしおい。

 

 休日にもかかわらずテンションが高いけど、何か良いことでもあったのだろうか。

 

 もちろん俺の服装はアロハじゃなくタバコも吸わないので、嫌らしい口調で煽るように言うつもりはない。

 

「ここです!」

 

 しおいが俺に振り返って満面の笑みで言う。

 

 金属製のドアと、その上部分にプラスチックのプレートがある。

 

 そして、そこに書かれた文字は……『調理準備室』だった。

 

「……えっと、ここが目的地?」

 

「はい、そうです!」

 

「ここって、調理準備室って書いてあるんだけど……」

 

「その通りです!」

 

「この中に、子どもたちが待ってるんですか……?」

 

「それはもう、張り切って準備していますよ!」

 

 そう言ったしおいは、ドアのノブに手をかけて押し開け入っていく。

 

 未だに状況が掴めないけれど、この場で呆けながら立ち尽くす気はないので、後を追って中に入ることにした。

 

「失礼しまーす……って、おお……」

 

 部屋の中にはすでに子どもたちが待機していて、俺を出迎えるように並んで立っていた。

 

「遅いぜしおい先生ー」

 

「ごめんごめん。

 先生が着替えるのを待っていたせいで、遅れちゃったー」

 

 天龍の言葉を聞いて、てへへ……と後頭部を掻くしおい。しかし、どちらかと言えばドアの修理の方で時間がかかっていた気がするんだけれど。

 

「まぁまぁ、ちゃんとお願いしたとおり先生を連れてきてくれたんだから、良いじゃないかな」

 

 そう言って天龍をなだめる時雨がニッコリと笑っている。

 

「むしろ、先生が来た今から本番なんだから、頑張らなくっちゃ!」

 

「そ、そうなのです。

 電はしっかりと準備できていますので、いつでも大丈夫なのです」

 

「もちろん私もオッケーネー!」

 

「フフフ……。

 今日コソオ兄チャンニ、吠エ面ヲカカセテアゲレルネ……」

 

「私も、気合、入ってます!」

 

「この霧島も、準備万端ですね」

 

 他にも雷、電、金剛、ヲ級、比叡、霧島と横に並んでおり、口々に元気な言葉を発していた。

 

 いやしかし。

 

 やっぱりこの状況って、未だに何だか分からないんだけれど。

 

 強いて言うなら、この部屋が調理準備室ということが関係していそうなんだよなぁ。

 

 そして何より子どもたちの格好が全員、エプロン装着済みなんだよね。

 

「おっ、どうしたんだ先生?

 もしかして俺様のエプロン姿に見惚れちまったか?」

 

「あー、うん、そうだな。

 普段見ない格好だから、新鮮な感じがするよ」

 

 へへへ……と喜びながら人差し指で鼻の下をこする天龍がなんとも可愛らしい。

 

 一応補足しておくが、見惚れてはいないけれど目新しいことに間違いはないんだよね。

 

「ドウセダッタラ服ヲ全部脱イデ、エプロンダケデヤリタカッタンダケドネー」

 

「ワーオ!

 ヲ級ったら、大胆過ぎマース!」

 

「そ、それはちょっと恥ずかしいのです……」

 

「でも、先生が望むなら雷は頑張るわよ!」

 

 順に頬を染めていく子どもたち……って、色んな意味でアウトだからやめていただきたい。

 

 つーか、そんな状況になったら間違いなく青葉が潜入してきて写真を撮り、明日の一面に乗っちまうじゃんかよぉっ!

 

 完全に俺の悪名が轟き、憲兵さん待ったなしである。

 

「なるほど……。

 先生の性癖に裸エプロンを追加……ですね」

 

 そして懐から取り出したメモ帳に記入する霧島に、流石に俺の我慢も限界だった。

 

「いやいやいや、いくらなんでもないから。

 どう考えてもヲ級の捏造による情報操作なんだから、みんなは惑わされないでね」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「……いや、なんで疑問系で返すのかが分からないんですが」

 

「だって……先生ですから……」

 

「えぇー……」

 

 いくらなんでも、そりゃないよしおい先生……と叫びたくなったものの、

 

「うんうん、そうだよな。

 先生だもんなー」

 

「まぁ、先生だから仕方ないね」

 

「先生だから……なのです」

 

「そんな先生だとしても、雷は見捨てないわよ」

 

「せ、先生が望むのなら、頑張りマース!」

 

「ちょ、ちょっと恥ずかしいですけど……先生のためなら……」

 

「霧島の頭脳で先生の性癖をピンポイントに刺激するには……ぶつぶつ……」

 

 うん、こりゃダメだわ。

 

 すでに俺の話を聞いちゃいない。

 

 そしてヲ級よ。

 

 俺に向かって親指を立てた挙句、ドヤ顔するんじゃねえよぉぉぉぉぉっ!

 

 

 

 ということで、とりあえず兄弟というフィルターの乗った教育的指導という名のゲンコツを頭のてっぺんに落としておきましたとさ。

 

 

 

 うーん。休日も踏んだり蹴ったりな始まりだよね……。しくしく。

 




次回予告

 あいもかわらずヲ級から弄られてしまった先生。
しかし、ここに呼び出された本題には入っていないが、なんとなく予想はつきそうで……。

 艦娘幼稚園 第三部
 ~子供たちの料理教室!~ その2「ラーメン試食会」


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