艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 グダグダ過ぎてどうしようもない。
でもまぁ仕方ないね。先生にヲ級だもん(ぉ

 ということで、ヲ級の授業が始まる訳ですが、


その19「ハモりフレンズ」

 

「横槍ガ入ッタケレド、時間ガモッタイナイカラ、サッサト始メルネ」

 

 グダグダな空気が漂う中、ヲ級が伸縮棒でホワイトボードをペチペチと叩きながら、みんなに声をかけた。

 

 なお、視線は主に俺の方で、ジト目を浮かべているところからして怒っている……というよりかは、呆れている感じだけれど。

 

 しかし、俺としては聞いていなかった授業内容を確認するのはサポート役として必要なことだし、収拾をつきにくくしたのはヲ級の方だと思うんだよね。

 

 そうとはいえ、それを突っ込んでしまうとまたしても授業が進まない。俺は仕方なく悪役側に周り、素直に待機しているとしよう。

 

「僕ガミンナニ教エルコトハ、鎮守府ノ近クニアル店デ買イ物ヲスルトキニ気ヲツケル点ダヨ」

 

 ヲ級はそう言って、教卓の下から取り出した踏み台を利用してホワイトボードに文字を書き始めた。

 

「コレハ一例ダケド、シッカリ覚エテオクト役ニタツシ、是非実践スルヨウニ」

 

 ヲ級が握るマジックが、キュ、キュッとリズムを刻む。

 

「マズ、コンビニヘ行ッタラスルコトハ、新作ノスイーツヲチェックダヨ」

 

 ……おい。ちょっと待て。

 

 この話は鎮守府の外に出たら気をつけることであって、コンビニのお得情報とかそういうものじゃないんだけれど。

 

「季節ゴトニ登場スル新作ハ、旬ノ果物ヲ使ッタ美味シイモノガ多イカラ、見ツケタラ有無ヲ言ワサズゲットスルヨウニ」

 

「ふむふむ、ためになるであります……」

 

 何度も頷き、メモを取るあきつ丸。

 

 なんで深海棲艦じゃないお前が、一番納得しているんだよって感じなんだけど。

 

「チナミニ、賞味期限ガ近ヅイタ商品モチェックスルト良イカナ。

 タダシ、包装ノ中ニ水分ガ多ク付着シテイル場合ハ、フヤケテイタリスルカラ気ヲツケテネ」

 

「ヲ級ー。

 モシ見タ目ガ、大丈夫ソウナ場合ハ?」

 

「賞味期限ノ日付ヲ見テ、食ベルタイミングガ大丈夫ナラ、好ミニ合ワセテゲットスベシ……ダネ。

 値段ガ割引シテイルカラ、オコヅカイガピンチナトキノ大キナ味方サ」

 

「ナルホド……ナノッ」

 

 あきつ丸と同じように頷いて微笑むほっぽを見ると、ヲ級の授業も無駄ではない……のだろうか?

 

 いや、それにしたって、ヲ級自信の趣味が大きく含まれている内容であることと、コンビニ限定な情報なんだよなぁ……。

 

 あ、でもあれか。スーパーとかのお惣菜コーナーや、生鮮食品でも時間によって割引されたりするし、まったく無駄という訳でもなさそうだから、フォローしておこうかな。

 

「ちなみにヲ級が言っているのはコンビニの話だけれど、スーパーマーケットなどでも同じように割引された商品が並ぶことがあるぞ」

 

「あれもお得感がいっぱいですよね。

 五月雨も佐世保にいるときに、ちょくちょく利用してました」

 

「うんうん。

 それを狙ってお惣菜コーナーから少し離れたところで、割引シールが貼られるのを待っているのが楽しいんだよな」

 

「そうなんですよね!

 でも気を抜いちゃうと、同じく待ち構えていたおばちゃんとかが一気に持って行っちゃて……」

 

「あー……。

 あの手の人らは、凄い勢いだからなぁ……」

 

 過去の記憶を思い出し、しみじみと語り合う俺と五月雨。

 

 ……が、ジト目をさらに強くしたヲ級が伸縮棒をビシッと俺に向けて、大きく口を開いた。

 

「オ兄チャン!

 僕ノ授業ヲ邪魔スルノガ、ソンナニ楽シイノッ!?」

 

「い、いや、そういうつもりじゃなくて、サポートしてやろうと思ったんだが……」

 

「ソレハ僕ガシャベッタ後ニシテヨネ!」

 

「うっ……、そ、そうだな……。

 すまんすまん……」

 

 怒られちゃいました。

 

 サポート役の俺としては、ヲ級の言葉に付け加えることによって少しでもレ級やほっぽ、港湾棲姫の助けになればと思ったんだけど。

 

 しかしまぁ、五月雨と盛り上がってしまった点については失敗した感じがあるので、ヲ級の言う通り授業の最後にフォローをする形ならば文句は出ないだろう。

 

「邪魔ガ入ッタケド、続キヲ言ウネ」

 

 邪魔とか言うな。ちょっとは傷つくだろうが。

 

「次ニ目的ノモノヲゲットシタ後ハ、レジニ行ッテオ金ヲ払イマス。

 間違ッテモ、ソノママコンビニカラ商品ヲ持ッテ、外ニ出ナイヨウニネ!」

 

「欲シイモノニハ対価ヲ払ウ。

 コレハドコニ行ッテモ一緒ヨネ」

 

 やはり港湾棲姫の方は、ヲ級の授業を受けなくてもしっかり分かっているようだ。まぁ、そうじゃなければ教員の仕事はできないし、当たり前のことなんだけれど。

 

「燃料ヤ弾薬ヲ手ニ入レルノハ大変ダッタシ、防衛スル人間ヤ艦娘ト戦ッテ勝タナケレバナラナイトキモアッタワ……」

 

 遠い目をしながら窓の外を見る港湾棲姫……って、それはなんか違うからっ!

 

「………………ぁぅ」

 

「が、ガクブルものであります……」

 

 五月雨とあきつ丸が涙目で俺の方を見ちゃってますからっ!

 

 完全に怯えちゃって、椅子に座っているのに生まれたての小鹿並に震えまくっていますからぁぁぁっ!

 

「マァ、今ハソンナコトヲシナクテモ……ッテ、ドウシタノカシラ、先生?」

 

「い、いや、ちょっと一部の子供たちが怯えちゃっているので、そういったことは避けておいた方が良いかなと思いまして……」

 

「アラ……、本当ダワ」

 

 あきつ丸と五月雨の怯えっぷりを目にした港湾棲姫は、肩を落としながらニッコリと微笑み、

 

「今ノハ随分ト昔ノ話ダシ、仕方ナクヤッタコトダカラネ。

 ソレニココデハソンナ必要ハマッタクナイシ、戦ウノハモウコリゴリダワ」

 

「そ、それなら……い、良い……のかな……?」

 

「な、なにはともあれ……、仲良くしたいであります……」

 

 港湾棲姫の言葉に、少し表情を和らげた五月雨とあきつ丸が息を吐く。

 

「ホッポハ、喧嘩トカシタク……ナイノ」

 

「レ級モ遊ビデヤル以外ハ嫌カナー」

 

 ほっぽもレ級も戦うことは好まないと答え、俺も胸を撫で下ろそうとしたのが、

 

「ソレジャア、狩リゴッコナラドウカナ?」

 

 なぜかいきなり意味不明な発言をしたヲ級がニヤリと笑う。

 

 すると子供たちと港湾棲姫は、お互いの顔を見合ってから、

 

 

 

「「「ワーイ、楽シーイ!」」」

 

 

 

 笑いながら一斉に同じ言葉を言ったんだけど、君たちはハモるのが大好きなフレンズなんだね……って、ここはジャパ●パークじゃないんだぞっ!

 

 

 

 

 

「サテ、チョット横道ニ逸レチャッタケド、授業ニ戻ルネ」

 

 逸らした本人が言うべきことじゃないが、ツッコミを入れたらまた怒られそうなので黙っておこう。

 

「レジデオ金ヲ払ウトキダケド、細カイノヲ出シテアゲルト喜バレルヨ」

 

「確かにそうでありますが、その場合は財布の中に多くの小銭を入れておかなければならないため、重くなりがちでは?」

 

「ソウイウトキノ為ニ、カードニチャージスル手モアリダヨネ」

 

「なるほど。

 それならカード1枚で買い物ができるであります」

 

「でも、そのカードを入れておいた財布を落としちゃったら……」

 

 そう言ってしょんぼりとした顔を浮かべる五月雨だけれど、財布を落とした時点でかいものはできないからね?

 

「チナミニカードヲ持ツ場合、種類ニヨッテハ年齢制限ニ引ッ掛カルカラ、ソウイウトキハ仲ノ良イオ姉サンニオ願イシテネ」

 

「ナンダカチョット、メンドウダネ……」

 

「ホッポノカードハ、港湾オ姉チャンニオ願イスルノ」

 

「アッ、ソレナラレ級モー」

 

「ウン。

 ソレジャア今度、2人ノカードヲ作リニ行コウネ」

 

「「ワーイ!」」

 

 喜ぶレ級とほっぽだが、港湾棲姫が保護者でカードを作ることが可能なのかが分からない。いや、そもそもヲ級のカードを作る際に俺は立ち会った記憶はないし、いったいどうやって手に入れたんだろう。

 

 前にヲ級がコンビニに行って美味しいデザートを買ってきてくれると愛宕から聞いたことがあるから、可能性としては1番高いとはいえ、俺を選ばなかったという点については少しへこむところがあるなぁ……。

 

 まぁ、鎮守府に所属する艦娘と分かれば信頼できるんだろうし、俺よりも審査とかが楽なのかもしれない。でも、俺も一応幼稚園の教員なんだから、舞鶴鎮守府の所属扱いなんだけれど。

 

「カードノコトハコレクライニシテ、次ニ注意スベキコトヲ教エルネ」

 

 なんだか落ち込みそうな思考を頭の中で張り巡らせている間に、ヲ級が次の話に進んでいた。

 

「ミンナモ世間ニ顔ガ売レテキテイルカラ、場合ニヨッテハ写真ヲ一緒ニ撮ッテホシイト言ワレルコトガアルト思ウンダケド……」

 

「ヲ級殿はファンクラブがあるくらいでありますし、港湾先生やレ級殿、ほっぽ殿も動画サイトで知る人ぞ知る存在ですから、あると思います……であります」

 

 確かにあきつ丸が言う通り、その可能性は高いかもしれない。

 

 しかし、なぜ最後に詩吟っぽいしめ方だったのかは分からないんだが。

 

「ソノ場合ハ、ニッコリ笑ッテ応ジテアゲルノガ良イヨ。

 ソウスレバソノ写真ガSNSニ流レ、サラニ人気ガ上ガル可能性ガアルカラネ」

 

「サスガハヲ級、抜ケ目ナイネ!」

 

「フッフッフ……。

 僕ノ頭脳ハ、タダ者ジャナインダヨ」

 

 そう言って胸を張るヲ級を見るや否や、いきなりレ級が立って右手を振り上げた。

 

「見タ目ハ子供!」

 

「頭脳ハ大人!」

 

「「人呼ンデ、深海コンビノヲ級トレ級!」」

 

「よっ、大統領……であります!」

 

「カッコイイ……ナノッ」

 

「ヒュー……ヒュー……って、上手く口笛が吹けません……」

 

 決めポーズをしたヲ級とレ級に、盛り上がる他の子供たち。

 

 だが、あえて俺は言いたい。

 

 横道に逸らしているのは、お前たちの方だからね……と。

 

「ダガココデ、マタシテモ注意ガアリマス」

 

 そんな俺の悲しい呟きもなんのその。ヲ級は決めポーズをしたまま話を続ける。

 

「話シカケテクル人ニヨッテハ、応ジナイ方ガ良イトキモアルヨ。

 エアコンガ効イテイルコンビニノ中ナノニ、ヤケニ油ギッシュデカメラヲ構エテイル男性トカ、気ヲツケナイトイケナイネ」

 

「ドウシテ……ナノ?」

 

「全部ガソウジャナイケド、写真ダケジャ我慢デキナクナッテ、強引ニ迫ッテクル輩ガイルンダヨネ」

 

「ソ、ソレハ……怖イナノ……」

 

「大丈夫。

 ソノ場合、私ガ即座ニ駆ケツケテ、粉々ニ切リ刻ムカラ」

 

「サスガハ、オ姉チャンナノ!」

 

「いやいやいや、さっき戦うのは嫌だとか言ってましたよねぇっ!?」

 

 さすがにマズイと思った俺は即座に突っ込んだが、ほっぽならば港湾棲姫に頼らなくても十分に撃退できるんじゃないのかなぁ。

 

「ソレハ、トキト場合ニヨルワ」

 

「それでもやっぱり、他人に手をあげるどころか殺しちゃったら色々とマズイですから!」

 

「フムゥ……。

 シカシソウナルト、イッタイドウスレバ……?」

 

「それはもちろん、やり過ぎない程度にですね……」

 

 可愛い子供たちに手をあげるような輩は痛い目にあえば良いし、俺が港湾棲姫の立場じゃなくても気持ちはおおいに分かる。しかしそれでも、切り刻むのはさすがにやり過ぎだと思うんだよね。

 

「オ兄チャンノ言イ分モ分カルケド、実ハモット良イ方法ガアリマス」

 

 いや、なんでそこで言い分という言葉を使うのかな……。

 

 なんだか俺がごねているような感じがして、すごくちっぽけな存在に思えてきちゃうんだけど。

 

「ソウイッタ場合ハ、大キイ声デ助ケヲ呼ベバ良インダヨネ。

 モシ防犯ブザーヲ持ッテイタラ、思イッキリ引キ抜イテ鳴ラシチャオウゼ!」

 

 新しい決めポーズを決めるヲ級に興味はないが、その方法は確かに賢い。それなら不貞を働こうとした輩はビックリして逃げるだろうし、仮に逃げなかったとしても周りの人が助けにきてくれる可能性もあるだろう。

 

 人の目があれば大それた行動にも歯止めがかかりやすいし、まさに最良の手と言える。ヲ級にしては非常に良い案と褒めたいが、図に乗りそうなので止めておくが。

 

「ヲ級ニシテハ、ズイブン優シインダネ。

 テッキリ同ジ考エヲ2度ト起コサナイヨウニ、徹底的ニ思イ知ラセルンジャナイカト思ッタノニ……」

 

「ウンウン。

 レ級ノ言ウノハモットモナンダケド……」

 

 いや、そこは否定しろよ。

 

 せっかく怪我人が出ない方法という最良の手を提案したはずなのに、そこを肯定しちゃったら意味がないんじゃ……、

 

「助ケヲ呼ンダラ、真ッ先ニ店長ガ飛ンデクルカラ大丈夫ナンダヨネー」

 

 ありませんでしたとさ。

 

 うん。あの店長が飛んできたら、少々の輩くらい軽々とやっつけちゃうよね。

 

 下手をすればドラム缶に詰められて、そのまま海に……なんてこともありえるし。

 

 実際にやられかけた身としては本当に洒落にならないんだけれど、ごついガタイに坊主頭、さらにお姉言葉で身体をクネクネさせるところを思い出しただけで、吐き気をもよおしてきたんだが……。

 

「……トマァソウイウコトデ、買イ物ヲスル際ハ近クニアルコンビニガベストナンダヨネー」

 

「「「ナルホドナー」」」

 

 なぜか聞いていた子供たちと港湾棲姫が美少女ロボットのような口調を返し、ヲ級が教卓から離れて自分の席へ戻って行く。

 

 パチパチと拍手が上がったので俺も同じようにしておいたが、今回の内容って為になる話だったのだろうか。

 

 まぁ、俺がフォローをしておけば……と思ったところで、今度はレ級が席を立って教卓の方へ歩いて行った。

 




次回予告

 ヲ級の授業がおわり、今度はレ級の番が来た。
とはいえ、これは授業と言って良いのだろうか……と思いながら、様子を伺っていたのだが。

 まさかの乱入者、あらわる?

 艦娘幼稚園 第三部
 ~幼稚園が合併しました~ その20「地獄耳」

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