艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 蒼龍の言葉に戸惑いながら、青葉がいるであろうドックへと向かう主人公。
そこで聞いた驚愕の事実に、主人公の怒りが爆発する!?

 とある企みを進行中っ。
準備が出来次第お伝えしますー。


その2「ブルドック再び」

 

 蒼龍の言葉の意味を考えながら、俺は再びドックへと足を向けていた。また誰かに会う可能性もあるし、ぶつからないという保証はないので、走るのは止めて早歩きで通路を移動する。

 

「腹筋……ねぇ……」

 

 確かに蒼龍が言う通り、日々の鍛錬は仕事の後に欠かさず行っているから、人前に見せるほどではないけれど、それなりに割れていたりする。とはいえ、それを確認する方法は限られてくるだろうから、恐らくはそう言うことなんだろうなぁと、深いため息を吐いた。

 

「龍田が言ってた、お姉ちゃんたちに受けが良いって写真の一部なんだろうなぁ……」

 

 首から下をマッチョにコラった写真だけだと思っていたけれど、よくよく考えてみれば、天龍が叫んでいた風呂上がりの写真は上半身が露出していてもおかしくはない。その写真であれば、俺の腹筋を確認することが出来るだろうし、蒼龍の言ったことも納得できるだろうが……

 

「どちらにしろ、そんな写真をこれ以上流出させるのは避けないと」

 

 向かう先はドック。そこで罰として掃除をしているであろう青葉を問いつめて、写真のすべてを破棄させるしかない。もちろん現物の写真だけではなく、ネガやデータのすべてをだ。

 

「……っと、確かここの角を曲がった先に……あったあった」

 

 左に曲がる角を折れ、数メートル歩いた先に暖簾が掛かった入り口が4つ並んでいるのが見えた。それぞれの入り口の横にプレートを差し込む場所があり、手前から『長門』『扶桑』『山城』の順にプレートが入っていた。

 

「コードEがあった後に入渠――って、何かあったのかな?」

 

 全艦娘はコードE発令に伴って、出撃は無かったはずなのだけれど、もしかするとそれ以前に遠征に行っていたからだろうか? それにしては、主力級の戦艦ばかりのような気もするけど……

 

 そんな事を考えながら、最後のドックの入り口横のプレートを見ると、『空(掃除中)』と書かれたプレートが入っていた。掃除中と書かれているからして、青葉はほぼ、ここにいるのだろう。

 

「よし、ここは一発、気合いを入れていかないとなっ!」

 

 怒っている事をまずはしらしめないと、要求は通り難い。ましてや、青葉が苦手としている高雄や愛宕が一緒にいるわけでもないので、上手くはぐらかされてしまう可能性だって考えられる。

 

 両方の頬をバシンッ! と叩いて闘魂注入――とまではいかないものの、気合いが入った俺は、ドックの中へと足を進めた。

 

 

 

 

 

「ひい……ふう……みい……っと。これで先生の写真がトップですねぇ。予想に反して、青葉びっくりですよ~」

 

 暖簾をくぐって脱衣所を通り、中の様子をうかがうべく角から覗いてみると、にこやかな笑顔を浮かべている青葉が、手帳にメモをしている場面に出くわした。掃除道具は床に転がり放置された状態で、明らかに掃除よりも別の事に集中しているのは一目瞭然だった。

 

「やっぱり、この間の一航戦VS五航戦騒動の後から、元帥人気も下火になりがちと思っていましたけど、まさか先生の写真がこんなに売れるとは驚きですねぇー。いやはや、この結果は青葉の情報をフル稼働させても、予想出来なかったです」

 

 そう言いながら、ポケットから数枚の写真らしきモノを取り出した青葉は、トランプの手札を見るように手に持って、マジマジと眺めていた。

 

「でもそれにしては、一部の艦娘から元帥の写真の注文が増えてるんですよねぇ~。これって、やっぱりアレの効果なんでしょうねぇ……」

 

 どうやら俺のことに気づいていなさそうなので、ゆっくりとドックの中に入り、カチャリと小さい音を鳴らしてから、忍び足で近づいていく。

 

「しっかし、脱衣所の写真の売り上げも好調ですけど、明らかなコラ写真まで売れまくるのは、どうにも分からないですねぇ。こんなアンバランスな肌黒マッチョなんて、どこが良いんだか……」

 

「それは俺も同感かな」

 

「ですよねぇ~。やっぱりあるべき姿を写真にしてこそ価値があるってモノです。加工した写真が売れるのは、どうにも納得がいかないんですよねぇ~」

 

「ちなみに、そのコラ写真はいったい誰が作成したのかな?」

 

「んっと、この写真は――確か、幼稚園に通っている龍田ちゃんから頂いたですよ。面白おかしく出来たから、欲しい人がいたら配ってくださいって……」

 

「やっぱりお前だったのか龍田あぁぁぁぁ!」

 

「ひいっ!?

 って、さっきから誰と喋ってたのかと思ったら先生でしたっ!?」

 

 2段モーションで驚きを表現する青葉は、このままではまずいと思ったのか、写真とメモをポケットにねじ込んで、この場から逃げようと走り出した。

 

「ふっふっふ~。重巡洋艦だからといって、なめてもらっちゃあ困りますよ~。取材慣れしている青葉にとって、素早く走って逃げる事なんて朝飯前――って、開かないっ!?」

 

 ドックから脱衣所に出る扉のノブを回そうとする青葉だが、ガチャガチャと音が鳴るだけで一向に開こうとしない。先ほど忍び足で入ってくる際に、鍵をしっかりかけておいたのはこの為だったのだが、やはり、慌てている人にとって効果はてきめんである。

 

「な、なんでっ!? ノブが回らないっ! こんなの青葉の情報に無いですよっ!」

 

 ひとつ躓けば、焦った人にとって転落の道しか残っていないのが大半で、口では余裕を見せていた青葉も、その中の1人だったようだ。

 

「はっ、そうかっ! 鍵っ、鍵が閉まっているだけじゃないですかっ! こんなのすぐに外してしまえば――って、痛ててててっ!」

 

 扉の前で数秒止まってくれれば、追いつくのはたやすい。俺は慌てて鍵を開けようとしていた青葉の耳を摘んで、以前の高雄や愛宕と同じように、力を込めながら引っ張った。

 

 あ、もちろん、怪我はしないように加減はしたつもりだけど。

 

「いっ、痛いっ! 痛いですってばあぁぁっ!」

 

 半泣きの表情で叫び声を上げる青葉だが、声以外の抵抗らしい抵抗は見せず、ずるずると俺に引きずられているだけだった。

 

「や、止めてくださいっ! 青葉の負けですからっ、観念しますからあっ!」

 

 眼に涙をいっぱいに溜めながら泣き叫ぶ青葉を見て、さすがにかわいそうと思えてきた俺は、扉の前に立って逃げられないようしてから、耳を引っ張る力を緩めた。

 




次回予告

 青葉をゲット……もとい捕まえた主人公。
写真の事を問い詰めて、観念させようとしたのだが……


艦娘幼稚園 番外編? ~青葉と俺と写真と絵師と~ その3


 乞うご期待っ!


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