新章突入!
艦娘幼稚園 番外編? ~青葉と俺と写真と絵師と~
コードEが終わった帰り道、主人公の耳に入ってきたのは途中棄権した天龍の叫び声だった。
龍田から聞いていた写真の事を思い出し、青葉の元へ向かう主人公。
しかしその途中で出会ったのは、以前にも会った事のある、あの艦娘だった……
今回は番外編?
幼稚園児はほとんど出てこない!?
ほんのひとつの切っ掛けが、主人公を奈落の底へと陥れる!?
もうなんだかさっぱり分からない問題作? 始まります!
その1「腹筋?」
高雄に事のあらましを話した事でコードEが収束し、部屋に戻ろうとした俺の耳に、教え子である天龍の声が聞こえてきた。
「やったー! 先生の寝姿&風呂上がり牛乳一気飲み腰当てポーズ写真ゲットしたぜーっ!」
鎮守府内に響き渡った天龍の叫び声に、俺は関西の有名コント舞台の俳優並の滑りっぷりを見せた後、何とか立ち上がって、とある場所へと足を向けた。
コードEが発令されて幼稚園の中を捜索している際に、龍田との会話から驚愕の事実を知り、それが今の天龍の叫び声で確信へと変わった。ならば俺は、これ以上写真を出回らせないように青葉の元へと向かい、問いつめなければならない。特に、悪質としか思えないコラ写真がすでに出回っているという情報もあり、今後の保身の為にも、絶対に回収しなければならないのだ。
正直な話、首から下をマッチョにコラるとか、どういう精神でそうしようと思ったのだろうか。そんなものが元帥の目にでも触れようモノなら、「こりゃ僕も負けてらんないねっ!」とか「うほっ、良い男!」とか「そういう趣味があったんだね……先生って……」と、蔑んだ目で言われるかもしれないと思うと――
「まぁ、元帥なら別に良いんだけどさ……」
3つのうち、2つ目は……まぁ、避けておきたいけれど、どうせ元帥のことである。テンションが上がる=色々と問題を起こしているだけに、俺がきっかけにならなくても、何かしそうだなと思えてくるのだけれど。
「いや、しかし問題は……」
子ども達に広がるのだけはどうにも避けたい。現状においても、すでに天龍の目に触れている可能性は非常に高く、龍田に至っては俺に写真の事を教えてくれた張本人である。これ以上、他の子ども達の目に触れないようにしなければならない。
そうしないと、只でさえ底辺を漂っている俺の威厳というものが、マイナス方向へとダイブしそうである。
すでに、無いかもしれないけれど。
「っと、この扉だよな」
そんな事を考えながら移動していると、目的の場所であるドックの入り口を通り過ぎるところだった。足に負担をかけないようにカーブを描きながらスピードを緩め、踵をうまく使ってくるりとターンをし、扉の取っ手に手をかける。やや重たい金属性の引き戸をググッ……と力を込めて開けると、目の前に長く広い通路が広がった。
「確か……ドックの場所は突き当たりを右だったよな」
以前に鎮守府内を見回っておこうと、休みの日にうろついた記憶を思い出しながら、俺は小走りで通路を駆けていった。
通路の突き当たりのT字路を右に曲がると、すぐ目の前に艦娘の姿が見えたので、ぶつからないようにと走るのを止めて徒歩へと変える。すると、俺に気づいた艦娘が顔を上げて声をかけてきた。
「あら、先生ではないですか」
「あっ、これは加賀さん。お疲れさまです」
お互いに頭を下げてお辞儀をする。俺は顔を上げて加賀を見ながら笑顔を浮かべたが、コードEによる疲労の為か、ほんの少し不機嫌そうに見えた。
まぁ、加賀はいつも表情が硬いというか、会う度に無表情だったから、そう感じただけかもしれないけど。
「……少々気になることがあるのですが」
「は、はい。なんでしょう?」
「なぜ先生がこのような場所におられるのでしょうか?
ここは艦娘専用のドックと整備工場がありますが、先生が必要とする施設は無いと思われるのですが」
「あー、えっと、そうですね。確かにその通りなんですけど……」
「ではやはり、なぜ――なのでしょうか?」
全く食い下がる素振りさえ見せず、加賀はなぜここにいるのかと、何か意図があるかのように俺を問いつめる。
「実はですね……ちょっと、艦娘の1人に用事がありまして……」
「艦娘に用事……ですか?」
「ええ、ちょっと聞きたいことがあってですね……」
そう言いながら、俺は青葉の名を出そうとした瞬間、遠くの方から駆け寄ってくる人影が、手を振りながらこちらに近づいてきた。
「加賀さーん、お待たせしましたーっ!」
声が聞こえると同時に、加賀は目を閉じて「ふぅ……」とため息を吐いてから口を開く。
「蒼龍……もう少し落ち着いたらどうかしら。そんなに大きな声を上げなくても、十分に聞こえます」
「ごっ、ごめんなさい、加賀さん。実はちょっとお宝が……って、先生っ!?」
「あ、どうも。お久しぶりです、蒼龍さん」
「あ、あ、え、えっと、お、おひさし……ぶりです……」
なぜか慌てふためいた蒼龍は、顔を真っ赤にしながら俺から視線を逸らしてそう言った。よく考えてみると、蒼龍と直接話したことは今まで無いから、もしかすると緊張しているのだろうか。
「……あ、あの……大丈夫ですか? もし俺が邪魔なんだったら、すぐに離れますけど……」
「い、いえっ! べつに、先生が邪魔だとか……そういうのではないんですけどもっ!」
「蒼龍、もう少し落ち着きなさい」
「は、ははっ、はいっ!」
加賀がごほんっ! と咳払いをして言うと、蒼龍は更に慌てふためいたけれど、すぐにビシッと背筋を伸ばし、加賀に向かって「すみませんっ!」と、お辞儀をしてから俺の方へと向き直った。
「それで……その、えっとですね……」
おずおずと口を開く蒼龍だが、視線は少しだけ逸らし、頬の辺りが赤く染まっている。ここ最近、こんな感じの状況を何度も経験しているけれど、良い事があった例はない。
「あー、その……言い難いことでしたら、別に無理に言わなくてもいいですけど……」
「あっ、いいえ、そうじゃないんですっ! そうじゃないんですけど……」
「はぁ……」
どんどんと蒼龍の顔が赤くなり、耳まで綺麗に染まってしまう。そんな状況を見ていた加賀が、もう一度大きく咳払いをした。
「蒼龍、そろそろ時間です。今日は大変だったのだから、これ以上待たせては赤城が先に食べ初めてしまうわ」
「あっ、そ、そうですねっ! すみません……」
加賀に向かって何度も頭を下げて謝る蒼龍に、またもや「ふぅ……」とため息を吐いた加賀は、俺に向かって口を開いた。
「と言うわけで、申し訳ありませんが、私たちはこの辺で失礼させてもらいます」
ぺこりと頭を下げた加賀は、俺の返事を待たずにスタスタと建物の出口へと歩いて行った。
「あ、あのっ、すみませんでしたっ!」
「い、いえ……別に……」
大きくお辞儀をして、蒼龍は加賀の後を小走りで追いかけていった――のだが、
「せ、先生っ」
「あ、はい、なんですか?」
振り向いた蒼龍が、さっきと同じように顔を赤く染めて、もじもじとしながら口を開く。
「そ、その……先生の腹筋って……割れててちょっと素敵ですよねっ! 私、ちょっとドキドキしちゃいましたっ!」
「……は?」
「結構評判になってますよ……って、加賀さんがもうあんなに遠くにっ! それじゃあ、失礼しますっ!」
「あ……は、はい……」
「加賀さーん、待ってくださーいっ!」
駆け足で追いかける蒼龍の背を見ながら、立ち尽くす俺の目は見事なまでに点となり、しばらくの間、通路のど真ん中で立ち尽くすことになってしまった。
……え、どういうこと?
次回予告
蒼龍から言われた言葉に戸惑いつつも青葉の元へと向かう主人公。
そしてドックの中で独り言を呟く青葉に、主人公が襲いかかる!?
艦娘幼稚園 番外編? ~青葉と俺と写真と絵師と~ その2
乞うご期待っ!
今回も最長記録を爆進しちゃう!?
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