久しぶりではありますが、先日皆様のおかげで日間ランキングに入ることができました。
これからも宜しくお願い致します。
さて、番外編第二弾……なのですが、先に行っておきます。
正直、誰得なお話なのかサッパリです。
過去に登場したオリキャラ、そして名前しか出てこなかった艦娘がチラリと登場するシーンもありますが……、本当に誰得なんだろう(ぇ
運動会の昼休み。
チームのメンバーである子供たちと一緒にお弁当を食べる……と思っていたんだけれど、いきなり呼出しを喰らってしまう。
いったい何なのかと呼びに来たしおいに尋ねてみると、とんでもない答えが帰ってきた。
(今章は、運動会編における昼休みに行われたイベントのお話になります)
燃えよ、男たちの狂演 その1「強制参加とご褒美と」
運動会の昼休み。
あの時は余り語らなかったが、しばらく経った今なら構わないかもしれない。
いや、正直に言えば思い出したくないんだけれど。
それでも聞いてみたい……と思う危篤な方がいるのであれば、話さざるを得ないだろう。
誰得なんだと言える、最凶最悪のイベントを……。
「呼びだし……?」
第3競技が終わり、子供たちに鳳翔さんお手製のお弁当箱を配り終えたところで、俺の待機場所にしおいがやってきた。
「はい。
先生は至急、第2体育館の方に向かって下さいとのことです」
「予定ではなにもなかったはずだけど、至急ってことは突発的になにか起こったのかな……?」
「その辺りは行ってみれば分かると思いますよ」
そう答えたしおいの表情がなにやら楽しげに見えるんだけど、イマイチよく分からない。
でもまぁ、さすがに競技が全部終わっていない段階で変なことを起こすことはしないだろうし、単純に手が足りていないだけというのもありえるだろうと思い、俺はコクリと頷く。
「それじゃあ早速行きましょう。
みんなも一緒についてくるよね?」
「もちろんであります!」
ビシッとしおいに敬礼をするあきつ丸に合わせ、潮もコクコクと頭を下げ、夕立も「はーい!」と叫ぶように声を出しながら右手を上げる。
「それじゃあ私たちも行こうよ、大井っち」
「北上さんが言うなら、私は火の中だろうが水の中だろうが、どんなところへでも向かいます~」
「あははー。
今から行くのはそんなに危ないところじゃないよー」
そう言って、仲良く手を繋ぎながら歩き出す北上と大井。
「……私たちは、だけどね」
「ん……?」
北上が何かを呟いたような気がしたので視線を向けてみたが、不振な点は見当たらない。
なんだか嫌な予感がするんだけれど、ただの思い過ごしだよな……?
そんなことを思いながら、俺はしおいに続いて第1運動場へと向かう。
これが地獄への1歩だったと後に後悔することになるのだが……、残念ながら今の俺には知るよしもなかった。
「……ナニコレ?」
「珍●景ではないですねー」
俺の質問に対してボケるしおいはカラカラと笑うが、俺は目の前の光景を見て立ち尽くしたままだ。
「あきつ丸たちは早速席に行っているであります!」
「そ、それじゃあ、頑張ってください……」
「先生、頑張るっぽい!」
そしてあきつ丸と潮、夕立がそんな俺を気にすることなく……どころか、なぜか意味不明に応援してから歩いて行った。
ちなみに北上と大井はすでに姿を消しているが、おそらくあきつ丸たちと同じだろう。
「それじゃあしおいも同じく、観客席に向かいますのでー」
「いやいや、ちょっと待って」
俺は手を振り別れようとするしおいの肩をガッシリと掴んで逃がさない。
いくらなんでも説明なしにこの場で捨て置かれるのは、いくらなんでもあんまりだからね。
「ああ、そうでした。
先生はあっちにある待機場所に……」
「いやだから、なんで体育館に格闘技をするようなリングが設置されていているのかをまず説明してくれないかな」
「説明もなにも、今からプロレスが始まるからじゃないですか」
「………………は?」
「もちろん先生はそれに参加される訳ですから、早く待機場所に向かって準備をしないといけませんよね」
「だ、だから、そんな話は聞いていないんだけど?」
「またまたー。
ちゃんと前日に渡された運動会のしおりに書いてあったじゃないですかー」
「しおい……先生……。
今回の運動会について、俺に説明がほとんどなされていなかったことを……覚えてます……?」
「……あれ、そうでしたっけ?」
ああ、ダメだ。
朝の段階であれだけ話して揉めていたのに、すっかり忘れ去られちゃっているよ……。
「まぁ、そんなことはどうでもいいんですよ!」
いや、どうでもよくねぇよ。
「せっかく子供たちも楽しみにしているんですから、ここまできて参加しないという選択はないですよ!」
「そ、そんなことを言われても……」
俺はそう言いながら後頭部をボリボリと掻く。
いきなりプロレスに参加しろと言われて、はいそうですかと答えられる訳がない。しかし、子供たちが楽しみにしていたとなれば話は別だ。
長い間佐世保にいた身としては、少しでも舞鶴の子供たちが喜ぶようなことをしてあげたい。
だが、プロレスをやったことがあるかと聞かれれば即座に首を横に振れるし、練習もなしにできるはずがない。そんな状態でリングに上がったところで、グダグダになるのは目に見えている。
「とにかく、早く行かないといつまで経っても始まりませんから、早く向かってください!」
そう言って俺の背をグイグイと押すしおいに、俺は小さくため息を吐いて肩を落とした。
「と、とにかくどうなるかは分からないけど、待機場所に行ってみるからそんなに押さないでよ」
「本当にちゃんと行ってくれますか?」
するとしおいはスルリと俺の前に回り込み、上目遣いで問い掛けてくる。その瞳はウルウルと涙を流す寸前のように……って、どうしてこんなことになっちゃってんの!?
「い、いや、なんでいきなり泣きそうに……?」
「せ、先生が早く待機場所に行ってくれないと、しおいは……、しおいは……」
そして肩どころか、身体全体を震わせるしおい。
これって、朝にも見たような気がするんですが。
「また愛宕先生に怒られちゃうじゃないですか!
もう憤怒ファッ●ンガム宮殿は勘弁してほしいんですよぅ!」
正確には憤怒バーニングファッキンストリームね。
しおいが言うやつだと、デスメタルとかになっちゃいそうだ。
しかし、本当に俺が佐世保に行っている間に、愛宕はしおいになにをやったんだろう……。
こんなに震えるしおいは今までに見たことがないんだけどなぁ……。
「ですから、音速を超えて向かってください!」
「無茶ぶりにもほどがあるんだけど!?」
「問答無用です!
四の五の言うようでしたら、放り投げてでも向かわせちゃいますよ!」
「わ、分かったから!
向かうから無茶なことはやらないで!」
俺を背負い投げしようと構えるしおいに両手を突き出して防いでから、急いで待機場所がある部屋へダッシュすることになってしまったのだった。
「あら、やっとこられたのですね」
「た、高雄さん……?」
待機場所があるという部屋の中に入った俺を迎えたのは、元帥の秘書艦である高雄だった。どうしてこんなところにいるのかと思ってしまうが、まさか高雄もプロレスに参加するのだろうか……?
その場合、やっぱりコスチュームとかは女子プロレスみたいな感じだったりして、レオタードとかそういうのだと強調される胸部装甲が……。
やばい、マジで見たい。
そして願わくは、高雄&愛宕の2人タッグで相手をしたい!
その場合は間違いなく死ぬだろうが、すでに天国に召された状態なので満足できるだろう。
……ということで、カモン!
「なにやら変なことを考えているような気がするのですが……」
「き、気のせいじゃないですかね……?」
「そうですか……。
先生の顔が元帥と同じに見えるなんてことは、ないと思いたいのですが」
そう言って、ギラリと光る視線を俺に向ける高雄。
あ、危ない危ない……。危うく元帥みたいにボコられるところだったぜ……。
「まぁ、良いですわ。
それよりもうすぐ試合が始まるのですが、その前にお伝えしたいことがあるのです」
「伝えたいこと……ですか?」
「ええ、そうです」
コクリと頷く高雄の顔は、笑みを浮かべていたんだけれど。
……なにこの流れ。
以前にも似たようなイベントがあった気がするんだけど、その時って目をやられたような……。
「時間もないので単刀直入にですが、昼休みのイベントは2対2のタッグマッチですわ」
いや、マジでちょっと待って。
本当に俺の願いが叶うってことなのか!?
「そして先生の相手となるのは何を隠そう……」
勿体つけるように高雄が間を取り、俺の心臓がバクバクと高鳴りを上げる。
セクシー衣装に身を包んだ高雄と愛宕にタッグ技をくらうなら、そのまま死んでも構わない!
舞鶴に帰ってきて、本当に良かったぞおぉぉぉっ!
「……元帥になりますわ」
………………。
前言撤回。
今すぐチームの待機場所に戻って、お弁当を食べたいです。
「そこでお願いなのですが、先生には元帥をこれでもかと言えるくらいにぶちのめしていただきたいのです」
「か、仮にも秘書艦である高雄さんが言って良いことだとは思えないんですが……」
「普段の行いがちゃんとしていればそうなるのでしょうけれど、元帥にそれを望むのは酷というものでしょう?」
大きくため息を吐く高雄は両手を広げ、やれやれとジェスチャーをする。
この話を聞いていた時点で元帥の精神ダメージは計り知れないものがあると思うんだけどなぁ……。
「まぁ、身代わりにするつもりだった擬体の方はすでに処分してありますので、元帥は本体で出てくるしかありません」
そして本体って表現もどうなんだろうか。
いやまぁ、間違いではないんだけどさ。
「従いまして、元帥の奥の手はすでに封じてある……と言いたいところなんですが……」
歯切れが悪い言葉を完全に詰まらせた高雄は、俺から視線を逸らす。
その仕種は俺を不安にさせるだけなので、できればやめて欲しいんだけどなぁ。
なんかさっきから俺に対して悪いことしか聞けてないのは気のせいじゃないよね……?
「もう1人の相手が問題なのですわ……」
「そ、その、もう1人というのはいったい……?」
「先生のよく知る人物……安西提督、その人ですわ」
「………………へ?」
ぽかーんと口を明けたまま固まる俺。
どうしてそんなことになったのかと思う以上に、なぜ高雄が不安げな表情をするのか分からない。
「え、えっと、安西提督って、佐世保から一緒に着た安西提督ですよね?」
「ええ、間違いありません」
「で、でも、安西提督は昨日の移動で持病の腰を痛めたらしいですから、プロレスなんてできるような状態じゃあ……」
「あら、そうなのですか?
それなら先生にも勝てるチャンスが……あるのでしょうか?」
いや、それを俺に聞かれても分かる訳がないんだけれど。
しかし元帥と安西提督がタッグを組んで俺と戦うことになるだなんて、いったいどうすれば良いのだろう。
いくらイベントだとはいえ、天と地ほどもある階級差の相手2人に怪我を負わしたとあれば不問で済むとは思えない。
まぁ、元帥の方は高雄から許可が出ているんだけど、安西提督に手をあげるのもなぁ……。
色々と恩もあるし、いくらプロレス"ショー"だといえども怪我をしないように気遣うのは難しい。
そもそも、どうして俺の知らない間にプロレスに参加させられている段階でおかしな話なんだけどさ。
「不確定要素に頼るのは難しいでしょうから、私から言えることは1つだけですわ」
そう言って、高雄は口元に人差し指を立てて内緒話というようなポーズで俺のすぐ側に近づいてきた。
「安西提督からは距離を置いて、元帥をボコボコにしてください。
それで10カウント……つまりノックアウトを取れば先生の勝利になりますから」
「わ、分かりました。
善処……してみます」
コクコクと何度も頷く俺だが、こればっかりは仕方がない。
だって、高雄の胸部装甲が俺の腕にちょくちょく当たっちゃっているんだもん。
これでは断る方が酷ってものだけど、どうせなら愛宕の方が良かった……かなぁ。
「良い返事ですわ。
あ、ちなみにですけれど、私の指定通りにできましたら愛宕からもご褒美をするように言っておきますから、よろしくお願いいたしますね」
「全身全霊で勤めさせていただきます!」
現金にもほどがある俺だが、夢が叶うとなれば気合いが入るのは必然だろう。
……しかし、ここで俺は考えるべきだった。
高雄が気にしていた、安西提督を危険視する訳というものを。
今章は、結構長いですよ……(ボソリ
次回予告
依頼は受けた。
そういやタッグを組む相手は誰だっけ?
過去に登場した男性キャラといえば……。
え、そんな感じだったっけ?
艦娘幼稚園 第二部 番外編
燃えよ、男たちの狂演 その2「ここにも影響が?」
乞うご期待!
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