艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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※今後の更新についてを活動報告にてお伝えしております。
 宜しくお願いいたします。


 全チーム同点なんですが。
予想がついていたならナイス読み。次回で今章、第二部が終了です。

 そして同点の結果、先生の立場とか色んなモノはどうなっちゃうのか……今話で判明?


その80「ハッピーエンド……?」(終)

「「「ざわ……ざわ……」」」

 

 観客たちがざわめくのも無理はない。

 

 競技を終えた結果が全チーム引き分けだなんて、おそらく予想もしなかったことだろう。

 

 もちろんそれは俺にとっても同じことだが、観客たちはそうはいかない。

 

 なぜなら、ここにいるほとんどがどれらかのチームが勝利するというトトカルチョに関わっているらしく、落胆した表情を隠しきれていないのだ。

 

「くそっ……、まさかこんな結果になるだなんてっ!」

 

「俺は固くビスマルクチームに賭けたのに、これじゃあ大損じゃねぇか……」

 

「人数が少ないから港湾チームの倍率が高かったし、狙い所と思ってたのになぁ……」

 

 そして、俺の耳に届いてくる愚痴の嵐。

 

 このままだと不満が溜まり過ぎたことによる暴動が起こりかねないんじゃないだろうか……?

 

『えー、まさかの展開となりましたが、これにて舞鶴幼稚園&佐世保幼稚園の合同運動会は終了と相成ります』

 

『頑張った子供たちに、盛大な拍手をお願いいたしますわっ!』

 

 熊野の言葉に反応する観客たちは少なく、締めくくりには少しばかり寂しい拍手がパチパチと上がる。

 

 事情は分からなくもないけれど、さすがにこれでは子供たちが可哀相だと思い、俺は必死に手を叩いて盛り上げようとしたところ、

 

『えっと……、は、はい、分かりました』

 

 小さな声で青葉が誰かと話している声が漏れ聞こえてきた途端、またもや厄介ごとが起きたんじゃないのだろうかと一抹の不安が頭を過ぎる。

 

 まさか暴動が起こる前に高雄が釘を刺すか、それとも元帥というイケニエを観客たちの中に放り込むか……って、後半はなにげに酷い案だよね。

 

『ただいまより放送席の隣にある臨時テントにて、特製アイスクリームの販売をいたします!』

 

 なぜかテンションが高い青葉の声に、思わず頭を傾げる俺。

 

「特製って……なんなんだ?」

 

「どうせ、トトカルチョに負けた俺たちから更に搾り取ろうって魂胆じゃねぇの?」

 

「おいおい、マジかよ……。いくらなんでも、それはひど過ぎやしねぇか……?」

 

 しかし観客たちは疑問よりも先に不満を向ける矛先へと変換しかけているようで、非常に危うい状態へとなりそうだと思っていたところ、

 

『なお、実は第3競技で使用した運貨筒の中に材料を入れ、子供たちが転がしたことで完成した特製アイスクリームなんですわ!』

 

 

 

「「「なん……だと……っ!?」」」

 

 

 

 観客たちが揃いも揃って声を上げた瞬間、目がキラーンと光って一斉に放送席の方へと視線が向いた。

 

「それってつまり、子供たちのお手製ってことじゃねぇかっ!」

 

「ぷ、プリンツちゃんのアイス……、アイスだっ!」

 

「ヲ級ちゃんとレ級ちゃんのダブルだぞっ!」

 

「ア、アイスの材料に潮ちゃんのおっぱ………………げふうっ!」

 

 なんだか危険な声が聞こえた瞬間、1人の観客が空を舞って海にダイブしたけれど、見なかったことにしておこう。

 

 正直に言って聞き捨てられない言葉だけれど、俺が動かなくても仕置き人が潜んでいるからね……。

 

『ちなみにですが、トトカ……げふんげふん、ハズレ券を持っている方は無料で1つをお渡しいたしますので、是非是非よろしくお願いいたします!』

 

『お詫びという訳ではありませんけれど、せめてものお気持ちだと理解してくれれば結構ですわ!』

 

 ………………。

 

 うーわー。

 

 露骨過ぎるのにもほどがあるんだが、対象となるほとんどの観客たちはというと、

 

「「「うおぉぉぉっ!」」」

 

 競技中の応援以上に白熱しまくった顔を浮かべ、ハズレ券と思われる紙切れを拳に握りしめながら高々と空に向かって突き上げ、ダッシュで放送席の方へと向かう。

 

 ただ、余りに人が多過ぎるため、全くといっていいほど動いていないんだけどね。

 

「アイスだっ! 子供たちが作ったアイスが食べたいっ!」

 

「雷ちゃんと電ちゃんの姉妹アイスーーーッ!」

 

「金剛ちゃんと榛名ちゃんアイスもあるんだぞっ!」

 

「今すぐ幼女分を補給だーーーっ!」

 

 危険な発言が飛び交い、ついでにいたるところで観客が空を舞い、それでもなおアイスを欲せんと進み行く。

 

 まるでそれは夏と冬に開かれる大型イベントの会場前のような、もしくは内部に入って空のシャッター前のような……、いや、この考えはやめておこう。

 

 とりあえず、この様子を見た子供たちがどのような反応をするかが気になるところなんだけれど、

 

「ワーオ!

 私たちのアイスが大好評みたいデスネー!」

 

「は、榛名はちょっと恥ずかしいです……」

 

「せっかく電と作ったアイスだもの。みんなに食べて欲しいわよね」

 

「はわわわ……、人がゴミのようなのです……」

 

「ちくしょう、俺様も第3競技に出ていれば……っ!」

 

「あの人数だと足りないだろうから、今からみんなで一緒に作っちゃう~?」

 

「ふむ、それも良いでありますな」

 

「追加分ハ更ニ特別料金ヲ上乗セシテ、ガッポリ稼ガナイトネー」

 

「サスガハヲ級! 金ノ亡者ダネ!」

 

「それって、褒めてませんよね……?」

 

「私はパスの方向でー。

 最後の競技で疲れたからちょっち休むわー」

 

「それじゃあ一緒に休みましょう、北上さんっ!」

 

「霧島の頭脳で導き出される計算は……、ええっと、2割ほど割り増しで……」

 

「1つ目は少なめにして、2つ目以降を割り増しで良いんじゃないかな?」

 

「気合い、入れて、儲けます!」

 

「う、潮も、頑張ります……」

 

「夕立もガンガン作るっぽい!」

 

「一人前のレディである腕前を、存分に発揮してあげるんだからっ!」

 

「アイスを作るのは……嫌いじゃない」

 

 ……と、嫌がる素振りどころか、商魂たくましい発言が飛び交いまくっていたんだけれど。

 

 まぁ、本人たちがそれで良いなら構わないんだけどさぁ……と思っていると、今度はビスマルクたちの声が聞こえてきた。

 

「まさか、引き分けに終わるなんて……」

 

「ご、ごめんなさいビスマルク姉様っ!

 プリンツがいたらないばっかりに……」

 

「残念だけど、負けじゃないだけマシじゃないのかな……?」

 

「そう……なると、争奪戦の結果はどうなるのかしら……」

 

「引き分けだから、ノーカウント……ですって?」

 

 

 

「「「ざわ……っ!」」」

 

 

 

 先ほど特製アイスについての説明を受けた観客と同じように、今度は子供たちが一斉に俺の方へと視線を向ける。

 

 え、えっと、これってもしかして……、かなりヤバイ状況じゃ……?

 

「へ、へへ……、引き分けだったら、そうなるよなぁ……」

 

 俺の顔をしっかりと見つめてくる天龍との距離は結構あるのに、半端じゃないほど威圧感みたいなモノを感じるんですがっ!

 

「弥生お姉ちゃんが言ってたのは、こういうことだったんデスネー!」

 

「ノーカウントならチャンスはまだまだあるってことです!

 今度こそ先生をゲットしちゃいますよー!」

 

「プリンツにそうやすやすと先生を渡すつもりはないけれど、チャンスが訪れたことには大賛成だね」

 

「フフ……、レーベと私が本気を出せば、必ずやり遂げられるはずよ……」

 

「なにを言ってるのっ! 先生は雷のモノになるんだからっ!」

 

「電も負けてはいられないのですっ!」

 

 か、完全に火に油をそそいじゃった状態になっているじゃんかよぉぉぉっ!

 

「さすがに次は失敗できないから、今度は完璧な策を練って先生を手に入れさせてもらうよ」

 

 時雨にいたってはヤンっぽい雰囲気を醸し出してきているし、マジで怖いからやめてぇぇぇっ!

 

「気合い!」

 

「入れて!」

 

「いただきます!」

 

 そして比叡、榛名、霧島が3人揃って合唱をしながら叫ぶんじゃえぇぇぇっ!

 

「マァ、愚兄ニ平穏ガ訪レルトハ思ッテナカッタケドネ」

 

 やれやれ……という風に両手を広げただけじゃなく、触手まで使って呆れた表情を浮かべるんじゃねぇよヲ級ーーーっ!

 

「結局、イツモドオリ……ナノ?」

 

「ソウトモ言ウネ!」

 

 そして落ちをつけたほっぽとレ級の言葉にガックリと肩を落とした俺だったが、

 

「それじゃあ早速、ばぁぁぁぁぁにんぐぅぅぅ……」

 

「……っ、プ、プリンツも負けていられません!

 ファイヤー、ファイヤーーーッ!」

 

「や、やべぇっ!」

 

 金剛とプリンツが俺に向かってクラウチングスタートの構えを取ったのを見た瞬間、待機場所であるテントから颯爽と飛び出して左右を見渡す。

 

 子供たちから逃げられる場所は……、埠頭からぐるっと回って鎮守府の大通りに行くしかないっ!

 

「おいっ、先生が逃げるぞっ!」

 

「捕まえて、フルボッコ……ですって?」

 

 それはマジで勘弁してくださいーーーっ!

 

 ろーの言葉に内心突っ込みを入れながら、俺は全力で地面を蹴る。

 

 引き分けに終わったことで平穏な日々が訪れると思いきや、結果はまさかの大惨事手前の状況に、俺の背中は冷や汗でビッショリだ。

 

「あらあら~、競技が終わったのにみんな元気ですね~」

 

「なんだか面白そうですし、しおいも走っちゃおうかなっ!」

 

「遊びじゃないんだし、ちょっとは助けてくださいよぉぉぉっ!」

 

「あら、私はもちろん遊びじゃないわよ?」

 

「いきなり現れて加わってんじゃねぇぇぇっ!」

 

 更にしおいやビスマルクまで加わって、もはや収拾がつかないのは明白で、

 

 それからしばらく鎮守府内を走り回ることになったのは、避けられない運命だったのである。

 

 

 

 マジで誰が助けてよぉぉぉぉぉっ!

 

 

 

 

 

 子供たちに追われて逃げまくる先生を見ながら、真っ白な軍服を着た2人の男性が話し合っていた。

 

「ふむ……、なんというかまぁ、楽しそうですね……」

 

「あれがいつも通りなんだから、本人にとっては大変かもしれませんけどねー」

 

 1人は舞鶴鎮守府における最高司令官、歩くトラブルメイカーこと元帥。

 

 もう1人は佐世保鎮守府所属で、今回ビスマルク率いる子供たちと一緒にやってきた安西提督だった。

 

「この様子なら、一緒にやっていけそうですね」

 

「そのようですね。まぁ、先生がいればなんとかなるとは思っていましたけど、あそこまで気に入られているのを見るとちょっと悔しい気がしちゃうんだよなぁ……」

 

「おやおや、秘書艦に自身の艦隊である空母勢だけではなく、まさか子供たちまではべらそうと思っているのですかな……?」

 

「い、いやいや、そういうつもりはないんで睨みつけるのは止めにしてもらえませんか……?」

 

 元帥が冷や汗混じりに手を振ると、安西提督は表情を崩して息を吐く。

 

 2人にどのような過去があったのかハッキリとしないが、どうやら元帥は安西提督に頭が上がらないように見える。

 

「まぁ、冗談はさておきですね……。

 予定通り進めるという方向で宜しいですね?」

 

「ええ、そのつもりでお願いいたします」

 

「そうですか……。

 少し寂しくもありますが、子供たちにとってもそれが1番でしょう」

 

「先生には少々酷かもしれないですけどねー」

 

 おどけたように手の平を上に向けたジェスチャーをした元帥を見て、安西提督は笑みを浮かべた。

 

 

 

 こうして、第1回舞鶴&佐世保幼稚園合同運動会は締めくくられ、

 

 

 

 舞鶴幼稚園と佐世保幼稚園が合併し、舞鶴で一緒に暮らすことになりましたとさ。

 

 

 

 

 ということで、先生の不幸はまだまだ続く……かも?

 

 

 

 

 

 艦娘幼稚園 ~舞鶴&佐世保幼稚園合同運動会~

 

 そして 舞鶴幼稚園 第2部 完

 




※今後の更新についてを活動報告にてお伝えしております。 宜しくお願いいたします。


 これにて艦娘幼稚園 舞鶴&佐世保合同運動会! と、長かった第二部が終了いたしました。
まずは長々とお付き合いいただいた読者の方々にお礼を。そして、今後ともよろしくお願いいたします。

 さて、今後の予定ですが、一時的に更新をお休み致します。
詳しくは活動報告の方でお伝えいたしますが、内容は去年と同じです。

 そして復帰後は今章の裏話や別視点を色々と書いていこうと思っていますので、実質第二部はまだ続いてしまったりするんですけどね。

 それでは次にお会いするまで、少しの間お休みさせていただきます。

 今後ともよろしくお願いいたしますっ!


リュウ@立月己田



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