そこで合流した時雨との会話途中に大事な場面で集まる子どもたち。
はたして時雨は何を言おうとしたのか、
そして、なぜ子どもたちは集まったのか、
残りはもう少し!
コードEはどうなるのかっ!
艦娘幼稚園はどうなるのかっ!
その全ては……ヤツが握っている……
俺が捜索を担当した幼稚園の東側は、色々とトラブルもあったけれどすべて終了した。ひとまず時雨と合流して情報交換をしようと、開始場所である遊技室へと戻ってきた俺は、扉を開けて部屋の中に入ると、タッチをした子も含めた数人の子どもたちがいて、お喋りを楽しんでいた。
「んーっと……時雨はまだ戻ってないみたいだな」
部屋全体を見回してみたけれど、子どもたちの中に時雨の姿は見えなかった。まだ幼稚園の中を探しているのか、それとも一度戻ってきて、俺の姿が無いことを確認してから再度捜索に行ったのかもしれない。
それならばと、俺は近くにいた子どもの1人に声をかけ、時雨を見なかったかと訪ねてみた。
「時雨ちゃんにタッチされて戻ってきたけど、それから1度も見てないよ?」
「そっか、ありがとな」
「ううん、先生もがんばってねー」
「おう、サンキューな」
励ましてくれた子の頭を軽く撫でてお返しをしていると、部屋の入り口にある扉からガチャリ……と開く音が聞こえた。
「あっ、先生……戻ってたんだね」
「今さっき戻ったばっかなんだけどな。ひとまずはお疲れさん、時雨」
「うん、先生もお疲れさま。……で、どうだったかな?」
時雨は少し表情を曇らせながら、俺に問いかけた。
「いや、残念ながら成果は無しなんだけれど、ちょっと気になる子どもを見かけたんだ」
「気になる――子ども?」
「ああ、白いセーラー服を着た小さい子どもだったんだけど、声をかけても反応無くってさ……追いかけたんだけど、すぐに見失っちゃってな」
「そ、それって……」
驚いた表情へと変化させた時雨は、慌てふためきながら俺の近くに駆け寄ってきた。
「もしかして、その小さな子は跡形もなく消えたとか……そんな感じなのかな?」
「あ、ああ……時雨の言うとおりだけど……」
身体が密着するくらい詰め寄ってきたので、少し後ずさってしまった俺だが、時雨は気にすることなく、まくし立てるように口を開いた。
「その子の手に、白いね……」
「あっ、先生発見っぽいーっ!」
「ほんとだ……ここにいたみたい……」
「鬼同士で集まってるなんテ、どういうことデスカー?」
扉が開かれると同時にバタバタと子ども達が入ってきてしまい、時雨の声がかき消されてしまった。
「夕立に潮に金剛……って、更に後ろにも何人かいるみたいだな」
「暁の出番がきたようね!」
「別に、呼ばれたわけじゃないと思うけど……」
「じゃじゃーん、雷も帰投したわー」
「電も帰ってきたのです」
一斉に扉から部屋に戻ってきた子ども達が口々に声を上げ、俺の方へと近づいてきた。
「あー、うん。お帰りみんな」
「はーい」と手をあげて挨拶を返す子ども達だが、なぜここに戻ってきたのだろうと不思議に思えて仕方がない。まさか時雨が戻ってきた全員にタッチしたのかと聞こうと思ったが、顔を向けた瞬間に首を横に振っていたので、どうやら違うようだ。
「……で、なんでみんなはここに戻ってきたんだ?」
「簡単デース。私たちはみんなで協力して幼稚園の中を調べてきたのデスヨー」
「え……っ!?」
「先生ったら、水くさいっぽいー」
「もっと、私たちにも……頼ってください……」
「も、もしかして……暁っ!?」
金剛たちの言葉から察した俺は、すぐに暁へと視線を向ける。すると、待っていましたと言わんばかりに胸を突きだしながら両手を腰に当てた暁が、自慢げに口を開く。
「そうよっ、暁がみんなに教えてあげたの!」
「響は何度も反対したんだけどね……でもまぁ、結果オーライだから良いんじゃないかな?」
「ふぅ……」とため息を吐いた響だが、心なしか薄く笑顔を浮かべていた。
子ども達を見回してみると、みんな一様に笑顔を浮かべて俺を見つめている。
「じゃ、じゃあ……お前たちは全部知ってて……?」
「暁から聞いた話だけデスけどネー。どうせなら人手はたくさんあった方が、ベリーグッドデスヨー!」
「そ、そりゃあ、そうだけど……俺と時雨が心配したのは何だったんだ……」
がっくりと肩を落としかけた俺を見た潮は、とてとてと小走りで近づき、上目づかいで見上げながら口を開く。
「う、潮も……知らない人は怖いけど……がんばって探しました……」
「潮……」
「夕立もいっぱい探したっぽいー」
「っぽいって言われると、どうにも信用できないんだけど……」
「大丈夫っぽい!」
「そ、そうか、すまんすまん……」
ドッ! と声があがり、子ども達はお腹を押さえながら笑っていた。俺と時雨が危惧していたことは起こらずに済み、それどころか、みんなが率先して手伝っていてくれたようだ。
「……それで、みんなは何か見つけられたのかな?」
そんな中、1人だけ笑顔を浮かべなかった時雨が、ぼそりとみんなに聞こえる声で呟いた。それを聞いた子ども達の笑い声と笑顔が急に収まり、しんと静まり返ってしまった。
「手分けして探したですけど、何も見つからなかったのです……」
「電だけが悪いんじゃないわ。雷だっていっぱい探したけど、なにひとつ見つからなかったもの」
「そうだね。響も何も見つけられなかったさ……」
「もちろん、暁も全然だったわ!」
自慢げにそう言った暁だが、額には一筋の汗が流れ落ちている。姉妹たちの手前、こういった態度を取らなければいけないと思っているのだろうけれど、肝心の姉妹たちにはすでに分かっているようで、
「そうなのです。暁ちゃんは一番ダメだったのです」
「そうだね。暁が一番ダメだったね」
「暁はお姉ちゃんなのに、一番ダメだったわね」
口々に、暁にダメ出ししていた。
もちろん笑いながら。
「な、なななっ、なんでそんなに暁だけ攻めるのよっ!?」
「だって、お姉ちゃんなのです」
「そうだね。お姉ちゃんだもんね」
「お姉ちゃんだから、あたりまえよね」
「むきーっ! べ、別にいいわよっ。失敗したって、暁が一番なんだからっ!」
「冗談なのです」
「冗談だよ」
「冗談よね」
顔を真っ赤にして怒っている暁に、3人は笑いながら頭を撫でようとする。
「だっ、だから、暁はお姉ちゃんなんだから……っ! なでなでしないでよっ!」
撫でようと近づいてくる手を振り払って暁は逃げようとするのだが、ニヤニヤと笑みを浮かべた3人が追いかけまわすようにぐるぐると部屋を走り回っていた。
「おいおい……話がそれまくってるんだけど……」
ため息を吐いた俺は、他の子どもたちにも話を聞こうと視線を移す。時雨の言葉にまだ答えていないのは金剛だが、その顔は暗く、浮かない表情をしていた。
「残念ながラ、私も見つけられてまセーン……」
「そっか……いや、ありがとな、金剛」
「いえ……力になれなくテ、申し訳ないデース……」
落ち込む金剛と同じように、俯いた潮や夕立の頭に手を伸ばし、優しく撫でて慰めてあげた。
しかし、これだけの人数で探したのにもかかわらず、『知らない人』は見つけられなかった。
つまりこれは、この幼稚園の中に存在しないからであるのではないかと思っていたのだけれど、
「……そう言えば、時雨がさっき言いかけていたのは何だったんだ?」
ふと、夕立、潮、金剛が入ってきた時の会話を思い出し、時雨に問いかける。すると、時雨は再び表情を曇らせて、俺の顔を見上げた。
「うん……先生が見たって言う、白いセーラー服を着た小さい子どもの事なんだけど……」
「ああ、確かそんな話だったよな」
「その子の手にさ、白い……猫が……」
「見つからないんだよ」
「「えっ!?」」
すぐ後ろから聞こえた声に驚いた俺と時雨は振り向くと、そこには通路で見た白いセーラー服の小さい子が、俺を見上げながら微笑を浮かべて立っていた。
次回予告
急に声をかけてきたのはやっぱりあの子!?
新たに放送が流れて、子どもたちは脅えだす。
この惨劇を止めるには、あるアイテムが必要だ!
艦娘幼稚園 ~かくれんぼ(コードE)大作戦!?~ その11
以上、熊野がお送りいたしましたですわっ!
乞うご期待っ!
感想、評価、励みになってます!
どしどし宜しくお願いしますっ!
最新情報はツイッターで随時更新してます。
「@ryukaikurama」
是非フォロー宜しくですー。