艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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※諸事情により、更新が不定期になるかもしれません。
 執筆の進み具合によったり、別件の状況にもよりますが、できる限り間が空かないように進めていきたいと思いますので、宜しくお願い致します。


 祝 300話目になっちゃいましたっ!


 飴玉が見つからない子供たちを前に、観客たちがざわつき始める。
またもや元帥がやらかしたのか、それともただ単に運が悪いだけなのか。

 その理由を知ろうとしたところ、思わぬ展開が待ち受けて……?



その61「下手をすれば大事故になりかねなくも……?」

 

『こ、これはいったい、どういうことなんでしょう……?』

 

 子供たちの様子を実況する高雄の声が、少しばかり焦っているように感じられる。

 

 もちろんその理由は、飴玉探しを行っている4人の子供たちが小麦粉の中に顔を突っ込んでいるのに、まったくと言って良いほど見つからないからだ。

 

 さすがにこの状況はおかしいと思ったのか、周囲の観客からもざわつきが起こり始める。

 

「おいおい、まさかと思うけど、飴玉が入っていないとかそういうんじゃないだろうな?」

 

「さすがにそれはないと思うが、セッティングしたのが元帥といわれると……なぁ」

 

「有り得ないことをやってのける男としては昔から有名だが、そんなことをやっちまった日には……死を覚悟の上ってことになるぜ?」

 

「……うむ。間違いなく血の雨が降るな。

 もちろん、我々の手によって……だが」

 

 いつの間にやら険悪なムード……では済まされないレベルの雰囲気に、俺の背筋にゾクゾクとした冷たいモノが駆け上がってくるのを感じた。

 

 元帥マジでヤバい。ただでさえ高雄にフルボッコ状態なのに、このままだと観客から集団リンチが確定になってしまいそうだ。

 

 いくら恨み辛みがあろうとも、さすがにそれはいただけない。なんだかんだと言っても舞鶴鎮守府で最高責任者である元帥が、そのような目に遭うのを見過ごす訳にもいかないだろう。

 

『いったい、どうなっているんですか、元帥?』

 

 さすがにこの空気を感じ取った高雄も、なんとかしようと元帥に声をかける。

 

『うぅ……』

 

『席に座りこんでへたっていないで、ハッキリと答えて下さいませんか?』

 

『い、いや……、僕がこうなったのって、高雄のせいなんだけど……』

 

『あら、全ては私のせいと……おっしゃるのですか?』

 

『………………』

 

『………………』

 

『返事がないようですわね?』

 

『ありますありますっ!

 ちゃんと答えるから、これ以上は勘弁してってばあっ!』

 

 声を聞くだけで完全降伏している元帥の状況が目に浮かぶようだが、その程度の会話内容を聞いたとしても、観客の雰囲気は収まりそうにない。

 

 ここはしっかりと、原因を追究した上で判断しなければならないのだ。

 

『じ、実は……』

 

 そして答え始めた元帥の言葉を聞き逃さぬよう、周囲の誰もが耳を傾けようとしたとき、いきなり事件は別の場所で起こったのである。

 

 

 

 ボフンッ!

 

 

 

「「「……っ!?」」」

 

『い、いったい、どうしたんですのっ!?』

 

 いきなり聞こえてきた大きな音に驚いた一同は、慌てて辺りを見回し現場がどこであるかを確認しようとする。

 

 俺も同じようにキョロキョロと顔を動かしてみたところ、子供たちが囲んでいる台の辺りが、完全に真っ白な霧のようなモノに包まれていた。

 

「な、なんなんだ、いったいっ!?」

 

 指をさして大きな声を上げた為、周囲の観客もこぞって視線をそちらへと向ける。

 

 ざわめきはどんどん大きくなり、様々な声が上がり始めてきた。

 

「お、おいっ!

 さっきまであんな感じじゃなかったよなっ!?」

 

「こ、子供たちは大丈夫なのかっ!?」

 

「いったいなにがあったんだよっ!?」

 

「オンドゥルルラギッタンディスカー!」

 

 悲鳴じみた声まで上がり……って、最後はまったく関係ない気がするのだが、それほどまで周囲に混乱が満ちている。

 

「も、もしかして、元帥の罠か!」

 

「な、なんだと!?」

 

「こ、子供たちに何度も罠を仕掛けるだなんて、許される訳がありませんっ!」

 

 遂には子供たちの競技を観戦していた舞鶴鎮守府のスタッフらしき人物たちからも怒りの声が上がり、収拾がつかなくなってきたのだが、

 

「あ、あれを……見ろっ!」

 

 S席に居た男性が指をさしながら大きな声を上げると、真っ白な霧のようなモノの中から1人の子供が第4ポイントの交代地点へ向かって駆け出していた。

 

 あ、あれは……、北方棲姫かっ!?

 

『い、いつの間にか最後尾を走っていたほっぽちゃんが、単独トップに躍り出た……のでしょうか!?』

 

 元帥への追及と、突発的に動き出した状況に、まったくと言って良いほどなにがなんだか分からなかった高雄は推測でしか実況することができず、完全に語尾が疑問形になっている。

 

 まぁ、俺も同じであるし、未だに白い霧のようなモノが充満している以上、仕方がないのだろう。それに、下手をすれば参加している子供たちですら同じような境遇によって、現状を理解できていないかもしれない可能性があるだろう。

 

 それほどまでに視認できない状態なのだが、いったいどうしてこんな風になってしまったのだろうか。

 

「げほっ、ごほっ……」

 

 実況や観客勢が理解に苦しんでいるうちに、いつの間にか他の子供たちも咳込みながら霧の中から現れた。

 

 ただし、それらの姿は完全に真っ白だったんだけど。

 

「し、視界が……」

 

「もうっ、なにも見えないじゃないっ!」

 

「あらあら~。みんな揃って真っ白よ~」

 

「た、龍田ちゃんも……同じだよ……?」

 

 霧島は眼鏡を取り外してレンズを指で拭き、暁は身体全体で不機嫌さを表現している。龍田は真っ白な顔のままニコニコ……と笑っている感じに見え、潮は相変わらずオドオドしているのだが……。

 

 ぶっちゃけ、背丈もあまり変わらない4人が真っ白になっちゃうと、ほとんど判別がつかないよね。

 

『ほ、ほっぽちゃん以外も霧の中から出てきましたが、いったいなにがあったのでしょう……?』

 

『それなんだけど、僕は見ちゃったんだよねー』

 

 どう解説して良いのか分からないといった高雄が戸惑っていると、横から口を挟む1人の男性が……って、元帥だよね。

 

 そういや高雄に問い詰められていて危ない状況だったんだけれど、大きな音と共に霧が発生したおかげで難を逃れた……ということだろうか。

 

『見ていた……ということは、状況が分かっているのですか?』

 

『霧が起きた理由までは、だけどねー』

 

 そう言って「フフン……」と鼻を鳴らす元帥。明らかに自慢げな様子が目に浮かぶが、あんまりそういうことをやっていると、さっきの二の舞になるんじゃないだろうか。

 

『あ……、いや、べ、別に調子に乗るとかそういうんじゃ……』

 

『それなら、さっさと解説をしていただきますでしょうか?』

 

『わ、分かったから、僕の胸と腹部に指を突き立てるのは止め……ぎゃひぃぃぃっ!?』

 

『はいー? 聞こえませんわー』

 

『な、南斗はダメェェェーーーッ!』

 

 なにやらズブズブと肉に減り込むような音がするが、まったくもっていやらしい感じじゃないので注意しておこう。

 

 ただの、胸から腹部にかけて星座の模様が刻まれているだけです。たぶん。

 

『さあ、さっさと解説しませんと、他の指も突き立てますわよ?』

 

『わ、分かった!

 分かったから、これ以上は……』

 

 元帥は荒い息を整えるために少し間を置いてから、辛そうな声で解説し始めた。

 

『じ、実は……、台に到着した4人の子供たちが飴を探していると、最後尾のほっぽちゃんが遅れてやってきたんだよね』

 

『まぁ、そこまでは予想ができますわ』

 

『そのまま台に近寄って空いているスペースから飴を探すのかなと思っていたんだけれど、他の子供たちの様子をしばらく見ていたかと思ったら、いきなり深呼吸を始めたんだよ』

 

『深呼吸……ですか?』

 

『うん。それもかなり特大の……というか、今から絶叫をあげる準備をしているんじゃないかと思えるくらい、おもいっきり肺に空気を吸い込んだんだ』

 

『も、もしかして、霧の原因とは……』

 

『……そう。ほっぽちゃんが台に向かって、吸い込んだ空気を一気に吐き出したんだよ』

 

『それで飛び散った小麦粉が霧になったと……』

 

『それから先は見えなかったから分からないけど、おそらくは台の上には……』

 

 元帥がそこで言葉をわざとらしく止めたので、観客たちは揃って誘導されるように台の方へと視線を向けた。

 

 すると白い霧が徐々に消え、飴玉と小麦粉の入っていた台の姿が見えた。

 

『……なるほど。元帥がおっしゃった内容に嘘はありませんわね』

 

『さ、さすがにこの状況で嘘を言う必要がないと思うんだけど、そもそもどうしてそんな考えにいたるのかなぁ……』

 

『それは、日頃の行いを全て見てきている私だからですわ』

 

『は、ははは……』

 

 元帥の乾いた笑いがスピーカーから流れるが、観客は完全スルー状態であり、今1番気になっているのは、子供たちがちゃんと飴玉をゲットできたかどうかなのだが、

 

『ま、まぁ、アレだよ。

 粉塵爆発が起きなかったから、良かったなぁ……と』

 

『そういった、縁起でもないことをおっしゃらないで下さいっ!』

 

『ぎゃぴぃぃぃーーーっ!』

 

 口は災いの元――を、まったくもって理解していないのか、それとも懲りていないのか。

 

 毎度お馴染みの元帥ぼこられタイムが発動する中、体中にまとわりついた小麦粉を払い終えた子供たちが、ほっぽの後を追いかけ始めたのであった。

 

『……そういえば、結局どうして子供たちは飴玉を見つけるのに時間がかかったのでしょうか?』

 

『こ、拳を僕のお腹に減り込ませつつ、そんなに冷静に聞けるもんなのっ!?』

 

『……あら。もっと強めが良いとおっしゃるのでしょうか?』

 

『ち、違う違うっ!

 こ、子供たちが飴玉を見つけられなかったのは、ただ単にサイズが小さかっただけだよっ!』

 

『小さい……ですか?』

 

『か、簡単に見つけちゃったら面白くないから、直径5ミリくらいで……』

 

「うぅ……。暁は、ハッカ味があまり好きじゃないんだけれど……」

 

「あら~。私は結構好きなんだけれど~」

 

「霧島の飴もハッカ味でしたが、どうやら全部同じみたいですね」

 

「う、潮のも……同じ味でした……」

 

『飴玉の色も白かったから、見つけるのはかなり難しかったかと……』

 

 子供たちが追いかけながら話す内容に、元帥の暴露を聞いた高雄が取った行動は……、

 

 

 

 まぁ、聞かなくても分かりますよね?

 

 

 

『元帥の血は何色でしょうか……』

 

『い、いや、こ、これでも反省して……』

 

『まぁ、すぐに分かるんですけれど……ね』

 

『ま、待って高雄っ!

 もうしないっ、もうしないからさぁっ!』

 

『そんな言葉で許されるとでも?』

 

『だ、だから、以後は厳重に注意するんで……』

 

『そんなのでは、念仏を唱える時間すらも与える気にはなりませんわね』

 

『か、仮にも僕は元帥なんだけ……』

 

『聞く耳持ちませんわーーーっ!』

 

 

 

『あべしーーーーーっ!』

 

 

 

 大きな悲鳴と共に上がる爆音。

 

 おそらく高雄が放ったのは打撃ではなく、堪忍袋の緒が切れたと同時に砲弾が飛んだのだろう。

 

 ぶっちゃけ、それはかなりヤバいと思うのだが、なんだかんだで周りも気にしないのが舞鶴鎮守府です。

 

 つまり、いつも通りってことで。

 

 何度目なのか正直数えたくないけれど、今日も元帥と高雄は変わらずでしたとさ。

 




※諸事情により、更新が不定期になるかもしれません。
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次回予告

 さようなら、元帥。

 冗談はさておき、再びトップへ躍り出た港湾チーム。
それを追う4人の子供たちは、果たして追いつけることができるのだろうか?

 ……と思ったら、またもや和気あいあい? なんですけど。


 艦娘幼稚園 第二部 
 舞鶴&佐世保合同運動会! その62「楽園?」


 乞うご期待!

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