艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 元帥の悲鳴が上がったのは置いといて、ヲ級の技ありによってパンをゲットできた子供たち。
残りは第2ポイントへ向かうだけなのだが、観客背でもひと悶着があったようで……?

 それでは続いて、第2ポイントの説明です。


その56「エキサイトな水上バイク?」

 

『パンをゲットした子供たちが第2ポイントに向かって爆走中!

 先頭からヲ級ちゃん、夕立ちゃん、天龍ちゃん、電ちゃん、ろーちゃんと続いておりますっ!』

 

『最後尾のろーちゃんは激辛カレーパンを食べてしまって、少し遅れてしまってますわ!』

 

『涙目でも頑張るろーちゃんが健気で応援したくなりますねー』

 

『安心して下さい。観客の心は1つですわよ!』

 

 熊野がそう言うや否や、観客から一斉にろーちゃんへ向けて応援する声が上がった。

 

「がんばれ、ろーちゃーん!」

 

「元帥の罠なんかに負けるなー!」

 

「もう少しで第2ポイントだぞー!」

 

「うう……、口の中は痛いけど、ろーちゃん頑張りますっ!」

 

 お礼の意味を兼ねて観客に向い手を振るろー。その仕草が可愛らしく、健気さも相まって大盛り上がり……となったのだが、

 

「おっぱいぷるんぷ……って、ろーちゃんはなかったな……」

 

 ……と、またもやどこぞのチョビ髭の声が聞こえてきた瞬間、頷いたり少々顔を曇らせたり「それが良いんじゃないか!」と叫ぶ観客の反応に、若干の不安を感じた俺。

 

 そんなことを言っていると、おそらくあの艦娘が反応するんじゃ……、

 

「天誅やでぇーーーっ!」

 

「ぐへぇっ!」

 

 ……あ、遅かったか。

 

 佐世保から護衛の為についてきたフラット軽空母RJの声と共に爆撃音が聞こえたが、これは気づかなかったことにする方が良いだろう。

 

 俺も色々と被害を受けたことがあるし、チョビ髭も自業自得だからね。

 

 ただまぁ、観客に向かって爆撃は少々やり過ぎというか……大丈夫なんだろうか?

 

 仮にもS席、更にいえば偉いさんが集まっている場所なんだけど。

 

 まぁ、その辺りは元帥が全て責任を取るから別に良いけどさ。

 

 それより、子供たちの方はどうなんだろうと視線を向けてみたのだが、

 

「モグモグ……」

 

「ぽいぽい……」

 

「んぐんぐ……」

 

「はぐはぐ……」

 

 ヲ級、夕立、天龍、電の4人は第2ポイントへ向いながら、パンを食すのに必死だった。

 

 ……ってか、夕立は口癖なんだけど。

 

 色んな意味で謎過ぎる。だが、それ以上に問題なのは、

 

「僕のパンハ、クリームパンカ……。

 ドウセナラ、オ兄チャンノクリー……」

 

「言わせねぇよっ!」

 

 第1回争奪戦のときと同じネタをするんじゃねぇぇぇっ!

 

 とりあえず最大級の叫び声で防いだつもりだが、観客とかに聞こえなかっただろうな……?

 

 今のところ敵意とかそういう視線はなさそうだし、大丈夫だとは思うけど。

 

「夕立のはあんパンっぽい!」

 

「俺のはジャムパンだなぁ」

 

「電のパンはホイップ入りメロンパンなのです!」

 

「うおっ、それマジで美味そうじゃねぇか!

 

「一口食べるのです?」

 

「良いのか!?

 サンキューな、電!」

 

「夕立も欲しいっぽい!

 少しずつ交換するっぽい!」

 

「ヲヲ……。良カッタラ僕モ、オ願イスルヨ」

 

「大丈夫なのです!」

 

 俺の心配をよそに、パンを一口大にちぎって渡しあう子供たち。

 

 ………………。

 

 非常に和気あいあいなんですが。

 

 一応これ、レースなんですけどね?

 

 そんな様子を見ていた観客勢も落ち着きを見せているし、どうやら爆撃はなかったことになったようだ。

 

 やはり、可愛いは正義ってことで間違いないね。

 

『いやー、これはほんわかする光景ですねー』

 

『心がピョンピョンしちゃいますわ! ピョンピョンしちゃうんですわ!』

 

『なぜ2回言ったのかは不明ですが、その気持ちは分からなくはないです!』

 

『うんうん。僕も同じ気持ちかなー』

 

『コブラツイストをかけられながら会話に入ってくる元帥は、もはや人間じゃないと思うんですよ……』

 

『まぁ、元帥ですから……で、納得できてしまいますわ』

 

『納得しちゃって良いんでしょうか……』

 

 青葉と熊野が額に汗を浮かばせながら呟く姿が容易に想像できるが、元帥に関する思考はあまり深く掘り下げない方が良いと思うんだよね。

 

 仮にも艦娘である高雄の打撃を受けまくってもなんとか生きているし、そうかと思ったらすぐに復活しちゃうし、首がもげたと思ったらロボットによる身代わりだったし。

 

 考えるだけ無駄な気がしまくるので、そういう生物だと思うしかないです。

 

 ぶっちゃけ、酷過ぎることを思っていたりするが、それくらいの扱いをしておかないとこちらの心がもたないのだ。

 

『おおっと、そうこうしている間に先頭のヲ級ちゃんが第2ポイント前に到着間近!

 あとはチームメイトにタッチをして選手交代だーーーっ!』

 

『そう言えば、第2ポイントの障害はいったいなんですの?』

 

『進行をする側としては知っているはずですが、説明タイムを導入する為のナイス発言、ありがとうございます!』

 

『普通はそういうことは言わない方が良いと思うんだけどさぁ……』

 

『ま、まさかの元帥が真面目な発言を!?』

 

『し、信じられませんっ!』

 

『さっきからちょいちょい、酷い発言しまくりだよね……』

 

『コブラツイストが解けたと思ったらキャメルクラッチに移行してもなお、平然と会話に参加してくる元帥ほどじゃないと思います』

 

『酷いとかそういう話じゃなくないっ!?』

 

『まぁ、このような会話自体がマンネリ化しているのですけどね?』

 

『やっぱり酷いよーーーっ!』

 

 スピーカーから悲鳴が上がるが、観客は誰1人として気にしない。もちろん俺も、子供たちに視線を向けて完全無視である。

 

『さて、元帥のマイクスイッチをOFFにしましたからこれで雑音は入らないですし、そろそろ第2ポイントの説明を致しましょう!』

 

『ここから見る限り、第3ポイントまでの間にあるのは……斜めになった台が3つありますわね』

 

『はい、その通りです!

 第2ポイントの障害も単純明快、ジャンプ台になっております!』

 

『なるほど。あの斜めになった台はジャンプ台ですのね。

 そういえば、古いゲームであんな感じのモノを見たような……』

 

『おそらくそれはバイクに乗ってタイムを競うレースゲームのようなヤツじゃないでしょうか!』

 

『そうそう、それですわ。

 シンプルなのに奥が深い、なかなかのゲームですわね』

 

 熊野がそう言うと、なぜかスピーカーから電子音で奏でられる曲が流れてきたんだけど。

 

 なにげに凝っているというか、変なところに力が入っているよな……。

 

 ちなみにクラッシュするとバイクから投げ出されちゃうんだけれど、ボタン連打で早く戻れるエキサイトなバイクゲームだ。

 

 俺も昔は最高タイムを出そうと、滅茶苦茶やり込んだ記憶があるんだよなぁ……。

 

『説明をしている間にヲ級ちゃんが先頭で到着するぞーーーっ!』

 

 懐かしんでいる俺の耳に青葉の声が聞こえたので、顔を上げて海へと向く。

 

「レ級、次ハ任セタ!」

 

「ラジャー!」

 

 ヲ級がレ級とハイタッチを交わし、一目散に加速する。

 

「お待たせっぽい!」

 

「次はあきつ丸に任せるであります!」

 

 続いて2番手の夕立も到着し、待っていたあきつ丸に声とタッチをして選手交代を済ませた。

 

『続々と到着する子供たちですが、ここで第2ポイントの参加者を紹介しましょう!』

 

『ビスマルクチームからはプリンツちゃんが。

 愛宕チームからは響ちゃんが。

 しおいチームからは榛名ちゃんが。

 港湾チームからレ級ちゃんが。

 先生チームからはあきつ丸ちゃんが出場です!』

 

『そしてここで3番手の天龍ちゃんが榛名ちゃんと交代!』

 

「悪い、待たせたな!」

 

「いえ、榛名は大丈夫です!」

 

『更に4番手の電ちゃんも響ちゃんと交代ですわ!』

 

「ご、ごめんなさいなのです!」

 

「大丈夫。後は響に任せて」

 

『そして少し遅れて最後尾のろーちゃんが涙を浮かばせながら頑張っているーーーっ!』

 

「頑張って、ろーちゃん!

 ふぁいやー、ふぁいやーですよっ!」

 

「が、がんばりますって言いたいですけど、まだ舌がヒリヒリしますって……」

 

 水面から顔を出し、真っ赤になった舌を風に当てて少しでも痛みを紛らわせようとするろーが震える手を伸ばしてプリンツに向ける。

 

「プリンツ、後はお願いしますって!」

 

「任されました!

 全力で頑張る!」

 

『これで第1ポイントに参加する全ての子供たちが交代を完了!

 続いて第2ポイントのジャンプ台によって、どう順位が入れ替わるかが見ものですっ!』

 

『2つのジャンプ台はそこそこの高さですから、着水でバランスを崩さないかが重要になってきますわね』

 

『もちろん大事に備えて救急隊も待機しておりますが、事故がないよう頑張って欲しいところです!』

 

『艦娘として海に出れば大波を受けることはたくさんありますけど、少々子供たちにいきなりな感じが否めませんわ……』

 

『そ、それは……、若いうちの苦労は買ってでもしろ……と言いますし……』

 

『本当に事故がなければ良いんですけどねぇ……』

 

 そう言って大きくため息を吐く熊野……だが、不吉な発言をわざわざしなくても良いと思うんだよね。

 

 第1競技のカーブで五月雨が吹っ飛んだように、絶対に大丈夫とは言い切れない。しかし、子供たちの経験を得るという意味では間違いだとも言えないのだ。

 

『ま、まぁ、どちらにしても、問題があったら元帥のせいってことで良いんじゃないでしょうか!』

 

『ちょっ、またもや酷くないっ!?』

 

『あれ、おっかしいなー。なんだか雑音が混じったような気がしますー』

 

『ちゃんと聞こえているよね!?

 なんでそんな無視なんか……、ぐへええええっ!』

 

『バキボキと効果音が鳴っておりますが、これも雑音なので気にしないでおきますわー』

 

 何番煎じか分からない漫談を終えた青葉と熊野は、一呼吸置いてから再び解説へと戻った。

 

『さて、先頭はレ級ちゃん、続いてあきつ丸ちゃん、榛名ちゃん、響ちゃん、プリンツちゃんの順になっております!』

 

『1位から4位までの差はそれほどありませんが、最後尾のプリンツちゃんだけは少し差が開いてますわ!』

 

『果たしてこの差をどれだけ縮められるのか、こうご期待です!』

 

『それでは次回、お楽しみに……ですわ!』

 

 ……とまぁ、完全にいったん終了的な発言をされても困るのだが、切りが良いのでこの辺で……だそうだ。

 

 ともあれ、第2ポイントのジャンプ台でもひと波乱が起きそうな感じがムンムンとしていたのであった。

 

 

 

 嫌な予感が的中しなければ良いんだけどね。

 




次回予告

 第2ポイントへ突入した子供たち。
そこでいきなりあの子が爆走し始める。
全ては勝利の為。そして、報酬の為……なのだが、少々やり過ぎじゃないですかね……?


 艦娘幼稚園 第二部 
 舞鶴&佐世保合同運動会! その57「プリンツ無双」


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