第1競技が終わって一息つく主人公。
頭の中でレースを振り返りながら、対策を練る。
そして、今度は全員参加による第2競技が開始されるっ!
※次回予告タイトルを記入し忘れていました。
現在は修正済みです。申し訳ございません。
第1競技のレースが終わり、子供たちを次の競技へ向かわせてから、俺は待機場所にあるパイプ椅子に座って休憩することにした。
「ふぅ……。やっと一息つけたって感じだよなぁ……」
朝起きてから今に至るまで、色んなことがあり過ぎたせいか、体力も気力もかなり消費してしまっている。
次は子供たち全員が参加する競技なので、待機場所には俺しか居ないこともあり、ゆっくりとできるのだ。
とはいえ、椅子に座ったまま呆けている訳にもいかないので、俺は運動会のしおりに目を通す。
「残る競技は4つ……か」
俺はスケジュール表を見ながら独り言を呟き、しおりを閉じてから目尻を指で摘んでマッサージをする。
「とりあえず、第1競技は夕立が頑張ってくれたおかげで2着を取れたんだし、順調に得点を重ねれば勝利できるよな……?」
そうは思えど、気がかりなのはビスマルクのチームだ。
レースで見ただけではあるが、舞鶴の子供たちでは太刀打ちできないほどの差があった。
折り返し地点のターンでアクシデントがなければ、レーベが断トツで勝利していたのは間違いないだろう。
五月雨のリタイヤは……、うん、まぁ、色々あるからね。
ともあれ、佐世保の子供たち全員がレーベと同じ練度であるのなら、厳しい戦いは必至であると思えるのだが……、
「隙があるとすれば、やっぱりビスマルク……か」
数ヶ月の間ではあったけれど、性格やその他もろもろの情報を1番知っているのはこの俺である。
それらを集約した上で有効な手立てを考えると、真っ先に浮かぶのがビスマルク。だが、俺には気がかりになる点があった。
「あのビスマルクがこちらを偵察しにきたとき、ちょうどチームが揉めていた。
その情報を鵜呑みにしていてくれれば、非常にありがたいことなんだけれど……」
もし、ビスマルクが自分自身の考えで偵察にきていたのであれば、なにも問題はないだろう。
シンプルイズベストの思考で俺のチームが揉めていると勘違いをし、なめてかかってくれればこっちのモノだ。
しかし、そもそもビスマルクが偵察にきたという時点で怪しい気がしてならない。
おそらくだが、佐世保のチームにおける参謀――マックスの指示によるものではないかと、俺は思うのだ。
「もしそうだったとしたら、これが罠であると見抜く可能性も有り得るよな……」
ぶっちゃけてしまうと、あの時点では完全にチームは分裂状態だったので、罠にかけたというのは語弊があるだろう。
上手く引っ掛かってくれればめっけもの。仮にマックスが見抜いたとしても、デメリットはほとんどないんだけれど……。
「1番の問題は、純粋な能力の差がどこまであるか……なんだよなぁ」
それを知るには、次の第2競技は都合が良い。
全て子供たちが協力し合って対決するチーム戦――玉入れ競技がそろそろ始まるからだ。
「悩んでいたって仕方がないし、できる限り他の子供たちを観察して対策を練らないとな」
俺はしおりをポケットに仕舞いこみ、代わりにいつも持ち歩いているメモ帳を取り出した。
第3競技以降に向けて情報を書き込み、必ず勝利をもぎ取らなければいけない。
全ては平穏な日々を手に入れる為、負ける訳にはいかないのだ。
『観客のみなさん、お待たせいたしましたっ!
第2競技の準備が整いましたので、始めたいと思いますっ!』
気づけば、レースを行っていた際のターン用ブイの姿は消え、代わりに海上に浮かせる為に改造された玉入れの籠が設置されていた。
『それでは、各チームの子供たちが入場ですっ!
みなさん、拍手で迎えて下さいっ!』
辺りから大きな拍手と歓声があがり、子供たちの姿が籠の周りへと集まってくる。
それでは第2競技。
対空砲玉入れ合戦の――始まりだ。
『さあ、準備はオッケーですかーーーっ!?』
「「「おーーーっ!」」」
スピーカーから大音量で聞こえてきた青葉の声に、子供たちが一斉に手を上げて答えた。
海上にある5つの籠の周りに、港湾のチームが4人、他のチームが5人の子供たちで輪になって囲っている。
愛宕のチームは、暁、響、雷、電、比叡。駆逐艦4人に戦艦1人と、対空戦には決して悪くない編成だし、4人の姉妹のコンビネーションも気になるところだ。
しおいのチームは、天龍、龍田、時雨、金剛、榛名。駆逐艦1人に軽巡洋艦2人、戦艦2人と、こちらもバランスが良さそうに見える。
港湾のチームは、ほっぽ、レ級、ヲ級、五月雨。1人少ない編成ではあるものの、個人個人のスペックは計り知れないモノがある。
まぁ、五月雨はドジを発揮しなければ……ではあるけれどね。
俺のチームは、大井、北上、潮、夕立、あきつ丸。軽巡洋艦2人に、駆逐艦2人、そして揚陸艦のあきつ丸。
子供たちの訓練を見ていない俺としては艦娘としての知識だけしか持ちえていない挙句、あきつ丸に至ってはほとんど分からない。
だからこそ、ここでしっかりと調べておかないといけないのではあるが、1番気がかりなのはビスマルクのチームだ。
レーベ、マックス、プリンツ、ろー、霧島。佐世保の4人に霧島が臨時加入しているが第1競技を見た俺としては、1番油断ならないけれど……。
「なんか、霧島だけ少し離れていないか……?」
5人が輪になって籠を囲んでいるが、どうにもビスマルクチームの子供たちだけ間隔が均等に見えないのだ。
「それに、なんだか霧島の顔が怒っているような……」
遠目ではあるが、霧島の頬や耳が真っ赤になり、表情が険しく見えるのは見間違いではないと思う。
対して、レーベやマックス、プリンツは霧島の方に視線を向けず、まるで無視をしている感じにも見えちゃうんだよね……。
ろーはいたって普通というか、いつも通りニコニコしているけれど。
………………。
もしかして、ビスマルクのチームって……、揉めちゃっているんじゃないのだろうか。
良く考えてみたら、佐世保のチームにいきなり舞鶴の1人である霧島が臨時加入したのであるが、ろーを除く全員が俺の争奪戦に参加しているはずなのだ。
レーベやマックス、プリンツが、霧島を敵と見なしていると考えれば、チームワークどころの話ではなくなるんだけれど……。
「もしかして、付け入る隙が見つかった……ということかな……?」
教育者の立場としてはよろしくない思考だけれど、運動会でチーム戦、更には俺の争奪戦が関わっている以上、背に腹は代えられない。
俺はこのことをしっかりとメモ帳に記入したところで、再び青葉の声が聞こえてきた。
『それでは対空砲玉入れ合戦の前半戦を開始する……前に、ちょっとしたルールを説明いたしますっ!』
すぐさま始まるかと思ったら、いきなり引っ掛けかよ……と突っ込みたくなる青葉の言葉に、観客の数人が某新喜劇の芸人みたいにズッコケる。
かくいう俺も危なかったりしたけれど、椅子に座っていたおかげでなんとかなった。
『今回の競技は対空砲による玉入れです。
ですので、艦載機の使用は禁止になりますから注意して下さいねー』
「……ヲヲ。仕方ナイネ」
説明を受けたヲ級がガックリと肩を落とす。
「大丈夫ダヨ、ヲ級。レ級がイッパイ頑張ルカラサ」
すると、そんなヲ級を慰めるように、レ級が肩にポンッと手を置いたのだが、
「見セテモラオウカ。戦艦ナノニ航空戦、砲撃戦、雷撃戦ヲ行エルトイウ、モ●ルスーツノ性能トヤラヲ!」
「レ級ハ、モ●ルスーツジャナイヨ?」
「イヤ、ココハ、モット、コウ……、ノリヲ大事ニシナイト……」
「悲シイケドコレ、戦争ナノヨネッ!」
「フッフゥー! レ級分カッテルー!」
「「イェーイッ!」」
……と、金剛と組んでいるときと変わらない漫才をかましてしまう、ヲ級&レ級だった。
あとちなみに、今やっているのは戦争じゃなくて運動会だからねっ!
『見事な漫才を披露してくれたところで、そろそろ開始したいと思います!
それでは、よーい……スタートッ!』
パアァァァンッ!
第1競技と同じ大きな空砲が鳴り響いた途端、子供たちが一斉に籠に向かって対空砲を構えた。
『なお、子供たちに当たっては危険なので、弾は全てスポンジ製の軽いモノとなっております。
ですので、どんどん撃っちゃって下さいねーっ!』
観客への説明をしっかりとやりつつ、青葉が実況を続けていく。
『さあ、開始早々どのチームが抜け出すかですが……、今のところ横ばいという感じですっ!』
第1競技では元帥(ロボットのようなモノだったけれど)が解説を担っていた……というか、途中から割り込んできたんだけれど、高雄に破壊されてしまったおかげで青葉1人になっている。
確か熊野も放送に参加していたはずなんだけれど、子供たちへの準備連絡でしか聞こえなかったから、おそらくは役割分担をしているのだろう。
そんなことを考えてみたが、今俺がやらなくてはいけないのは別チームの子供たちを戦力分析することだ。
「まずは愛宕のチームからだな……」
俺は遠目ながらもしっかりと見据え、声を聞き逃さないように耳を済ませる。
「ypaaaaa!(ウラー!)」
「さ、流石は響ちゃんなのですっ!」
「暁も負けていないんだからっ!」
「ってー!」
暁、響、雷、電の4人姉妹は同じようなポーズで籠に向かって対空砲を撃ち、外れた弾を素早く回収しつつ装填し直しているのを見て、ちゃんと訓練を積んでいるのだろうと予想できた。
「私、頑張るからっ! 先生……、見ていて下さいっ!」
唯一の戦艦である比叡も気合充分といった感じで対空砲から弾を発射する。
叫んでいる内容がなんともコメントし辛いが、暁たちと同様に、ちゃんと動けているように見えた。
「チームワークも悪そうに見えないし、さっきのレースも3着だったから、この競技の順位によっては注意しないといけないな……」
俺はメモ帳にペンを走らせながらもう1度5人を見据え、しっかりと記憶してから別の籠へと視線を向ける。
「撃ちます! ファイヤーッ!」
「榛名も全力で頑張ります!」
「先生……、見ていてね。僕、頑張るよっ!」
「オラオラオラオラオラーーーッ!」
「あらー。天龍ちゃんったら、スタンド使いみたいになっちゃってるー」
うん。俺も龍田と同意見です。
……って、そういうことを調べているんじゃないんだけれど、このチームも問題なく動けているよなぁ。
全体的に元気が良いし、参謀役の時雨も頑張っている。龍田の暴走が多少気がかりではあるけれど、主に天龍へと向けられるから心配しなくても良いかもしれない。
ただ、天龍と金剛が弾を発射して一息つく度に、俺の方をチラチラと向いている気がするんだけれど。
チームが違うとはいえ、その行動はもったいない。
ちゃんと見ているから、今は競技に集中しなさいって感じである。
『もう少しで前半戦の3分が終了間近っ!
ここで少しずつ差が出てきたかーーーっ!?』
青葉の実況によって、観客の視線がある1点へと向かう。
しかし、それは俺が危惧していたチームではなく、艦載機の使用禁止というルールによって圧倒的不利と思われていたチームの籠だった。
※次回予告タイトルを記入し忘れていました。
現在は修正済みです。申し訳ございません。
次回予告
対空砲玉入れ合戦が開始され、前半戦が終了間近に迫ったとき、あるチームが頭1つ抜きんでる。
誰もが想像しなかったかもしれなかった結果は、とある作戦の効果だった……っ!?
艦娘幼稚園 第二部
舞鶴&佐世保合同運動会! その44「チームワークの差」
乞うご期待!
感想、評価、励みになってます!
お気軽に宜しくお願いしますっ!
最新情報はツイッターで随時更新してます。
たまに執筆中のネタ情報が飛び出るかもっ?
書籍情報もちらほらと?
「@ryukaikurama」
是非フォロー宜しくですー。