今度は知らない人を見つけ出そうと、ルールを変更を持ち出した。
やる気が出る子どもたち。はたして知らない人は見つけられるのか!?
コードEへの大作戦が本格始動!
はたして知らない人とは誰なのか!?
どうなる艦娘幼稚園!
「よし、それじゃあちょっとだけルールの変更をするから、よく聞いてくれよー!」
俺の周りに集まってきた子どもたちに、大きな声をかける。
「ルール変更デスか?」
「ああ、そうなんだ。さっきのかくれんぼで色々と問題点が見つかったから、より面白くしようと考えたんだぞ」
「へぇ~、いったいどんなのかしら~?」
声に集まった子どもたちをぐるりと見回した俺は、続けて口を開く。
「まず隠れる場所だが、今までと同じ幼稚園の敷地内ならどこでもオッケーだ。ただし、今回はトイレの中も見て回るから、使用している場合のみ、鬼がきたと感じたら自己申告するよーにっ!」
「あら~、ついに先生が変態さんになっちゃたのかしら~」
「いやいや、そうじゃない――って、いったい俺をどういう風に見てるんだよ龍田は。次に言うつもりだったんだけど、トイレを探すのは俺じゃないぞ」
「あら~? それじゃあ、誰が探しにくるのかしら~」
「そこで、今回のルール変更についてだ。まず1つ目なんだけど、鬼が2人になりますー」
「えーっ!?」
「おっ、それは面白そうだなっ!」
「隠れるのむずかしいっぽい!?」
「誰が鬼になるのデスかっ!?」
子どもたちが一斉に声を上げる中、俺は時雨の背中をポンと押し、少し前に立たせた。
「時雨は、さっきのかくれんぼで最後まで見つからずに隠れきったから、今度は鬼になってもらうことにしたんだ。俺一人だと、みんなを探し出すのに時間がかかりすぎたけど、今度はそうはいかないぞー」
「鬼として至らないところがあるかもしれないけど、全力でみんなを探すからね」
時雨はそう言って、みんなり頭をぺこりと下げた。
「ワオッ! 時雨が鬼になるなら、本気で隠れないといけませんネー!」
「難易度が一気に上がったっぽい!」
「やーるー気ー、出たぜー!」
俺が鬼の時って、そんなに手を抜かれてたの?
もしそうなら、へこみまくっちゃうよ? 泣いちゃうよ?
「みんなが言ってるのは、先生が至らないとかそういうことじゃ……」
「ああ、わかってるよ、時雨。みんなの顔を見ていれば、それくらいのことは十分に理解できるさ」
そう言って、俺は声を上げている子どもたちの顔を見渡す。みんなは一様に、俺に向かって笑顔を見せてくれている。一切の曇りもなく、純粋に楽しんでいるような満面な笑顔をキラキラと浮かべてくれている。
「そして2つ目のルール変更だが、実はみんなの知らない人が、かくれんぼに参加しているかもしれないんだけど、その人を見つけたらすぐに鬼に知らせるように!」
「知らない人……デスか?」
「ああ、そうだ。今までに会ったことがない人だから、すぐに分かるはずだ。見つけ次第大声を上げて俺や時雨に知らせてくれ」
「でもそれじゃあ、かくれんぼにならないっぽい?」
「その通りだよ夕立。そこで3つ目のルール変更なんだけど、今回のかくれんぼは見つかったら負けにはならなくて、鬼にタッチされたらアウト――つまり、鬼ごっことかくれんぼが合わさったゲームにしようと思うんだ」
「う~ん、なんだか分かりにくいデスねー」
「詳しいことは僕が今から説明するから、よく聞いてね」
時雨がそう言うと、テンションが上がって立っていた子どもたちがその場に座り、大人しく聞き逃さないように耳を澄ませた。
なんか、時雨って俺より先生っぽいよね……
ちょっぴりへこみつつも、時雨は俺と打ち合わせした通りに、みんなに説明し始める。
●『知らない人』を子が見つけて、鬼(俺と時雨)に知らせれば子の勝ち。
●鬼がタッチした子は10分間この部屋で待機状態になり、子の全員が部屋に集まれば鬼の勝ち。ただし、タッチされた子は10分経てば復活できる。
この内容を普通に考えれば、明らかに子が有利であるのは間違いない。1度タッチしたとしても、10分後に子は復活することが出来てしまうのだ。かくれんぼのルールですら、時雨以外を見つけだすのにかなりの時間を要した俺にとって、鬼が1人増えたとしても、今回のルールは無謀だといえる。
しかし、鬼である俺と時雨は勝つことが目的ではなく、知らない人を見つけだすのが目的なのだ。知らない人を見つけだす合間に子どもたちを見つけてタッチしたとしても、10分経てば元通りになり、時間が許す限り捜索をすることが出来る。
これで幼稚園の中を、ここにいる鬼と子の全員で探すことが出来る変則ルールになった。問題は『知らない人』が、この幼稚園の中にいるかどうかなのだが、
「このルールなら、楽勝デース! みんなで『知らない人』を見つけて、先生と時雨をギャフンと言わせてやるデスネー!」
「夕立も、頑張るっぽい!」
「わ、私も……頑張り……ます……」
「一人前のレディとして、ここは負けられないわねっ!」
「不死鳥の名は伊達じゃないよ……」
「みんなには、私がいるじゃない!」
「電の本気を見るのですっ!」
「俺に任せておけば大丈夫だ! 天龍、出撃するぜっ!」
みんなは気合いを入れるように、声を張り上げながら立ち上がった。
「それじゃあ天龍ちゃんと雷ちゃんに、ぜ~んぶお任せしちゃうわね~」
――が、立ち上がった瞬間をピンポイントでに足払いをかけるように、龍田がからかいを見せる。
「いやいや、龍田もちょっとは探せよな!」
「べ、べべっ、別に、雷は1人でも大丈夫なんだからっ!」
「それは、頑張りすぎなのです……」
「え~、天龍ちゃんと雷ちゃんに任せておけば大丈夫なんでしょ~?」
「なんでだよっ!」
ドッ! と、みんなが一様に笑い声をあげる。子どもたちは、いつでも元気いっぱいで、いつでも全力で、精一杯今を楽しんでいる。
そんな子どもたちを騙すような形で『知らない人』を捜索させるのはいささか悪いようにも感じるが、背に腹は代えられないし、仮に全てを子どもたちに話したとしても、同じことをしてくれるだろうと思う。
ならば、楽しみながら探す方が子どもたちにとっても良いだろうし、『知らない人』が幼稚園にいるかどうか分からない以上、子どもたちのやる気を保つべく、ここはこの手で行こうと俺と時雨は相談して決めたのだ。
「よしっ、それじゃあ今から30秒数えるから、その間に隠れてくれ。もちろん、隠れている間に『知らない人』を見つけたら、大声で叫んで知らせるんだぞー!」
「「「「「はーい!」」」」」
子どもたちは大きな声で返事をして手をあげた。俺と時雨は互いに見合って頷き、壁に向かって目を閉じながら、大きく口を開く。
「「いーち……にーい……」」
「よしっ、行くぞてめーらっ!」
「隠れるっぽいーっ!」
「『知らない人』を見つけてやるデース!」
2人で数えだした瞬間、子どもたちは声を上げながら一斉に走り出し、部屋の外へと出ていった。
「「じゅうなーな……じゅうはーち……」」
俺と時雨の数える声が、部屋の中に響く。すでに子どもたちは幼稚園の中を動き回り、『知らない人』を探してくれているだろう。
「「にじゅーいち……にじゅーに……」」
なら、俺たちもすぐに探し出すことを開始したいが、ルールを守るのも先生としての役目である。あくまで俺たちは通常業務を行い、子どもたちを元気いっぱいに育てることが最優先事項であり、目先にとらわれて本質を見失ってはいけないのだ。
「「にじゅーきゅう……さーんじゅう!」」
数えきった俺と時雨は再び見合うと、大きく頷いて部屋の外へと駆けていく。
「よし、それじゃあ打ち合わせ通り、時雨は西側を頼むっ!」
「うん、任せてよ先生」
扉を抜けた俺たちは、右手を出し合ってハイタッチ(実際には腰くらいの高さだけれど)をし、背中を向けると同時に全力で通路を走りだした。
通路に張られた『廊下は走らない』という張り紙を見た瞬間、早歩きになったのは先生として間違ってないと思いたい。
次回予告
ついに発見!?
だがしかし、その風貌はあまりのも予想とは違っていた。
しかも、すぐに見失うという大失態!?
再び見つけたあの2人。
今度は主人公が大ピンチに!?
艦娘幼稚園 ~かくれんぼ(コードE)大作戦!?~ その8
乞うご期待っ!
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