もし駄目だという方は飛ばされる方が良いかも……です。
結局地雷の対象は元帥だったようで……。
さすがに驚く佐世保の子供たち。だがそんなモノでめげないのもまた、佐世保の所以(違
しかしそれ以上に問題なヤツが帰ってきて……?
元帥らしき男性が吹っ飛んで行き、追いかけていく愛宕がぱんぱかぱーんタイムを開始するという声を聞いた後、俺は額に汗を流しながら子供たちと話をしていた。
「ま、舞鶴って、怖いところだったんだね……」
「い、いや、アレは……というか、アレだけは特殊過ぎるだけだから、気にしない方が良いぞ……」
ボソリと呟くレーベに、優しく語りかけるように説明する。
「そ、そうなの……かしら……?」
「ああ。それに、愛宕先生が始末してくれたから、なにも問題はないさ」
マックスも身体をプルプルと震わせていたので、俺は頭を撫でながら笑顔を見せた。
「し、始末……ですか……?」
「あー、いや。対処……かな?」
驚いたプリンツの誤解を解くため言いなおしてはみるものの、ぶっちゃけた話、始末で間違いないと思うんだよなぁ……。
……元帥、南無三。
「先生の語尾が……疑問形ですって」
「ま……、まぁ。あまり気にしなくても大丈夫だから、怯える必要はないよ」
そして他の子供たちとは違い、全く動じずに頭を傾げたろーが見事なツッコミを入れてきたので、改めてみんなに落ち着かせる言葉をかけた。
……とまぁ、こんな感じになっていたおかげなのか、レーベとマックスの拘束から逃れることができたのは結果オーライである。
そう考えれば、元帥は無駄死にではない。うん。そうだと思っておこう。
いやまぁ、死んでないだろうけどさ。
「ふぅ……」
俺はため息を吐きながら肩の力を抜き、さきほど見たモノはなかったことにして、目的を済ませようと口を開く。
「ところでさっきのことなんだけど……」
「「「……っ!」」」
俺が言葉を言い終える前に、レーベ、マックス、プリンツの3人が大きく身体を震わせた。
「あー、いやいや。扉の向こうのことじゃなくてだな。
俺としおい先生が布団を用意していたとき、どうしてあんなに睨んでいたんだ?」」
そう問いかけた途端、3人はホッと胸を撫で下ろすかのように息を吐いてから、ジロリと俺の顔を睨みつける。
「「「………………(じーー)」」」
「そう、それなんだけど……」
「「「………………(じーーーー)」」」
「い、いや、だからその顔というか……、その……」
「「「………………(じーーーーーー)」」」
「な、なんでそんなに睨みつけるんだ……?」
ほんの少し前までプリンツとレーベ、マックスの仲がこじれそうな感じだったのに、今ではバッチリな共同戦線を……って、マジで怖いんですが。
「「「はぁ……」」」
そして同時にため息を吐きながら顔を伏せる3人。
どうしてそんな態度を取るのか全く分からないのだが、俺って子供たちに対して機嫌を損ねるようなことをしたのだろうか……?
「マックスがさっき言ったと思うけど、僕たちが怒っているのはそのことなんだよね」
レーベが口を開きながら両手を腰に添え、いかにも不機嫌ですと言わんばかりの顔をする。
実際に怒っていると言っている以上そうなのだろうけれど、確かマックスが言っていたことって……、
~~~~~<回想>~~~~~
「舞鶴に帰ってきた途端、同僚にうつつを抜かす先生にはお仕置きが必要だから……かしら」
「ちょっ、言っていることがビスマルクと変わらないぞっ!?」
~~~~~<回想おわり>~~~~~
確か、こんな感じで後ろから捕まえられたんだよな。
………………。
……えっと、つまりはなんだ。
俺がしおいと布団を敷いているのを見て、うつつを抜かしたと思われたのだろうか?
別に普通の会話をしながら作業をこなしていたんだけど……。
うーむ……。
もしかして、佐世保に居たころはビスマルクが使い物にならないから、何でもかんでも俺が1人でやっていたせいで、それが普通だと考えていたんじゃないだろうか。
そして舞鶴に戻ってきた俺が、ちゃんと仕事ができるしおいと一緒に作業をしながら会話をしていたので、レーベたちが嫉妬をした……ということか?
それってつまり、ビスマルクがちゃんとしていれば問題は起きなかった訳で……。
あ、でもアレだな。ビスマルクをきちんと教育する立場としては、結局俺が悪いということになっちゃうんだろうけれど。
うむむ……。やはり安西提督の執務室で話していた通り、ビスマルクはまだまだ1人前と見るのは忍びなくなってしまう。
しかしそうなると、もう1度佐世保に行って教育をし直さなければならないしなぁ……。
せっかく舞鶴に帰ってきたのに、すぐにまた出張というのも……色んな意味で悲しいぞ。
……まぁそれ以前に、明日の運動会で勝たないことには、俺自身がどうなってしまうか分からないんだけれど。
本当に、なんで争奪戦がまた始まっちゃうんだよって話である。
チクショウメェェェッ! って、龍田に叫びたいぞ……全く。
「私たちを捨てて舞鶴に戻ることが決まった挙句、目の前でイチャイチャされたら不機嫌になるのも分かるわよね?」
「ちょっと待て、マックス。
俺はお前たちのことを捨てる気なんて全くないし、しおい先生とイチャイチャしていた事実もない」
「そんなのウソですっ!
とっても仲が良さそうに話しながら布団を敷いてたじゃないですかっ!」
「そりゃあ、同僚と久しぶりに一緒に仕事ができたんだから、会話をしながら作業くらいするのが普通だろ?」
「ビスマルク姉さまとはそんなこと1度もしてなかったじゃないですかっ!」
「ま、まぁ、一緒に仕事をしたら、色んな意味で危なかったからな……」
「………………あっ」
ポカンと口を開けて固まるプリンツ……って、やっぱり分かっていなかったようだ。
もちろん意味合いとしては、仕事ができないビスマルク……という部分と、隙あらば俺を襲おうとする部分があるが、おそらく後者の方を思い浮かべたんだろうなぁ……。
だって、レーベとマックスも、俺から完全に目を逸らしているし。
つーか、それくらい気づけよ……と思ってみたりもするが、そこはまぁ子供だから仕方がないだろう。
しかし俺は、子供たちが怒った理由の1つにある点について考える。
佐世保から舞鶴に向かう前日。子供たちは俺に帰還命令が出たことを知った際に、悲しみに暮れた顔を浮かべてくれた。
それは俺と離れたくないからという気持ちがあったからこそのことなのだが、結果的に運動会で俺を奪い取るという思考によってしまったのはいただけない。
更に龍田によって幼稚園中が知ることとなった俺の争奪戦が公式なモノとなり……って、本人が許可した覚えはないんだけれど。
しかし、今更声をあげようものならどんな酷い目にあうか分からない俺としては、諦めるしかなかった訳で。
そしてスタッフルームにおける会議で打開策を得、なんとか明日の運動会で俺のチームが勝つように頑張るだけ……だと思っていた。
「「「………………」」」
だが、俺の目の前に居る子供たちの悲しそうな表情を見てしまった以上、どんな結果が訪れたとしても誰かが不幸に感じてしまうのではないのだろうか。
仮に俺や舞鶴のチームが勝った場合、佐世保のみんなとは別れることになる。
逆にビスマルク率いる佐世保のチームが勝った場合、俺は舞鶴のみんなと別れることになるのだ。
舞鶴と佐世保は新幹線と電車を使えば半日くらいで移動できるが、どちらかの幼稚園で仕事をしている以上、そうそう気軽に行き来するのは難しい。
貰っている給料は年齢に応じた至って普通な金額の為、交通費を捻出するのにも限界がある。
つまり、佐世保の子供たちと長い時間一緒に居られるのも明日が最後かもしれない……という訳なのだ。
それが分かっているからこそ、先ほどのように怒り、今のように悲しんでいるのだろう。
それを全て理解した上で、俺はどんな行動を取るのがベストなのか。
その答えは――
「戻ったわよっ!」
いつの間に帰ってきたのか、いきなり大声をあげたビスマルクはこちらの気も知らずにダッシュで近づいてきた。
その手にはどこから持ってきたのか、シーツに包まれた敷布団があるのだが……。
「目をかっぽじってよく見なさいっ!
これでもなお、私が役立たずと罵るのかしらっ!?」
俺に突き付けたその敷布団に目を落とし、全体を見渡してから一言。
「シーツが……裏表逆なんだけど?」
「んなっ!?」
慌てて敷布団を見るビスマルクの顔が真っ赤に染まり、額に大量の汗がにじみ出す。
「しかもチャックが途中で外れちゃっているし、内側の隅にある締め紐も結んでないよね?」
「ぐふぅっ!」
「佐世保に居るときに何度も教えたはずだけど、ちゃんと覚えていないのか……?」
「そ、それは……その……」
赤い顔がみるみるうちに青くなっていくビスマルクは、後悔したかのように両方の肩を落としてうなだれた。
「そもそも、この布団をどこから持ってきたんだよ?」
「え、えっと、リネン室からだけど……」
「鍵……、かかっていたよな?」
「………………」
俺の言葉に視線を逸らすどころか、顔を完全に背けているんですが。
「どういうことなのか説明を所望する」
「……き、記憶にないわね」
「今さっきのことだよね?
それをもう忘れたというのかな?」
「……あ、あなたがなにを言っているのか、き……、聞こえないわ」
ビスマルクはそう言いながら耳元に手を広げ、あたかも聞こえませんというジェスチャーをする。
なぜか地味にイラつくのだが、こんな仕草をするときのビスマルクには、なにかやましいことがあるに違いない。
「分かった。それじゃあ今からリネン室に行こうか」
「……うぐっ!」
「なにも覚えていないんだったら、見れば済むだけの話だろ?」
「……むぐぐぐ」
「それとも、なにか見られちゃまずいモノでも……」
俺はそう言いながら両目を閉じ、腕を組みながら不機嫌そうな顔を浮かべようとしたところ、
「隙ありっ!」
「ぐへぇっ!?」
下腹部に激しい痛みが襲ったと思ったときには、俺の身体が床へと叩きつけられていた。
「ちょっ、いきなりなにをするんだ、ビスマルクっ!」
「グチグチ五月蠅いわねっ!
せっかくカッコいいところを見せて惚れ直させてから、『今ならビスマルクに抱かれても良い……』なんてあなたが言いながら頬を染めたところをこの布団でキャッキャウフフしようと思っていたのにっ!」
「色んな意味で問題ありまくり発言をするんじゃねぇぇぇっ!」
「もうこうなったら実力行使よっ!
この場で全部やらせてもらうわっ!」
「いったいなにをする気だこんちくしょぅぅぅっ!」
「あなたがパパになるのよっ!」
「ふざけんなぁぁぁぁぁっ!
子供たちが居る前でなにを考えてんだよぉぉぉぉぉっ!」
問題発言というレベルではないビスマルクに必死で抵抗する俺は、なんとか身体を捻って逃げようとするも、戦艦級の力の前ではどうしようもなく……、
「フッフッフ……。観念しなさい……」
妖艶な笑みを浮かべ、じわじわと俺の身体を引き込むビスマルク。
このままでは……マジでやばいっ!
どうにかして逃げなければ……と思った瞬間、ビスマルクの背後に忍び寄る影を見つけ、俺は息を飲んだ。
「てー、てーっ!」
「ぐはっ!?」
大きな声が続けてあがり、ビスマルクの頭が大きく揺れる。
ぼふっ……という音が俺のすぐ横で聞こえ、目をやってみると枕が転がっていた。
「酸素魚雷って……すっごい!」
ニッコリ笑ってガッツポーズを取るろーだが、さすがに枕は酸素魚雷ではない。
しかし、見事後頭部にぶち当たった枕の衝撃は強く、ビスマルクは未だ目を回した状態であり、
更に後ろから近づいてくる人影が3つ。しかも、全員が両手に枕を持って……である。
「さすがに僕たちも、この状況は放っておけないよね」
「ええ、その通りよ。いくらビスマルクだからって、やって良いことと悪いことの区別くらいつけて欲しいわね」
「さすがにプリンツも、ビスマルク姉さまに激おこプンプン丸ですっ!」
言って、3人は大きく振り被りながらビスマルクの頭部にめがけて……って、ちょっと待って!
「ス、ストップだ、みんなっ!
このままだと、俺にまで被害が……」
「「「ふぁいやぁぁぁぁぁっ!」」」
「うそぉぉぉぉぉっ!?」
俺の止める言葉もむなしく、子供たちから投げ放たれる枕が宙を舞い、見事ビスマルクの後頭部へと突き刺さったのであった。
なお、俺の顔面にも2つほど襲来したが、なんとか両手でガードすることができたので大事には至りませんでした。
……ただし、腕が痺れるくらい痛かったけどね。
子供とは言え、やっぱり艦娘のパワーって半端ねぇ……。
次回予告
ビスマルクの暴走が子供たちに阻止され、その巻き添えを食らいつつもなんとか難を逃れた主人公。
だが、このまま放置しておく訳にもいかないので……と、食事に繰り出すことにしたのだが……。
艦娘幼稚園 第二部
舞鶴&佐世保合同運動会! その24「まさかのバトル!?」
乞うご期待!
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