第二回飲み勝負……が終わった翌日、主人公はいつものように幼稚園で仕事をこなす。
ちなみにビスマルクはと言うと……、うん、察して下さい(泣
しかし、それらを知らない子供たちは、ビスマルクが居ないことを主人公に聞くのだが……。
翌日。
俺は幼稚園の朝礼を行う為、いつもと同じように起きてスタッフルームに入り、戦闘服であるエプロン姿に着替えてから遊戯室へと向かった。
開始の合図であるチャイムが鳴り響く5分前には子供たちの姿を確認でき、俺はニッコリと笑みを浮かべながら迎い入れる。
そして朝礼の時間となり、大きな声で挨拶をする。
「みんな、おはようございます」
「「「おはようございまーす(ですって)!」」」
「今日も良い天気ですが、少し気温が低いので風邪をひかないようにしましょう」
「「「はーい(ですって)!」」」
「そして急きょ決まったことなんだけど、明日から……」
「先生、その前にちょっと良いですか?」
手を上げながら俺の言葉を遮ったのは、子供たちの中でも一番背が高く大人びているプリンツだ。その表情は少し不安げで、視線をキョロキョロとさせている。
「ん、どうしたんだ、プリンツ?」
「ビスマルク姉さまの姿が見えないなぁ……と、思いまして」
「あ、あぁ。それなんだけど……」
俺はどう説明したら良いかと、言葉を頭の中で選ぶ。
しかし、それよりも早くプリンツの隣に立っていたレーベが、ため息交じりで話しかけてきた。
「どうせビスマルクのことだから、いつもの寝坊とかじゃないのかな?」
「で、でも、ここ最近寝坊は少なかったし……」
「少なかった……と言っても、2,3日に1度が1週間に変わっただけじゃないかしら」
「そ、それは……そうだけど……」
マックスにまで突っ込まれては分が悪いと思ったのか、プリンツはしょげた感じで俯いた。
実際のところはそうではないのだけれど、ある意味寝坊としておいた方が良いのかもしれない。だがその場合、少しばかり問題が出てくるのでどうしたものだろうか……。
「あー、いや。ビスマルクは寝坊したから朝礼に出てないって訳じゃないんだけど……」
「そ、そうなんですかっ!?」
俺の言葉を聞いて、プリンツは目をキラキラさせながら顔を上げた。
そんなに期待をされては困るのだが、理由が理由なだけに非常に伝え難い。
「実は……だな、ビスマルクは少し体調を崩したので、今日は1日休むことに……」
なので、俺は当たり障りのない言葉を選んで、みんなに話したんだけれど、
「……っ!?
そ、それは本当なんですか、先生っ!」
「ま、まさか、そんなことがっ!?」
「あ、有り得ない……。有り得ないわ……」
……と、プリンツ、レーベ、マックスが驚いた顔で俺に詰め寄ってきた。
「え、い、いや、その……」
いきなり過ぎてビックリしてしまった俺はしどろもどろになり、良い言葉を頭に浮かばせられない。
そもそも、どうしてこんなにみんなは驚いているんだ?
「ビスマルクが体調を崩すなんて、どれくらいぶりですって!」
そう言ったろーは、まるで某絵画の叫びのようなポーズで膝をついていた……って、そこまで言われちゃうレベルなの?
「あのビスマルク姉さまが不調になるなんて、それこそ1年や2年に1回じゃありませんっ!」
「僕の知る限りだと、1度もなかったんじゃないかな……?」
「それこそ天変地異が起きてもおかしくないわ……」
あ、あるぇー……?
俺ってば、完全に言葉を間違えちゃったのかなー……?
2日酔いも体調不良な訳だし、間違ってはいないと思うんだけどー……。
「佐世保鎮守府の危機、ですって!」
ちょっ、どこからそんな考えになるんだよっ!
「いやいやいや、大丈夫っ!
ビスマルクは大丈夫だから心配しないでっ!」
俺は慌ててみんなの顔を見ながら大きな声をあげて落ち着かせようとしたんだけれど、
「……先生。今、この佐世保に起きていることは、安直に考えてはいけないことなんだ」
「そ、そうですよっ!
下手をしたらここだけじゃなく、世界が滅んじゃうかもしれないんですっ!」
「今からシェルターを作って引き籠ろうと考えても、助かることができるなんて思わない方が良いわ……」
「遂にハルマゲドンがきてしまったですって!」
だからどうしてそんな大層な考えになっちゃうのーーーっ!?
ちなみにハルマゲドンって世界最終戦争のことだから、ビスマルクが体調を崩しただけで起こったらダメなやつだからねっ!
「こ、こうしてはいられない……。僕たちがどうにかして、ビスマルクを止めないと……」
「……そうね。ビスマルクが暴走してしまう前に身柄を押さえないと」
「うぅぅ……。世界のためとは言え、ビスマルク姉さまに手をあげることになるなんて……」
真剣な表情を浮かべるレーベとマックス。そして泣きながら肩を落とすプリンツ……って、どうしてこうなった。
「こうなったらろーは、酸素魚雷で一網打尽にしますって!」
鼻息を荒くしながらテンションを上げるろーを見て、俺はもうダメだと思いながら正確な情報を伝えることにする。
それでこの場が収まるのなら、致し方ない。
……と言うか、そもそも飲み勝負を吹っ掛けた挙句、真っ先にぶっ倒れたビスマルクが悪いのだ。
だから俺は悪くはない。善処はしたし、こうなってしまった以上仕方がないだろう?
「ビ、ビスマルクはただの2日酔いだから、みんなが思っているようなことはないか……」
「「「……えっ!?」」」
………………。
いや、どうしてそんなに驚くんですかね?
ハルマゲドンとか言っているとき以上なんですけど。
それはもう、半端なく目を見開いちゃっているんですけど。
「ビ、ビスマルク……姉さまが……、2日酔い……っ!?」
「あ、あぁ……。昨日食堂で飲み勝負があって……、潰れちゃったんだよね……」
既に限界だった俺は誤魔化そうとせず、ありのままを伝える。
「の、飲み勝負って……、誰と……かな……?」
「龍驤と摩耶……だけど……」
「そ、その3人で勝負をして、ビスマルクが負けたと言うの……?」
「あー……、いや、俺も含めて4人……なんだが……」
「先生も、勝負したんですか……?」
「う、うん。そうだけど……」
子供たちの質問に返していくうちに、なんだか変な感じになってきたんですが。
レーベとマックスが身体を小刻みに震わせているし、プリンツとろーはヒソヒソ話しをしているみたいだし……。
でも俺、一切嘘は言ってないよね……?
「せ、先生はさっき、ビスマルク姉さまが潰れた……って、言ってましたよね?」
「あぁ。確かにそう言ったけど……」
「と言うことは、龍驤お姉さんか摩耶お姉さんが勝負に勝ったんですか?」
「いや、その2人もビスマルクが潰れた後にダウンしちゃったかな」
「「「えっ!?」」」
だから、どうしてそこまで驚くのかなー……。
「つ、つまり、先生は……その、飲み勝負に勝ったってことなのかな……?」
「そう……なるけど……」
レーベの問いに俺はコクリと頷いて返事をすると、子供たちは揃った足で後ずさった。
「せ、先生。私たちを落ち着かせようとする為だとは言え、嘘をつくのはあまり良くないわ……」
「いや、別に嘘は言ってないんだけど……」
「いやいや、いくらなんでも有り得ないよ。ビスマルクに飲み勝負で勝てるなんて、人間である先生ができるはずはないんだから」
「そうですって!
ビスマルクは祖国で知らない人は居ないほど、酒豪で有名なんですって!」
「そ、そうは言われても、嘘はついてないんだけどなぁ……」
後頭部をポリポリと掻きながら、どうして良いものかと考える俺。
あと、ついでにだけど、どうしてビスマルクはそんなことになっちゃってるんだ?
艦娘として有能だと言われるならともかく、酒豪で有名って……ある意味恥ずかしい気がするぞ……。
居ないところで無茶苦茶なことを言われてしまうなんて、まさに日頃の行いがなんとやらだ。
まぁ、ビスマルクだから仕方がないのかもしれないけど。
「そんなに信じられないって言うんだったら、昨日の夜に食堂に居た艦娘や人たちに聞いてみたらどうだ?
勝負をしていたときのギャラリーは多かったし、すぐに見つかると思うぞ?」
「……ほ、本当に、先生が勝ったって……言うんですか?」
「あっ、ついでに言っとくと、今回で2連勝になるかな」
「「「ええええええっ!?」」」
今日1番の大声を上げる子供たち。
………………。
い、今のはもしかして、失言だったりするんだろうか。
「せ、先生がビスマルクと飲み勝負をしたのは、昨日が初めてじゃないと言うの……っ!?」
「し、しかも、2回連続で勝ったってことだよね……っ!?」
「う、うん……」
「ジーーーーーーーーザスッ! ですってっ!」
両手で頭を抱えてながら跪くろーが大声を上げる……って、そんなポーズを取らなきゃならないことなのかっ!?
つーか、さっきから驚き過ぎだろっ! わざとやってるんじゃないのっ!?
「有り得ない……。ビスマルク姉さまが飲み勝負で2回も負けるだなんて……」
「これは事件よ……。事件は食堂で起きていたのよ……」
「僕たちはこれから、先生の見る目を変えなければならないね……」
「明日の新聞一面は、確実に先生ですって!」
団地の公園なんかで行われる、おばちゃんたちの井戸端会議の如く、子供たちは円を作って話し合いをし、
「な、なんでそんなことになっちゃうんだ……?」
俺の言葉は完全に……届いていなかった。
それから10分ほどの話しあいの後、子供たちからひたすら質問攻めを受けた俺は疲労困憊となり、朝礼どころか1日のスケジュールを崩してしまうことになったので、全てビスマルクのせいだと決めつけることにした。
なお、昨日の飲み勝負の結果についてだが、
ビスマルクがビールを50杯飲んだところでぶっ倒れ、続けて53杯目で龍驤、56杯目で摩耶が降参した。
舞鶴での飲み勝負より少ないと思うかもしれないが、今回はジョッキサイズの為、明らかに量は多かった。
さすがの俺もダメ……と言うより、お腹がタプタプになってしまって、動くのが辛かったんだよね。
ちなみにお勘定は真っ先にダウンしたビスマルクに請求書が行くらしいので、ごちそうさまと書いたメモを渡しておいたけど。
まぁ、暫くは飲み勝負は避けておいた方が身のためだと思う、1日だったということである。
……そもそも、巻き込まれただけなんですけどね。
次回予告
それから子供たちの質問攻めにあったものの、舞鶴で行われる運動会のことを知らせて準備をさせることにした。
肝心の帰還について、子供たちに切りだせない主人公だがったのだが、ひょんなことからツッコミを受けて……。
艦娘幼稚園 第二部
舞鶴&佐世保合同運動会! その5「一致団結……しちゃいました」
乞うご期待!
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