艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 ユーの言葉で先生が大ピンチ!?
でも、そんな心配をある方からのツッコミでことなきを得た……と思いきや、

 余計に、悪化しちゃってませんか……?


その13「先生の役目って、もしかして……?」

 

「あー……、盛り上がっているところ悪いんだけど、たぶん大丈夫だと思うよ?」

 

 みんなの黒いオーラ圧倒されていたユーでしたが、しおいさんが声をかけてくれたことによって部屋の空気が少しだけ変わった気がしました。

 

「大丈夫って、いったいなにがどう大丈夫なんだよっ!?」

 

 しかし、顔を真っ赤にして怒る天龍ちゃんは、しおいさんに詰め寄りながら大きな声で叫びます。

 

 ですけど、しおいさんはまったく焦ることなく、むしろ呆れたような顔で腰に手を当てながら口を開きました。

 

「実はちょっと前に手に入れた情報なんだけど、先生は佐世保で事件に巻き込まれて……」

 

「「「はあぁぁぁっ!?」」」

 

 話しているしおいさんの声を遮る悲鳴のような声がいくつもあがり、みんなの顔が一斉に驚愕したものへと変わりました。

 

「い、いや、先生が事件に巻き込まれたって……、それってどういうことなのさっ!?」

 

「しおいも詳しくは知らないんだけど、ある艦娘の誘拐疑惑がかけられたらしくて……」

 

「「「ゆ、誘拐っ!?」」」

 

 更に驚いたみんなの目が大きく見開かれたと思うと、打ち合わせをしたんじゃないかと思うくらいにピッタリと声が合わさります。

 

 あまりに完璧すぎたので、ユーは思わず感心してしまいそうになっちゃいました。

 

「い、いやいやいやっ、さすがにそれはありえないって!

 あの先生が誘拐なんて、そんな大それたことができる訳がないじゃんかよっ!」

 

「天龍の言う通りデース!

 もしその情報が本当だったら、地球が真っ二つに割れるどころの騒ぎじゃありまセーン!」

 

「そ、そうだよね……。先生はそんな悪いことはしないよね……」

 

「しないんじゃなくて、できる根性がないっぽい!」

 

「「「ですよねー」」」

 

 またもや息ピッタリに……って、何気に酷いことを言われ過ぎたと思うんですけど、これってユーの思いすごしでしょうか……?

 

 佐世保でユーたちを教えてくれた先生と同一人物だとは思えないくらい、まったく違う人に思えてくるんですけど……。

 

 もしかして、昨日に会った元帥さんが……、みんなの言う先生だったりしないですよね……?

 

「ソレデ、実際ノトコロハドウダッタノカナ?」

 

「……まぁ、みんなの言う通り誤解だったんだけどね」

 

「「「やっぱりねー」」」

 

 ヲ級ちゃんの問いに、呆れを通り越して疲れきったような表情を浮かべていたしおいさんがそう答えると、みんなは納得した表情で笑いながら頷きました。

 

「ただ、それ以外にも問題があって……」

 

「あら~、それってなんなのかしら~」

 

「誘拐疑惑の前に、先生が体調を崩したみたいで……」

 

 そう言ったしおいさんは、言っていいものかどうか迷うような顔で、頬をポリポリと掻いています。

 

 なんだか以前にも似たような光景を見た気がして、ユーは頭の中で振り返ってみました。

 

 確かこれは……、先生が……えっと……、

 

「……あっ、思い……出しました」

 

「……え?」

 

 ユーの声にしおいさんが少し驚いた顔をしましたけど、それよりも早く口が動いちゃって……、

 

「先生が、不能……って病気にかかったって聞いたことがありま……」

 

 

 

「「「な、なんだってーーーーーっ!?」」」

 

 

 

「ひゃうっ!」

 

 今までで一番大きく合わさった声に、ユーはビックリして腰を抜かしちゃいました。

 

 しかし、そんなことはお構いなしといった風に、みんなは一斉にユーの方へ詰め寄ってきて……、

 

「う、ううう、嘘だよなっ!?

 嘘だと言ってくれるよなっ!」

 

 床に座り込んでいたユーの肩をガッチリと掴んできた天龍ちゃんが、すごい力で前後に揺さぶりながら恐ろしいまでの剣幕で問いかけてきました。

 

「い、痛い……です……っ!」

 

 唐突すぎる出来事にユーは思わず泣き出しそうになっちゃいましたが、慌てて駆け寄ってきたしおいさんが天龍ちゃんの手を掴んで引き離してくれました。

 

「こらこら天龍ちゃんっ、乱暴なことはしちゃダメだよっ!」

 

「い、いや、だけど……本当のことなのかどうか、気になるじゃんか……」

 

 怒られて少し冷静になった天龍ちゃんでしたが、それでもまだ納得できないみたいで、ユーの顔をチラチラと伺います。

 

「天龍の言う通り、私も本当のことを教えてほしいデース!」

 

「そうだね……。それを聞いて、はいそうですか……とは、僕も納得できないよね」

 

「あら~、ぶった切る必要がなくなったんだから、別に良いじゃない~」

 

「全然良クナイ。原因ヲ作ッタ奴ハ、皆殺シニスル」

 

「ヲ級ちゃんが、かなりのマジモードっぽい!」

 

 むしろユーは、悪魔かなにかだと思っちゃったんですけど……。

 

「お、落ち着こうよ……みんな……」

 

「そうだよー。潮ちゃんの言う通りだよー」

 

 コクコクと頷きながらみんなに言い聞かせるように声をあげたしおいさんですけど、天龍ちゃんと金剛ちゃん、時雨ちゃんとヲ級ちゃんの様子は一向に変わらないみたいです。

 

 良く考えたら発端はユーの言葉ですし、だんだん申し訳ない気分になっちゃってきて……、

 

「うぅぅ……、ユーが余計なこと……言っちゃったからですよね……?」

 

 なんだか胸が苦しくなってしまって、目の辺りが熱くなり、ポロポロと涙が流れ出ちゃいました。

 

「ゆ、ユーちゃんは、泣かなくて良いんだよっ!」

 

「グスッ……、で、ですけど……、ユーが……佐世保のお姉さんたちの噂を……言わなかったら……」

 

「だ、だからそれは、間違った噂だったんだから大丈夫なんだって!」

 

 

 

「「「……えっ!?」」」

 

 

 

 またもや一斉にあがった声によって部屋の空気が一気に変わり、まるで時が止まったかのように感じました。

 

 そしてまたもや思い出したんですが……、

 

「あっ、そう言えば……、先生自身から、そんなことを聞いたような……」

 

 

 

「「「それを先に言えよっ!」」」

 

 

 

「ひゃあうっ!」

 

 一斉にみんなから突っ込みを受けてしまったユーは、泣くよりも先に驚いてしまって、その場で固まってしまいました。

 

 そして、少し離れた所からぼそりと一言が聞こえたんですが……、

 

「ふ、不能って……、いったいなんの病気なのかな……?」

 

 そう呟いた潮ちゃんなんですけど、ユーも分かってないんですよね……。

 

 

 

 

 

「……とまぁ、そういう訳なんだよねー」

 

 それからしおいさんが先生の病気についてや、誘拐の容疑に関する説明をしてくれたおかげで、白熱していた天龍ちゃんたちは落ち着きを取り戻していました。

 

「ふぅ……、そういうことだったのか……」

 

「いやはや、さすがの僕もちょっとだけ取り乱しちゃったね……」

 

「危うく心臓が止まるところでしたネー……」

 

 大きなため息を吐いた天龍ちゃん、時雨ちゃん、金剛ちゃんたちはお互いの顔を見合いながらホッとした表情を浮かべていたんですが、

 

「……あら~、どうしたのかしらヲ級ちゃん~。なんだか浮かない顔をしているように見えるんだけど~?」

 

 龍田ちゃんの声に気づいたみんなは、一斉にヲ級ちゃんの顔を見ました。

 

「………………」

 

 しかしヲ級ちゃんはみんなの視線を全く気にすることなく、思いつめたかのような顔で俯いていたんですけど、

 

 

 

 ウネウネウネウネ……

 

 

 

 頭の上で繰り広げられる触手の乱舞が、明らかに怪しさ満点だったんですよね……。

 

「ひぅ……」

 

「う、潮っ、泣くんじゃねぇっ!

 あれは別に怖いもんじゃねぇから……」

 

「そう言う天龍ちゃんこそ、膝がガクガク震えてるっぽい……」

 

「こ、これはそのっ、む、武者震いだから問題ないんだよっ!」

 

「あら~、それじゃあ天龍ちゃんがヲ級ちゃんの触手を止めてあげるのね~?」

 

「んなっ!?」

 

 龍田ちゃんの言葉に驚いた天龍ちゃんは、みんなの顔を見てからゴクリと唾を飲み込みました。

 

「い、い、いい、良いぜっ! や、やってやるよっ!」

 

 顔を真っ赤にしながらも後に引けない天龍ちゃんは、震える手をヲ級ちゃんの触手の伸ばそうとしますが、やっぱり恐怖の方が強いようで……、

 

「あ、あう、あうあうあう……」

 

 目尻に涙が溢れてきそうなくらい表情が崩れてきて、さすがに誰か止めてあげた方が良いんじゃないかと思うんですけど……。

 

 ……というか、こういうときこそ、しおいさんの出番じゃないんでしょうか?

 

 仮にも先生な訳ですし、ニヤニヤしながら見守っている場合じゃないですよね……?

 

「て、天龍ちゃん……、う、潮は大丈夫だから……」

 

「い、いやっ、だ、大丈夫っ。お、俺様はこんなところで負ける訳にはいかないんだぁっ!」

 

 さすがに見かねた潮ちゃんが声をかけたんですが、それがかえって天龍ちゃんを後押ししちゃったみたいで、一気に手を伸ばしたんです。

 

 ただ、間が悪いと言うかなんと言うか。

 

 むしろ狙っていたんじゃないかと思えるくらい完璧なタイミングで、ヲ級ちゃんが顔を上げたんですよね。

 

「……ヲ?」

 

「んがっ!?」

 

 そしてみんなよりも大きなヲ級ちゃんの頭が、天龍ちゃんの顎の辺りに見事に直撃し、

 

「痛ってぇぇぇっ!」

 

 床の上でのた打ち回る天龍ちゃんが、もの凄く可哀そうに思えました……。

 

「ヲッ、コレハ申シ訳ナイ」

 

 そして謝るヲ級ちゃん。

 

 だけどなぜだか、テレビにたまに映っているスーツ姿のおじさんたちと同じように感じます。

 

「……見事すぎるタイミングは、まさに神の領域デース」

 

「イヤイヤ、狙ッテナンカナインダケドネ」

 

「またまたー。それこそ嘘じゃないんデスカー?」

 

「「HAHAHA!」」

 

 そしていきなり笑いだすヲ級ちゃんと金剛ちゃんですけど、なんだか龍田ちゃんの顔が徐々に怖い感じになってきたんですけど……。

 

「天龍ちゃん、大丈夫~?」

 

「うぅぅ……、地味に痛ぇ……」

 

「なんなら私が2人に、オシオキしちゃった方が良いかしら~?」

 

「「「……っ!?」」」

 

 ニコニコと笑みを浮かべながら龍田ちゃんが言った瞬間、ピシリッ……と空気が凍った感じが部屋中を駆け巡ったような気がします。

 

 

「い、いや、さすがにそれはやらなくても良いんだけど……」

 

「あら、そうなの~?」

 

「龍田のオシオキって、もはや度が過ぎるってレベルじゃないんだからさ……」

 

「そんなつもりはないんだけどね~」

 

 言って、肩をすくめた龍田ちゃんですけど、良く見てみると背中の方に先ほど研いでいた槍のようなモノが……。

 

 さ、さすがにそれは……、ダメだと思うんですけど……。

 

「い、命拾いしたデスネ……」

 

「コ、ココハチャント、謝ッタ方ガ良サソウダネ……」

 

 ヲ級ちゃんと金剛ちゃんはガタガタと身体を震わせながら、慌てて天龍ちゃんに駆け寄ってから頭を下げていました。

 

 これで一件落着……と思ったんですけど、

 

 

 

 こういうときこそ、しおいさんの出番だったんじゃないんですか……?

 




次回予告

 ヲ級ちゃんの謎行動からトラブルになりかけましたが、なんとかことなきを得たような気がします。
ですけど、その真相が分かってから……更に悪化しているような……?


 艦娘幼稚園 第二部 スピンオフシリーズ
 ~ユー編~ その14「もしかして、あのときの内緒話ですか……?」


 乞うご期待!

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