鬼は主人公。そして対するは園児たち。
まずは誰から捜すかって? そこはタイトルで分かるよねっ!
ひとまずコードEは忘れて、かくれんぼに集中しますっ!
それでいいのか主人公!?
「それじゃあ、20数える間に隠れるんだぞー! いーち……にーい……」
腕で目隠しをした俺は、壁に向かって立ちながら大きな声で数えると、子どもたちはわいわいと騒ぎながら辺りをバタバタと駆け回り、次第に静かになっていく。
「なーな……はーち……きゅーう……じゅーう……」
半分が過ぎる頃には、子どもたちの声はほとんど聞こえなくなる。
「じゅーはち……じゅーく……にじゅうー。さぁ、いくぞー!」
20を数えきった俺は壁から離れて振り返り、目隠しをしていた腕を離す。うっすらとぼやけた視界には、人っ子1人いない部屋が映し出された。
「ふむふむ……さてさて、どこに隠れたのかなー」
気分はまるで、赤ずきんを探す狼のように。――って、それだとかなり危ない感じに聞こえるけれど、あくまでこれは子どもたちとの遊技であって、先生としての仕事なのだ。全然やましいことは考えてないので、通報なんてしないようにしていただきたい。
さて、それでは部屋の現状を整理してみよう。
部屋には扉が一つあり、その扉は開けっぱなしなっている。反対側には足下から天井近くまである大きな窓が2つ繋がり、両側にはカーテンがある。部屋の隅には子どもたちが遊ぶための遊具が置かれているのだが、なぜか整理されていたはずのぬいぐるみ類が、無造作に積み上げられている。
「うーん、この部屋に隠れてる子はいないみたいだなー」
そう言いながら窓の方へと歩いていく俺。カーテンにくるまって隠れている子の足がばっちりと見えていたので、ゆっくりと近づきながら、あたかも気づいていない振りをする。耳を澄ましてみると、内緒話をしているように小さな声が聞こえてくる。どうやら、ばれていないのだと安心しきっているようなので、ここは一つ、大きな声で驚かすのがオツと言うものだろう。
「それじゃあ、隣の部屋に探しに行こうかなー……って、ここだなっ!」
「はわっ!?」
カーテンの裾を掴んだ俺は勢いよくひっぺがえして、子どもの姿を露わにさせた。驚いた表情を浮かべていたのは電の姿で、「はわわわ……」と声を上げながら固まっていた。
「電、みーつけたっ。これで1人目ゲットだなっ」
「はわわ……見つかっちゃたのです……」
残念そうな表情を浮かべた電だが、「今度は見つからないように頑張るのですっ!」と、すぐに表情を和らげて笑みを浮かべた。そんな電が可愛らしくて、ぽんぽんと頭を撫でてあげる。
「足が見えなかったら、見つけられなかったかもしれないぞ?」
「はわっ! み、見えてたのですかっ!?」
「カーテンにくるまっても、足まで隠すことは難しいからな」
「それなら今度は、全部隠れるように頑張るのですっ!」
気合いを入れて右手をぐっと握る電。だがしかし、足まで隠れるカーテンとなると、床につく長さが必要なのだけれど、幼稚園の中にそんなカーテンがあった記憶は俺にはない。
しかし、それを言っては電のやる気を削いでしまうだろうと思い、「色々と考えてみて、良い方法を探してみような」と声をかけて、優しく頭を撫で続けたが、
「ありがとうなのです、先生」
そう言った電の目線を俺は見逃さない。反対側のカーテンに向けられた視線の先には、電と同じように足が見えてくるまった誰かの姿がそこにはある。
ってまぁ、足が見えているので分かってはいたんだけどね。
「よし、それじゃあ、先生は隣の部屋に……って、甘いぜっ!」
「うひゃあっ!?」
「やっぱり、雷だったか。残念ながら、ばっちりくっきり足が見えてたぞ。2人目ゲットー」
「なによもうっ! ばれてないと思ったのにー」
「ふっふっふっ……先生をなめるんじゃあないぞー」
悔しそうな顔を浮かべる雷に、勝ち誇った俺の姿。端から見ると、子どもをいじめている大人という、通報されてもおかしくない姿がここにあった。
いや、別にいじめてないからね。
「残念だったな、雷、電。次はもっと頑張れよっ!」
「今度は負けないからねっ!」
「ああ、それじゃあ、暫くここで大人しくしてるんだぞ」
「はーい、先生」
「了解なのですっ。雷ちゃんと一緒にお話してるです」
「おう、それじゃあ、ちょっくら他の子を探してくるわー」
手をあげた俺に、電と雷は大きく手を振って答える。
そんなことを言いながら辺りを調べたが、さすがに大きな窓の近くで、カーテン以外の隠れれそうな場所はなさそうだった。
「ふむ、この部屋にはもういないか……」
わざとらしく呟いて電と雷の様子を伺ってみたが、それらしき反応はない。この部屋に隠れている子はもういないと確信したような振りをした俺は、扉へと向かって歩きだす。
それなりに大きなこの部屋の扉は引き戸ではなく、部屋の中に開くタイプの扉である。その扉が、無造作のように開けっぱなしになっている。
「ふむ……」
かくれんぼを開始し、隠れるために走り出した子どもたちが閉めないで出ていくということは十分に考えられるのだが、それによって死角が存在するのもまた事実。ましてや、こんな簡単なところに隠れるはずがないと思わせるのも、また、かくれんぼの技術の一つなのだ。
「ということで、クローズ・ザッ・ドアッ!」
背後霊を呼び出すかの如く、大きな声をあげながら扉を閉めると、死角に隠れて体育座りをしてた響の姿があった。
「やはり、ここに隠れていたか。3人目ゲットだぜ」
「むぅ……さすが先生の名は伊達じゃないね」
「いや、役職名であって、名前じゃないんだけどね」
「ハラショー。とりあえず、先生にはこの言葉を贈るよ」
「あ、あぁ……ありがとな……」
「それじゃあ、響は電と雷のところに行くとするよ。しっかり留守番をしているさ」
「ん……分かった。それじゃあよろしくな……って、甘いわっ!」
脱兎の如く駆けだした俺は、ぬいぐるみの山に向かい、両手をショベルカーのようにすくって、山を一気に崩しにかかった。
「ここに隠れているのは分かっているぞっ! うりゃあああっ!」
「きゃあっ!?」
勢いよくすくい上げた手にぬいぐるみが絡み、空中を舞う。その下には、猫のように丸まった暁の姿があった。
「よし、これで4人目ゲットだぜー」
「むっ、むむむっ! ここなら大丈夫だと思ったのにっ!」
「いやいや、怪しさで言うと一番だったからね」
ぬいぐるみの山が部屋の隅にあるとか、露骨すぎるもん。
「そっ、それってやっぱり、暁が一番ってことよね!」
「あー、まぁ、そうなのかな……」
確かに一番最初に予想がついたのがここだったし、そうとも言えなくはないけど、かくれんぼにおいて一番を目指しても意味はないと思うんだけど……
「まぁ、見つかっちゃったのはアレだけど、一人前のレディとして終わるまでは大人しくしているわ!」
「ん、それじゃあ、少しの間ここで遊んでいてくれ」
「まかせなさいっ! それじゃあ先生、他の子たちもしっかり見つけなさいよねっ!」
「ああ、それじゃ行ってくるぜー」
元気よく声をかける暁に返事をしながら、辺りを見回す俺。どうやらこれ以上、部屋の中で怪しいところは無さそうなので、4人に向かって手をあげた後、別の場所を探すべく部屋から出た。
うむ、ぶっちゃけ楽しいです。
次回予告
次々に隠れている子どもたちを見つけていく主人公。
残る子どもは4人。さぁ、どこから捜そうかっ。
やっぱり出てきた最強コンビ、ますます磨きがかかってる!?
艦娘幼稚園 ~かくれんぼ(コードE)大作戦!?~ その3
お楽しみにっ!
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